陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

米ドル/円115円台復帰も精彩を欠く米ドル。 ドルがなかなか上がらない2つの理由とは? ブログ

米ドル/円115円台復帰も精彩を欠く米ドル。 ドルがなかなか上がらない2つの理由とは?

■米ドル/円115円台復帰で、円買い戻し終焉 米ドル/円は115円の大台を回復している。前回のコラムで指摘していたように、同節目の回復がカギなので、円買い戻しの終焉が告げられたと言える。

【参考記事】

●米ドル/円は保ち合い?上放れ? 115円節目回復がカギだが、米国株バブルは大丈夫?(2017年3月3日、陳満咲杜)

米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

 したがって、昨日(3月9日)のユーロ/円の大幅上昇もその一環と見なし、整合性を持つサインだと受け止める。

ユーロ/円 日足(出所:Bloomberg)

■ドルインデックスは重要なポイントをすでにブレイクしたが… もっとも、昨日(3月9日)のユーロ/米ドルの切り返しがあったからこそ、ユーロ/円の大幅上昇がもたらされた側面は見逃せない。この分、ドルインデックスの上昇は、モメンタムが強いとは言い切れない。

 ただし、前回のコラムでも指摘したように、ドルインデックスは重要なポイントをすでにブレイクした以上、ブル(上昇)基調を保てるはずだ。

【参考記事】

●米ドル/円は保ち合い?上放れ? 115円節目回復がカギだが、米国株バブルは大丈夫?(2017年3月3日、陳満咲杜)

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

 ゆえに、先週末(3月3日)急落したものの、今週(3月6日~)、一貫して切り返し、また、昨日(3月9日)の足型は、従来のレジスタンスラインをサポートラインとして役割を転換させていることを暗示しており、2月2日(木)安値を起点とした上昇波動の継続を示唆。1月11日(水)高値の102.95の打診を射程圏内に収めている。

■米ドル全体のパフォーマンスは精彩を欠く 一方、重要なポイントをすでにブレイクしていたからこそ、足元の米ドル全体の「足踏み」状態は、芳しくないとも言える。

 なにしろ、米3月利上げ観測がほぼ100%に達している中であるから、この程度の米ドル高のスピードでは、ロング派にとってやや肩透かしをくらう市況である、とさえ言える。

 米2月ADP民間雇用者数の29.8万人増という数字が発表されて以降、市場関係者のコンセンサスとして3月利上げはほぼ懸念なしとなっているが、米ドル全体のパフォーマンスは精彩を欠く。

 昨日(3月9日)、ドラギECB(欧州中央銀行)総裁が「あらゆる手段やツールを動員する緊急性がなくなった」という見方を披露したあと、ユーロショートポジションの買戻しが見られ、米ドル高一辺倒にはほど遠い市況であることが示唆されている。

 欧州政局など混乱要素もあるものの、2月以来のユーロ安は…
米ドル/円は保ち合い?上放れ?115円節目 回復がカギだが、米国株バブルは大丈夫? ブログ

米ドル/円は保ち合い?上放れ?115円節目 回復がカギだが、米国株バブルは大丈夫?

■ドルインデックスは重要ポイントを上抜け!102.95をめざすか 米ドル高基調が鮮明になっている。ドルインデックスでみると、前回のコラムで指摘していた重要ポイントがすでにブレイクされたことがわかる。

【参考記事】

●レジスタンスとサポートの役割転換に注目! あそこを突破すれば、米ドル買いの好機!(2017年2月24日、陳満咲杜)

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

 ブレイク自体は一昨日(3月1日)の出来事だが、昨日(3月2日)の安値に注目すれば、元のメインレジスタンス水準(≒107.73~75)は一転してサポートゾーンとして意識されているのもわかる。

 このような状況が保たれていけば、基本的に米ドル高基調が継続するだろう。ドルインデックスの上値ターゲットとして、1月11日(水)高値の102.95前後が射程圏内に収まるだろう。

■米ドル/円も上昇波に復帰とみる理由とは? 米ドル/円に関しては、「2017年年初来展開された調整波が、2月7日(火)安値111.58円にてすでに終焉し、そこから上昇波に復帰してきた」という見方が、今週(2月27日~)の値動きによって証左された。テクニカル上のポイントとして、少なくとも以下の2点が挙げられる。

