コインベースVC部門が示す「2026年注目の仮想通貨9分野」次世代DeFi・AI・RWAも

Coinbase Venturesが示した2026年の成長領域

2025年11月25日、米大手仮想通貨取引所Coinbase(コインベース)のベンチャー部門であるCoinbase Ventures(コインベース・ベンチャーズ)は、2026年に向けて注目する9つの仮想通貨関連分野を公表しました。

公式ブログで公開された9分野には、RWA(現実資産)のオンチェーン取引や次世代のDeFi(分散型金融)、専門特化型の取引プラットフォーム、AI(人工知能)を活用した開発ツール、予測市場、オンチェーン上でのプライバシー保護、無担保融資、分散型物理インフラ(DePIN)、人間性の証明といった領域が含まれています。

Coinbase Venturesチームは、これらの分野に属するスタートアップやプロトコルへの投資を積極的に検討しており、次の有望企業やプロトコルが生まれる可能性があるとして投資対象と位置付けています。

同ベンチャー部門は2018年以降で618件の投資実績があり、これらの重点分野は仮想通貨市場における次のブレイクスルーを見据えた投資戦略の方向性を示すものとして注目されています。

2026年版:コインベースVCが注目する仮想通貨9分野

1. RWA(現実資産)の取引

Coinbase Venturesチームは、現実世界の資産(RWA)をオンチェーンで取引する手法に注目しています。

同社のキンジ・スタイメッツ氏は「民間企業の評価額や経済指標など「あらゆるものの無期限先物化」によってエクスポージャーを提供できる」と指摘しました。

また同氏は、原油価格やインフレ率などマクロ指標に連動した先物契約をオンチェーン上で取引することで「トレーダーが従来より幅広いヘッジ手段を得られる可能性がある」と述べています。

Coinbase Venturesは、これらの技術と市場機会を踏まえ、関連スタートアップやプロトコルへの投資を検討しているとしています。

2. 次世代DeFi

DeFi(分散型金融)の領域では、異なるプロトコル同士を組み合わせて新たな資本効率を追求する「次世代型」の動きにも注目しています。

例えば、パーペチュアル型のデリバティブ取引所(DEX)と貸借プロトコルを統合し、ユーザーがレバレッジ取引の担保資産から利回りを得られる仕組みが登場しています。

パーペチュアルDEXの月間取引高は約1.4兆ドル(約218兆円)規模に達し前年比300%増と急成長しており、2026年にはヘッジしながら運用できる高度に統合されたDeFi市場が本格化する可能性が示唆されています。

3. 専門取引所

Coinbase Venturesは、特定の資産クラスや機能に特化した「専門取引所」の発展にも注目しています。

ブログでは、ソラナ(SOL)ブロックチェーン上で見られる新しいAMM(自動マーケットメイカー)のモデル「Prop-AMM(プロプライエタリAMM)」が例として挙げられています。

従来のAMMでは高度なトレーダーやボットによる高速取引で流動性提供者(LP)が不利を被るケースがありましたが、Prop-AMMではプールされた流動性に直接アクセスできるのをアグリゲーター経由に限定することで、有害なフロントランニング等からLPを保護する仕組みを導入しています。

こうしたプロトコルレベルでの市場構造の工夫により、基盤ブロックチェーンの改良を待たずに取引所の健全性を高める試みが進んでいます。

4. AI搭載開発ツール

急速に発展するAI技術をブロックチェーン開発に取り入れる動きも、Coinbase Venturesは有望な分野と位置付けています。

スマートコントラクト開発における「GitHub Copilotの瞬間」が近づいているとも言われており、Coinbase Venturesのジョナサン・キング氏は「2026年にはAIエージェントがコード自動生成からセキュリティ監査、継続的なモニタリングまで担い、非エンジニアの創業者でも数時間でオンチェーンビジネスを立ち上げられるようになる」と予測しています。

同チームは、リスク管理や開発プロセスを高度に自動化する「エージェント指向」の開発ツールが普及することで、Web3分野でのアプリケーション開発が爆発的に加速する可能性があると指摘しています。

5. 予測市場

ユーザーが将来の出来事に賭ける予測市場は、2025年にかけて一般層へ浸透した代表的なブロックチェーンアプリケーションの一つであり、Coinbase Venturesチームも注目しています。

一方、現状ではプラットフォームごとに取引画面や流動性プールが分散しており、初期のDeFiと同様に断片化が課題とされていると指摘されています。

この問題に対し、Coinbase Venturesチームは「予測市場アグリゲーター」と呼ばれるサービスが今後登場すると予想しています。

複数の予測市場にまたがる流動性を集約し、約6億ドル(約930億円)に上る分散した市場規模を一つのインターフェースで扱えるようにするもので、リアルタイムなオッズ比較や高度な注文機能、ポジション管理を備えたプロ向け取引ターミナルの提供が想定されています。

