米ドルは押し目買いか上値追いの2択のみ! ミセス・ワタナベは逃げ時を見失うな!

■米ドル/円は112円の大台目前、さらなる上昇も 執筆中の現時点で、米ドル/円はいったん111.65円を打診、昨年(2020年)コロナショック後の高値であった111.71円を突破する勢いで、112円の大台も目の前まできた。
米ドル/円 週足(出所:TradingView)
 今だからこそ、円安の進行が当然視されているが、昨年(2020年)年末の時点においてはむしろ円高の予測が主流だったことから考えると、2021年年初来の円安は、多くの市場関係者にとってサプライズであったと思う。
 2020年年末に出した予想について、4月2日(金)の本コラムですでに取り上げたから、ここでは繰り返さないが、4月30日(金)の本コラムにて、今年(2021年)前半において112円の目標を達成可能、と指摘したことは改めて記しておきたい。
【参考記事】
●5年半続いた保ち合いを上抜けしたドル/円。急上昇が予想されなかった2つの理由とは?(2021年4月2日、陳満咲杜)
●米ドル/円は2021年前半に112円達成も!GMMAに鰯(イワシ)喰いのサイン完成か!?(2021年4月30日、陳満咲杜)
 なぜなら、112円の大台を早期に達成すれば、米ドル/円における2021年内のターゲット上方修正につながるからだ。
 実際、2020年年末の本コラムにおいては、112円の大台乗せがあれば、115円台をターゲットとして提示した上、「一方、通常の15円程度の変動幅で考えると、117円~120円も視野に入るが、これは、やや楽観的すぎるシナリオと位置付ける」と言い、平均的な変動率で考える上値も提示していた。
【参考記事】
●2021年こそ「新たな円安時代」の幕開けか。米ドル/円をめぐる2つのシナリオとは?(2020年12月25日、陳満咲杜)
 それが、ここにきて、やはり現実味が高まりつつあり、場合によっては達成可能かと思われる。
■チャート分析によると米ドル/円は120円台も視野に ファンダメンタルズ云々よりも、市場の内部構造に沿った考え方が重要だと思う。
 米ドル/円の月足を観察すればわかるように、2020年3月のコロナショックは、大きな値幅を形成していた。そして、直近までの値動きは、すべて2020年3月のローソク足の中に包まれる形となり、「インサイド(はらみ線)」のサインを形成、また、近々の上放れも示唆されている。
米ドル/円 月足(クリックで拡大)(出所:ゴールデンウェイ・ジャパン[FXTF MT4])
 上放れに成功した場合は大幅に上昇余地を拡大し、「倍返し」の計算では120円の大台も視野に入ってくるから、継続的な上値打診自体、もはやサプライズではないと思われる。
■ミセス・ワタナベの逆張りポジションが史上最大に!? もう1つ気になる材料はミセス・ワタナベ、すなわち日本の個人投資家たちの動向だ。
 日本経済新聞によると、FX大手4社が掲示した統計では、現在、個人投資家の総計として「史上最大」の逆張りポジション(米ドル売り・円買い)が組まれている模様。
 米ドル/円がこのまま上昇した場合、経験上、大規模な「踏み上げ」、すなわち米ドルショート筋の損失覚悟、あるいは損失確定の買い戻しが発生しかねないから、これが一層、米ドル/円を押し上げ、さらなる上値余地を拡大する、といった局面も想定される。
 こういった場合、往々にしてファンダメンタルズの要素からは説明できない強いトレンドとなる。その為替市場における前例は枚挙に暇がない。
■米ドル/円がすぐに大幅続伸するシナリオは疑問視 ところで、現時点の考え方として、筆者自身は米ドル/円の大幅続伸といったシナリオを、どちらかというとやや疑問視している。
 2021年年内における上値ターゲットの上方修正自体は問題ないが、ここから一気に上値余地を拡大し、強いモメンタムを維持していくかどうかは流動的だと思う。
 一番懸念しているのは、米ドル全面高のスピードだ。
 前回(6月25日)のコラムでも既述のように、ドルインデックスは強気変動に復帰しており、2021年年初来安値にギリギリまで迫ったものの、一転して大幅高に転換。