 まずは、2月28日(火)の安値打診や、当日の大幅反騰だ。このシグナルについて、筆者は3月1日(水)のレポートをもって詳しく説明していたから、本文をご参照いただきたい。

米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

ドル/円は上昇波へ復帰する公算を高めている。昨日の安値打診、またその後の大幅切り返しが重要なヒントを示唆してくれる。

もっとも、我々のカウントでは、2月7日安値111.58の更新さえ回避できれば、同安値起点とした上昇波が継続され、また5波構造を有する推進波の構造を示す。ゆえに、2月15日高値114.96を起点とした反落、同5波構造における第2調整波としてみなされ、また昨日安値の「深押し」をもって一段と同位置づけを鮮明化された。(第2調整波は深く押してくる傾向が強いとされる)

この視点から見ると、昨日の安値打診、一旦2月24日安値を下回っていたから、同安値打診、「フェイク」(ダマシ)と見做される。何しろ、終値をもって大きく反騰し、24日終値より高く大引けしていたから、「強気リバーサル」のサインを点灯、また24日、27日上罫線が示した「インサイド」の下放れを否定してしまうから、上昇方向へ「セットアップ」されるサインでもあったとみる。

従って、これから2月21日高値113.78を上回れば、同高値が転換点として重視され、上昇波が一段と加速されよう。同高値の突破、「フェイクセットアップ」の結果であり、また証左でもあろう。

 次はやはり、レポートの中で「転換点」と記した2月21日(火)高値113.78円に対するブレイクであった。

米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

 2月21日(火)高値はなぜ重要なポイントになっているかというと、それはほかならぬ、同日の高値をもっていったん「ダマシ」のサインが形成されていたからだ。

 2月17日(金)、20日(月)に形成された「インサイド」のサインに対し、21日(火)にいったん上放れを示唆していたから、本来続伸するサインが点灯していたが、その後、反落し、17日(金)安値を割り込んでしまった。そのため、15日(水)高値114.96を起点とした下落波の延長が決定づけられた。

 ゆえに、2月21日(火)高値のブレイクは、114.96円を起点とした下落波の終焉を確認するポイントとしてもっとも重要性が高く、また、下落波から上昇波への転換ポイントとして挙げられる。

 実際、昨日(3月2日)の安値は、2月21日(火)高値113.78円を意識していたように見え、元のレジスタンスポイントが新たなサポートポイントとして「役割転換」となれば、新たなトレンドが継続されるという見方は、基本的に先週(2月24日)の話と同様である。

【参考記事】

●レジスタンスとサポートの役割転換に注目! あそこを突破すれば、米ドル買いの好機!(2017年2月24日、陳満咲杜)

 米3月利上げ観測が高まっている中…
レジスタンスとサポートの役割転換に注目! あそこを突破すれば、米ドル買いの好機! ブログ

レジスタンスとサポートの役割転換に注目! あそこを突破すれば、米ドル買いの好機!

■ムニューシン氏の発言で米ドルは上昇できず 米ドル全体が重要な分水嶺にさしかかっている。ドルインデックスは一昨日(2月22日)、101.73にて再度頭打ちとなり、2月15日(水)高値と相まって、重要なレジスタンスゾーンを示唆した。

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

 米ドルの頭の重さは、ムニューシン米財務長官の発言が効いたことによるとされる。氏はトランプ政権によるあらゆる政策について、2017年内の効果は限定的と述べ、また、米国が「長期間低金利である可能性」に言及、さらに「米ドル高には一定の問題がある」と話した。

ムニューシン氏の発言が、米ドルの上昇を阻んだとされている (C)Bloomberg/Getty Images

 もっとも、ムニューシン氏は強い米ドル政策の維持も表明していたが、建前なのでは…と市場に流された模様。トランプ政権による大型減税や財政出動が想定より遅れる、また、規模が小さくなるのでは…といった推測が出始め、米ドルの反騰を抑制するには十分なインパクトがあった。

