米ドル/円は、109.86円の打診を有力視! FOMC後の値動きが米ドルの底堅さを証明

■FOMC後の米ドル売りは長く続かなかった FOMC(米連邦公開市場委員会)通過後、米ドル全体がいったん売られたものの、長くは続かなかった。昨日(3月18日)また買われ、FOMCのハト派声明を受けた下落分を、ほぼ取り戻している。
ドルインデックス 4時間足(出所:TradingView)
 米長期金利の上昇傾向が続き、足元の米10年物国債利回りは1.714%に乗せている。ナスダックや、原油など商品の下落もあって、米ドル売りの地合いではないことが明らかだ。
 とはいえ、株式市場と米ドル全体のパフォーマンスは、2021年年初から連動性(株高・米ドル安といった逆相関)が薄まってきていたから、株式市場の動向をもって米ドル全体云々を語るつもりはない。
 米ドル全体の切り返しが続く見通しについては、既述のように、株価がどうであれ米ドルの底固さが証明されれば、一段と切り返しの余地を拡大する公算が高い。
 なにしろ、2021年年初までの下落は、大分進行してきていた上に、値幅も相当大きかったから、それに対する修正も足元の程度に留まらないはずだと思う。
ドルインデックス 週足(出所:TradingView) 
■ドルインデックスは2020年9月高値への戻りを図るだろう 米ドル全体の底打ちは、ドルインデックスで測れば一目瞭然であろう。昨年(2020年)のコロナショック時から大きく下落してきたが、2021年年初来安値トライから一転して切り返してきた。「1-2-3の法則」をもって、同底打ちが「ホンモノ」である可能性を明らかにできる。
ドルインデックス 日足(出所:TradingView) 
 「1-2-3の法則」は非常にシンプルな見方だが、トレンドの転換を捉える有効な手法として重宝され、実戦に役に立つことが多い。
 すなわち、3つの条件が揃えばトレンド転換として認められ、米ドル安の流れがすでに修正されたと言える。
 その条件とは、上のチャートに示したように以下の3点である。
1、メインレジスタンスラインのブレイク
2、ブレイク後の反落が安値の再更新を回避すること
3、切り返す途中の高値を再更新していくこと
 これがすべて達成された以上、しばらく上昇波の継続を有力視できるわけだ。
 この意味では、FOMCの試練自体もそのことを証明する材料で、米ドルの反落が一時に留まり、切り返してきたこと自体、米ドル高の継続を示唆する値動きと言える。よって、また高値更新を図り、時間がかかっても、2020年9月高値94.22への戻りを試すだろう。
ドルインデックス 日足(出所:TradingView) 
■主要クロス円の上昇トレンドも維持される公算大 米ドル高の基調が続けば、米ドル/円もしばらく堅調な値動きを保つ。このことがユーロ/円など主要クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)においては、外貨安がもたらす円高圧力を和らげることになり、主要クロス円の上昇トレンドも維持される公算だ。
世界の通貨VS円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
 もっとも、円は主要通貨のうち、一番弱い存在であったことは2021年年初からの指摘のとおりで、実際、米ドル/円の上昇幅もドルインデックスより大きかった。
 したがって、2021年年初来、米ドル/円のパフォーマンスは、株式市場のパフォーマンより米長期金利上昇との連動性が高かったと言える。
 米長期金利の上昇傾向が続く限り、株式市場の波乱があっても、当面、米ドル/円の上昇傾向は変わらないだろう。
米ドル/円(ローソク足)VS米長期金利(ライン) 日足 
(出所:TradingView) 
■米10年物国債利回りが2%を超えたら注意! ただし、米10年物国債利回りが、節目とされる2%を超えたら要注意だと思う。
 なにしろ、2%を超える長期金利の上昇があれば、FRBのコントロール能力が大きく疑問視され、株式市場に大きな圧力を落とす事態になりかねない。この場合は、米ドル/円の頭が抑えられ、また一時にせよ、いったん反落してくる市況も想定される。
 その上、主要クロス円において一時の反落があってもおかしくないから、節目を超えた米長期金利の上昇は、逆に米ドルにとってマイナス要素になる可能性がある。
 逆に言えば、2%を超えない程度の米長期金利の上昇は、ナスダックなどハイテク、グロース株を中心として市場の圧力になる可能性は見られるものの、株式市場全体を押し下げるほどの要素ではない(実際、昨日(3月18日)NYダウは、また一時高値更新していた)から、米ドルの優位性は、なお保たれる。
 そして、円とユーロが、米ドル高の受け皿として売られる構造も維持されるから、米ドル全体の切り返しの終焉、といった性急な判断は、なお杞憂であろう。
 米ドル/円の、2020年6月高値109.86円の打診やブレイクを有力視したい。同節目が突破されるまで、安易な頭打ちはなかろう。
米ドル/円 日足 
(出所:TradingView) 
■英ポンド/円は、2018年高値の156.65円へ さらに、主要外貨のうち、ユーロは米ドル高の受け皿として反落波の構造が鮮明になったが、英ポンドや豪ドルの方は、まだまだ強気変動を保っている。それぞれ、対ユーロでの堅調さもあって、米ドル全体の切り返しが継続しても、比較的、堅調な値動きを保てるだろう。
 特に対円の場合、英ポンド/円、豪ドル/円におけるスピード調整の余地は否定できないものの、メイントレンドとしての上昇波はしばらく維持され、また、上値余地は、なお大きいかと見る。
 英ポンド/円は2020年11月から、ほぼ一直線に急騰し、昨年(2020年)12月半ばから連続13週の陽線引けを達成したから、一見すれば買われすぎのように見える。
 しかし、2018年9月高値も更新し、また、それ以上をキープしているだけに、週足における大型「ソーサーボトム」、あるいは「複合型三尊底」といったフォーメーションの存在を強く証明している。
 紆余曲折があっても、2018年高値の156.65円への「全値戻し」を果たすだろう。
英ポンド/円 週足(出所:TradingView) 
 メインスタンスとして、再度、押し目があれば、やはり拾う好機と見なすべきだと思う。
■豪ドル/円は、2017年9月高値90.42円を超えるか 豪ドル/円も、同様である。コロナショック時安値から急騰して大型V字型反騰を果たし、また、昨年(2020年)11月安値から、ほぼ一本調子な上昇を果たしているだけに、過熱感は否めない。
 しかし、それをもって豪ドル/円の頭打ちを予測できない。
 週足で示しているように、2020年3月安値を「ヘッド」と見なした場合、大型「ヘッド&ショルダーズ・ボトム」(三尊底)というフォーメーション(ネックラインの規定によって二種が存在。赤と緑で表示)の存在が確認され、その指示値を形成すればわかるように、2017年9月高値90.42円を超えてもおかしくない。よって、まだまだ道半ばと言える。
豪ドル/円 週足(出所:TradingView) 
 ゆえに、米ドル/円の上昇波は当面維持され、円とユーロが最弱の外貨として、しばらく存在し続けるだろう。日銀政策見直しが、本日(3月19日)行われているが(執筆時点では、内容未発表)、円買いの材料ではなく円売りの材料として解釈され、また、利用されやすいだろう。
 なぜなら、材料というものは常にトレンドの後を追う形で解釈されがちなので、円安が「ホンモノ」なら、今回も然り。市況はいかに。

参照元:ザイFX! 陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

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