〜未来を切り拓くイノベーター〜MYUUU社CEO室谷氏の挑戦とビジョン
こんにちは!NFT Mediaオフィシャルインタビュアーの河上純二です!
今回は、Web3系ビジネスと生成AIのビジネスで新しくスタートアップを立ち上げた、MYUUU社の代表である室谷東吾氏にインタビューを行いました。
- MYUUUってどんな会社?
- TERRARIUMはどんなサービス?
- 今後の動き・展開は?
などの疑問にお答えいただき、MYUUUやTERRARIUMの魅力をお伝えしていきます。
Web3と生成AI事業を展開する会社「MYUUU」
Q.まずMYUUU社がどういった会社なのか教えてください。
MYUUUは、2023年2月に立ち上げたドバイを拠点とするスタートアップです。
事業としては、Web3および生成AIの2つをメインに展開しています。
Web3事業においては、「集合知」をコンセプトにしたブロックチェーンゲームを開発しています。
一方の生成AI事業では、AIコンサルティング(生成AIを活用したDX支援)を提供している会社です。
Q.創業から約一年とフレッシュな会社ですが、MYUUU社を創業したきっかけや経緯についてお聞かせください。
元々、キャリアとしては高校生の頃からメディアを運営し、新卒でKDDIに入社、その後DeNAでメディアの責任者を務めていました。
そこから独立し、コンテンツマーケティング支援に特化したメディアエンジンを創業しました。
当時は、東証一部上場企業である旧デジタルホールディングス、現在の博報堂DYホールディングス傘下のソウルドアウト株式会社に売却した経歴があります。
その際に、ロックアップ期間が終了し、新たな一歩としてMYUUU社を創業しました。
ちなみに、大手マス・ネット広告代理店の経営陣やWeb3とポイ活サービス最大手の経営陣、上場企業の経営者、Web3特化のシンガポール拠点のVCなどを中心に資金調達を行いました。
Q.なぜ事業にWeb3を選ばれたのでしょうか。
明確なきっかけがあったわけではないのですが、強いて挙げるとすれば、2021年に流行ったSTEPNですかね。
私個人も2017年から暗号資産に投資していましたが、2021年ぐらいに本格的に投資し始め、当時はちょうどdAppsが出始めた時期でした。
DeFiに遊びがくっつき、GameFiと呼ばれ始めてきたフェーズで、モバイルのネイティブアプリでSTEPNが出てきてですね。
歩いて稼げる点にかなりの衝撃を受けたというのが、きっかけとしては大きいかもしれません。
Q.「MYUUU」という社名の由来をお聞かせください。
社名について深い意味はありませんが、私自身ポケモンが大好きで、特にどんな技でも覚えられる「ミュウ」が好きでした。
他にも突然変異体のミュータント(Mutant)から文字を取っています。
私自身、長い間コンテンツやクリエイティブに携わってきたため、「Web3や生成AIなどの新興テクノロジーを駆使し、時代に即したさまざまなプロダクトを非連続的にリリースしていく」という意志から、この社名を選びました。
Q.創業地をドバイに決めたきっかけはありますか?
法律や税制面の問題もありますが、クリプトといえばドバイが強いので、どうせなら中心地に行こう、ということで会社設立と移住を決めました。
MYUUU社のWeb3事業について
ここからは、MYUUU社のWeb3事業について深掘りしていきます。
"みんなで作る植物図鑑"をコンセプトにしたWeb3サービス「TERRARIUM」
Q.「TERRARIUM」はどんなサービスでしょうか。
TERRARIUMは、「みんなで作る植物図鑑」をコンセプトにしたWeb3サービスです。
このプロダクトには、Web3メディアとしての側面とWeb3ゲーム、つまりブロックチェーンゲームとしての側面があります。
まずWeb3メディアの側面でいうと、世界中のユーザーが植物に関する情報を投稿します。
情報を投稿するとトークンが稼げるし、投稿内容に対して評価をした方も、報酬としてトークンがもらえる仕組みです。
それらが集合知になり、UGC的にコンテンツが作られていくメディアを作っています。
一方のブロックチェーンゲームでは、スマートフォンのカメラを使って植物をスキャンすると、AIが自動で植物の名前を判定します。
判定に成功すると、トレジャー(宝のようなもの)が出現し、そのトレジャーのレア度やトレジャー数をプレイヤー同士で競い合うゲームです。
また、ゲームを通じて集めた植物の画像や位置情報は、Web3メディアに投稿されます。
ゲームをプレイすることでも、世界中からUGC的に植物の情報が集まり、みんなで植物図鑑を完成させる仕組みとなっているのです。
Q.コアな部分がメディアで、そのトラフィックゲートウェイの役割を果たすものがブロックチェーンゲームということですね。なぜメディアとゲームを組み合わせようと思ったのでしょうか?
