ペイパル、米国で銀行設立を申請。中小企業向け融資強化へ

ペイパルがユタ州認可のILC設立を計画

決済大手のペイパル(PayPal)が、ユタ州金融機関局および米連邦預金保険公社(FDIC)に対し、「ペイパル・バンク(PayPal Bank)」の設立申請を提出したと12月15日に発表した。

同社が設立を計画しているのは、ユタ州認可のインダストリアル・ローン・カンパニー(Industrial Loan Company:ILC)だ。ILCは、米国の一部州で認可される銀行形態で、預金の受け入れや融資業務を行える一方、一定の要件下で親会社が銀行持株会社規制(BHCA)の枠外となり得る点が特徴とされている。ペイパルはこれにより米国内の中小企業向け融資をより効率的に提供できるようになるとしている。

ペイパルによると、同社は2013年以降世界で42万以上の事業者に対し、累計300億ドル(約4兆6,600億円)超の融資や運転資金を提供してきたという。今回の銀行設立により、第三者金融機関への依存を減らし自社による融資提供体制を強化する狙いがあるとのことだ。

また、ペイパル・バンクは中小企業向け融資に加え、利息付きの預金口座の提供も想定している。さらに、既存の銀行パートナーとの関係を補完する形で、米国内でカードネットワークへの直接加盟も検討しているという。

申請が承認された場合、ペイパル・バンクの顧客預金はFDICによる預金保険の対象となる見込みだ。同行の社長には、金融サービス分野で25年以上の経験を持つマーラ・マクニール(Mara McNeill)氏が就任予定とされている。同氏は、トヨタ・ファイナンシャル・セービングス・バンクのCEOを務めた経歴を持つ。

ペイパルは近年、暗号資産(仮想通貨)やステーブルコインを既存の決済・清算フローに組み込む取り組みを段階的に進めてきた。2023年には米ドル建てステーブルコイン「PYUSD」を発行し、決済や清算での活用を拡大している。

今年7月には、暗号資産決済機能「ペイ・ウィズ・クリプト(Pay with Crypto)」の提供予定を発表した。同機能では、消費者が利用した暗号資産が決済時に自動的に法定通貨、またはPYUSDへ変換される仕組みとなっており、加盟店は価格変動リスクを負うことなく売上を受け取れると説明されている。

また9月には、ピアツーピア決済向けの支払いリンク作成機能「ペイパル・リンク(PayPal link)」の提供を開始した。今後、同機能には暗号資産の直接統合が予定されており、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)、PYUSDを、ペイパルやベンモ(Venmo)、暗号資産対応ウォレットへ送金できるようになる見込みだという。

さらに12月には、動画投稿プラットフォーム「ユーチューブ(YouTube)」のクリエイターが受け取る報酬の支払い手段として、PYUSDを選択できるようになったことが報じられている。現時点では、対象は米国のクリエイターに限定されているという。

今回の銀行設立申請に関する発表では、暗号資産事業についての直接的な言及は行われていない。一方で、融資、預金、決済といった金融インフラを自社で一体的に管理する体制を整えることで、同社が進めてきたデジタル資産関連の取り組みを支える基盤となる可能性もある。

参考:ペイパル
画像:Reuters

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参照元:ニュース – あたらしい経済

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