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2026年4月1日、TOPPANグループはTOPPANエッジ株式会社およびTOPPANデジタル株式会社をTOPPAN株式会社へ統合するグループ内組織再編を実施した。
もともとTOPPANグループ傘下の各社では、それぞれがDID(分散型ID)/VC(検証可能な証明書)に関する研究やサービス提供を行っていた。一例として、TOPPANエッジでは法人デジタル証明書に関する事業を展開する一方で、TOPPANデジタルではメタバースにおけるアバター管理のための基盤が提供されていた。
このような各社におけるDID/VCの運用体制は、今回のグループ再編によりどのように変化したのか。
本記事では、グループ再編に伴う組織体制の変化や、DID/VCの事業化に向けた最新の取り組みについて、藤原康寛氏をはじめとする担当者の方々に取材を行った。
【プロフィール】
藤原康寛
情報ソリューションビジネスユニット ビジネスイノベーションセンター
TrustedWebビジネス開発部所属 DID/VC関連(ビジネス)担当
【プロフィール】
田村友克
情報ソリューションビジネスユニット ビジネスイノベーションセンター センター長
【プロフィール】
江口弘人
情報ソリューションビジネスユニット ビジネスイノベーションセンター
TrustedWeb技術開発部所属 DID/VC関連(技術)担当
【プロフィール】
林智貴
情報ソリューションビジネスユニット ビジネスイノベーションセンター
TrustedWeb技術開発部所属 AVATECTⓇ/AI×コンテンツ関連(技術)担当
グループ再編と組織体制の変化──分散から集約へ
NFTMedia編集部(以下、編集部):2026年4月1日のグループ再編によって、TOPPANエッジとTOPPANデジタルが一つの組織になりました。
これにより、どのような変化が起こりましたか。
藤原康寛(以下、藤原):グループ再編に伴って、これまで各社で似通った取り組みをしていた組織がひとつに集約された形です。
かねてよりグループ間での連携はしていたものの、これまではTOPPANエッジやTOPPANデジタルがそれぞれ独立してDID/VCのサービスを開発していました。しかし今では、ひとつの組織としてプロジェクトに取り組めています。まだ移行期間の途上ではありますが、今後もさらに一体化が進んでいく計画です。
編集部:なるほど。まさに今、新体制に移行しつつある状況なのですね。みなさんの勤務先も変わったのでしょうか。
藤原:一部のメンバーは勤務地に変更がありました。今では各地の拠点に分散していたメンバーが集結し、同じ拠点で働いており、同じプロジェクトに取り組める体制となっています。
ビジネスイノベーションセンターでのDID/VC開発
編集部:グループ再編を経た結果、ブロックチェーンやDIDといった技術領域はどの部署が担当しているのでしょうか。
藤原:事業開発という観点で言うと、ビジネスイノベーションセンターという部署の担当です。サービス単位で見ると個別の部署で対応している案件もありますが、Web3という文脈で横断的に取り組んでいるのはビジネスイノベーションセンターとなりますね。
編集部:ブロックチェーンやDID関連は、ビジネスイノベーションセンターがまとめて統括されているのですね。組織再編から1か月ほど経過しました。働き方はこれまでと変わりましたか。
田村友克(以下、田村):大きく変わったメンバーもいれば、そうではない人もいます。
例えば、ビジネスイノベーションセンターの場合、ミッションとしては事業開発になりますが、昨年度まで研究開発の部署に所属していたメンバーがビジネスイノベーションセンターに異動になり、仕事への向き合い方が変わった人もいれば、これまでの役割に引き続き取り組んでいる人もいますね。
事業部ごとの方針等によって左右される部分も多く、人によってかなり状況が異なっています。
デジタル証明書とDIDの取り組み
編集部:DID/VC領域のお取り組みに関して、近況を教えてください。
藤原:デジタル証明書の文脈にはなりますが、2025年9月にvLEI(※1)発行機関の候補として国際組織であるGLEIF(※2)から日本における第1号の認定を受けました。
※1 vLEI・・・グローバルに活用できる偽造や改ざんができない企業のデジタル身分証明書。
※2 GLEIF(Global Legal Entity Identifier Foundation)・・・検証可能なLEI(vLEI)の導入を支援するために設立されたグローバルの非営利組織。

