メルカリがNFTマーケットプレイスを始動!事業責任者の中村 奎太氏にインタビュー

2025年1月28日、株式会社メルカリ(以下、メルカリ)がNFTマーケットプレイス「メルカリNFT」の提供を開始しました。メルカリNFTは、メルカリのプラットフォーム上でNFTを取引できるサービスです。メガベンチャーである同社の取り組みは、業界内で大いに注目を集めました。

しかし一方で、SNS上での評価は賛否両論です。現時点のメルカリNFTは、マーケットプレイスの暗号資産ウォレットによってNFTを一括管理しています。加えて、外部ウォレットへの出庫もできません。これらの中央集権的な仕組みが、果たしてWeb3サービスとして相応しいのか疑問が提起されたためです。この議題に関して、SNS上では有識者の間でさまざまな議論が沸き起こりました。

一体、今回発表されたメルカリNFTは、どのような狙いでローンチされたのでしょうか。マーケットプレイス事業を打ち出した理由や背景に迫るべく、メルカリNFTの事業責任者である中村奎太氏へインタビューを行いました

本インタビューでは、主に以下の疑問にお答えいただいています。

  • メルカリがNFTマーケットプレイス事業に取り組んだ理由
  • 競合と比較した場合の優位性
  • SNS上での議論について
  • メルカリNFTが描く今後の事業戦略

NFT取引に興味のある方、自社事業にNFTを取り入れたい方はぜひ最後までご覧ください!

ブロックチェーン領域に可能性を感じ、インターンシップに参加

株式会社メルコインCEO  株式会社メルカリ メルカリNFT事業責任者  中村奎太氏
株式会社メルコイン CEO
株式会社メルカリ メルカリNFT事業責任者 
 中村 奎太氏

 ーーまずは、中村 奎太さんのお役職やミッションについて教えてください。

中村氏:僕はメルコインのCEOを務めています。メルコインとは、暗号資産やブロックチェーンに関するサービスの企画・開発を行うメルカリの子会社です。またメルカリ本体にも在籍しており、新事業であるメルカリNFTの事業責任者として活動しています。

このように、メルカリグループにおける暗号資産、デジタルアセットの事業推進が僕の役割です。

ーー中村 奎太さんのご経歴について、教えてください。

中村氏:僕はインターンシップを経て、メルカリに入社しました。

学生時代はAI分野を専攻しており、エンジニアとしてさまざまな企業のインターンシップに参加していました。そんな中でブロックチェーンに出会ったのが、大学2年生の終わり頃だった2017年です。これは世界を変える技術だとすぐに確信し、ブロックチェーン領域の仕事をしたいと思うようになりました。

しかし当時は、ブロックチェーンを使って新規事業に挑戦する企業はまだ珍しい存在で、その1社がメルカリだったのです。先端技術のR&Dプロジェクトを立ち上げる計画があると聞き、インターン生として参画しました。リサーチや研究に従事し、自律分散型取引プラットフォームのコンセプトモデル「Mercari X」の開発に携わってきました。

その後、インターンシップを経て、そのままメルカリに採用されました。入社時はちょうどメルペイという決済サービスの立ち上げ時期であり、僕は株式会社メルペイに配属されてキャリアがスタートしました。

メルペイで事業拡大に取り組んだあとは2021年4月よりメルコインに所属し、DirectorやCPO(最高製品責任者)を経て2023年4月からCEOとして活動しています。

初期から構想されていたマーケットプレイス事業

初期から構想されていたマーケットプレイス事業

ーー今回発表された『メルカリNFT』は、メルコインの事業なのでしょうか。

中村氏:メルコインではなく、メルカリ本体の事業です。

メルカリでは個人間取引のマーケットプレイスを運営してきました。このプラットフォーム上で扱える対象のひとつとしてデジタル資産を加えるべく、メルカリの新事業として展開しています。

ーービットコイン取引など、メルカリではこれまでにもWeb3に関連するサービスを打ち出してきました。そのような中で今回、メルカリNFTをローンチした理由について教えてください。

