「中央銀行デジタル通貨(CBDC)が生む新しいメカニズムの可能性」国際決済銀行レポート
国際決済銀行(Bank for International Settlements:BIS)が6月24日、2020年次経済レポートを発表した。このレポートでは、新型コロナウイルスによる影響や中央銀行発行のデジタル通貨(CBDC)の可能性についても言及している。
新型コロナウイルスは払いに変化をもたらした
今回のレポートでは、新型コロナウイルスの影響を以下の4つの理由で小売の支払いに著しい変化をもたらしたとまとめた。
- 現金からのウイルス感染に関する懸念増加
- 予防的現金保有額の増加
- 実店舗の一時的閉鎖によるeコマースの急増
- 国境を越えた取引の崩壊
新型コロナウイルスのパンデミックは、支払いを発展させるとともに、欠点を浮き彫りにした。デジタル決済により、パンデミックの最中でも食料品やその他必須商品の購入といった多くの経済活動が継続できた。
しかしこのようなデジタル決済への誰もがアクセスできる環境になく、低所得グループなどは、支払いや受取が困難な場合もあった。他にも小売業者の現金の受け入れを拒否に対して、一部の中央銀行では支払いの選択肢が限られている人に過度の負担をかける可能性があると警告している。また政府から銀行口座を持たない人への送金は、小切手に頼らざる得ず、処理に時間がかかり銀行振込よりも詐欺のリスクが高くなる可能性があるとも指摘している。このような人々でもデジタル決済ができるように、より包括的で低コストの決済サービスが今後求められるとまとめている。
2019年後半以来、中央銀行はCBDCに対して肯定的
今回のレポートではCBDCについても言及している。2019年後半以来、中央銀行や政府機関はCBDCに対して肯定的な態度を示している。ただしその動機は複数存在し、国や地域によっても異なっている。2019年に行われた66の中央銀行に対する調査では、国内決済の安全性と効率が最も重要であることが明らかになった。同時に新興市場や開発途上国の間では、ファイナンシャル・インクルージョン(金融包摂)が主要な動機ともなっている。
また新型コロナウイルスのパンデミックにより電子決済が増加し、世界中でCBDCの開発が促進される可能性があるとも指摘している。適切に設計されればCBDCは、デフォルトで相互運用が可能で、民間仲介業者間の競争を促進し、安全性とリスク管理の高い基準を設定する新しい支払いメカニズムを生み出す可能性があるとまとめている。
参考
・III. Central banks and payments in the digital era
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文:かにたま
参照元:CoinChoice