vLEIの適格発行機関(QVI)としてGLEIFから付与された認証マーク
これはグローバルでの法人番号を発行する取り組みであり、2026年7月にvLEI発行サービス「vLEI-Gateway
」という名称でサービスを展開しています。
編集部:「vLEI-Gateway
」では、何ができるのでしょうか。
藤原:国際的な法人デジタル証明書を発行できます。
グローバル間での法人契約や金融取引では、「相手の企業が実在しているのか」という疑問を払拭しなければなりません。このような場面で活用できるのがデジタル証明書です。
世界共通の法人IDに加えて、検証可能な資格証明(Verifiable Credentials)を組み合わせることで、契約者がその法人に属する人物であるかといった点も証明できます。
編集部:それは素晴らしいですね。DID/VCを社会へと普及させるために、どのような取り組みをされていますか。
江口弘人(以下、江口):DID/VC 共創コンソーシアムを通じて活動しています。
DID/VC 共創コンソーシアムとは、分散型ID(DID)とデジタル証明書(VC)の普及を目指し、国内8つの企業・団体が設立した団体です。
日本のビジネスシーンを想定したユースケースの検討や実証実験などの「ビジネス共創」とそのための相互運用性の実現を目指し活動しています。
編集部:このDID/VC 共創コンソーシアムにおいて、直近ではどのような活動をされていますか。
江口:コンソーシアムの「本人確認分科会」ではVCを用いて犯罪収益移転防止法に基づいた本人確認を実施するスキームを、金融庁「FinTech実証実験ハブ」として支援を受け実証実験を行い結果概要を公表いたしました。
編集部:コンソーシアムには複数の企業が参画していますよね。FinTechの実証実験に関して、TOPPANグループは具体的にどのような活動をされているのでしょうか。
江口:VCの発行基盤・検証基盤・共通基盤のベンダーとして本実証実験に参加し、相互運用性のある基盤を提供しました。国内においてはまだルールメイキングが明確に進んでいない部分もあるので、さまざまなユースケースを検証しながらルールとガバナンスを検討している段階です。
法人の真正性をDID/VCで証明する
編集部:DID/VCの領域に関して、TOPPANではGビズID(※3)のプロジェクトにも関与されていますよね。
※3 GビズID・・・デジタル庁が主導する法人向け認証システム。
藤原:はい。GビズIDについて、デジタル庁の採択案件として2025年8月29日から2026年3月31日にかけて、民間サービス利用の拡大に向けた実証実験を行いました。

外部プラットフォームとの連携やvLEIの活用、社内サービスとの連携などの机上検証に取り組みました。貿易・法人SaaS・金融サービスの分野においてヒアリング調査も行い、レポートを提出しています。
編集部:今回の実証実験を通じて、どのような結果が得られましたか。
藤原:GビズIDと各種のシステム連携によって、法人情報の信頼性を維持したまま業務効率化につながると確認できました。実証実験の中では、サービス提供事業者において最大で約3割も1件あたりの業務時間を削減できると試算されました。
編集部:3割の削減は大きな効果ですね。
AVATECTⓇが第三者による成りすましを防止
編集部:この他にもDID/VCの文脈として、メタバースにおけるアバターのなりすましを抑止する仕組みのアバター基盤「AVATECTⓇ(アバテクト)」をお持ちですよね。
AVATECTⓇに関して、直近ではどのような取り組みをされていますか。
林智貴(以下、林):AVATECTⓇは元々、アバターのアイデンティティを管理する基盤としてスタートした構想です。

」概要仕事用やプライベート用(ゲームアカウント)など、自分のアバターを管理すべき場面があります。これらの不正利用や成りすましを防止する基盤として開発してきました。
編集部:アバターを他の人に不正に使わせないためのサービスなのですね。
林:そこからリアルの街中にあるサイネージ広告、ロボット、カーシェアの認証にいたるまで、これらすべてを共通の「ID」で管理することを目指して研究開発を進めてきました。
研究ロードマップとしては、電子透かしやNFT、SBT、VC発行、eKYCとの連携を進めてきました。
編集部:今後は、AVATECTⓇがブロックチェーンなどさまざまなシステムと結びつく計画なのですね。
AIエージェント時代におけるDID/VCの役割
編集部:AIなどの技術が発達すればするほど、DID/VCの需要は増えそうですね。
林:おっしゃる通りです。2026年4月に方針をアップデートしまして、今後AIエージェントがどんどん台頭することを前提としました。
AIエージェントがデジタル空間で活動するなかで、データの真正性の保証や健全なコンテンツ流通まで見据えて、総合的に技術検証やサービス実証に取り組んでいます。
編集部:具体的にはどのような取り組みをされているのでしょうか。
林:法的な課題もクリアにしながら、自社のプライベートブロックチェーンで色々な実証を行っています。
検証中のサービス構想の一つとして、外部サービスからクリエイターのスキルデータを取得し、AVATECTⓇ上でそのデータの真正性を検証・保証するというものがあります。
編集部:客観的なスキル証明によって、作品価値の可視化を支援するわけですね。
林:はい。そのクリエイターが作ったグッズの引換券や売上債権などをトークン化することで、オンチェーンでの確実な権利移転と、売上分配の報酬確定を実現していくことを目指しています。
購入者から第三者に移転したときにも、グッズ自体を移転せずともトークン自体が移転することで確実な権利移転ができるように検証を進めています。
編集部:作品の価値を証明しつつ、オンチェーンで売上を分配できるのですね。クリエイターにとって、非常にニーズの高そうなサービスですね。実際にリリースされるのが楽しみです。
本日はDID/VCについて貴重なお話をいただきました。どうも、ありがとうございました。
インタビューを終えて
今回のTOPPAN株式会社へのインタビューを通じて、同社がグループ再編という大きな組織変革の只中にありながらも、Web3およびDID領域において非常に戦略的かつ着実に歩みを進めていることが伺えた。
また、国内におけるルールメイキングが未整備な領域も多い中、法人情報やアバターなど幅広い領域でDID/VCの活用が検討されている点も理解した。今後のさらなるユースケースの拡大と、社会実装に向けた具体的なアクションに引き続き注目していきたい。
- TOPPANホールディングス株式会社 公式サイト:https://www.holdings.toppan.com/ja/
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