【NFTプロジェクトが地方にコワーキングスペースを建設】「Live Like A Cat」 ファウンダーのしゅうへい氏にインタビュー
「猫のように生きる」がコンセプトのNFTプロジェクト「Live Like A Cat(以下、LLAC)」が、愛媛県今治市にコワーキングスペース「LLACハウス」を建設しています。このプロジェクトに投じた総額は、なんと8000万円。
匿名性や分散性を重んじるNFTの世界において、なぜこれほどの金額をかけて現物の不動産を所有しようというのでしょうか。
そこで、今回はこのLLACハウスの建設プロジェクトについて伺うべく、LLACのファウンダーである村上周平氏(しゅうへい氏)へインタビューを行いました。
以下の疑問にお答えいただき、LLACが描く「地方創生」に迫ります。
- 「猫のように生きる」がコンセプトのNFTプロジェクトとは?
- コワーキングスペースの建設に至った経緯とは?
- LLACハウスを起点とした地方創生とは?
- LLACが描く今後の事業展開とは?
自社事業にNFTの活用を考えている方、Web3プロジェクトを運営している方、NFTを活用した地方創生に興味のある方はぜひ最後までご覧ください!
猫の生き様にヒントを得たNFTプロジェクト
ーーまずは自己紹介をお願いします。
しゅうへい氏:LLACで代表を務める村上周平です。
「株式会社むらかみかいぞく」という企業の代表取締役として、LLACの企画・運営に携わっています。またLLACの他に、オンラインスクール「フリーランスの学校」も展開しています。
ーーNFTプロジェクト「LLAC」について、概要をお聞かせください。
しゅうへい氏:「Web3時代のライフスタイルブランドを作る」というテーマのもと、LLACではコミュニティ主体のNFTプロジェクトを推し進めています。
コンセプトである「猫のように生きる」を一つの問いと捉えて、あるべき「人間の生き方」をコミュニティのメンバーと共に模索しています。LLACが目指しているものは、いわば、生き方のアップデートです。猫のキャラクターNFTを通じて、このような活動を広めています。
ーーNFTプロジェクト「LLAC」を立ち上げた経緯について、お聞かせください。
しゅうへい氏:1度目のNFTプロジェクトでの挫折から、コミュニティ主導型のLLACが生まれました。
僕が最初に立ち上げた個人プロジェクトは、2021年リリースの「CryptoBuddha(クリプトブッダ)」です。しかし、いくつかの作品を流通させたものの、なかなか思うようには進みませんでした。
その一方で同時期にプロジェクトとして伸びていたのが、イケハヤ氏が率いる「CryptoNinja」でした。このプロジェクトを支えているのが、Web3コミュニティ「NinjaDAO」の存在です。CryptoNinjaの運営方法をみて、僕は「コミュニティの熱量こそが成功の要因だ」と気づかされました。
このような経緯から、フリーランスの学校を起点としたコミュニティ型NFTプロジェクトの構想が生まれました。
ーーLLACのプロジェクトでは、なぜ猫をシンボルにしているのでしょうか。
しゅうへい氏:僕自身元々飼っている「セトさん」という猫と暮らす生活で、「猫の生き方ってすごいな」と思ったのがきっかけです。
また、フリーランスの学校を運営する中で、特定の組織に属さない働き方が猫の生き方と重なって見えました。そこで「猫の生き方」をNFTプロジェクトのテーマにしたいとイケハヤ氏に相談したところ、「Live Like A Cat(猫のように生きる)」というアイデアをもらったという流れです。
このようにして、猫をシンボルとしたコミュニティ型NFTプロジェクトが誕生しました。
故郷である瀬戸内の将来を見据えて
ーーLLACがコワーキングスペースを建設するに至った経緯について、お聞かせください。
しゅうへい氏:魅力ある瀬戸内の暮らしを後世に繋いでいくために、コワーキングスペースの建設を決めました。
