2025年9月のNFT市場は、8月の夏枯れ相場からさらに活動が鈍化し、月間取引高は約4.5億ドルと前月から25%減少しました。米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げサイクルの終了が示唆されたものの、市場心理の本格的な回復には至らず、NFT市場は厳しい調整局面が続いています。
しかし、市場全体が縮小する中で、特定の分野では力強い成長が見られました。特にCoinbaseが支援するL2チェーン「Base」は、AIトレーディングゲーム「DX Terminal」の成功を追い風に、取引件数で市場の主役に躍り出ました。
本レポートでは、NFT市場の全体動向と内部の構造変化を、チェーン別・マーケットプレイス別・主要コレクション別に分解し、国内の動きも交えながら多角的に整理していきます。
- 月間取引高は約5億5,600万ドルと前月比8%減少、市場は調整局面が継続
- Baseチェーンが取引件数で市場を席巻、AIゲーム「DX Terminal」が成長を牽引
- Courtyardは下落するも取引高で首位を維持、ブルーチップNFTは軒並み下落傾向に
- ゲーム関連NFTが躍進し、DMarketが取引高2位に浮上
- Hyperliquidの記念NFT「Hypurr」が記録的な取引高で市場の話題をさらう
- ビットコインNFTの取引量は2023年5月以来の低水準に
- マーケットプレイス市場ではOpenSeaが依然として独走状態
市場概要
2025年9月のNFT市場は、8月の夏枯れ相場からさらに活動が鈍化し、調整局面が続きました。
月間取引高は約5億5,600万ドルと、前月の約6億400万ドルから約8%減少しています。

一方で特筆すべきは、月間取引件数は約690万件と前月の約622万件から10%以上増加した点です。これは、CryptoPunksをはじめとする高額なブルーチップNFTの取引が減少した一方で、L2チェーン「Base」上での小口取引が爆発的に増加したことを示しています。
市場の関心は、資産価値の保有を目的とした高額なPFPから、AIトレーディングゲーム「DX Terminal」に代表されるような、エンゲージメントや体験価値を重視する低コストなNFTへとシフトしつつあります。ドル建ての取引高だけでは見えない、ユーザー活動の質的な転換点が9月の市場の最も重要な特徴と言えるでしょう。
チェーン別動向
チェーン別動向では、イーサリアムが取引高で首位を維持したものの、取引高は前月比で54%以上も大幅に減少し、調整局面の厳しさを物語っています。
同様にビットコインNFTの取引量も2023年5月以来の低水準に落ち込むなど、これまで市場を牽引してきた主要チェーンが軒並み苦戦しました。

一方で、取引件数では上述したBaseチェーンが市場を席巻しました。

AIトレーディングゲーム「DX Terminal」の人気が爆発し、Base上でのトランザクションは単月で127万件を記録。これは前月比で1000%を超える驚異的な成長であり、取引高では測れないユーザーの熱狂とエンゲージメントを市場に示しました。
マーケットプレイス別動向
9月のマーケットプレイス市場は、市場全体の取引高が縮小する中で、OpenSeaがその地位をさらに固める月となりました。OpenSeaは取引高で約2.5億ドル(市場シェア60.0%)、ユーザー数で54.1万人(同85.0%)を記録し、主要な指標で他を圧倒しました。

8月に勢いを落としたBlurは、ブルーチップNFTの取引がさらに沈静化した影響を受け、取引高が約1.4億ドルから7,650万ドルへと半減。市場の関心がゲームや体験価値へと移る中で、高額取引に特化した戦略が裏目に出た形です。
特筆すべきは、Baseチェーン上での活動です。Baseのユーザーの大多数がOpenSeaを利用しており、Baseの取引件数が急増したことが、OpenSeaのユーザー数における独走状態を支える大きな要因となりました。市場が縮小する中でも、新規ユーザーやライト層が集まるチェーンを確実に取り込むことで、OpenSeaは盤石な基盤を築いています。
主要NFTコレクションの動向
Polygon基盤の「Courtyard」は、取引高を前月比で約44%減らしながらも、約3,467万ドルで首位を維持しました。市場全体が縮小する中でRWAの底堅い需要を示した形です。