 ゆえに、2月28日(火)のトランプ大統領の議会演説が一層注目され、政策の中身が問われるわけだ。というのは、市場は「トランプ・ラリー」を経て、その裏付けを求めようとしているからだ。

■FOMC議事録も米ドル反騰を抑える要因に その上、2月22日(水)に公表されたFOMC(米連邦公開市場委員会)議事録の一節も、米ドルの反騰を抑え込んでいると思われる。

 「数人のメンバーは、米ドル高が経済を下振れさせるリスクがあるといった見方を示した」と記した同議事録は、2017年1月末のFOMCをまとめたものだから、当時のドルインデックスの水準(1月終値は100.32)に照らして考えると、足元の方が上に位置しているので、米ドルのロング筋にとって気がかりであったことは間違いない。

 このため、議事録が示唆したタカ派基調は、同じく流された模様だ。

■テクニカル的にもレジスタンスゾーンにさしかかっている テクニカル上の視点では、やはり、重要なレジスタンスゾーン(色枠で表示)に遭遇しているから、米ドルの反騰が一服してもおかしくない段階にある。

 同レジスタンスゾーンについては、これからのブレイクの有無が重要であることは言うまでもないが、上放れできれば、米ドル高の加速が想定される。反面、ここでの頭打ちが確定される場合、日足において大型「三尊型(※)」の形成が懸念される。

(※編集部注:「三尊型」はチャートのパターンの1つで、天井を示す典型的な形とされている。仏像が3体並んでいるように見えるために「三尊型」と呼ばれていて、人の頭と両肩に見立てて「ヘッド&ショルダー」と呼ぶこともある)

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

 この意味では、2月2日(木)安値99.23を起点とした反騰が、2017年年初来の反落に対する反動であるいう意味合いが確認されたとしても、メインレジスタンスゾーンを突破できない限り、上昇推進波という性質を確認できずにいる。

 だから、目先なおトレンドレスの状態にあると言っても大した間違いではないと思うが、近々大きなトレンドの推進が見られるだろう。

 何しろ、メインレジスタンスゾーンのブレイクがあれば、2017年年初来高値の更新が確実視されるから、米ドルの急上昇が想定される。

 反面、大型「三尊型」が確認される場合、96の水準を割り込むまで下落波が続くと推測されるから、下落トレンドも鮮明になってこよう。

 では、どちらにブレイクしていくのだろうか。結論から申し上げる…
米ドル・米国株・金トリプル高のレアケース! 米ドル反落は押し目買いの好機になる ブログ

米ドル・米国株・金トリプル高のレアケース! 米ドル反落は押し目買いの好機になる

■米ドルは上昇へ! 反落は押し目買いの好機 米ドル全体は、一進一退しながらも上昇傾向を強めている。ドルインデックスの日足から考えると、2つのポイントを見逃せない。


 まず、前回のコラムでも指摘したように、2017年1月30日(月)高値(a)を転換点と見なす場合、すでに突破しているから、米ドル高の基調が確認されたといえる。

【参考記事】

●日米首脳会談でリスクオフの警戒は不要!なぜドル全体の底打ち確定近しと言える?(2017年2月10日、陳満咲杜)

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

 その上、1月19日(木)高値(b)も一時ブレイクしたから、米ドルの反落は、すでに2月2日(木)安値99.23をもってすでに完成した、といったシナリオは維持される。

 一方、一昨日(2月15日)に高値トライしてから反落したため、また米ドル安基調に復帰したのでは…と思われる節もあるが、基本的には上昇波途中におけるスピード調整であろう。

 なにしろ、前述の(a)と(b)の高値に対するブレイクは、2017年の年初来形成され、2月2日(木)安値までに形成された大型「下落ウェッジ」を証左しただけでなく、同フォーメーションに対する上放れを確認したわけだから、ここから安易な安値更新はなかろう。

 換言すれば、「下落ウェッジ」の上放れが確認された以上、米ドルの反落があれば、押し目買いの好機と見なすべきだ。

■これから「後付け」のファンダメンタルズ材料が… ドルインデックスにしても、米ドル/円にしても、一昨日(2月15日)の高値打診から反落してきたが、前回のコラムにて指摘したように、これは日米首脳会談と無関係であった。

