【後編】「web3×エンタメ」の融合!ソニー銀行が描くNFTの未来とは?

今回お話を伺うのは、ソニー銀行株式会社の赤石智哉さんと中村一貴さんです。

前編では、NFTを簡単に扱えるアプリ「 Sony Bank CONNECT 」やweb3プロモーション課の役割について伺いました。

このような取り組みの背景には、どのような事業戦略が隠されているのでしょうか。後編ではソニー銀行が描くビジョンに焦点を当て、「MyLayer Prototypingプログラム」や新会社の設立、そしてソニー銀行が目指すweb3事業の在り方まで、さらに深く掘り下げていきます。

赤石 智哉(あかいし ともや) DX事業企画部 web3プロモーション課 課長
NTTコミュニケーションズ、Dell EMCにて、コンサルティングや販売業務に従事。その後は大学職員となり、プライベートの時間でweb3について学ぶ。そして、web3企業であるHash Paletteにて勤務し、NFTに関する新規事業に取り組む。現在ではソニー銀行株式会社において、ブロックチェーン・NFT関連のプロジェクトを推進している。

中村 一貴(なかむら かずたか)DX事業企画部 web3プロモーション課 シニアマネージャー
三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社、楽天グループ株式会社でのキャリアを歩み、その後コインチェック株式会社に参画。NFT関連の新規事業に従事する。その後、株式会社メルカリにてNFTのマーケットプレイス創設に携わる。2025年4月より、ソニー銀行株式会社でブロックチェーン施策を担当している。

小林 憲人(こばやし けんと) 株式会社NFTMedia 代表取締役
2006年より会社経営。エンジェル投資を行いながら新規事業開発を行う株式会社トレジャーコンテンツを創業。2021年にNFT Mediaを新規事業として立ち上げる。「NFTビジネス活用事例100連発」著者。ジュンク堂池袋本店社会・ビジネス書週間ランキング1位獲得。

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誰もが安心して使えるブロックチェーンを実現する

ソニー銀行 web3 YouTube NFT Media 後編1
赤石 智哉 氏(写真中央)

小林:前半では、「 Sony Bank CONNECT 」について詳しく伺いました。ここからは、ソニー銀行が取り組むweb3事業の最前線について、深く掘り下げていきたいと思います。

2025年6月、「規制に準拠したweb3サービスの提供に向けた専用ブロックチェーンの活用に関する実証実験を開始する」とソニー銀行は発表しました。このプロジェクトについて、詳細を教えてください。

赤石:このプロジェクトは、CAUCHYE ASIA PTE. LTD.(シンガポール企業)と共に進めているものです。

CAUCHYE ASIA PTE. LTD.は、モジュラービリティに特化したブロックチェーン「Sunrise」を開発した企業です。今回、ソニー銀行はCAUCHYE ASIA PTE. LTD.が提供するMyLayer Prototypingプログラムに採択されたため、今後共同で実証実験を進めていきます。

「Sunrise」では、ブロックチェーンが持つ4つの機能のうち、1つの機能を切り出して提供が可能です。これにより、他のすべての機能を担うことなく、独自のブロックチェーンを構築できます。

小林:なるほど、ブロックチェーンの特定機能に特化することで、より柔軟な開発が可能になるのですね。

赤石:その通りです。

一般的なレイヤー1の独自ブロックチェーンは、マネーロンダリングの観点などでさまざまな制約を抱えています。

私たちは、独自のレイヤー2ブロックチェーン構築によって、KYC(本人確認)やAML/CFT(マネーロンダリング・テロ資金供与対策)などの問題を解決できるのではないかという仮説を立て、検証に取り組んでいます。

小林:つまり、今回の実証実験では、よりセキュリティが高く、リスクの低い状態でブロックチェーンを稼働させることを目指しているのでしょうか。

赤石:まさにその通りです。リスクを抑えつつ柔軟性も兼ね備えた、まさに「いいとこ取り」のネットワークが実現できればと考えています。

小林:それは素晴らしいですね。使い勝手はそのままに、既存の課題を解決するブロックチェーンを作るための実験ということですね。

ソニー銀行 web3 YouTube NFT Media 後編2

小林:MyLayer Prototypingプログラムでは、具体的にどのようなテーマで実験を進めているのか教えてください。

赤石:主要なテーマの一つが、ステーブルコインやセキュリティトークンをネイティブに利用できる安心安全なブロックチェーンの実現です。

また、他のレイヤーチェーンとの相互運用性をストレスなく実現できるかどうかも、今回の重要な課題です。

小林:この他に、お話できる範囲で具体的な実験テーマはありますか。

赤石:2025年に金融庁による「FinTech 実証実験ハブ」という新たな先進的な取り組みを行っており、その一つに採択されました。

これは国内におけるDeFiの利活用に関するプロジェクトで、KYCなどを完璧に行いつつ分散型金融を展開していこうというものです。

KPMGが中心となり、多くの信託銀行やweb3企業が参画しています。

小林:ソニー銀行だけではなく、多くの企業が連携しているんですね。

赤石:そうなんです。

これらの取り組みの成果と、今回私たちが発表した金融機関向けのブロックチェーンを組み合わせることで、日本国内でも安心して使えるDeFiサービスが実現できるのではないかと、私個人としても非常に楽しみです。

小林:それは楽しみですね!

