最近の巧妙化するフィッシング攻撃:あなたはどこまで知っていますか?

※本記事はOneKey様による寄稿記事です。

「対策が進めば、悪党の手口もより巧妙になる」という通り、暗号資産のフィッシングは依然として横行しており、特に「EIP-7702認可攻撃(※)」の登場でハッカーはさらに大胆になっている。

※ EIP-7702認可攻撃・・・トランザクション規格「EIP-7702」の委任機能を悪用して、ユーザーの資産の制御権を乗っ取る詐欺手法を指す。

以下の事例を見てほしい。

2025年9月2日、KOLの@Tintinx2021氏は、協業の相談を持ちかけられる形で偽の会議リンクをダウンロードするよう騙されたと投稿した。

同じく9月2日、大口投資家の@KuanSun1990氏は、実際に会って知り合ったTelegram上の事業開発担当者と協議中、相手から直接送られてきた偽のZoomリンクから悪意あるファイルをダウンロードした結果、1300万ドル相当の資産を送金されてしまった。

9月8日、KOLの@dov_wo氏は、Telegramの連絡先アカウントが乗っ取られたことにより、カレンダー経由で偽のZoom会議リンクに入ってしまった。

幸い、これらのケースは迅速な対応により大きな資産損失には至らなかったが、ハッカーが常に手ぶらで終わるとは限らない。

9月12日、Thorchainの共同創業者@jpthor氏は、同じ偽Zoom会議リンクにより130万ドルを盗まれた。

「盗まれた知人アカウント+フィッシング会議リンク」という組み合わせは長年使われ続けており、今も有効だ。ならば、さらに巧妙で新しい手口がどれほど蔓延しているかは想像に難くない。

2025年8月5日、あるアドレスがEIP-7702にアップグレードした上で偽のUniswapを利用したことで6万6千ドルを盗まれた。
8月22日、ある大口投資家が同じ理由で100万ドルを盗まれた。
8月24日(わずか2日後)、別の投資家がEIP-7702型のフィッシングトランザクションに署名したことで154万ドルを盗まれた。

これらは、たった1か月分で発生した事件にすぎない。

セキュリティ企業Scam Sniffer(@realScamSniffer)の報告によると、2025年8月には合計15,230人の被害者が発生し、被害総額は1,200万ドルに達し、7月比で60%以上増加した。

EIP-7702規格に関連する事件はますます頻発している。多くの人がこの手法に馴染みはないが、このデータは、この新しい攻撃手段に対して特に警戒すべきことを警告している。

EIP-7702とは何か?

EIP-7702とは、アカウントアドレスのコード領域の一部に「プロキシポインタ(委任先の指定)」を書き込める、新しいトランザクションタイプだ。この設定を行うと、以後そのアドレス宛てに実行されるトランザクションは、指定したコントラクトのコードへと転送されるようになる。

設定は、プロキシポインタを新たな認可で上書きするか、あるいは解除するまで有効に保たれる。

その狙いは、ユーザーのトランザクション体験を次の3点で改善することにある。

  • トランザクション処理の簡素化:通常なら2〜3件に分ける必要があるオンチェーン操作を1件のトランザクションにまとめ、「すべて成功」か「すべて失敗」のどちらかに揃える。
  • ガス代の肩代わり:ガス代を第三者が負担し、ユーザーは署名するだけでよい。ウォレットにETHがなくてもトランザクションを完了できる。
  • 権限の絞り込み:プロキシコントラクトにサブキーを渡し、「特定のトークン・特定の金額・特定のアプリケーション」に限定した権限だけを与える。たとえば、特定のERC-20トークンは使えるがETHには手を出せない、といった制御が可能になる。

EIP-7702はなぜ危険なのか?

EIP-7702の本来の意図はより良いユーザー体験の提供だが、よく考えてみれば、無制限にさまざまな操作を行う権利を持つ「悪意あるコントラクトアドレス」に「トランザクション実行権」を引き渡してしまえば、あなたの資産はもはやあなたのものではなくなる。

2025年5月の時点で、Wintermuteの調査により、EIP-7702関連の認可の97%以上が悪意あるコントラクトに関連していることが明らかになっている。

被害に遭う経路は非常に直接的だ。

・ユーザーがフィッシングサイトに入り、見覚えのないトランザクションに署名してしまう。これが実はEIP-7702型のトランザクションであり、ハッカーが設計した対象コントラクトアドレスにアドレスの権限を認可してしまうケース。

・あるいは、秘密鍵が漏洩している場合。攻撃者は秘密鍵を盗み、悪意あるEIP-7702認可タプルを使って被害者のEOA(外部所有アカウント)を「sweeper bot(※)」コントラクトに委任させ、被害者のウォレットが新たな資産を受け取ると同時に即座に送金してしまう。

※ sweeper bot・・・流出したウォレットを24時間監視し、資産が入金された瞬時にハッカーのアドレスへ自動送金するボット

ユーザーはどう身を守ればよいか?

・常に署名内容を注意深く確認し、理解できないトランザクションには署名しないこと。さらに重要なのは、ウェブサイトのURLとSSL証明書を注意深く確認し、SNSのダイレクトメッセージや見知らぬメールのリンクをクリックしないこと。

・定期的に認可状況を確認すること。例えばRabbyウォレットの権限管理機能では、アカウントがEIP-7702の認可を行ったかどうかを明確に表示できる。

・EIP-7702型のアップグレードを行わないこと。ウォレットやアプリケーションはユーザー体験向上のためアップグレードオプションを提供しているが、緊急の必要がない限り、この機能は有効にしないほうがよい。

・EIP-7702トランザクションを認可する際は、委任先のコントラクトアドレスを必ず確認し、十分に監査され、テストされ、広く信頼されているプロトコルであることを確かめること。

まとめ

ハッカーが新しい手口を使おうと、古典的な手口を使おうと、あなたの資産の安全性を真に決定するのは、秘密鍵が高リスクな環境に晒されているかどうかである。

秘密鍵が安全である場合(例:ハードウェアウォレットを使用している場合):

・誤ってハッカーのフィッシング会議リンクをクリックしてしまっても、ハッカーはあなたのコンピュータ上で秘密鍵を見つけられないため、資産が即座に送金されることはない。

・秘密鍵をあなただけが知っている状態(ハードウェアウォレットが手元にある状態)であれば、ハッカーはあなたのアドレスに対してEIP-7702を認可することはできない。

最後に一言:OneKeyのハードウェアウォレットはEIP-7702トランザクションの解析にも対応しており、不審なサイトをクリックした際に、潜んでいる悪意ある認可がハードウェアウォレット上で明確に表示されるため、ユーザーは容易にそれを識別しブロックできる。

攻撃の手口は変わっても、境界線は変わらない。秘密鍵はハードウェアに保管し、意思決定の権限は自分自身の手に留めるべきだ。

執筆者プロフィール

Jonas of OneKey
暗号資産向けハードウェアウォレットブランド「OneKey」に所属。
OneKeyは、ブロックチェーンセキュリティ領域を強みとするハードウェアウォレットブランドで、世界100万人以上のユーザーに支持されています。

・URL:https://onekey.so/ja/
・SNS:https://x.com/OneKeyHQ

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