
ルクセンブルク政府系ファンド、資産の1%をBTC ETFに投資
2025年10月9日、ルクセンブルク財務省のボブ・キーファー財務局長兼事務総長は、政府系ファンド「FSIL(世代間ソブリン・ウェルス・ファンド)」が総資産の1%(約900万ドル/約14億円)をビットコインETFに投資したことを明らかにしました。
キーファー氏によれば、この投資決定は2026年度予算案の国会で、ジル・ロス財務相によって公表され、政府承認の下で実施された公式の戦略措置となります。
今回のFSILによるビットコインETF投資は、EU(欧州連合)の政府系ファンドとしては初の事例であり、欧州金融分野における象徴的な出来事として注目を集めています。
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EU初、ルクセンブルク政府ファンドがビットコインETF運用開始
FSILが採用した新投資方針とビットコインETFの位置づけ
キーファー氏は今回のビットコインETF投資について、「この新たな資産クラスの成熟を認識し、デジタル金融分野におけるルクセンブルクのリーダーシップを示すものだ」と述べています。
また、これは2025年7月に政府承認されたFSIL(世代間ソブリン・ウェルス・ファンド)の新投資方針を適用した初の事例だと説明しています。
実際、政府は2025年7月にFSILの投資ポートフォリオ見直しを行い、総資産の最大15%をオルタナティブ資産に配分できるよう投資方針を改訂しました。
その内訳には、未公開株式(最大10%)や不動産(最大4%)に加え、新興資産クラスである仮想通貨への1%の投資も含まれています。
今回の投資はこの新方針に基づくものであり、FSILはビットコイン現物を直接保有するのではなく、規制当局の承認を受けたETFなどを通じて間接的に投資する手法を選択しています。
こうした手法を採用した背景には、カストディ(資産保管)やハッキングリスクなどの運用上のリスクを回避する意図があり、キーファー氏も「運用リスクを避けるため、ビットコインへのエクスポージャーはETFの選定を通じて確保した」と説明しています。
総資産約7.6億ユーロのうち1%をビットコインETFへ
FSILは2015年に設立された将来世代のためのソブリン・ウェルス・ファンドで、これまで資産の大半を国債や株式インデックスファンドで運用してきました。
6月末時点での運用資産額は約7億6,400万ユーロ(約8億8,800万ドル/約1,330億円)と報告されており、ビットコインETFへの1%の配分額は約900万ドルに相当します。
キーファー氏はこの1%という比率について「保守的すぎるとの見方もあれば、投機的すぎるとの見方もありますが、FSILの特性と使命を考慮し、1%の配分が適切なバランスであり、ビットコインの長期的な可能性について明確なメッセージを発するものだ」と強調しました。
ビットコイン投資の割合自体はごく一部にとどまるものの、公的ファンドによる象徴的な一歩として、長期的視点で価値に着目した実験的試みとなっています。
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EUで拡大する仮想通貨採用の動き
EU圏では公的機関によるビットコイン採用の動きが慎重に広がりつつあります。
スウェーデンとチェコで進む公的ビットコイン導入案
10月1日、スウェーデンの国会議員が、国家戦略としてビットコインを備蓄する「国家ビットコイン準備金」の創設を政府に提案しています。
提案者らは、自国通貨の地位を守る観点から「中央銀行デジタル通貨(CBDC)は導入しない方針を明確にすべき」と訴え、デジタル通貨政策に関する議論も含めて注目を集めました。
さらに東欧のチェコでは1月、チェコ国立銀行のアレシュ・ミフル総裁がビットコイン導入を提案しました。
ミフル総裁は「ビットコインは恐れるのではなく研究すべきだ」と述べており、中央銀行レベルでも仮想通貨資産を模索する姿勢が見られています。
MiCA法施行で進むEUの仮想通貨市場拡大
欧州連合では2024年末からMiCA法の施行が始まり、加盟各国で統一された規制の下で仮想通貨サービスの展開が可能となりました。
こうした法整備により投資家保護と技術革新の両立が図られた結果、Coinbase(コインベース)やGemini(ジェミナイ)などの大手仮想通貨取引所が相次いでEU域内でライセンスを取得し、機関投資家の参入も進んでいます。
ルクセンブルク政府系ファンドによる今回のビットコインETF投資は、欧州における公的資金の運用方針に新たな一石を投じるものであり、EU全体で進む国家レベルのデジタル資産活用が現実味を帯び始めていることを示しています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=153.09 円)
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Source:ボブ・キーファー氏LinkedIn投稿
サムネイル:AIによる生成画像







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