先ほど挙げたSTEPNが2021年に大流行したことは記憶に新しいのですが、その際に課題になった点がエコシステムの持続性です。
STEPNで稼げるトークンの原資は、スニーカーNFTを購入したユーザーから捻出されます。
これには、新規ユーザーが増え続けなければ原資が枯渇し、トークン価格が下落し続けるという課題があるんです。
私自身もSTEPNのプレイヤーとして、数千万円ほど投資して実際にプレイしました。
その際に感じたのが、なぜ「歩く」というデータを活用したり、「健康になりたい」という企業が喉から手が出るほど欲しいユーザーセグメントにマネタイズしないのか、という点です。
一方で言い方は悪いかもしれませんが、「単なる歩数計アプリにトークンが稼げる」というゲーミフィケーションと経済的インセンティブが組み合わさっただけで、これほど多くのユーザーを熱狂させることができたことにはとても驚きました。
そこで、ゲーミフィケーションやトークンインセンティブを付与することで、人がしたくないことをしてもらい、その際に発生した役務やデータを第三者に販売することで、サスティナブルなエコシステムが構築できるのではないかと考えました。
ですので、私が作っているものはゲームではなく、「世界規模かつジャンル特化型のクラウドソーシングサービス」とも言えます。
Q.なぜテーマに「植物」を選んだのでしょうか?
多くの投資家から「ニッチすぎない?」と言われますが、一番の理由は、エンタメ寄りのゲームを作りたくなかったからです。
グローバルで見ると、数十億規模の資金調達を行う会社が多いですし、最近で言うとスクエニのようなIPを持つゲーム会社が参入しています。
そんな状況を見て、普通のエンタメ寄りのゲームを作っても勝てないと思ったんです。
ですので、どちらかというとゲーミフィケーション寄りのゲームを探してました。
それで、植物を選んだ理由ですが、App Storeのアプリランキングを眺めていた時に、植物をスキャンしてAIで名前を判定するアプリが、長い間、有料課金アプリの世界ランキングで上位に入っていたことがきっかけです。
AIで植物の名前を判定し、お金がもらえるゲームにしたら面白いんじゃないかと思ったんです。
また実際に調査してみると、植物の検索ボリュームは、金融や美容の数倍多いことに気づきました。
グローバル規模で言えばWikipediaが強いですが、WikipediaのPVと代替してすべてを広告収益化したらかなりの広告収益をグローバル規模で作ることができるんじゃないかと思ったのがきっかけだったりします。
Q.TERRARIUMではどんな外貨が生まれる想定でしょうか?
マネタイズポイントとしては3つあります。
1つは広告です。
先ほども述べたように、「植物」というテーマは、Googleの検索ボリュームが非常に多いジャンルです。
ユーザーがゲームをプレイすればするほど、図鑑が完成し、コンテンツが自動的にリッチになります。
そこで集めたユーザーを広告でマネタイズし、発生した収益全額をユーザーに再配分する、という仕組みになっています。
一般的なブロックチェーンゲームは、小さいプロジェクトだと日本円で数千万単位の流動性(原資)を提供することが多いですが、その原資はNFTの購入費用から捻出したり、運営が自腹で捻出するわけです。つまり持続性がありません。
しかし、もし安定的な広告収益を毎月数千万〜数億円単位で作り、収益の全てを流動性に提供できたら、「持続性の高いエコシステム」ができるかもしれません。
2つ目が、データ販売です。
今現在、某国立大学の佐々木教授と連携し、監修いただいていますが、実は植物の生息地データというのは希少で、気候変動予測などに役立つと言われています。
フェノロジーという概念があり、これは「植物の成長過程を撮影・記録し続けることで、気候変動の予測が可能」という概念です。
また、植物は分類学上、葉脈や葉の大きさが重要と言われています。
これらの画像を同じ規格で、撮影時期、位置情報などの情報とセットで大量に集めることができれば、植物分類学における新しい研究手法を作れる可能性があります。
これまで植物分類学者や生物多様関連の研修者が、わざわざ東南アジアやアマゾンに赴き、植物を採取して研究していたわけですが、そのコストをプレイヤーに代替してもらうことが可能になるかもしれません。
3つ目がReFi(Regenerative Finance)との接続です。
パリ協定で日本は「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」と宣言したわけですが、現時点の技術だと実質的に不可能だと言われています。
カーボンクレジットというCO2を削減する権利を売買できる仕組みがあるのですが、その仕組みを使って、CO2を削減する権利を他国から買い取り、実質的に0にするほかありません。
カーボンクレジットを高い透明性かつ、オンチェーン上で売買できるWeb3プロジェクトが増えていますが、そういったサービスと接続することで、例えばカーボンクレジットに小口で投資できたり、 プレイヤーのカーボンクレジットをまとめて販売し、収益を戻す、といった取り組みもできるかもしれません。
データ販売とReFiとの接続に関しては、プロジェクトの進捗状況を見て検討していきますが、1つ目の広告については非常に難易度が低く、既に国内外でWeb2メディアとして成功している事例もあるため、再現性が高いと思っています。
"リアル宝探し"をコンセプトにした「TERRARIUM TREASURE」