【参考記事】

●日米首脳会談でリスクオフの警戒は不要! なぜドル全体の底打ち確定近しと言える?(2017年2月10日、陳満咲杜)

 トランプ政権が発足して以来、いろんな出来事があったが、基本的にリスクオフにはならなかった。だから、目先の米ドル全体の軟調は、2017年年初から2月2日(木)までの米ドルの反落と同様、スピード調整といった視点で捉えるのが妥当であろう。

トランプ政権が発足して以来、さまざまな出来事があったが、リスクオフにはならなかった (C)Pool/Getty Images

 相場の内部構造が米ドル高を示唆しているなら、それに伴い、また後付けで、ファンダメンタルズ上の材料が出てくるはずだ。

 それ以前の「トランプ・ラリー」が行きすぎた分、2017年年初来、米ドル全体はスピード調整してきたが、2月2日(木)安値をもってすでに完了したのであれば、新たな材料が浮上してくるはずだ。

 場合によっては材料の蒸し返しでも再度大きく効いてくるケースが多いから、ファンダメンタルズ上の材料を再度確認しておきたい。

 「トランプ・ラリー」が行きすぎであったからこそ、米ドル全体はスピード調整をはじめ、その後のトランプ氏による米ドル高牽制も効いたわけだ。

 となると、米ドル高に再度転じた先週(2月6日~)の値動きの背景に、「トランプ減税」期待の再燃や、早ければ3月にもFRB(米連邦準備制度理事会)の追加利上げあり、といった観測が高まったことがあったのは、むしろ自然の成り行きだ。

 この2つの材料は、どれも過去材料の蒸し返しにすぎないが、米ドル全体のスピード調整がすでに完了した公算が大きい現在、これらの材料は再度効いてくるとみる。

 「財政拡張+金融引き締め」の局面では、典型的な反応パターンは持続的な通貨高である。だから、いくらトランプ大統領が米ドル高を牽制しても、米ドル高の基調は安易に修正されず、当面維持されるだろう。

 教科書どおりなら、足元の米ドル高は、まだ…
日米首脳会談でリスクオフの警戒は不要! なぜドル全体の底打ち確定近しと言える? ブログ

日米首脳会談でリスクオフの警戒は不要! なぜドル全体の底打ち確定近しと言える?

■ドルインデックスは6週連続の陰線引けに終止符か 米ドルは反騰してきた。ドルインデックスをみると、今週(2月6日~)は陽線引けになりそうで、ここまでの連続6週間の陰線引けに終止符を打つ公算が高い。

ドルインデックス 週足(出所:Bloomberg)

 今年(2017年)に入ってから、米ドル全体の反落が一貫して進んできただけに、いろいろな思惑が噴出してきた。

 しかし、昨年(2016年)11月9日(水)から始まり、2016年年末まで続いていた、いわゆる「トランプ・ラリー」の行きすぎから考えると、先週(1月30日~)安値までの反落は、単純に言えばスピード調整というほかあるまい。これ以上の解釈も、これ以下の解釈もいらないと思うほど、シンプルな値動きだったのではないだろうか。

 だから、先週(2月3日)のコラムで指摘したように、米ドルの反落は一服しやすく、大型「下落ウェッジ」というフォーメーションの示唆するとおりなら、反転してくる公算も大きかったわけだ。

【参考記事】

●2月3日の米雇用統計で米ドルは反発!? クロス円の動向に相場の大きなヒントあり(2017年2月3日、陳満咲杜)

 この「下落ウェッジ」に対する反転がすでに確認された以上、米ドル全体の反騰も継続されやすいだろう。


 ただし、米ドル全体の底打ちは、ある「転換点」の通過をもって証左されるので、目先、なお「通過待ち」の状態である。

 その転換点とは1月30日(火)の高値(101.02)であり、同日の陰線が「弱気リバーサル」のサインを点灯し、「下落ウェッジ」の拡大につながったから、再度ブレイクがあれば、米ドルの底打ちが確定するだろう。