対照的に、主要なPFPコレクションは軒並み数十%規模の大幅な下落に見舞われました。CryptoPunksの取引高は約53%減の約2,358万ドル、Pudgy Penguinsも約35%減の約1,359万ドルとなるなど、市場心理の冷え込みが直撃しています。

その一方で、ゲーム関連のコレクションが躍進しました。ゲームアセットを扱うDMarketは取引高を前月から51%以上増加させて2位に浮上したほか、Guild of Guardians Heroesも約16%増と堅調に推移し、市場が停滞する中でのユーティリティの強さを見せつけました。
また、今月のランキングを最も象徴するのが、BaseチェーンのAIゲーム「DX Terminal」の台頭です。前月比で1800%を超える驚異的な成長を遂げ、約1,930万ドルの取引高で4位にランクインしました。

このゲームは、NFTを金融的な投機対象としてではなく、純粋なエンターテイメント体験として提供することで、多くのユーザーのエンゲージメントを獲得しました。
そして、ランキング外の動きとして市場の新たな熱狂を生んだのが、Hyper EVM上のNFTコレクション「Hypurr」です。

Hypurrは、Hyperliquidのエコシステム上で展開されるNFTコレクションで、9月28日にローンチされました。
総供給数4,600個のユニークなデジタルアートワークで、エアドロップ形式で初期ユーザーに配布。 NFT自体に特別なユーティリティはありませんが、ローンチ後24時間で約67億円もの取引高を記録しました。
フロア価格は一時1,000万円近くにもなり、NFTの歴史上、最大のエアドロップとして話題になりました。
国内のNFT市場動向
国内のNFT市場では、投機的な売買が落ち着きを見せる一方で、NFTを社会やビジネス、文化と結びつける社会実装の動きが、単なる実証実験の段階を越え、具体的な事業として本格化しています。
今月の潮流を象徴していたのが、NFTを通じた「共創(Co-creation)」の活発化です。歌舞伎俳優・市川團十郎氏と「NEO TOKYO PUNKS」のコラボレーションは、NFTを単なるデジタルアートではなく“仲間の証”と位置づけ、ホルダーと共に新たな歌舞伎文化を創造する試みです。
同様に、新人漫画家の新作『プールサイドデイズ』をNFTで支援するプロジェクトは、読者とクリエイターの関係をより密接にし、創作活動そのものをコミュニティ体験へと昇華させています。
また、NFTの活用領域は、社会インフラや地方創生といった、より公共性の高い分野へと大きく広がりました。KDDIが奈良県で販売を開始した「柿の木NFT」は、農業支援と関係人口創出を結びつけた新しい応援の形を提示しました。
さらに、NEXCO中日本が高速道路の渋滞緩和策として企画した戦国武将NFTトレカ『トレクーハンター』や、位置情報ゲーム「ピクトレ」による電柱撮影のデジタルスタンプラリーは、NFTの持つゲーミフィケーションの力を社会課題の解決に応用する先進的な事例として注目されます。
2025年9月のNFTニュース5選
ここでは、2025年9月に話題になったNFT系ニュースの中から、特にインパクトのあったものを5つに厳選してご紹介します。
- 日本文化NFTマーケット「Artenna」がローンチ
- ソニー銀行、LiSAツアー連動NFTキャンペーンを開始
- 『LUPIN THE IIIRD × SyFu』コラボNFTが24秒で完売
- 【NFTの火付け役】クリスティーズがNFT専門の部門を閉鎖
- 『キャプテン翼 -RIVALS-』2025年11月でサービス終了へ
各ニュースの概要を見ていきましょう。
日本文化NFTマーケット「Artenna」がローンチ

miramiruは、日本文化の発信を掲げる新たなNFTマーケットプレイス「Artenna(アーティナ)」を立ち上げたことを発表しました。
第1弾は手塚眞氏によるデジタル護符シリーズ『100 YOKAI』。妖怪をモチーフにした全10点限定のNFTで、購入者には短編映画の視聴権も付与されます。
伝統文化とデジタル技術の融合を目指す取り組みとして注目されています。
詳しくはこちら▼
【⽇本⽂化を世界へ】新たなマーケットプレイス 「Artenna 」始動
ソニー銀行、LiSAツアー連動NFTキャンペーンを開始