私の生まれ育った今治市は、多くの自治体と同様に過疎化と少子化の課題に直面しています。よって、100年後や200年後には、今のライフスタイルを維持できないかもしれません。なぜ高校生や大学生が瀬戸内を離れて都会に向かうのかというと、IT企業のような若年者に人気の会社が都会にあるからです。
ですが、実際には今治市内にもITを生業として働いている人はたくさんいます。ただ、このような人々はリモートワーカーとして自宅に籠もって作業しているため、学生の目に触れる機会はありません。
やはり、事業所や工場のように目に見える形で身近に存在していなければ、学生の就労先として認知してもらえないわけです。つまり、IT業界に携わるリモートワーカーやフリーランスも、実際に働いている姿を島の方々から見てもらうことが重要なのです。
瀬戸内でもIT系の仕事ができると分かれば、学生たちも地元に残ろうと判断するかもしれません。そこで若者に選択肢を示すためにも、地域のシンボルとしてのコワーキングスペースが必要だと考えました。アイディアベースではありますが、こういった思いを10年くらい抱いていました。
とはいえ、自分ひとりで施設を建設するのは大変です。以前にも土地の取得などを試みましたが、ハードルの高さから実現しないままでいます。
このような経緯があった中で、NFTプロジェクトを通じて拠点作りができれば面白いのではないかと思いつきました。ちょうどLLACも軌道に乗り始め、資金面でも土地取得の目処が立ったために、コワーキングスペースの建設プロジェクトが始動したのです。
ーーコワーキングスペース建設のノウハウは、どのように習得したのでしょうか。
しゅうへい氏:コミュニティ内にさまざまな分野のプロフェッショナルがおり、自発的に協力を申し出てくれました。
具体例として一級建築士の資格を持つメンバーも在籍しており、彼らが基本となる設計を描いてくれたのです。他にも、コミュニティメンバーが協力し合い、コワーキングスペースに必要な機能のアイデアをまとめてくれました。
LLACのメンバーは、「好き」や「応援したい」といった感情がモチベーションに繋がっているのでしょう。プロジェクトに参加すること自体に価値を見出してもらえるように、ファウンダーである僕もSNSや音声配信を通じてLLACの世界観を伝えるようにしています。
LLACハウスを起点に、地域活性化へ繋げる
ーーコワーキングスペース「LLACハウス」の用途について、お聞かせください。
しゅうへい氏:LLACハウスには、以下のようにいくつもの機能があります。
- コワーキングスペース・・・自宅以外で働ける場所
- セミナールーム・・・大人や子ども向けの講座を開く空間
- 書籍の展示スペース・・・未知の知識に出会う場
- 対談・スタジオスペース・・・情報発信の拠点
- 地域のコミュニティ・・・マルシェやイベントを開催できるスペース
このように、LLACハウスはフリーランス専用の施設ではありません。リモートワーカーや地域住民、NFTホルダーなど、利用者に応じて異なる側面を見せます。
例えば、セミナーやイベントの開催を通じて、リモートワークに興味があるライト層の受け皿にもなります。また、リモートワークとは無縁の地域住民であっても、マルシェやキッチンカーのイベントによってLLACハウスの活用が可能です。
加えて、NFTホルダーやリモートワーカーが旅の途中に立ち寄ることも想定しています。このようにして今治市の関係人口が増えていけば、地方創生の観点でも貢献できるはずです。
僕がイメージしているのは、LLACハウスを本丸とした城下町です。LLACハウスを軸として周辺にリモートワーカーや地域住民が集い、町全体が発展していく姿を描いています。
とはいえ、今回建設したコワーキングスペースは、現時点の今治市にとっては必ずしも必要な施設ではありません。ビジネスとして成立させるためならば、むしろカフェや飲食店を開業した方が良かったでしょう。しかし、10年20年先の今治市を見据えた時に、このコワーキングスペースの存在が重要になると確信しています。
ーーコワーキングスペース建設について、2024年10月時点の状況をお聞かせください。
しゅうへい氏:工事はすべて完了し、ついに10月から本格的に始動しています。。
