14年ぶりに動いた1兆円相当の8万BTC|ビットコイン史上最大の資産移動の真相とは

長期休眠ウォレットが一斉に動きを見せる

オンチェーン分析プラットフォームLookonchain(ルックオンチェーン)は2025年7月5日、約14年にわたり動きがなかった8万BTC(86.5億ドル/1.2兆円相当)が一斉に移動したことを明らかにしました。

この8万BTCは、2009年から2011年にかけて、いわゆる「サトシ時代」に取得された極めて古いコインで、当時は1 BTCあたり1ドル未満の価格で取得されたものとみられています。

今回の送金は、ビットコイン(BTC)史上で前例のない規模となり、これまで最大だった3,700 BTC前後の単一送金記録を大幅に上回ったことが報告されています。

段階的に行われた8万BTCの資産移動

このビットコインの大規模な移動は、2025年7月4日未明から数時間にわたり、複数回に分けて行われました。

まず、2011年4月に1万BTCを受け取って以降、休眠状態にあった2つのウォレットから合計2万BTCが送金されました。さらに約8時間後には、同年5月に取得された6つのウォレットから残りの6万BTCが移動しています。

これら8つのウォレットは、いずれも2011年に1万BTCを受け取っており、オンチェーン分析によって同一の保有者によって管理されている可能性が高いとされています。

この移動により、古いウォレットに保管されていたBTCはすべて新しいアドレスに送金されました。

移動先は取引所でなく個人アドレス

さらに、移動先のアドレスが仮想通貨(暗号資産)取引所ではなく、新仕様の個人ウォレットであった点も大きな関心を集めています。

移動元は旧形式のアドレス(P2PKH)でしたが、移動先は「bc1q」で始まるSegWitアドレス(Bech32形式)に変更されていました。この変更は、セキュリティ強化や手数料削減を目的としたアドレスアップグレードと見られています。

現時点で新しいアドレスからの再送金は確認されておらず、巨額の移動があったにもかかわらず、ビットコイン市場では大きな売り圧力は発生していません。

移動直後には一時的に警戒感が広がったものの、価格は大きく崩れることなく安定した推移を維持しました。

14年ぶりに動いた8万BTCの正体

同一保有者による保管先変更か

オンチェーン分析企業Arkhamによれば、今回移動が確認された8つのウォレットはいずれも、同一の個人または団体によって管理されていた可能性が高いと指摘されています。

これら8つのアドレスは、2011年に23,000 BTC以上を保有していた単一のウォレットから分配された経緯があります。長年にわたり同一の保有者が分散管理していたビットコインを、今回一括で移動させたとみられています。

Arkhamによると、移動後のBTCは8つの新しいウォレットに保管されており、いずれのコインも取引所には送られていないことが確認されています。そのため、今回の巨額BTC移動は売却ではなく、保管場所の変更を目的としたものと見られています。

保有者はロジャー・ヴァー氏との説

14年ぶりとなるこの大規模送金の目的と実行者に対し、世界中の仮想通貨コミュニティが注目しています。現時点で名乗り出た個人や企業はなく、送金の発信者は依然として不明のままです。

一方で、著名なビットコイン初期投資家であるRoger Ver(ロジャー・ヴァー)氏の関与を指摘する説も浮上しています。

ヴァー氏は「ビットコイン伝道師(ビットコイン・ジーザス)」の異名を持つ人物で、2011年前後に多くのBTCを取得していたことで広く知られています。

X上では、解析者が過去の取引履歴をもとにヴァー氏の保有アドレスと一致しているとの分析を行っており、信頼性が高いとする見方もあります。

さらに、同氏が米国で抱える税務関連の訴訟に伴い、当局との司法取引の一環として今回のBTCが移動された可能性もあるとの見解が一部で報じられています。

ただし、これらの情報はいずれも正式な証拠に基づくものではなく、Arkhamも具体的な保有者名については明らかにしていません。

謎のメッセージが移動前に送信

加えて、今回の大規模コイン移動の直前には、不審な動きも確認されていました。

Ledger社のCTOであるシャルル・ギユメ氏は、このウォレットに送金の数日前から特殊な「OP_RETURN」メッセージが書き込まれていたことを明らかにしました。

OP_RETURNとは、ビットコインのブロックチェーン上に任意のメッセージを記録できる技術的な仕組みです。

今回、この機能を利用して第三者が「このウォレットおよび中身の正当な保有者である」と主張し、所定の期限(2025年10月まで)までに署名付きの取引で所有を証明するよう要求するメッセージを送信していたことが確認されました。

これは休眠アドレスの所有権を巡る挑戦的な行動とも解釈されており、一部では不正アクセス(ハッキング)や財産権に関する新たな法的戦術(アドバースポゼッション)の可能性も指摘されています。

一方で、このメッセージを受け取ったウォレットの正当な保有者が、資産の安全確保を目的としてコインを緊急移動させた可能性も一部で報じられています。

結果として、該当するビットコインはすべて安全とされる新たなアドレスに移行しており、現時点ではメッセージ送信者が主張するような不正な流出の兆候は確認されていません。

ブロックチェーン上で第三者が正式に所有権を主張するという異例の状況に対し、専門家からも関心が集まっています。この事例は、仮想通貨における所有権の概念やセキュリティの在り方を考える一つのきっかけとなっています。

1兆円相当のBTC移動でも相場に動揺なし

今回の長期間動きのなかったウォレットからの大量送金は、相場に大きな混乱をもたらすことはありませんでしたが、ビットコイン市場全体への注目を一層集める結果となりました。

2025年に入って以降、ビットコインは力強い上昇トレンドを維持しており、記事執筆時点では約109,000ドル(約1,590万円)と、過去最高値に迫る水準に達しています。

こうした動きの背景には、大手機関投資家による資金流入や現物ETFへの期待感、マクロ経済の安定など、複数の強気要因が影響しているとみられています。

米著名トレーダーのPentoshi(ペントシ)氏は7月7日に「7月の仮想通貨市場は複数の好材料に支えられ、成長局面が続く」との見解を示しました。ステーブルコイン規制の進展や伝統的金融機関の参入拡大といった好材料が続いていると分析しています。

仮に短期的な悪材料が出ても市場は素早く反発し、新高値更新の動きが見られるだろうという強気な予想も語られており、現在のビットコイン市場は、これまで以上に安定感と成長期待を備えている状況との見解が示されました。

このような長期休眠BTCの大規模な移動は、ビットコイン市場が着実に成熟していることを示す象徴的な事例といえるのかもしれません。

※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=円)

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Source:Lookonchain公式X投稿
サムネイル:AIによる生成画像

参照元:ニュース – 仮想通貨ニュースメディア ビットタイムズ

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