DeFi(分散型金融)バブルはICOバブルとは何が異なるのか?
2020年の暗号資産業界で大きなトレンドになったものを挙げるのならば、DeFi(分散型金融)は間違いなくその上位のキーワードに入るでしょう。DeFiバブルともささやかれるように、イーサリアム(Ethereum)のDeFiのスマートコントラクトにロックアップされた資金総額は伸び続けています。その金額は執筆時点110億ドル(約1兆2,000億円)です。
参照:DeFi Pulse
暗号資産業界でバブルと言えば2017年のICOバブルが彷彿されるという声もあります。バブルであったかそうでなかったかは時間が経たないと分からないですが、DeFiを2017年当時のICO市場と比較することは一定の意味があります。本コラムではここに焦点を当てます。
決定的に異なるのは実態あるプロダクトが使われている点
まず良い側面に目を向けましょう。現在のDeFiの状況が2017年当時のICO市場と決定的に異なる点は、実態のあるプロダクトがある点や、そのプロダクトが使われているという点です。2017年当時のICOプロジェクトはホワイトペーパーで将来の構想は述べられながらも、資金調達時点でのプロダクトは存在していないことがほとんどでした。
プロダクトが存在しているケースもありましたが、5-10%のプロジェクトに限られていました。これに対して、現在のDeFi市況では、ほとんど全てのプロジェクトがプロダクトをデリバーしています。そもそもこれらプエロジェクトはトークンを売却して資金調達していないケースも多く、流動性マイニングなどの手法でユーザーに配布をしています。プロジェクト側としては、トークン販売による資金調達をしなくても、市場にトークンを配布して自身で保有しているトークンの価値が高まればリターンは得られます。
また、DeFiのプロジェクトは、それぞれのプロジェクトにもよりますが、既にプロダクトがデリバーされているだけでなく、多額の金融取引を処理するアプリケーションとして稼働しています。ユニスワップ(Uniswap)には執筆時点で約2,000億円の流動性が供給されており、1日あたり取引額は約300億円にも上ります。
参照:Uniswap
これらDeFiが既に作り上げている実績や実態は2017年のICOバブルには存在しなかったものです。
乱立するコピープロジェクトはフォークブームを彷彿
やや悪い側面に目を向けましょう。それはコピープロダクト(フォーク)の乱立と、そのコピープロダクトに紐づくトークンの売り抜けです。
例えばスシスワップ(SushiSwap)はUniswapのフォーク、SwerveはCurveのフォークとして生まれました。全てがオープンソースのスマートコントラクトアプリケーションで、コピープロダクトが容易に作れてしまいます。
また、そのプロダクトを短期的に盛り上げて、そのコピープロダクトの首謀者が売り抜けをすることも発生しています。
このような市場の急激な盛り上がり時における、市場の隙間や民衆の認知のかいくぐって、利益を得ようとする行為は確か2017年のICOバブルを彷彿させます。あるいはビットコインゴールドやビットコインダイヤモンドなどさまざまなフォークコインが流行った時期のほうが近しいかもしれません。
基本的に自由市場である限り、利益を得ようと準備しているプレーヤーは常に存在します。市場参加者としてはそういったプレーヤーのカモにならないように最大限気をつけなくてはいけません。
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参照元:CoinChoice