中村氏:長期的な視点において、メルカリのミッションと合致するからです。

メルカリは、物理的なモノに限らず「あらゆる価値を循環させる」という使命を掲げています。NFTの登場によって、今後はインターネット上でデジタル資産が取引される未来も必ず訪れるはずです。このような時代の到来を確信しているため、取引プラットフォームを運営するメルカリとしてNFTへの参入は必然でした。

ーーメルカリでは、2021年12月に「パ・リーグ Exciting Moments β」というプロ野球と提携したNFTサービスを展開していました。2021年当時、メルカリ社内においてNFTはどのような位置づけだったのでしょうか。

中村氏:実証実験としての位置づけで、NFTの活用方法を模索していました。

NBA Top Shotに代表されるように、2021年頃はNFTが大きなブームとなった時期です。しかし、一部の愛好家を除いて浸透している状況ではなかったため、メルカリでは多くの人にNFTを保有してもらう方法を探していました。そこで国民的な人気コンテンツであるプロ野球と提携し、一般のお客さまにも手に取りやすいNFTを提供したのです。β版という形でサービスを展開しながら、NFTのあり方を検証していました。

ーー2021年頃と比較して、2025年時点においてNFTを取り巻く市場環境はどのように変化したとお考えですか。

中村氏:2021年頃との違いは、現物資産の価値と紐づくようになった点です。

2021年から2022年にかけてNFTブームが到来したものの、当時はNFT自体の価値が乏しくマネーゲームの様相が強い印象でした。その後はマーケットが後退し、しばらくは苦しい期間が続きます。

しかし、2024年頃から状況は変わってきたようです。リアルワールドアセット(RWA)のように確かな価値を持つNFTが充実し、使いやすさも向上しました。多くのプロジェクトが苦しい期間を過ごしましたが、今は少しずつ良い方向に向かっていると考えています。

ーーメルカリNFTのプロジェクトは、いつ頃から始動していたのでしょうか。

中村氏:メルカリNFTの構想自体は、R&Dの時代から存在していました。

メルカリにとっての重要なテーマは、「世の中の人々にどのようにしてWeb3領域へとアクセスしてもらうか」です。そこでまずトークンを簡単に所有してもらうために、暗号資産取引を行うことができる販売所を開設しました。そして次の段階として送り出したのが、NFTのマーケットプレイスであるメルカリNFTです。デジタル資産を簡単に購入できるサービスを提供し、より多くの人にNFTを所有してもらおうと考えました。

このように、メルカリのWeb3戦略において初期の段階からNFTマーケットプレイスの展開を思い描いていたのです。

ーーメルカリの既存事業にNFTを組み合わせた際のポテンシャルについて、お聞かせください。

中村氏:NFTの活用によって、メルカリで取引される商品の幅が広がるはずです。

メルカリでは多種多様なカテゴリーの商品が流通しています。NFTを導入すれば、より多くのアイテムを扱えるようになるでしょう。例えば、クリエイターが制作したデジタルアイテムの販売も可能です。

また推し活やスポーツなど、現物のコレクションと紐づくNFTとして取引される場面も予想されます。このように、メルカリの事業との組み合わせによって大きなシナジー効果が生まれると期待しています。

ーー国内には、競合となるNFT売買サービスがいくつか存在します。これと比較して、メルカリNFTの優位性はどこにあるとお考えでしょうか。

中村氏:サービスと商品の2つの観点で大きな特徴があると考えています。

まずサービスに関して、メルカリNFTはライト層をターゲットとしており、初心者でも使いやすい設計になっています。NFTの購入にあたって、暗号資産もウォレットも必要ありません。

商品面での違いとしては、OpenSeaと連携できる点です。他社サービスの多くは、自社の取引所内で独自のコレクションを展開しています。これに対してメルカリNFTの場合、OpenSeaに出品されているNFTを取引できるため多種多様なアイテムを取引できます。

また、お客さまの属性が他社と異なる点も特徴だと言えるでしょう。一般的なNFTマーケットプレイスの場合、暗号資産取引所が関連サービスの一つとして提供しています。そのため、主なターゲットは暗号資産の投資家です。

