【解説】仮想通貨ヘッジファンド3ACのデフォルトでなぜビットコイン(BTC)が暴落するのか?
どうも墨汁うまい(@bokujyuumai)です。ビットコインやイーサリアムをはじめとる仮想通貨は2022年初旬から下落を続けており、ビットコイン及びイーサリアムは2017-2018年の仮想通貨バブルの最高値をドル建てで下回るほどの暴落となっています。
この背景には仮想通貨レンディング企業のセルシウス(Celsius)や同様の企業、スリーアローズキャピタル(Three Arrows Capitalまたは3AC)などの仮想通貨ヘッジファンドの破産による連鎖倒産などが危惧されており、さらに最安値を更新する可能性を残しています。
本稿ではなぜセルシウスや3ACなどのヘッジファンドのデフォルト(債務不履行)や破産がビットコインやイーサリアムの暴落につながるのかについて、わかりやすく解説を行います。
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仮想通貨ヘッジファンド3ACの債務不履行
運用資産(AUM)が1.3兆から2.4兆円とされている最大手仮想通貨ヘッジファンドのスリーアローズキャピタル(Three Arrows Capital)は、イーサリアム上の分散金融”DeFi”を利用した運用で知られています。また仮想通貨レンディング企業のセルシウス(Celsius)も顧客に金利を支払う代わりに、預かり資産を同様のDeFiで運用しており、ほとんどの大口投資家が同様の手法を取って巨額の利益を受けているのです。
スリーアローズキャピタルはその中でも最大手レンディング企業ブロックファイ(BlockFi)や株主となっているフィンブロックス(Finblox)、など複数での”運用資産としての借入”を行っており、それらが仮想通貨の暴落により返済ができないデフォルト(債務不履行)状態となっているという問題がここでのポイントです。
29日の報道ではスリーアローズキャピタルが破産状態にあり、裁判所が債務整理を行って破産手続きを進めているとされています。
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仮想通貨ローンのデフォルト(債務不履行)と清算とは?
このレンディング企業からの借入には
「ビットコインやイーサリアムなどを”担保”に巨額のドルを借入しており、担保率が低下するとレンディング企業は貸し倒れを防ぐために仮想通貨を清算」
するというのがポイントです。
一般的な条件では1000億円の借入には1500億円以上のビットコインやイーサリアムを担保に預け入れることで、もしビットコインやイーサリアムの価値が1500億円を下回る場合デフォルト(債務不履行)となり、仮想通貨レンディング企業が預け入れられた担保の仮想通貨を売却することで、貸し倒れを防ぐというのがレンディングの仕組みなのです。
この例ではDeFiのメーカーダオ(Maker DAO)の例で150%の担保率としていますが、大口投資家やヘッジファンドでは巨額の金利を支払うことになるため、130%や120%など有利な条件の場合もあります。
その場合1000億円を借入る際の担保は
130%:1300億円以上
120%:1200億円以上
という風に、ヘッジファンド側には有利で暴落時にはレンディング企業が貸し倒れする可能性があるということになります。従って仮想通貨ローンとは”デジタル質屋”のような存在であると考えるとわかりやすいでしょう。
仮想通貨ローンの清算と暴落
ではこのデフォルトと担保の清算でなぜ仮想通貨が下がるかというと、
「貸し倒れを防ぐためにレンディング企業は担保のビットコインやイーサリアムを清算する必要があり、”価格や下落率に関係なく売る必要がある”ため暴落に繋がりやすい」
ということです。
スリーアローズキャピタルのようなヘッジファンドとしてはビットコインやイーサリアムを保有することで価格高騰による利益(キャピタルゲイン)を享受しつつ、さらに担保としてドルを借入て運用することで金利や報酬といった配当(インカムゲイン)を同時に得ることができるのです。
しかし今回のような急激な仮想通貨暴落によってこの運用をミスしてしまった場合、デフォルトに陥ってレンディング企業は価格を無視して売却しないといけないため、借入額が巨大であるほど多額の売りとなってしまい、さらに暴落を引き起こすという構造になっています。
連鎖倒産による仮想通貨暴落懸念
スリーアローズキャピタルの借入は1つ1つが巨額となっており、既にボイジャーデジタル(Voyager Digital)で884億円の借入がデフォルトしており、スリーアローズキャピタルが株主であるレンディング企業のフィンブロックスでも額は不明なもののファンドの損失により貸付をしていた投資家に資産の引出し制限をするなど、大半が100億円~1000億円単位での借入を行っていたと見られます。
借入額よりも担保として預け入れるビットコインやイーサリアムが1.2~1.5倍であることを考慮すると、120億~最大で1500億円相当のBTCやETHが1つの借入先につき清算されているということです。
この例はあくまで仮想通貨ヘッジファンドのスリーアローズキャピタル1社のみの話であり、同様の運用を行うセルシウスネットワークやブロックファイなど自己運用を行うその他レンディング企業やヘッジファンドもデフォルトしていたり、デフォルト目前である可能性が考えられます。
スリーアローズキャピタルの破産ですべての借入が清算された場合、ビットコインやイーサリアムが一時的に下がると、セルシウスやその他レンディング企業やヘッジファンドも破産してしまうというのが今の仮想通貨相場において連鎖倒産と暴落の懸念としてあるということです。
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