ジャクソンホールでのパウエルFRB議長の 発言内容がどうであっても米ドル高トレンドは 変わらず!

注目されるジャクソンホールでのパウエルFRB議長講演、事前の予測はすべて憶測! 主要国の中央銀行首脳らが参加する経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」が本日(8月27日)開催され、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長の講演が注目される。
 テーパリングの開始時期、すなわち金融政策正常化のスケジュールが議長さんの口から示されると期待され、相場の行方を占う上で重要なポイントであることは言うまでもない。
【参考記事】
●ジャクソンホール会議が行われる建物はジャクソンホール? なぜ、ジャクソンホールは世界中のトレーダーの注目を集めるのか?
8月27日(金)に行われるジャクソンホール会議での、パウエルFRB議長の講演が注目されている (C)Bloomberg/Getty Images News
 FRBが緩和縮小に舵を切れば、世界のお金の流れも当然のように変わるわけで、市場関係者の憶測が出やすいのも自然ななりゆきだ。
 ただし、一般論で言えば、一貫してFRB政策の中身を予測できる集団(ましてや個人)は存在しないので、いろいろな見方や観測が出ているが、すべて憶測と片付けておいたほうが理にかなう。
テーパリング実施が既定路線でも、最初の一歩を踏み出すのは難しい 状況は常に流動的なので、FRBとはいえ、テーパリング時期に関する判断は、やはりたやすいものではない。
 マーケットの不安をやわらげた上で、インフレの進行が行きすぎないうちに判断しなければならないから、議長さんの手腕が問われるところだが、それが適切かどうかは事後でないと誰もわからないだろう。
 FOMC(米連邦公開市場委員会)メンバーさんの発言も大きな問題だ。本来、中央銀行幹部の立場なら、自らの発言が相場に多大な影響を及ぼすことを当然わかっておられると思うが、好き放題とまでは言わなくとも、割と自由な発言を繰り返す方もいらっしゃる。
 意図的に相場センチメントの形成を誘導したり、懸念を払拭したりするなら問題ないが、お互いの見方が矛盾していたり、首尾一貫したスタンスを維持できなかったりして、かえって相場の疑心暗鬼を招くケースが今まで散見されてきたのも事実である。振り回されないように注意する必要があると思う。
 テーパリングの実施が規定路線ならば、粛々とスタートを切ればよいのではないかと思われるが、リーマン・ショック後の2013年、当時のFRB議長(バーナンキ氏)がテーパリングに言及したところ、世界の金融市場が一時混乱したという経緯があるように、そう簡単に行えるものではない。
 コロナショック後の一連の緩和政策は、史上最大の金融緩和であっただけに、正常化までの道のりは長く、また、最初の一歩を踏み出すことが難しいのかもしれない。
 だからこそ、昨日(8月26日)、またFOMCメンバーさんからタカ派発言が出たが、これは地ならし的な役割を果たそうとしているのかもしれない。しかし、前記の理由から、これについてはあまり過信しないほうがよいかと思う。
テーパリング開始時期は早ければ早いほど米ドルにとってプラス 為替市場に限定すれば、少なくとも短期スパンにおいては、テーパリングの開始時期が早ければ早いほど米ドルにとってプラス的な効用をもたらす。
 また、仮にテーパリングの開始時期が明言されたところで、金融市場の波乱があれば、米ドル全体にとってもマイナスな要素ではなかろう。米ドル/円を除き、リスクオフの米ドル買いは健在のはずだ。
米ドルVS世界の通貨 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 日足)
 米ドル売りにつながるケースとしては、やはりテーパリングの2021年年内開始が無理と示唆されたり、時期を探ること自体が当面早いと暗示されたり、さらにテーパリングのテの字も出ない場合に限るだろう。
 しかし、仮に早期実施なし、または時期について明言を避けたい場合でも、議長さんはテーパリング自体について何らかのメッセージを発信し、あいまいに終始することはないと思う。
 市場との対話を大事にしなければならない時期において、メッセージを出せないリスクのほうが断然大きい。
 いずれにせよ、今回のジャクソンホールにて、米ドル高基調の継続と米ドル安への転換という2つの可能性について検証されるだろう。そして、前者のほうがより可能性が高いのではないかと思う。
パウエル議長講演は内容にかかわらず、米ドル高トレンドを否定するようなことにはならないだろう 議長さんの講演内容はどうであれ、米ドル高トレンドの継続を否定するような性質にはならないから、仮に米ドル売りをもたらしたとしても、一時的、すなわちスピード調整的な役割を果たす程度で、米ドル安基調へ転換させるイベントにはならないだろう。
 つまるところ、テーパリングの実施は規定路線。新型コロナ変異株の感染拡大があっても、足元で著しく進行している米インフレの高まりをFRBは看過できないと思う。
 テーパリングの実施時期が遅くなれば遅くなるほど、FRBが将来背負うリスクのほうが大きい。
 市場のコンセンサスは、すでに2021年年内実施に傾き、いつ公表、いつ実施するかという細かい日程の推測というところまで来ているので、仮に今回パウエル議長さんが示唆しても、市場はサプライズと受け取らず、大きな混乱にはつながらないだろうと思う。
 ゆえに、今回のイベントは、市場の緊張度の高まりの割には無風通過になる、といった可能性が高いと思われ、波乱があっても長くは続かないとみる。
一時的に米ドルが売られたとしても、米ドル高トレンドを強固にするための「振り落とし」にすぎないだろう 米株式市場におけるメイントレンドも堅実で、目先崩れるとは考えにくく、もし波乱があれば、短期スパンにおける押し目買いの戦術がなお有効であろう。
 為替相場における米ドル高の基調は5月からすでに確認されており、これからも継続していく公算が高いから、仮に一時的な米ドル売りがあれば、それは本質的に「振り落とし」になると思う。
ドルインデックス 日足(出所:TradingView)
 要するに、米ドルのロングポジションを振り落とし、身軽になる分、これから一段と強い米ドル高のトレンドが形成されやすいことになる。市況はいかに。                          
 (14:00執筆)

参照元:ザイFX! 陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

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