キング氏も、このような統合型の取引端末が主流になると述べ「複数の予測市場を横断して取引・裁定できる環境整備が進む」と指摘しています。

6. オンチェーンプライバシー保護

Coinbase Venturesチームは、ブロックチェーン上でプライバシーを確保する技術も重要分野として挙げています。

取引履歴が公開される特性上、機関投資家やプロトレーダーは戦略を逐一晒すことを嫌い、一般ユーザーも資産や取引の全履歴が世界中に見えてしまうことに抵抗があります。

この課題に対し、開発者コミュニティではZcash(ZEC)のようなプライバシー特化型仮想通貨や、非公開型の注文板・レンディング機能を持つDeFiアプリ、さらには決済特化のプライバシー重視ブロックチェーンなど、様々なアプローチが活発化しているといいます。

同ブログによると、ゼロ知識証明(ZKP)や完全準同型暗号(FHE)、マルチパーティ計算(MPC)など先端暗号技術や、ハードウェアによる機密計算(TEE)を活用することで、取引内容を秘匿しつつブロックチェーンの検証可能性を維持するソリューションが試みられています。

Coinbase Venturesチームは、オンチェーン上のプライバシーが確保されれば、大口投資家が安心して取引でき、一般ユーザーもプライバシー侵害の懸念なくブロックチェーンを利用できると述べています。

7. 無担保融資

Coinbase Venturesチームは、暗号資産担保ではなく信用に基づく無担保融資(信用スコア型貸付)を「DeFiにおける次の開拓分野」と位置付けています。

米国だけでもリボ払いの残高など無担保の個人向け信用枠は約1.3兆ドル(約203兆円)規模に上り、暗号資産の技術によって世界中の投資家から効率的に資金を集められれば、この巨大市場をオンチェーンに取り込める可能性があると指摘されています。

ただし、担保がない分リスク管理が難しく、スケーラブルな信用モデルの構築が課題と説明しています。

Coinbase Venturesチームは、オンチェーン上の履歴や評判データとオフチェーンの信用情報を組み合わせる革新的なプロトコルが実現すれば、従来の銀行インフラに代わる本格的な金融サービスとしてDeFiが進化する可能性があると指摘しています。

8. 分散型物理インフラ(DePIN)

AIがデジタル領域からロボットなど物理領域へ拡大する中、その学習に必要なデータ収集にもブロックチェーンの活用余地があるとCoinbase Venturesチームは言及しています。

同社のキンジ・スタイメッツ氏は「ロボティクス分野の発展には微細で膨大な物理データ(物体を掴む力加減やケーブルの曲げ伸ばしといった操作データ)の収集がボトルネックになる」と指摘しました。

この課題に対し、Helium(ヒリウム)ネットワークに代表される分散型物理インフラ(DePIN)の手法が有効になり得ると示唆されています。

具体的には、独立した個人や企業がセンサーやロボットを提供し、その稼働データをトークン報酬などのインセンティブで集めるネットワークを構築することで、高品質な物理データセットを大規模かつ低コストで収集できる可能性があるとしています。

こうしたデータ共有モデルが確立されれば、ロボット技術やAIシステムの訓練・改良スピードが飛躍的に向上すると期待されています。

9. 人間性の証明

ブログでは、昨今の生成AI(ジェネレーティブAI)の台頭にも言及しています。

インターネット上のコンテンツや活動が人間によるものかAIによるものか区別が付かなくなる時代が迫っているとした上で、この問題に対処するため「人間性の証明(Proof of Humanity)」と呼ばれる概念にCoinbase Venturesチームは着目しています。

具体的には、個人の生体情報(指紋や虹彩など)と暗号技術によるデジタル署名、さらにオープンな規格を組み合わせることで、オンライン上で「これは人間による正当な活動である」と検証可能にする仕組みです。

Coinbase Ventures責任者のフーリー・テジワニ氏は「この分野で網膜スキャンを用いた本人確認を行うワールドコイン(Worldcoin/WLD)プロジェクトが先行している」と述べており、今後複数のアプローチによるソリューション支援に意欲を示しています。

人間性の証明技術が確立されれば、AIと人間が共存する次世代のデジタル社会において、信頼性の担保と悪用防止の基盤になると期待されています。

VC資金流入で加速するRWA・AI・ブロックチェーン基盤

仮想通貨業界では、Coinbase Venturesが注目するRWAやAI、次世代DeFiなどの分野への投資と技術開発が着実に進んでいます。

他の大手VCもCoinbase Venturesと同様の注目分野に投資しており、米Paradigmは現実資産とデジタル市場を繋ぐ金融インフラ企業に約713万ドル(約11億円)のシード投資を主導しました。

同プロジェクトでは、太陽光発電所や蓄電設備など総額3億ドル規模のエネルギー資産をトークン化し、投資家に提供することを目指しています。

また、2025年第3四半期の暗号資産分野におけるVC投資額は46.5億ドル(約7,300億円)に達し、前期比で約3.9倍に急増しました。

Galaxy Digitalの調査によると、特にステーブルコイン関連事業やAI、ブロックチェーン基盤、取引インフラ分野が資金を集めており、依然として活発な投資が続いています。

この調査結果からも、仮想通貨業界では依然として活発な投資が続いており、2026年に向けてCoinbase Venturesが示した分野でも技術革新と事業拡大が加速するとみられています。

※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=156.19 円)

>>最新の仮想通貨ニュースはこちら

Source:Coinbase公式ブログ
サムネイル:Shutterstockのライセンス許諾により使用

参照元:ニュース – 仮想通貨ニュースメディア ビットタイムズ

コメント

タイトルとURLをコピーしました