中国のブロックチェーンの社会実装は諸外国の10年先を行く
中国が世界に先駆けてブロックチェーンの活用を実現させていると認識されて久しいです。もっとも近年はブロックチェーン以外にも機械学習をはじめとするさまざまな技術で、アメリカを追い抜き始めましたが、とりわけブロックチェーンの企業活用においては諸外国とその差が顕著です。
世界に先駆けてブロックチェーンの活用を実現させる中国
2019年に習近平氏がブロックチェーンを国家戦略にすると声明を出し、中央銀行発行のデジタル通貨CBDCに注目が集まりました。最近では、2022年の冬季オリンピックにはデジタル通貨は十分に普及している状態になっているだろうとも発言されています。
それ以外にも、アリババ(Alibaba)やテンセント(Tencent)はさまざまなブロックチェーンのプロジェクトを大規模に実行しています。また、中国建設銀行など国有の銀行はコンソーシアムを組成してブロックチェーン上の売掛債権の権利移転を既に数兆円の規模で実行しています。
国家ブロックチェーンとも言われる(正確にはホスティングサービス)「Blockchain-based Service Network:BSN」は、大企業だけでなく中小企業もブロックチェーンの効率化の恩恵を得れるようにすることを可能にします。既にテスト運用を開始し、2020年4月に本番環境で運用、既に多くの都市がサインアップをして2020年末に200都市を目指すとされています。これらの取り組みは、「まるでデジタル版一帯一路のようだ」と海外からの評価もあります。
ブロックチェーンの社会実装のスピード感
これらの事例を概観すると、中国は他の国に比べ2年や3年ではなく、10年くらい進んでいると感じさせられるのは筆者だけではないはずです。ブロックチェーンの利用は技術だけでなく複数社を跨いだ合意のうえで社会に実装される特徴から、その意味で、技術と合わせて三重くらいで差がついているのでしょう。
実際のところ、10年の差があると感じさせられることは相当なことであると思うものの、10年の差を認識することがまず日本や諸外国がブロックチェーンの社会実装について考える第一歩でしょう。なぜなら、日本は今から2年で今の中国の状態になることが想像つくでしょうか。2年で中央銀行のデジタル通貨のプランを現実化することや、ブロックチェーンベースで高効率な売掛債権移転プラットフォームを作り数兆円のトランザクション実績を得ることが現実的だと思う人は少ないはずです。恐らくそれは不可能で、そうであればやはり2年ではなく、10年の差があるのです。
中国は素早く複数社がコンソーシアム組んでビジネスアプリケーションを実装しているわけですが、その実装過程にはさまざまな合意が必要です。恐らく中国では、日本の複数社間が1年かけて合意することを遅くとも2ヶ月で進めており、そうでなければ中国は今の状態になっていません。日本と中国ではさまざな社会背景の違いはありながらも、官民ともにこれらの事例から何を吸収できるかを真剣に考える必要はあるでしょう。
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参照元:CoinChoice