
フランス国会、ビットコイン重視の金融戦略を提案
2025年10月28日、フランス国民議会においてエリック・シオッティ議員(UDR党)ら13名が共同で、国家ビットコイン戦略準備金の創設などを求める「欧州決議案第1984号」を提出しました。
同提案は、中央銀行デジタル通貨(CBDC)である「デジタルユーロ」の導入に反対するとともに、分散型の仮想通貨(暗号資産)を活用した新たな金融体制の構築を推進する内容となっています。
決議案では、ビットコイン(BTC)などを通じて新しい通貨秩序に適応する方針を示すとともに、政府に対し、欧州連合(EU)理事会が進めるデジタルユーロ計画の採択に反対するよう求めています。
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フランスがCBDCに反旗、分散型経済へ転換提案
シオッティ議員ら、金融主権確立へ3項目を提示
提出書類によると、同提案は「金融主権と個人の自由を守るための制度的枠組み」を整えることを目的としており、次の3点を政府に要請しています。
- デジタルユーロ(CBDC)導入への反対
- 欧州の銀行によるユーロ建てステーブルコイン発行規制の緩和
- 仮想通貨担保(ナンティスマン)に関するバーゼル規制の見直し
シオッティ議員らは、中国のデジタル人民元や社会信用システムを例に挙げ、中央集権的な金融システムが「個人の自由を脅かすリスクを孕む」と指摘しました。
決議案では、アメリカが2025年7月に成立した「GENIUS法」に触れ、同国がステーブルコインの発行を容認する一方で、CBDCを拒否する政策を取った点を評価しています。
フランス議員団は、米国の枠組みを参考に「ヨーロッパも分散型の経済モデルへ移行すべき」との立場を示しています。
IMF統計が示すドル主導のステーブルコイン市場構造
提案の背景には、欧州金融圏における「ドル主導のステーブルコイン市場」への懸念があります。
IMF(国際通貨基金)の報告によれば、2025年春時点で流通するステーブルコインの時価総額は約2,300億ドル(約35兆円)に達し、そのうち米ドル建てのテザー(USDT)とUSDコイン(USDC)が全体の約91%を占めています。
一方、ユーロ建てステーブルコインの流通量は約2億5,900万ドル(約390億円)にとどまり、市場規模は依然として圧倒的に小さい状況です。
仮想通貨担保の活用促進で銀行制度を再構築
この格差に対し、シオッティ議員らは「欧州の通貨主権を維持するため、民間主導でユーロ建てステーブルコインを発行・普及させるべき」との立場を示しました。
決議案では、バーゼル銀行監督委員会が2022年に策定した仮想通貨に対するリスク係数(最大1,250%)が「過度に厳格であり、銀行による仮想通貨担保融資を阻害している」と批判しています。
これを受け、欧州の新たな金融監督基準では「リスク許容度を高めた制度設計」を採用するよう求めています。
中央集権型CBDCが招く金融リスクへの懸念
欧州中央銀行(ECB)は準備段階にあるデジタルユーロを2029年に発行予定としており、個人情報保護やマネーロンダリング防止の観点からCBDCの推進を継続する立場を示しています。
しかし同決議は、こうした中央集権的通貨設計が「預金者が銀行から資金を引き揚げるリスクを高め、銀行制度を脆弱化させる可能性がある」と警告しています。
決議案は最終的に、政府に対し「デジタルユーロへの反対」「ユーロ建てステーブルコイン市場の振興」「仮想通貨の制度的活用支援」を正式に求め、国家として分散型経済への移行を促進する方向性を明確にしました。
これにより、フランスはEU域内で初めて、CBDCに対抗しつつビットコインや仮想通貨の国家的活用を提案する立法的動きを示したことになります。
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Source:決議案第1984号
サムネイル:AIによる生成画像





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