Q.今回先行リリースされる「TERRARIUM TREASURE」の概要について詳しく教えてください。
TERRARIUM TREASUREは、「リアル宝探し」をコンセプトにしたブロックチェーンゲームです。
世界観としては、世界中の宝をいたずら好きな魔女が植物に変えて、隠してしまった。そこでプレイヤーはトレジャーハンターになってもらい、世界に隠された植物を探す旅に出かける、というイメージですね。
シーズンごとにトレジャーのレア度とトレジャー数を競い、上位ランカーが賞金を総取りできる仕組みです。
希少性が高い植物を上手にスキャンできればできるほど、報酬が高くなります。
いち早く誰もスキャンしていない植物を見つけるとボーナスが付与され、逆に誰かが既に発見している植物や過去にスキャンした植物を再度スキャンするとペナルティが課されます。
実際に外に出かけて「レアな植物を発見する楽しさを演出したい」という想いで、この機能を実装しました。
今回、私たちは安定的な外貨供給をコンセプトにしています。
プレイヤー数が増え植物図鑑がリッチになると、広告収益が増え、その収益の全額をユーザーに還元するため、最終的にはプラスサムゲームを作るつもりです。
また今後は、Web2ユーザー、特にポイ活ユーザーの獲得も目指します。
植物をスキャンすると、トークンだけでなく、実際にお店で使える無料クーポンや現物がドロップされる仕掛けも用意していきます。
こうした取り組みを増やすことで、「Web2とWeb3の融合」を目指していきます。
また、Web2ユーザーは投機家ではないため、いわゆるポイ活サイトの広告申し込みでNFTが購入できるような仕組みを検討しています。
そうすることで、投資家以外の一般層もゲームへの流入を見込めますし、広告収益をWeb3ユーザーに還元することで、プラスサムゲームを作れるかもしれません。
初期はよりシンプルなゲーム設計にしており、成熟したタイミングで、他のプレイヤーのトレジャーを盗んだり、トレジャー同士を合成して新しいトレジャーを作るなどの機能を実装していく予定です。
Q.TERRARIUMの開発にあたり、大変だった話や失敗談などがあればお聞かせください
オンチェーンとオフチェーンの切り分けについてかなり議論しました。
例えば、新種の植物を最初に発見したユーザーの記録をオンチェーンに刻むことで、その植物の第一発見者としての記録を保持できます。
ユーザーからの植物に関する情報提供や、ユーザー同士の情報の評価履歴をオンチェーンに刻むことで、ユーザーごとの信用スコアを創造することも可能です。
ただ、私たちはWeb3ネイティブなプロジェクトではなく、マスアダプションを目指したWeb2.5的な位置付けのプロジェクトです。
ガス代やウォレット接続を前提としたサービスではWeb2ユーザーを取りこぼしてしまいます。
そこで可能な限りオフチェーンでデータを保持し、まずはWeb3ユーザーとともにWeb2ユーザーも集めます。
その後、徐々にオンチェーン化していくアプローチを検討しています。
また、大変というわけではないですが、投資家に「植物」というジャンルを理解してもらうことに苦労しました。
僕自身のキャリア的には結構ビジネス寄りで、ガンガン利益を作る事業をしていたことが多かったので、なおさらなんで植物なの?と言われることが多かったです。
実はそこそこマーケットが大きいことや、ビジネス的な拡張の余地が大きいことを説明しなければいけないので、その点はちょっと大変でした。
Q.グローバルでのサービス拡大を狙っていると思いますが、どんなグローバル戦略を考えていますでしょうか。
まずは日本向けのマーケティングから始め、その後東南アジアを中心に展開していくつもりです。
現状、日本ではOasysをはじめ、ブロックチェーンゲームが盛り上がりを見せていますし、STEPNが流行ったきっかけも日本だと言われています。
TERRARIUMは、STEPNのサービスとも非常に似ているため、STEPNユーザーもぜひサービスを使って欲しいです。
また、東南アジアは植物の宝庫で、実際に東南アジアに赴く植物分類学者も多いようです。
東南アジアは英語圏の国も多いため、 東南アジアで収集した情報を、広告単価の高いアメリカ圏に展開することで、広告収益のアビトラージを狙っていきます。
ですので、東南アジアを中心に攻めて、アメリカの広告でマネタイズする、そしてそこで得た収益のすべてをユーザーに還元する仕組みが作れると面白いな、と個人的には考えています。
MYUUU社の生成AI事業について
Q.もう一方の生成AI事業についても詳しくお聞かせください。
かなり手広く展開しています。HR×生成AI、コンテンツ×生成AI、不動産×HRなど様々なプロダクトやソリューションを開発したり、 生成AIを導入したい企業向けのAIコンサルティングやトレーニングなども提供しています。
日本の生成AI導入率は海外と比べてかなり低く、ChatGPTの有料版すら導入されていないのが実情です。
ネット上には、生成AIの新サービスや新機能の情報があふれていますが、まだ実用レベルに至らない検証フェーズのサービスが多く、そういったノイズがより一層、生成AIに関する情報の非対称を高めています。
私たちは「実需に基づいた生成AI導入」をコンセプトにしており、自社で実際に使える生成AIのユースケースを、業界の有識者と共同で開発し、そのノウハウをソリューション化したり、コンサルティングサービスとして提供していたりします。
Q.いまはどのようなユーザー・企業の方々が主に利用されているのでしょうか。また今後はどのような方々に使ってもらいたいですか?