一方でメルカリの利用者は、個人間での売買を楽しむお客さまが中心です。現物での取引に慣れ親しんだお客さまに対して、デジタル資産という新たな選択肢を提案できると考えています。

初心者でも扱いやすい設計を目指して

初心者でも扱いやすい設計を目指して

ーーメルカリNFTでは、「MEGAMI_NFT」や「WAFUKU GEN」がラインナップされています。これらのNFTコレクションは、どのような基準で選定しているのでしょうか。

中村氏:個々のプロジェクトに限定しているわけではなく、コレクション全体から一定のアルゴリズムで抽出しています。

具体的な指標は、プロジェクトの開始時期や取引ボリュームです。また国内法令と照らして暗号資産に該当するプロジェクトを除外しているほか、スキャム(詐欺)の危険性が高いコレクションもブロックしています。ほかにも、ゲーム内のアイテムNFTのように、現時点の機能においてユーティリティの恩恵を受けられないコレクションはリストアップされません。

このように一定の基準はあるものの、基本的にはさまざまなプロジェクトを取り扱う設計にしています。

ーー将来的に国内のNFTプロジェクトと提携する計画があれば、教えてください。

中村氏:すでに各プロジェクトからお声がけいただいており、さまざまな方策を前向きに検討しています。

メルカリNFTでも国産NFTは人気で、将来的にぜひコラボレーションしたいと考えています。現状ではライト層のお客さまに対する効果的なアプローチ方法を検証している段階であり、今年中にも何らかの施策を打ち出す計画です。

ーー将来的に、会員権やゲーム内アイテムなどのリアルワールドアセットを取り扱う計画はありますか。

中村氏:もちろん、今後取り扱いできるジャンルを増やしていく計画です。現状では「Courtyard」という現物のトレーディングカードと紐づいたNFTを扱うなど、リアルワールドアセット取引の検証に取り組んでいます。

課題となる点は、ユーティリティの受け取り方法です。現物商品を償還するための手順を検討しており、システム面が整備された段階で徐々に取り扱い可能な対象を拡充していきます。

ーーメルカリNFTでは、企業のウォレットでNFTを保管しているのでしょうか。

中村氏:はい。メルカリNFTで購入したアイテムは、メルカリのウォレットに保管されます。その上で、メルカリNFTのデータベースで各アカウントとNFTを紐付けています。

現状では、一部のコレクションを除きNFTに付随するユーティリティやエアドロップをお客さまは受け取れません。もちろん我々はこの課題の解決が不可欠だと認識しており、将来的に暗号資産ウォレットの接続や出庫の機能を実装していきます。

とはいえ、現実問題として我々がターゲットとしているライト層のお客さまは、暗号資産ウォレットの扱いに不慣れです。そこでまずはメルカリNFTのウォレットにエアドロップされたトークンを各アカウントに紐付けるなど、ライト層でも気軽に扱える仕組みも並行して実現していく予定です。

世の中の人にNFTを保有してもらう上では、このようなステップバイステップの取り組みが重要だと考えています。

グローバル市場に進出し、NFTの流動性を高める

グローバル市場に進出し、NFTの流動性を高める

ーーメルカリNFTの公式サイトによると、「お客様が対象NFTを保有することはブロックチェーン上に記録されません」とあります。将来的に、メルカリNFT内部での取引記録をブロックチェーン上に刻む計画はありますか。

中村氏:暗号資産ウォレットの課題と同様、将来的にアップデートが必要な点だと認識しています。

取引履歴の記録も重要な点ですが、どちらかというとクリエイターへの報酬還元の観点で解決すべきテーマです。メルカリNFTは、クリエイターへの支援を大切にしています。そこでNFT取引がクリエイターのサポートにつながるように、制作者に利益が還元される仕組みを実装していく計画も進めています。オンチェーン化だけに固執しているわけではなく、オフチェーンによる送金など幅広い選択肢を考えているところです。

ーー現状ではメルカリNFTに入庫されたNFTは外部へ出品できません。これにより、「NFTコレクションの流動性が下がる」との意見も見受けられます。流動性の観点について、どのようにお考えでしょうか。

