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LEGENDARY HUMANITYは、高精細な3D化とバーチャルミュージアムの構築を手がけるプロジェクトだ。
360度3Dカメラやドローンなどの最先端技術を駆使し、アートやファッション領域において文化資産のデジタル保存と体験提供を行っている。
このLEGENDARY HUMANITYが、2026年5月21日に「VIVI COiNで宿泊・購入できるRWA NFTモデル」を発表した。日本における名建築の所有権や滞在権・アクティビティ権をNFT化し、世界市場へ展開するという。
「NFT×不動産」のプロジェクトはほかにも存在するが、なぜメタバース空間を得意とするLEGENDARY HUMANITYがこの領域に参入するのか。
本記事では、不動産のNFT化に参入した背景や既存の不動産NFTプロジェクトとの差別化について、代表取締役である鈴木孝昌氏にお話を伺った 。
【プロフィール】
鈴木 孝昌(すずき たかまさ)
LEGENDARY HUMANITY PTE. LTD. 代表取締役。
シンガポール、インドネシア、日本を拠点に活動。『ひとの創りしモノを未来に繋ぐ』をコンセプトにあらゆる3Dモデル化の技術を自社開発している。
LEGENDARY HUMANITYの活動内容──3D技術を用いた文化資産の保存
NFTMedia編集部(以下、編集部):本日はお時間をいただき、ありがとうございます。
2025年のWebX会場でご挨拶させていただいて以来ですね。鈴木さんは現在もシンガポールを拠点に活動されているのでしょうか。
鈴木孝昌(以下、鈴木):はい。現在はシンガポール、インドネシア、日本の3拠点で活動しています。
各地域にクライアントがいらっしゃるので、大体3分の1ずつ各地を回っているようなイメージですね。
編集部:かなりグローバルに活動されているのですね。それでは、まずLEGENDARY HUMANITYの直近のお取り組みを伺います。
NFTMediaでは、株式会社Apas Portのプロジェクト「MAGO Moon Museum」を取材したことがあります。
【構想2年】現代アーティスト長坂真護のデジタル美術館「MAGO Moon Museum」とは
この「MAGO Moon Museum」の作品も、LEGENDARY HUMANITYで3D化されていますよね。
鈴木:はい。バーチャルミュージアムを含めて、我々が作品の3D化をさせていただいています。
LEGENDARY HUMANITYでは360度の3Dカメラシステムを保有しているため、Milly and Friends(※)のように廃材やプラスチックを用いた立体的でデコボコしたアート作品との相性が非常に良いのです。

※ Milly and Friends・・・美術家・長坂真護が監修を行い、Apas Portと共同プロデュースした全2,000点から成る一点物のキャラクターPFPアートコレクション。廃材を活用した作品のため、立体感がある。
編集部:LEGENDARY HUMANITYによって、凹凸のある作品がきれいに再現できますよね。
鈴木:おっしゃる通り、LEGENDARY HUMANITYは3Dで表現したい作品に適しています。
このような理由から他に取り組んでいるのが、盆栽に関するプロジェクトです。盆栽は見る角度によって姿が変わりますし、海外の人にも人気があります。
しかし植物検疫の制限があるため、日本から海外へはなかなか輸出できません。そこで盆栽を3D化して、海外の人に届けるアプローチを展開しています。
編集部:アートに限らず、幅広いものを3D化できるのですね。
鈴木:はい。さらに最近では、ファッション領域にも力を入れています。
きっかけとなったのは、アメリカで開催される日本のポップカルチャーイベント「LA Comic Con(LAコミコン)」です。
「LA Comic Conに訪れるコスプレイヤーを3Dで撮影して記録を残してほしい」との依頼を受けて現地に招待されました。コスプレのように、時代によってデザインの好みが移り変わっていくものも、文化的な側面から残していきたいと考えています。
名建築を次世代へ──3Dデータで後世に残す
編集部:2026年5月21日のプレスリリースでは、ViViコインを用いたRWA×NFTモデルの「別荘」について発表(※)されました。このプロジェクトは、どのような経緯で発足したのでしょうか。
