
2026年に向けた仮想通貨の中核テーマ
米ベンチャーキャピタル大手a16z(アンドリーセン・ホロウィッツ)は、最新の年次レポート「2026年の仮想通貨に期待する17のこと」を公表しました。
同レポートは、2026年に向けて、仮想通貨(暗号資産)が「金融・AI(人工知能)・プライバシー」分野で重要な変化をもたらすとの見通しを示しています。
具体的には、法定通貨に価値を連動させたステーブルコインの決済活用拡大や、ブロックチェーン上での金融取引(オンチェーン金融)の進展に加え、AI駆動型エージェントの普及やプライバシー重視のブロックチェーン技術を重要なトレンドとして挙げています。
a16zは、これらの要素を通じて、仮想通貨技術が既存の金融システムや経済活動の中で重要性を高めていくとしています。
トム・リー氏「最高の年はこれから」
a16zが示す2026年の仮想通貨インフラ転換点と新基盤
実用フェーズに入ったステーブルコイン決済
レポートによると、ステーブルコインの年間取引額は直近で推定46兆ドル(約7,100兆円)に達し、決済大手PayPalの取扱高の20倍、Visaの約3倍に相当する規模となっています。
ステーブルコインはインターネット上で瞬時かつ低コストの送金が可能で、国境を越えたリアルタイム決済など新たなユースケースを生み出しています。
こうした特性を背景に、オン/オフランプ(法定通貨と仮想通貨の交換)の整備が進めば「国境を越えた賃金支払いや銀行口座を持たない商店でのデジタルドル受け入れが可能になる」とa16zは指摘しています。
トークン化が変える株式・コモディティ市場
決済領域に加え、株式やコモディティなどRWA(現実資産のトークン化)分野にも業界の高い関心が寄せられています。
レポートでは、単に既存資産をデジタル証券化するだけでなく、パーペチュアル先物など仮想通貨ネイティブな手法で流動性を高めることや、融資を最初からオンチェーンで発行する仕組みの必要性を提言しています。
米資産運用大手BlackRock(ブラックロック)のラリー・フィンクCEOも「次世代の市場では証券のトークン化が主流になるだろう」と述べており、こうした潮流を裏付けています。
AIエージェントが担う自律的金融取引
AIの浸透により、金融では人間ではない自律エージェント(AIプログラム)が取引を行うケースが増えているとa16zは指摘しています。
また、こうしたエージェントに対する身元確認(Know Your Agent, KYA)の枠組みや、エージェント同士が自動で価値決済できるブロックチェーン基盤の必要性にも言及しました。
同レポートは、このように決済がネットワークに自然に組み込まれることで「お金がインターネット上をパケットのように流通し、インターネット自体が金融システムになる」と分析しています。
プライバシー特化チェーンに集中する市場構造
プライバシー(秘匿性)はオンチェーン金融の実現に不可欠ながら、現行のブロックチェーンでは後回しにされてきたとa16zは指摘しています。
一方でプライバシー機能はチェーンへのロックイン効果を生み、一度匿名性のあるチェーンを利用したユーザーは離脱しにくくなるため、市場が少数のプライバシー特化チェーンに集約する可能性もあるとの見解を示しました。
なお、イーサリアム(ETH)共同創設者ヴィタリック・ブテリン氏もブロックチェーン上のプライバシー重視の重要性を訴えており、「情報を握る者が力を持つ。それゆえ情報の集中管理は避けるべきだ」と強調しています。
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既存金融に広がるブロックチェーン採用
こうした動きは既存の金融機関にも広がっています。
米大手金融機関のJPモルガンは12月、ソラナ(SOL)ブロックチェーン上で5,000万ドル(約77億円)規模の短期社債を発行し、決済にステーブルコインUSDコイン(USDC)を用いる実証取引を実施しました。
また、決済大手Visaは11月に中東・アフリカ地域でのステーブルコイン決済対応を拡大し、金融機関がブロックチェーン上で直接USDCによる送金を行える体制を整備しています。
これらの動きは、仮想通貨関連技術が実証段階を超え、既存の金融インフラに組み込まれ始めている現状を示しています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=154.60 円)
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Source:a16z年次レポート
サムネイル:AIによる生成画像






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