中村氏:他のNFTマーケットプレイスにおいても、コレクション全体の中で出品中のNFTの数は限られています。そのためメルカリNFTに入庫されたからといって、極端に流動性が低下することはないと考えています。

暗号資産に馴染みのないライト層のお客さまに注目した場合、メルカリNFTでは幅広い利用者に届けられるため、NFT自体の流動性は大幅に高まるはずです。将来的にはグローバル展開も計画しているため、世界中の人にNFTを届けられるようになります。

また、今後のアップデートによってさらに開かれたNFTマーケットプレイスを目指すつもりであり、流動性はさらに高まっていくと予想しています。

ーーもし仮にサービスが終了した場合には、メルカリNFTで保有しているコレクションはどのようになるのでしょうか。

中村氏:メルカリNFTのプロジェクトはメルカリとしても重要な位置づけであり、基本的にサービスが終了する懸念はありません。方向性を変える場面はあるかもしれませんが、中長期的な成長を目指して事業に取り組んでいきます。

ーーメルカリNFTについて、実際に利用されているユーザー層を教えてください。

中村氏:ローンチから1週間ほどが経過した現時点では、メルカリのコアユーザーが多い印象です。

当初の想定よりも売上は大きく、特にメルカリNFT内での二次流通が活発です。メルカリのお客さまは個人間での売買に慣れているため、その傾向がNFT取引にもマッチしたのでしょう。

SNS上で巻き起こった予想を上回る反響

SNS上で巻き起こった予想を上回る反響

ーープレスリリースが発表された際は、メルカリNFTの中央集権的な仕組みに関してSNS上でさまざまな議論が交わされていました。これほど大きな反響は予想していたのでしょうか。

中村氏:業界内で話題になってほしいと期待していましたが、予想を超える反響があったため驚きました。

NFTをより多くの人に届ける目的があったため、メルカリNFTでは初心者でも扱えるように最小限の機能に限定しました。結果として、中央集権的な仕組みに現状はなっています。

僕自身がWeb3の研究開発に従事してきた立場であるため、「自律分散的ではない」との批判もよく理解しています。ただ、もちろん現状の機能だけで満足するつもりはありません。今後はアップデートを繰り返しながら機能を拡充していくため、ご期待いただければと考えています。

ーー今後のビジョンや計画について、教えてください。

中村氏:今後について、主に4段階の成長フェーズを描いています。

まず1つ目は、オリジナルコンテンツの拡充です。現状ではOpenSeaからのアグリゲーションによってラインナップを揃えていますが、IPホルダーやクリエイターと連携しながら独自コレクションを打ち出していきます。

2つ目がユーティリティの活用です。ユーティリティ利用が制限されている状態では、NFTの真の価値を提供できません。そこでNFT保有者がユーティリティを利用できるように、システム面をアップデートしていきます。

3つ目が、ウォレット機能の強化です。ウォレットを持たない人もユーティリティを活用できるようにするとともに、外部ウォレットとの接続も実現します。

そして最後がグローバル展開です。メルカリのマーケットプレイスでは、越境事業が徐々に拡大しています。しかし現物アイテムだと通関の課題もあり、輸出入に苦労しているのが実態です。

これに対してデジタルアイテムの場合、グローバル取引も容易です。国境という概念がなくなりグローバル市場にアクセスできるため、大きな可能性を秘めています。メルカリNFTでは、世界的なNFT取引所を目指して成長していく計画です。

これら4つのフェーズを通じて、事業拡大を進めていきます。

ーー最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

中村氏:まずはNFTを体験してみてほしいです。メルカリNFTには面白くて新しいものが数多く並べられています。実際に見てみると色々な発見があるはずなので、ぜひメルカリNFTを利用してみてください。

また、メルカリNFTではIPコンテンツとのコラボレーションを積極的に進めていく計画です。そこで、IPホルダーやクリエイターの方とさまざまな形での協業を実現していきたいと考えています。メルカリNFTに興味を抱いた際は、ぜひ気軽にお問い合わせください。

メルカリNFTの詳細はこちら

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参照元:NFT Media

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