グランドオープンを記念して、10月14日には落成式が執り行われました。
中部や関東など遠方から駆けつけてくれた方も多く、一日の来場者は400〜500名ほど。1,000円分の食事券を18歳以下の子供に配布し、予定数の100枚をほぼ配り切り、大変喜ばれました。この島において、これだけたくさんの人が一ヶ所に集うのは驚くべきことです。今治市長である徳永繁樹様にもご臨席賜り、盛大な祝賀ムードの中でテープカットも実施されました。
お祭りのような雰囲気でキッチンカーも並び、地域の子ども達にとっても楽しい時間を過ごしてもらえたようです。
僕にとって印象に残った点が、ねこぬしさん(NFTホルダー)達が自発的にイベント運営を支えていたことです。誰に指示されるわけでもなく玄関掃除を始めるなど、ねこぬしさん達の献身的な姿勢に助けられました。
このような素晴らしいコミュニティの存在を大事にし、さまざまな人が集える空間づくりに向けて今後も活動していきます。
ーーコワーキングスペース建設にあたり、特に苦労した点をお聞かせください。
しゅうへい氏:特に苦労した点が、2つあります。
1つ目は資金調達です。LLACハウスの建設にあたり、土地代1800万円と上物代6000万円ほどが掛かります。ただ、発案当初はNFT市場も盛り上がっており、十分に資金を捻出できると試算していました。しかしNFT業界の勢いが一服しつつあったため、、自己資金だけでの建設はハードルが上がってしまったのです。
そこで地元の銀行からの融資を考えたものの、今度は審査に苦戦しました。なぜなら、地方銀行にとってNFTプロジェクトは未知の領域であり、貸し付けの前例がないからです。運が良かったことにコミュニティメンバーの中に金融機関出身者がいたため、彼の協力を得ながら審査を通すために奔走しました。
2つ目に苦労した点が、農地転用の手続き(※)です。
取得した土地の3分の2が農地扱いだったため、地目の変更が必要だったのです。とはいえ、審査者である農業委員会にとって、コワーキングスペースはさほど馴染みがありません。そこでなんとか理解してもらおうと、前提となる基礎知識から丁寧に説明しました。
これらの苦難を乗り越えて、ようやくの思いで建設に漕ぎ付けたのです。
※ 農地転用の手続き・・・土地はエリアごとに用途(地目)が制限されており、他の目的で使用できない。特に農地は管理が厳しく、地目の変更には農業委員会の承認を必要とする。
ーーLLACハウス建設について、コミュニティメンバーの反応をお聞かせください。
しゅうへい氏:プロジェクト開始時からコミュニティメンバーの熱量は高く、土地の購入前から駆けつけてくれる人もいた程です。一緒に草刈りを行うなど、建設の過程をコミュニティメンバーと歩んできました。
ーーLLACハウス建設について、近隣住民の反応をお聞かせください。
しゅうへい氏:物珍しさからか、工事期間中は大いに注目を集めました。実際、上棟式で餅まきをした時には、近隣の方が数多く参加されています。
ただ、人によってLLACハウスに対する反応の仕方はさまざまです。
移住者や若者は、新たな作業スペースの誕生に興味を抱いているようです。先日も、隣の島の女子高生らしき若者がオープン前のLLACハウスを訪れ、施設に関する説明を興味津々で聞いていました。
一方で、正直なところ近隣の高齢者はコワーキングスペースにそれほど興味がないようです。彼らにとっては、むしろ喫茶店やレストランといった施設の方が喜ばしいのでしょう。
これは、決して地域住民と移住者との二項対立を煽っているわけではありません。しかし、現実には明確な反応の違いがあるようです。そもそも、地元の高齢者にとってはリモートワークという慣習が浸透していないため、LLACハウスの活用方法をイメージできないのでしょう。
とはいえ、実際に建物の中で働くリモートワーカーの姿を目の当たりにすれば、何が行われているのかを具体的に理解できるようになります。自分の子どもや孫がLLACハウスで過ごすようになれば、徐々に肯定的な意見へと変わっていくはずです。
ーーLLACハウスの誕生によって、どのような変化がありましたか。