※ プレスリリース MEXC上場のVIVI COiNで宿泊・購入できるRWA NFTモデルを発表
鈴木:構想を思いついたのは今から3年ほど前の2023年頃です。背景には、建築基準法などの問題で日本の古い建物や名建築がどんどん壊されているという危機感がありました。
具体例の一つとして、銀座にあった名建築の「中銀カプセルタワー」が挙げられます。この建物も銀座の象徴として君臨していましたが、解体されて一部の部屋しか残せないという結果でした。
そういった昔の名建築や作品が失われていく中で、何とか3D化してメタバース上に残し、中に入って見られるようにできないかというのが最初のコンセプトです。
編集部:中銀カプセルタワーも、最終的にはいくつかのカプセルを各地に展示するのみとなってしまいましたからね。このような建物を3Dで残すというのは素晴らしい取り組みだと思います。
しかし、ビルのような大きな建物をどのようにして3Dスキャンするのでしょうか。
鈴木:ドローンカメラを活用します。
ここ1〜2年で、建物全体を残すドローンの技術が非常に安定してきました。カメラの解像度も向上し、今ではドローンの画像データだけで建物を3D化できるようになっています。
つまり、どのような角度で何を撮ったかが、すべてデータとして残っているのです。
このように建物を3D化して残すことは可能になりましたが、やはりユーザーとしては「その空間に入りたい」、「そこに住みたい」という欲求が出てくるはずです。そこで、1階建てや2階建て程度の小規模な建物であれば、我々がリノベーションして別荘として提供できるのではないかと考え、今回のプロジェクトに至りました。
メタバースによる没入体験──季節や環境音も再現
編集部:先ほどのお話では、日本の名建築を3Dデータで保管するとのことでした。このデータは、どのように活用されるのでしょうか。
鈴木:メタバース空間に配置し、遠方に住む方に建物の雰囲気を味わってもらいます。
今回のビジネスモデルでは、日本の名建築における所有権や滞在権、アクティビティ権をNFT化して世界市場へ販売します。
編集部:名建築に関連する権利がNFTとして取引されるのですね。
鈴木:そうです。そして、NFT購入者は海外にいながらにして事前にメタバース空間の中に入って名建築を体験できるのです。
出発前にメタバース空間で名建築に対する期待感を高めた後に、NFTを利用して実際の別荘に住んでもらおうというのが今回のコンセプトです。
そのため、単に建物を3D化するだけでなく、車の音などの環境音を付けて車に乗っている雰囲気を演出するなど、「そこに暮らしている」という空気感を3Dで表現したいと考えています。
編集部:雰囲気を事前に感じられるのは大きな魅力ですね。
鈴木:また、別荘の良さは「四季」があることです。
例えば「冬の別荘はどうなっているんだろう?」という想像力を掻き立てるために、メタバース上で「冬はこういう雪景色が見られますよ」という疑似体験を提供できます。
これにより、何度も足を運びたくなるような来訪意欲とリピート率向上を狙うマーケティングに繋げています。
他プロジェクトとの差別化──既存の文化資産保存とアクティビティ権
編集部:今後のテーマとして「日本の名建築」が挙げられていますが、伝統的な日本家屋がターゲットになってくるのでしょうか。
鈴木:そうですね。
実は著名な建築家が手掛けた別荘は日本各地に存在するのですが、相続の際に「親は建てたけれど、子供は相続したくない」といった問題が発生しているようです。
そういった維持が困難な物件を我々がリノベーションしたり、場所を移設・買い取りしたりするスキームがうまく構築できればと考えています。名建築を残しつつ、日本の良さを伝えていくのがプロジェクトの目的です。
編集部:不動産の所有権・宿泊券をNFT化して取引するプロジェクトは他にも見受けられます。そのようなプロジェクトと、どのように差別化されているのでしょうか。
鈴木:よく「国内類似サービスとどう差別化するのか?」と聞かれるのですが、他社の類似サービスは施設を新設して所有権をNFT化して分配するモデルです。
これに対して我々は、既存の文化資産の保存がベースにあります。さらに差別化の核として「アクティビティ権」を設定しており、別荘に行くまでの移動手段を含めた体験を包括的に提供しています。
このほかにも、我々の一番のお客様は博物館や美術館だったこともあり、「レジェンダリーな文化的資産を残す」という点に主軸を置いているのが、他のプロジェクトとの大きな違いです。