【参考記事】
●ユーロ/米ドルは短期的には1.1620ドル程度、中期的には1.11ドル台後半までがターゲットに(2021年6月25日、陳満咲杜)
 92.57の打診もあって、近々3月末高値93.47のブレイクを果たす公算が高い。
ドルインデックス 日足(出所:TradingView)
 そうなると、米ドル高の流れが一段と強まり、強いモメンタムをもってさらなる上値トライの市況が想定される。
 米ドル高自体は米ドル/円の下支えとなり、米ドル/円の上昇傾向を支えるものの、米ドル全面高におけるスピードやモメンタムが高ければ高いほど、それはユーロなど外貨の急落をもたらし、逆に米ドル/円の上昇モメンタムを抑え込む可能性がある。
■強い米ドル高→ユーロ急落→米ドル/円の上昇抑制 なにしろ、円は米ドル次第の通貨とはいえ、強い米ドル全面高の局面においてはユーロほどの受け皿にはならない。強い米ドル高の流れは必然的にユーロの急落として現れる。 そして、ユーロ/円におけるユーロ安がもたらす円高の圧力が米ドル/円に波及しやすく、これがかえって米ドル/円の上昇スピードを抑える、といった構造が想定されるわけだ。
  実際、直近すでにそのような兆しが出ており、米ドル/円の2021年年初来高値更新があってもユーロ/円は6月23日(水)の高値(132.71円)を回復しきれずにいる。
米ドル/円 日足(出所:TradingView)
ユーロ/円 日足(出所:TradingView)
 それはほかならぬ、ユーロ/米ドルが1.18ドル台前半をトライしているからであり、ユーロ安と円安の同時進行において、ユーロ/円の頭が重くなりがちであることが示唆されている。
ユーロ/米ドル 日足(出所:TradingView)
 注意していただきたいのは、ユーロ/米ドルは大きく反落してきたものの、まだ2021年年初来安値を更新していない、ということだ。
 対照的に米ドル/円はすでに年初来高値をいったん更新しているから、ユーロ/円の中段保ち合いが長く続かないことが暗示されているのではないかと読み取れる。
 ユーロ/米ドルがまだ年初来安値を更新していないうちに、ユーロ/円はもう頭が重くなってきたから、ユーロ/米ドルの年初来安値更新があれば、ユーロ/円が一段と反落することが推測されやすい。
 なにしろ、前回のコラムにて詳しく説明したように、ユーロ/米ドルのベア(下落)トレンドやその進行が有力視されており、ユーロの下落はむしろこれからなので、ユーロ/円がその影響を受けずに近々強気変動に復帰するとは想定しにくいからだ。
【参考記事】
●ユーロ/米ドルは短期的には1.1620ドル程度、中期的には1.11ドル台後半までがターゲットに(2021年6月25日、陳満咲杜)
 そうなると、やはりユーロ/円の動向次第で、米ドル/円の上昇スピードが抑えられる公算が大きいのではないかと考えられる。
 この場合、2021年年内における米ドル/円の強気変動や上値ターゲット上方修正の必要性自体は変わらないものの、米ドル全面高の進行でモメンタムが低下していく局面も警戒しておきたいところだ。
■米ドル押し目買いか、米ドル上値追いの二択! 米ドル/円の上昇スピードが抑えられるとはいえ、あくまで強気構造下にあるから、ミセス・ワタナベの逆張りは、総じてうまくいかない公算が高いかと思う。
 しかし、前述の筆者の考え方が正しければ、米ドル/円における逆張りのポジションが大損しないうちに解消できるチャンスとも言えるから、逆張り派はそのチャンスを逃すべきではなかろう。
 最後に、今晩(7月2日)の米雇用統計で市況の一波乱があってもおかしくないが、米ドル全面高の構造が確認されている以上、米ドルの押し目買いか、米ドルの上値追いかの二択しかないと思う。市況はいかに。
 (執筆時刻 13:00)

参照元:ザイFX! 陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

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