ユーロ/米ドルは1.10ドルの節目を下回れば、 1.08ドル前後のトライが有力に。米ドルは、 しばらく上値をトライしやすい展開か

ロシアへの制裁による米ドルへの影響は、短期スパンと長期スパンでまったく違う可能性も 先週(2月21日~)末から国際状況が大きく変わった。
 ロシアによるウクライナ侵攻を傍観し、最初は弱腰だったドイツが態度を一変したのをはじめ、欧米日が一致団結してロシア制裁を行い、国際銀行間通信協会(SWIFT)から排除、ロシアの海外資産を封鎖するなどの強烈な措置をとった。西側諸国は珍しく、ロシアに対する足並みを揃え、闘争は勢いを増してきた。
 このあたりの材料はすでに大きく報道されたので、ここでは繰り返さないが、SWIFTからロシアを排除する措置について、若干私見を述べておきたい。
 ロシアに制裁を与えるという意味合いにおいて、同措置なしでは実質効果がないので、排除自体はやむを得ないと思う。
 しかし、基軸通貨としての米ドルの信用に関する影響は、短期スパンと長期スパンにおいてまったく違う結果になりかねないから、手放して喜んでいいものでもなさそうだ。
 言ってみれば、ロシア排除にあたって、米ドルは一層真のリスク回避先の役割を果たし、ますます買われる一方であるが、長期スパンにおいてはむしろ、米ドルの権威が傷つく可能性がある。
 なにしろ、ロシア大手銀行や資源関連大手企業の上場企業の株が、紙くず同然まで暴落したことが示唆しているように、裏付けとして、米ドルの信用の有無が決定要素となる。
 となると、逆にいつ信用がなくなるのかわからないから、米ドルの裏付け自体が怖い、という連想が動きやすく、将来の危機管理にあたって、米ドル離れを図ろうとする動きが徐々に強まってもおかしくなかろう。
 とはいえ、米ドル離れがあるとしても長期スパンの視点においてであり、目先は米ドル選好が強まれ、しばらくは上値トライしやすいだろう。
ロシアに近いEUや英国より遠くの米国や豪州あたりがより安全と思われたことが為替市場の明暗をわけた? 地政学リスクが増大する中、米ドルは真のリスク回避先として評価され、また今回のロシア制裁にあたって、利権関係上EU(欧州連合)や英国より損失が小さいところも、米ドル買いの根拠になりやすいかと推測される。
 地政学リスクといえば、やはり地理上の関係が重要になってくる。ロシアに近いEUや英国より、遠くの米国や豪州あたりがより安全と思われたことが、最近の為替市場の明暗をわけた側面もあるかと思う。
 ユーロの全面安に続く英ポンドの軟調に対して、豪ドルの堅調が目立ち、「有事の米ドル高」とはいえ、すべての外貨に対して強いとは限らない。
米ドルVS世界の通貨 日足豪ドルはユーロに対しても上昇が鮮明で上値余地が極めて大きい 豪ドル/米ドルの堅調は、もう1つの視点から捉えないといけない。それは他ならぬ、ユーロ全面安である。
 ユーロ/豪ドルのチャートを見ればわかるように、豪ドルの上昇が非常に鮮明で、また上値余地が極めて大きいから、「有事の米ドル高」の局面においても、対米ドルでの堅調が保てるわけだ。
 ユーロ/豪ドルの月足を見るとわかるように、ユーロは先月(2022年2月)から大きく売られ、2018年安値や2021年安値に位置するライン(紫)を下回っており、下値余地が大きく拡大している。
ユーロ/豪ドル 月足(クリックで拡大)(出所:ゴールデンウェイ・ジャパン[FXTF MT4])
 2020年3月の大陽線が典型的な「スパイクハイ」のサインを点灯、翌月(2020年4月)の大陰線をもって頭打ちを確定させた。
 そして前述のラインの割り込みで、月足における大型「三尊型」か、「ソーサートップ」のフォーメーションを成立させた。
 2022年2月からのほぼ一本調子に急落しているが、月足ではむしろまだまだ初歩的な段階とみなされ、2022年年内ユーロ安が継続してもおかしくない情勢だとみる。
ユーロ/英ポンドもこれからユーロ安の余地を拡大する公算大 同じように、ユーロ/英ポンドの月足においても、目先大きなサインが点灯し始めている。昨年(2021年)安値を割り込んでおり、2016年年末安値水準を下回っただけに、大きなレンジを下方ブレイク、これからユーロ安の余地を大きく拡大する公算が高い。
ユーロ/英ポンド 月足(クリックで拡大)(出所:ゴールデンウェイ・ジャパン[FXTF MT4])
 同じく2020年3月のローソク足自体が「スパイクハイ」の大陽線であったが、高値トライ自体が「ダマシ」となり、目先の下放れもあって、いわゆる「フォールス・ブレイクアウト」のサインとして完全に認定できたわけだ。
 上値打診が「ダマシ」であっただけに、2016年高・安値から形成されてきた大きなレンジに対する下放れが本物である可能性が高く、2022年内いっぱいユーロ安の進行があってもおかしくなかろう。
ユーロ/米ドルは「売られすぎ」のサインが見られても下げ止まらない可能性も 同じ視点では、ユーロ/米ドルの下落トレンドが進行中であり、また加速している。
 短期スパンにおいて若干「売られすぎ」のサインが散見されても、大きな流れとして目先は下げ止まりの可能性をあまり盲信できないだろう。
ユーロ/米ドル 月足(クリックで拡大)(出所:ゴールデンウェイ・ジャパン[FXTF MT4])
 1.10ドルの節目を下回れば、1.08ドルの節目前後の下値トライが有力視されるから、しばらくショートスタンスを維持したい。
ユーロ/円は124円台半ばのトライがあっても許容範囲内 最後にユーロ/円であるが、先々月(1月)と先月(2月)に形成された「アウトサイド」のサインの、目先下放れが確認されただけに、先月(2月)の「スパイクハイ」の陰線が事実上「弱気リバーサル」の意味合いのみではなく、一種の「ダマシ」だったことがわかる。
ユーロ/円 月足(クリックで拡大)(出所:ゴールデンウェイ・ジャパン[FXTF MT4])
 したがって、これからも続落し、コロナショック安値を起点とした全上昇幅の半分程度、すなわち124円台半ばのトライがあっても、許容範囲内だろう。
 ユーロ全面安の進行はしばらく続き、また加速していくことを念頭におくべきであろう。市況はいかに。

参照元:ザイFX! 陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

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