幅広い業種・業界の方に使っていただいていますが、リテラシーの高いIT企業や広告代理店、制作会社などが多くを占めています。
まずは相談からでも構いませんので、生成AIを導入してみたい方がいればお気軽にご連絡ください。
室谷氏の考える今後の展望・取り組み
Q.TERRARIUMやTERRARIUM TREASUREに関する今後の動きについてお聞かせください。
まずは、2024年度中にクローズドコミュニティ向けにベータ版の提供を開始します。
その後、コミュニティからの意見を取り入れつつ、ゲーム性を改善し、コミュニティを拡大していく予定です。
INO(Initial NFT Offering)という形で、NFTをWeb3ユーザーの皆さまに販売することも検討しており、早い段階で皆さまにアナウンスさせていただきます。
Q.TERRARIUMのベータ版はどこからアクセスできるのでしょうか。
TERRARIUM TREASUREのランディングページをもうすぐリリースする予定です。
そちらにアクセスしてもらうか、もしくは私のX(旧Twitter)にDMしていただければと思います。
Q.最後に、Web3やメディアの未来について代表の室谷さんから一言お願いします。
私たちの提唱する「Collective Intelligence 2.0」という概念について説明させてください。
Collective Intelligenceは日本語で「集合知」を指し、多数の知恵や知識を集約して、よりよい知能を作る、という概念です。
これまでのオープンソースやUGCサイトなども広義の集合知と言えます。
Web3とAIは、別のテクノロジーで考えられるケースが多いですが、個人的にその2つは補完関係にあると思っています。
生成AIが誕生したことで、情報の制作コストが爆発的に下がり、フェイクニュースが乱立するようになりました。
Amazonのレビューの多くがフェイクやステマですし、SEO記事、Tiktokなどの情報の多くがAIで制作されているのです。
元々はGoogleやAmazonなどの法人、団体が中央集権的にアルゴリズムを駆使して情報の良し悪しを判断してきましたが、それも限界と言えます。
そこで私たちはWeb3と生成AIを組み合わせて、新しい集合知の作り方を提唱していきます。
生成AIによるコンテンツ作成、情報発信は決して悪ではなく、むしろ、普遍的な情報や体系的な情報は生成AIの方が得意なのかもしれません。
例えば「風邪の予防法」という問いに対して、AIによる情報と人による情報では大差がないかもしれません。
なぜなら、風邪の予防法はある種普遍的な情報であり、AIが学習済みのデータから回答しても十分答えになりうるからです。
しかし、「コロナで闘病している人の体験記」のような体験や感性などの一次情報は、AIでは作れません。
こうした一次情報を集めるために、ブロックチェーンやトークンを活用していきます。
また、情報の質の良し悪しをユーザー間の評価で判断していく、いわば非中央集権的なアルゴリズムを構築できると思っています。
例えば、Aさんが質の高い情報を発信した場合、Aさんにインセンティブが付与されるだけでなく、評価をしたBさんにもインセンティブが付与される仕組みを検討しています。
これにより、ユーザー間で情報の発信と評価を行い、質の高い情報を精査することが可能です。
こういった情報の透明性を担保するために、Web3のトークインセンティブやゲーミフィケーション、ブロックチェーンなどは非常に有用です。
これらの仕組みを作り、質の高い情報のみが集まりフィルタリングされることで、質の高いコンテンツが生まれ、そのコンテンツで生まれた収益を質の高い情報を発信したユーザーと評価をしたユーザーに配分する、という新しい評価システムを構築していきたいと思っています。
第一弾のプロダクトは「植物」を選びましたが、第二・第三のプロダクトを同一のスキームで横展開していくことで、世界中に存在するあらゆるジャンルの集合知を形成していくつもりです。
参照元:NFT Media