グローバル展開と市場からの反響──美術館からの問い合わせとインバウンド需要
編集部:LEGENDARY HUMANITYの世界展開について、シンガポールを拠点として進められるのでしょうか。
鈴木:はい。シンガポールを拠点として、日本の技術を使って世界中のお客様と取引をしています。海外からの案件相談やコラボレーションにも前向きに取り組んでいるところですね。
編集部:どのようなクライアントからお問い合わせをいただくことが多いですか。
鈴木:日本向けのインバウンド需要が高まったことで、海外の美術館からお問い合わせをいただくことが多いです。
例えば、「東京都には複数の美術館があるのに、一度の滞在では一つしか回れなかった。他の館内がどうなっているのかバーチャルで見せたい」といったご相談を受けます。
このようなご相談から、日本の美術館にある作品を3D化するニーズが生まれようとしています。また最近では中東情勢の悪化により現地への訪問が難しい国もあるため、そういった場所でのバーチャル需要に応えている状況です。
編集部:美術品は世界各地にあるため、大きなビジネスチャンスになりそうですね。
メタバース市場の現状と課題──AIによるGPU不足と電力問題
編集部:現在のプロジェクトを進める上で、直面している課題はありますか。
鈴木:メタバース業界が低調な点です。
我々としては、メタバース市場がもっと盛り上がってくれれば良かったと感じています。しかし、コロナ禍で皆さんが在宅で過ごしていた期間には一時的に需要が高まったものの、収束した現在はニーズが一服し、企業もメタバースから撤退する動きを見せています。
編集部:業界の時流的な影響を受けているのですね。
メガネ型デバイスの進化などの革新的な技術によって、再びメタバースの波が来る可能性はありますでしょうか。
鈴木:オンラインゲーム自体は盛り上がっているので何かしらのきっかけがあれば良いのですが、技術的な制約が大きいです。
例えば、高解像度のメタバースを描画するにはGPUリソースが不可欠なのですが、それも現在はAIの処理に流れているという状況があります。
さらに、電力消費やエネルギー制約の問題もあり、省電力化できる仕組みがない限り、クライアント環境(PCやスマホ)のネットワーク帯域や描画性能に強く依存するメタバースの普及には逆風が吹いていると感じます。
編集部:業界の動向としては耐える期間が続いているのですね。
今後の展望とマイルストーン──夏に向けた大規模イベントの構想
編集部:最後に、今後の具体的な展開を教えてください。
鈴木:オペレーション上、撮影や実地体験のイベントは梅雨の時期を避けたいという季節依存の制約があります。
そのため、今年の夏(梅雨明け以降)を目処に、大々的なプレスリリースの発表や、メディアの方々を実際にご招待するイベントを計画中です。
鈴木:ほかにも、実地体験を通して、我々のアクティビティや輸送モデルを含めたサービスの理解促進と、他プロジェクトとの差別化をしっかりと訴求できればと考えています。具体的な日程や内容は現在調整中ですので、ぜひご期待ください。
編集部:夏のイベントや今後の展開を楽しみにしております。本日は貴重なお話をありがとうございました。
インタビューを終えて
メタバースやWeb3の技術が一時的なブームを越え、実社会での明確なユースケースを求められている中、LEGENDARY HUMANITYの「既存の文化資産をデジタル技術で保存・活用する」というアプローチは極めて理にかなっていると感じた。
特に、建物の寿命や相続問題で取り壊される運命にある名建築を、単に記録するだけでなく「滞在・アクティビティ権」として再構築する仕組みは、不動産NFTの新たな可能性を示している。
また、インタビューを通じて、メタバース市場が抱える「GPUリソースのAIへの偏在」や「省電力化の壁」といった、現場ならではのリアルな課題も浮き彫りになった。技術の進化とインフラの制約がせめぎ合う中で、いかに現実の価値と紐づけて持続可能なビジネスモデルを築くかが今後の鍵となるだろう。
今年の夏に予定されているという、実地体験を伴う大規模なプレス発表がどのようなものになるのか。日本の伝統と技術を世界へ発信する同プロジェクトの次なる一手に、引き続き注目していきたい。
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