米ドル/円は109円を割り込んでも108円の 節目を打診する程度!? ドルインデックスの上昇は本物だ

FOMC後、米ドルは全面反落 FOMC後、米ドル全面反落の市況となった。
 執筆中の現時点で、ドルインデックスは92の節目を割り込み、米ドル/円も再度109円台前半まで反落、高値トライの勢いを失った模様だ。
ドルインデックス 日足(出所:TradingView)
米ドル/円 日足(出所:TradingView)
 FOMC(米連邦公開市場委員会)で発表された金融政策やFRB(米連邦準備制度理事会)議長の発言に関する報道や解釈はすでにあふれているから、ここでは詳細を省くが、重要なポイントを言えば、やはり、テーパリングの時期に関する市場の「憶測」が、目先の米ドル全面反落につながっているのではないかと思う。
 インフレの高まりが一時的であること、また、変異型コロナウィルスの脅威などの懸念から、FRBが一部市場参加者の想定ほどタカ派ではない可能性が露呈したことで、米ドルロング筋の利益確定が促進され、それが米ドル全体の反落をもたらしたと言える。
 換言すれば、米ドルの反落はあくまでスピード調整で、メイントレンドとしての米ドル高の構造はなお維持されている、ということである。
米ドルの押し目買いはもう少しでタイミングに恵まれるだろう もちろん、筆者の見方が正しいかどうかは、これからの市況によって検証されるが、目先、米ドル全体の反落はなお続くとみる。
 ドルインデックスの値動きから考えると、5月安値を起点とした上昇波自体が「上昇ウェッジ」を形成していたが、FOMC後の大幅続落があって、同フォーメーションに対する下放れが確認されており、全上昇幅の半値押しとなる91前半の打診があってもおかしくなかろう。
ドルインデックス 日足(出所:TradingView)
 しかし、コロナショックでも2018年安値を割り込めなかったドルインデックスの上昇は本物だ。
 3月高値93.47までの接近もあって、メイントレンドとして早晩3月高値の再更新を果たす、といったシナリオは実現可能性が高い。目先の反落は、スピード調整と位置付けられ、むしろ、これからの米ドル高トレンドをより健全化する側面が大きい。
 中期スパンにおける米ドルの押し目買いのスタンスは、もう少しで再度タイミングに恵まれるだろう。
ユーロ/米ドルは売りの好機がそろそろやってくる 米ドルの対極としてのユーロは、現時点では切り返しを先行させているが、日足では5月高値からの下落波の進行があって、むしろ「三尊天井(※)」というフォーメーションの形成が鮮明になりつつある。
(※編集部注:「三尊天井」=「三尊型」。「三尊型」はチャートのパターンの1つで、天井を示す典型的な形とされている。仏像が3体並んでいるように見えるために「三尊型」と呼ばれていて、人の頭と両肩に見立てて「ヘッド&ショルダー」と呼ぶこともある)
ユーロ/米ドル 日足(出所:TradingView)
 切り返しの一服があれば、早晩ネックラインの割り込みがもたらされ、同フォーメーションが示唆するように大きく下落余地を拡大するだろう。
 ユーロに対しては、中期スパンにおける戻り売りのスタンスを維持する。また、売りの好機がそろそろやってくると思う。
 この意味において、今回のFOMCがあったからこそ、出遅れた米ドルのロング筋にとっては、参入の好機が提供されていると言える。
 前述のフォーメーションの成立があれば、ユーロ安の進行がまだまだ初歩段階にあることがわかり、目先の切り返しの先行もあって、米ドルロング筋は参入しやすくなるだろう。
ユーロ/米ドルは1.1703ドル割れを確実視 もっとも、ユーロ/米ドルにおける2月の高値トライは、プライスアクションの視点では「スパイクハイ」や「フォールス・ブレイクアウト」のサインを点灯させ、その後、5月高値ではいったんの更新があっても失敗していたから、3月末安値1.1703ドル割れが確実視される。
ユーロ/米ドル 日足(出所:TradingView)
 ゆえに、目先の切り返しに惑わされず、メイントレンドに沿った形なら、ユーロの戻り売りはなお有効な戦略で、これからより強い下落波の形成も想定しておきたい。
目先の米ドル/円は109円の節目割れの有無が焦点 米ドル/円は目先軟調で、これは米ドル全体の反落とリンクした値動きとして理解されやすいと思うが、メイン構造、つまり、上昇波としての構造を維持していくだろう。
 目先の焦点は109円の節目割れの有無にあるが、割り込みを回避できる場合は、早期続伸できなくても高値圏での保ち合いに留まり、割り込みがあっても108円の節目を打診する程度で調整子波を完成させるかと推測される。
米ドル/円 日足(出所:TradingView)
 繰り返し指摘してきたように、円は主要外貨のうち、一番弱い存在であり、受動的な円高の余地はあってもそれは限定される、といったロジックが維持される。
クロス円が底打ちしたという考え方は甘いだろう 半面、主要クロス円における外貨安の進行は一服しているものの、早期底打ちしたという考え方は甘いだろう。
 なにしろ、ユーロをはじめとした諸外貨の対米ドルでの切り返しがあくまでスピード調整であれば、これから、諸外貨がベア(下落)トレンドへ復帰する場合は、対米ドルのみでなく、対円でもそれなりの下値余地を拡大するはずだからだ。
世界の通貨VS円 日足(リアルタイムチャートはこちら →FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
 調整一巡後の米ドル高が、どれぐらいのスピード感を持つかが重要な問題だ。米ドルの上昇が早ければ早いほど、繰り返し指摘してきたように、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)における外貨安による受動的な円高が続く可能性は大きく、かえって米ドル/円の頭を抑え込む要素として浮上しやすい。
 目先、米ドル全般の反落よりも米ドル/円が先行して反落しており、これから米ドル全般の切り返しにリンクした米ドル/円の上昇があったとしても、米ドル/円は先行した反落幅をまず取り戻さなければならないから、米ドル/円が米ドル全体の上昇をリードしていくのは容易ではないと思う。
 ユーロ/米ドルも切り返しを先行させているから、当然のように、仮に再度下落してくると、まず切り返す幅を帳消しにしなければならないが、そのスピード感はおそらく目立ってくると思う。
 なぜなら、米ドル高トレンドの再開は、ドルインデックスの2021年年初来高値の更新につながり、一層の上昇モメンタムの加速が想定されるからだ。
 この場合は、米ドル高の受け皿としての役割を果たしてくるのは往々にしてユーロであり、円は二の次となるのが普通である。
 換言すれば、米ドル/円のみの上昇は、米ドル全体(ドルインデックス)の上昇を伴わなくても実現可能だが、米ドル全体の上昇はユーロ/米ドルの下落を伴わないことには想定しにくい。
 このようなロジックが適切であれば、ユーロの反落波はなお続き、ユーロ/円が128円台半ばの打診で早期底打ちを果たした、といったシナリオとなる可能性は低いだろう。
 戻り切れない場合は再度安値更新を果たし、しばらく調整波の拡大や延長をもたらすと推測される。
 そのあたりの市況は、またフォローしていきたい。市況はいかに。
(14:00執筆)

参照元:ザイFX! 陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です