ちなみに、そういった情報はどこで追いかけることができるのでしょうか。

赤石:金融庁のホームページですべて公開されているため、ぜひ「金融庁 FinTech実証実験ハブ」で検索してみてください!

NFTやweb3がDXの起点に

ソニー銀行 web3 YouTube NFT Media 後編3
中村 一貴氏(写真右)

小林:web3やNFTを取り巻く事業環境について、どのようにお考えですか。

中村:web3業界自体、流れが非常に速いと感じています。NFTという観点で見ると最近はマネタイズがしづらい環境になってきており、盛り上がりに欠けているように映るかもしれません。

しかし、NFT自体はDXのツールにおけるひとつの選択肢なのではないかと私は捉えています。これこそが、私たちがさまざまな取り組みをしている理由にもなるのですが、私たちの所属している部署の名称も実は「DX事業企画部」なんですね。

小林:web3事業部でもNFT事業部でもなく、「DX」を掲げていますよね。

中村:そうなんです。ここに、私たちの考え方が表れています。

私たちはDXの一つの手段としてweb3の活用を目指しており、業界全体でもこの流れがより加速していると感じています。

ガートナーのハイプ・サイクルによると、先端技術は一旦期待がしぼんだ後に世の中へと徐々に浸透します。web3やNFTも、まさにこの段階に達しているのではないでしょうか。

ハイプ・サイクル
引用:Gartner公式サイト

小林:ハイプ・サイクルにおける「幻滅期」を乗り越えて、「啓蒙期」に入りつつあるということですね。

中村:このような事業環境の中で、ソニー銀行ではソニーグループが保有するIPやテクノロジーとのかけ合わせによるweb3の可能性を模索しています。

私がソニー銀行に転職して実感した点は、ソニーグループ全体が「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。」をパーパスとして活動していることです。感動体験の手段としてエンタテインメント領域があり、音楽や映画などさまざまなコンテンツに繋がっています。

この感動体験のツールとしてブロックチェーンが活用できるのではないかと、社内で活発に議論しているところです。

小林:デジタルとリアルを融合した感動体験の提供ということですね。

中村:そうです。ソニー銀行のDX事業企画部ができるチャレンジの幅は非常に広いと感じながら、いつも働いています。

ブレイクスルーを追い求めて

ソニー銀行 web3 YouTube NFT Media 後編4

小林:web3事業を進める上で、課題や懸念点はありますか。

中村:ここ数年言われ続けていますが、ブレイクスルーに繋がるようなブロックチェーンの活用事例を業界全体として見つけられていない点です。

とはいえ、直近ではステーブルコインが非常に盛り上がっており、ユースケースの一つとして注目を集めています。ステーブルコインのようなシステムの裏側を支える仕組みが整備されていけば、エンタテインメントなどフロントのサービスとの紐づいて、ブレイクスルーへと発展していくはずです。

「ニワトリと卵」のようにユースケースと技術のどちらが先に生まれるかという課題はあるものの、着実に前進していると考えています。

小林:ステーブルコインのようなインフラが整備されることで、NFTなどの表層的なサービスも普及していくという見方ですね。ちなみに、ブロックチェーンの将来性について、どのように捉えていますか。

中村:ブロックチェーンの魅力は、一言で言うと「Day1からグローバル市場にアクセスできる点」です。

従来のWeb2型サービスでは、各国の違いを意識しながら認知から理解、利用へと繋げる必要がありました。一方で、web3はオンチェーンで結ばれており、国境に関係なく一気に世界へと波及します。

より拡散しやすく一気通貫でグローバルに進出できる点は、ブロックチェーンならではの可能性です。

ソニー銀行が伴走し、web3施策を成功に導く

ソニー銀行 web3 YouTube NFT Media 後編5

小林:2025年5月、ソニー銀行から「web3関連事業の子会社の設立に関するお知らせ」というプレスリリースが発表されました。今回設立された新会社では、どのような事業を展開されるのでしょうか。

赤石:B to Bのビジネスで、事業者に対してweb3のコンサルティングを提供する計画です。2025年の10月から事業を開始しており、これまでの活動で得た知見をより多くの企業に広めていきます。

