
AI時代における価値判断と市場の役割を再定義
イーサリアム(Ethereum)共同創設者のヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏が、トークン主導ではない(非トークン型DAOを起点とする)クリエイターエコノミーを巡る新たな設計思想を2月1日に自身のXアカウントで示した。
ブテリン氏が提示した構想の特徴は、トークンベースではないクリエイターDAOと、予測(prediction market)的な仕組みを段階的に組み合わせる点にある。
同氏は、AIによって低コストで大量のコンテンツ生成が可能になった現状において、コンテンツエコノミーを成立させる条件は「生成量」ではなく「質の高いコンテンツをいかに選別するか」に移りつつあると指摘する。
その成功事例として同氏が挙げたのが、ニュースレター配信サービス「サブスタック(Substack)」だ。サブスタックは、単純な月額課金モデルを採用している一方で、運営側が初期段階からクリエイターの選定や環境設計に深く関与してきた点が、質の高いエコシステム形成につながったとされる。
これに対し、過去のクリエイターコインやトークン主導型プロジェクトでは、知名度の高い人物がランキング上位を占めやすく、コンテンツの質と経済的評価が必ずしも一致しない構造が生じていたとブテリン氏は指摘している。
こうした課題を踏まえ、同氏が提案したのが、トークンベースではない「クリエイターDAO」を起点とする設計だ。このDAOでは実績あるクリエイター同士が集い、匿名投票によって新しいメンバーの参加や退出を判断し、一定の規模に達した場合は分割するなど、組織としての意思と一体感を維持することが想定されている。また、対象とする分野や思想、表現形式をあえて限定することで、特定の作風・価値観に寄せた(opinionatedな)集団を形成することが重要だとされる。
その次の段階で「予測市場」の役割が導入される。ヴィタリック氏の構想では、このDAOにおいてトークンや市場はコンテンツやクリエイターの価値を決定する主体ではない。誰が価値あるクリエイターかを最終的に判断するのはあくまでDAO参加者であり、市場参加者はその判断を予測する立場に置かれる。
具体的には、クリエイターは誰でもトークン(クリエイターコイン)を発行できる。そして、DAOに参加が認められた場合には、(クリエイターが)DAOから得る収益の一部が用いられ、当該トークンがバーンされることで、価値形成がDAOの判断に連動する。一方、投機家や市場参加者は、「どのクリエイターがDAOに選ばれるか」を予測することで利益機会を得る可能性があるという仕組みだ。
この設計により、市場は価値判断を下す場ではなく、価値判断を補助する情報集約メカニズムとして機能する。トークンが持つ価格発見能力を活用しつつも、その力がガバナンスや評価基準を支配しないよう役割を限定している点が特徴だ。
ヴィタリック氏の一連の提案は、投機が自己参照的な「投機・アテンションゲーム」になり得るという問題意識を背景に、トークンの役割を評価の主体から切り離そうとする点に主眼があるとみられる。
この提案は、トークンを「価値を生む装置」としてではなく、「価値判断を補助する道具」として再定義しようとする試みとも言える。
How I would do creator coins
— vitalik.eth (@VitalikButerin) February 1, 2026
We’ve seen about 10 years of people trying to do content incentivization in crypto, from early-stage platforms like Bihu and Steemit, to BitClout in 2021, to Zora, to tipping features inside of decentralized social, and more. So far, I think we have…
画像:iStocks/大津賀
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参照元:ニュース – あたらしい経済


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