ソニー銀行は、LiSAの全国ツアー「LiVE is Smile Always〜PATCH WALK〜」開催を記念し、ライブ参加者限定のNFTキャンペーンを発表しました。
Sony Bank CONNECTを通じて、ツアー来場者に限定デジタルコンテンツを配布。
AR体験とNFTを組み合わせた演出で、音楽ファンに新たなデジタル参加型の体験価値を提供します。
詳しくはこちら▼
ソニー銀行、LiSA全国ホールツアーと連動した参加者限定NFTキャンペーンを実施
『LUPIN THE IIIRD × SyFu』コラボNFTが24秒で完売

決済データをデジタル資産に変換するWeb3アプリ「SyFu」が、『LUPIN THE IIIRD』とのコラボNFTセールを実施。
販売開始からわずか24秒で完売し、最終申込総額は約2,400万円(約165,000USD)に達しました。
SyFuはGINKANグループが運営しており、日常決済データとGameFiを結ぶ国内発プロジェクトとして成長が期待されています
詳しくはこちら▼
『LUPIN THE IIIRD × SyFu』コラボNFTセール、わずか24秒で完売!最終申込総額は2,400万円を突破
【NFTの火付け役】クリスティーズがNFT専門の部門を閉鎖

世界的オークションハウスのクリスティーズが、NFT専用プラットフォーム「Christie’s 3.0」の閉鎖を発表しました。
NFTアート取引の黎明期を牽引した同社ですが、市場低迷や戦略再編を背景に撤退を決定。
Beeple氏の作品のが高額落札されるなどNFTブームの象徴的存在だっただけに、アート市場の潮流変化を示すニュースとして反響を呼びました
詳しくはこちら▼
【NFTの火付け役】クリスティーズがNFT部門を閉鎖
『キャプテン翼 -RIVALS-』2025年11月でサービス終了へ

国内発のブロックチェーンゲーム『キャプテン翼 -RIVALS- Polygon/Oasys』が、2025年11月28日をもってサービス終了することを発表しました。
同作は人気サッカー漫画『キャプテン翼』のIPを活用し、PolygonとOasys両チェーン対応の対戦型GameFiとして注目を集めました。
運営は感謝を述べつつも、Web3ゲーム市場の転換を示す動向として話題となっています。
詳しくはこちら▼
ブロックチェーンゲーム『キャプテン翼 -RIVALS- Polygon/Oasys』2025年11月28日にサービス終了へ
まとめ
2025年9月のNFT市場は、取引高が約5億5,600万ドルへと減少し、8月から続く調整局面がより鮮明になった一ヶ月でした。マクロ経済の不透明感を背景に市場心理は冷え込み、これまで市場を牽引してきたブルーチップNFTは軒並み取引高を半減させています。
しかし、その数字の裏では、NFTの価値尺度が「投機」から「実用」と「熱狂」へとシフトする大きな構造変化が進行しました。その象徴が、取引件数で市場を席巻したL2チェーン「Base」の躍進です。AIゲーム「DX Terminal」は、金融的なリターンを約束しない純粋なエンターテイ メント性が評価され、驚異的なユーザーエンゲージメントを生み出しました。
コレクション別では、Courtyardやゲーム関連NFTが取引上位を維持し、市場の関心が具体的な価値やユーティリティへと向かっていることを示しています。また、HyperliquidのNFT「Hypurr」が見せた熱狂は、強力なコミュニティが市場の停滞を打ち破るエネルギーを持つことを証明しました。
国内市場ではグローバルほどの熱狂が感じられないものの、大手企業や自治体によるビジネス活用や社会実装の事例が数多く報告されています。9月の市場は、冬の時代と見る向きもありますが、むしろ投機主導のバブルが終わり、NFTが真の価値を発揮する新しいフェーズへの移行期と捉えることができるでしょう。
過去の市場レポートはこちらから
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参照元:NFT Media
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DAAAMO主導×NIKO24氏監修の共創NFT
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