一般的にコンサルティングと聞くと、経営戦略などの立案をイメージされるかもしれません。しかし、今回の事業では助言だけに留まらず、パートナーとして共にweb3の事業に取り組む位置付けとなっています。

小林:まさに、伴走者として一緒にさまざまなチャレンジをするのですね。

赤石:その通りです。

ソニーグループが持つIPや技術とクライアントのサービスを組み合わせ、新たな感動体験の創出を目指します。

小林:新会社の名称について、プレスリリースには「内幸町他業高度化等事業準備株式会社」と記載されていました。今後、正式な会社名が発表されるのでしょうか。

赤石:8月に商号を「BlockBloom株式会社」(ブロックブルーム)に変更しています。BlockBloomを通じて新しいビジネスを作っていきたいと思っております。

ソニーグループならではの強みで、web3を推し進める

ソニー銀行 web3 YouTube NFT Media 後編6

小林:ソニー銀行のweb3事業における今後のビジョンをお聞かせください。

赤石:大きく3つのビジョンがあります。

1つ目は、ソニー銀行として多くのファンを作っていきたいという点です。

ソニーグループのIP活用によってより多くの方にエンタテインメントを届けて、どんどんファンの方を増やしていく計画です。

2025年8月には、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントとのコラボでデジタルコンテンツを配布しました。今年(2025年)の年末にかけても、このようなキャンペーンを打ち出していきます。

2つ目は、顧客に対する新しい価値の提供です。

ステーブルコインやRWA(現実資産のトークン化)の市場は、今後急速に発展する領域だと予想しています。そこでソニーグループのアセットを組み合わせて、独自の価値を創出していきたいと考えています。

そして3つ目は、B to B向け事業の拡大です。

新会社を設立したということもあり、今後はさまざまな企業の方々とコラボレーションし、事業の発展を共に目指していきます。
個々の案件における成功はもちろんのこと、日本がもう一度web3の先進国となれるように、コラボレーションを通じて新しい価値を創出していきたいです。

小林:個人も法人も巻き込み、総力戦でweb3事業を拡大していくということですね。今後が非常に楽しみです。

オンの日も、オフの日も、頭の中はweb3

ソニー銀行 web3 YouTube NFT Media 後編7

小林:ここまでは会社のお話を伺ってきましたが、ここからはプライベートな部分を少しお聞きします。

まずは中村さんから、お休みの日の過ごし方を教えていただけますでしょうか。

中村:週末もweb3のことを考えてしまっています(笑)。直近では、ワインのDAOに参加していますね。

小林:プライベートでもweb3の活動なんですね!

中村:私自身ワインがすごく好きで、実は日本ソムリエ協会のワインエキスパートの資格も保有しています。

その延長線上として、ワイン造りを推し進める「ぐんま山育DAO」という組織に参画しました。DAO形式でワインを作り、そのワインを楽しむというコンセプトに魅せられていますね。

小林:「web3 × 自分の好きな趣味」という最高の組み合わせですね。

次に、赤石さんにもお伺いしたいと思います。プライベートではどのように過ごしていますか。

赤石:最近は海外出張などもあって忙しいですが、基本的にはweb3に関する活動が多いですね。

小林:やはり、プライベートでもそうなのですね(笑)。

赤石:あとは最近、5年ぶりに剣道を再開しました。

昔から剣道をしておりまして実業団の試合にも出場していたのですが、直近の5年ほどは休んでいました。しかし、ソニー銀行に入社したところ、大学の剣道部の先輩がソニーグループに在籍しており、「当然、剣道部に入るんだよな?」との流れになりまして。

今は5年ぶりに復帰して、大会にも出場しています。

小林:お二人のプライベートな部分をお聞きできて、お二人のイメージがよりクリアになった気がして、個人的にもとても楽しい時間でした。

最後に

ソニー銀行 web3 YouTube NFT Media 後編8

小林:最後に、読者の方に対してメッセージをお願いします。

中村:読者の方と一緒に、ブロックチェーンの新たなユースケースを作りたいです。

web3は将来性のある領域なので足元の案件でご一緒したり、ブロックチェーン業界に入ってきていただいて共に働けたら嬉しいなと思っています。

小林:企業間でのコラボであったり、あるいはこの業界で一緒に働きたいということですね。興味を持たれた方は、ソニー銀行の企業サイトからお問い合わせをお願いします。

それでは次に赤石さん、お願いします。

赤石:ぜひ、「 Sony Bank CONNECT 」をダウンロードしてみてください。

新たな機能もどんどん追加されているため、きっと楽しめるはずです。「 Sony Bank CONNECT 」を通じて、ソニー銀行のことも好きになっていただければと思っております。

小林:今回は、ソニー銀行の赤石さんと中村さんにお話を伺いました。

本日は本当にありがとうございました!

赤石・中村:ありがとうございました!

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