米SECゲンスラー委員長が来年1月に退任へ、功績評価の一方で反発や批判も

米SEC委員長が来年1月に退任へ

米証券取引委員会(SEC)のゲイリー・ゲンスラー(Gary Gensler)委員長が、ドナルド・トランプ(Donald Trump)次期大統領が就任する来年1月20日に退任することになった。ゲンスラー氏は力強いリーダーシップを発揮して米金融業界の透明性を高め、システムリスクを軽減し、利益相反を排除することを目指して数十もの規則を策定し、一部は法廷闘争に持ち込まれた。

トランプ氏はゲンスラー氏の後任を明言していないが、ともにSEC委員で共和党員のヘスター・ピアース(Hester Peirce)氏またはマーク・ウエダ(Mark Uyeda)氏のいずれかを暫定委員長に指名するとの見方が濃厚だ。

2021年にバイデン大統領によって指名されたゲンスラー氏は「素晴らしい責任を私に託してくれたバイデン大統領に感謝する。SECは私たちの使命を果たし、恐れやひいきをすることなく法律を執行してきた」との声明を出した。

ゲンスラー氏は連邦議会の求めに応じ、米国に上場する中国企業の監査役をSECが監督する規則を導入。また、米金融業界がテキストやワッツアップ(Whats App)などの無許可の手段を利用して商談を進めたことを数年間の調査で突き止め、米金融大手のJPモルガン・チェース(JPMorgan Chase)やゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)など数十社に計20億ドルを超える制裁金を科した。

また、暗号資産(仮想通貨)交換所のコインベース・グローバル(Coinbase Global)やクラーケン(Kraken)、バイナンス(Binance)などがSECへの登録を怠り、SECの規則に違反するとして提訴。暗号資産関連で、裁判所の大部分はSECを支持する判決を下した。

一方、ゲンスラー氏の妥協を許さない姿勢には米金融業界や共和党議員が激しく反発し、一部の民主党からも批判が出た。

一例として連邦高裁は今年6月、プライベート(私募)ファンドの透明性を強化するSECの新規則を巡ってファンド業界が起こした訴訟で規則がSECの権限を逸脱しているとして無効化する判決を下し、SECに大きな打撃となった。

この敗訴と他の係争案件の影響を受けて今年に入ってからSECの規則制定が遅れており、長期的に悪影響を及ぼす恐れがある。

ゲンスラー氏の暗号資産に対する厳しい姿勢は誤った考えに基づいており、技術革新を阻害して暗号資産企業を海外に追いやることで米経済に損害を与えたという批判も一部ある。

トランプ氏が指名するゲンスラー氏の後継者は暗号資産の取り締まりを直ちに終了させ、ゲンスラー氏の在任中に導入された規則の多くを見直し、訴訟を通して進行中の強制執行を撤回し、資本形成の促進に焦点を当てた規則の変更を追求すると予想されている。

※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
米SEC委員長が来年1月に退任へ 功績評価の一方で反発や批判も
(Douglas Gillison)
翻訳:大津賀新也(あたらしい経済)
参考:SEC
画像:Reuters

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参照元:ニュース – あたらしい経済

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