しゅうへい氏:一番の変化は、「逃げられなくなった」という点でしょう。
Web3プロジェクトの多くは匿名で運用されており、稀にラグプルも発生します。これに対してLLACは登記済みの法人が主体であり、LLACハウスという不動産まで保有しています。要するに、NFTホルダーに対して「プロジェクト運営から逃げない」という姿勢を示しているのです。
また、今後は実在の施設であるLLACハウスが、NFTに接する際の入口になるかもしれません。従来のWeb3は、ブロックチェーンに詳しいアーリーアダプターのみが参入していました。一方で、「たまたま立ち寄ったLLACハウスをきっかけにNFTを知る」という新たな流れが生まれれば良いと考えています。
真摯にNFTプロジェクトへ取り組み、瀬戸内の地から地方創生の成功事例を生み出せたならば、Web3に対する世間の捉え方もポジティブなものに変わっていくはずです。さらに銀行の審査が通りやすくなるなど、後続のプロジェクトにも良い影響を及ぼします。
結果として、日本各地でWeb3に挑戦しやすい風土が醸成されるでしょう。
今治で成功事例をつくり、全国に波及させる
ーーLLACでは、今治ブランド戦略会議との協力のもと、今治市を舞台としたデジタルスタンプラリーを開催しました。この他にも、2024年9月には今治市へのNFTアート寄贈を行っています。このようなNFTプロジェクトの取組みについて、自治体である今治市の反応をお聞かせください。
しゅうへい氏:今治市はデジタルやWeb3にも前向きな姿勢で、強い関心を示しています。
今治市には、魅力的な観光地や特産品が数多く存在します。とはいえ、スマホ全盛期の昨今ではSNSなどを通じて主体的に情報を発信していかなければ、多くの人に伝わっていきません。この点について行政も危機感を抱いているようで、デジタル分野に関してかなり積極的に取り組んでいる印象です。
ーーLLACハウスについて、今後の展開をお聞かせください。
しゅうへい氏:プロジェクト当初から、「LLACハウスを全国に展開させる」とのビジョンを描いています。この実現に向けて、まずは今治のLLACハウスで実績を残していきます。
今治のLLACハウスは、いわば1号店です。僕の地元である瀬戸内でコワーキングスペース運営のノウハウを蓄積し、全国の風光明媚な名所に次なるLLACハウスを開設していきます。
今回のLLACハウスの建設によって、地域社会への経済効果を実証できれば、他の地域の自治体や企業の方から関心を持ってもらえるようになるでしょう。
地域社会の活性化という観点において、LLACハウスはふるさと納税と似た性質があります。全国の人に自分の故郷を知ってもらい、観光やワーケーション目的での訪問を促して、継続的な経済効果に繋げるのです。
成功事例として認知してもらえるように、今治のLLACハウスでの活動に注力していきます。
ーー最後に読者の方へのメッセージをお願いします。
しゅうへい氏:LLACでは、自治体や企業などの提携先を募集しています。
具体的には、コラボ企画やスポンサーシップといった協業が可能です。これまでに「LLAC企業スポンサー」として株式会社ハゴロモやKDDI株式会社に就任していただきました。
またNFTプロジェクトだけでなく、コワーキングスペースであるLLACハウスでもスポンサーを受け付けています。スポンサーになると施設内の本棚に企業の宣伝グッズを配置でき、ウェビナーの際に背景として配信されます。
この他にも、セミナーやマルシェイベントなどのコラボ企画も大歓迎です。ご興味のある方は、むからみかいぞくのお問い合わせフォームからご連絡ください。
▼LLACの詳細はこちら
- Live Like A Cat ウェブサイト :https://llac.fun/
- Live Like A Cat 公式X :@LLAC22222
- 株式会社むらかみかいぞく ウェブサイト:https://murakami-kaizoku.jp/
- 村上周平 X :@shupeiman
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