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

 目先の市況に照らして考えると、その可能性は高いとみる。

■材料はトレンドのあとを追う存在。今回も然り 巷では、トランプ米大統領や側近による日本の為替政策批判を「トランプ・ショック」ととらえ、また、米ドル下落の理由と解釈する向きが多かったが、これらは米ドルがすでに反落し、また、反落が続いているときに出た材料であったことは見逃せない。

 要するに、材料というものは、往々にしてトレンドのあとを追う存在であり、トレンドを決定する要素というよりも、トレンドを証左する要素である、といった性質が強い。

 だから、先週(1月30日~)、ドルインデックスがすでに底を打ち、また、今週(2月6日~)に入って反騰してきたため、昨日(2月9日)は米ドル高を加速する材料があとを追う形で出てきたというわけだ。

 もちろん、今回もトランプ氏の話となるが、「驚異的」税制改革案を示唆したり、側近が日米トップ会談では為替問題は優先議題ではないと言ったと伝えられたりして、米ドル高に寄与する材料が出始めたことも全然サプライズではない。サプライズどころか、当然の成り行きと思うほどの出来事で、仮にこれから米ドル高が継続していけば、トランプ氏が一転して米ドル高のメリットを語り始めても筆者は別に驚きはしない。

■米ドル高と米ドル安、どちらが良いか悩むトランプ氏!? おもしろいのは、米ハフィントン・ポストの報道によると、2月7日(火)の午前3時、トランプ氏が「米ドル高と米ドル安のいずれが米経済に良いのか」で悩み、フリン大統領補佐官(国家安全保障担当)に電話したという。軍人出身のフリンは「自分はわからない、エコノミストに聞くべきだ」と答え、トランプ氏の悩みが深まった模様だ。

「米ドル高と米ドル安のいずれが米経済に良いのか」で悩み、フリン大統領補佐官に電話したとされるトランプ米大統領 (C)Alex Wong/Getty Images

 報道が事実(おそらく事実であろう)であれば、トランプ氏にしても、トランプ政権にしても、まだはっきりした為替政策を持っていないことが露呈される。氏の日欧批判は、これまでの主張からすれば、一貫性があるものの、気まぐれの部分もかなり大きかったといえる。もっとも、トランプ氏の性格からして、このような「気まぐれ」も想定されやすかったので、今さら驚くことではなかろう。

 だから、我々トレーダーはいちいち高官たちの発言に振り回されるのではなく、相場の内部構造をもっと注意深くフォローしていけば、いち早くサインを発見でき、また、トレードに応用できるだろう。

 この場合、高官発言をあとづけの材料と見なして、材料が出てからは、むしろ一部ポジションの利益確定に動くことも可能であり、また、賢明なやり方だと言える。

 米ドル/円を例として挙げてみると、安値111.58円を…
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2月3日の米雇用統計で米ドルは反発!? クロス円の動向に相場の大きなヒントあり

■トランプ氏の政策に驚くのはおかしな話 米ドル安が続いている。株の反落と相まって、「市場がトランプ氏の政策に驚かされた」といった解釈が巷に蔓延し、また、そういう解釈の出所に限って、それ以前はトランプ氏を礼賛していた人々だったりするなど、やや滑稽な雰囲気が漂う。

米ドルVS世界の通貨 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 日足)

NYダウ 1時間足(出所:Bloomberg)

 今さらトランプ政権の政策に驚くのは、自らの愚かさを証明するようなものだと思う。

 なにしろ、トランプ氏は最初から諸政策を主張し、今「有言実行」しているだけだ。筆者自身はトランプ氏に好感を持たず、また、トランプ政権の保守主義に失望するが、トランプ氏の「有言実行」の姿勢、政治家として近年稀な存在だから、憎めないと思う。

 選挙前の公約を守るどころか、当選後に公約を完全に裏切る前例が、内外を問わずあまりにも多かっただけに、トランプ氏の公約を守る姿勢、また、強い反対があっても推進していく姿勢には、ある意味、「敬意」を払わざるを得ない。

 したがって、7ヵ国の難民入国禁止にしても、日欧の為替政策への露骨な批判にしても、トランプ氏が選挙前から主張してきた話からすれば、まったく違和感がなく、当然の成り行きとさえ思える。

■トランプラリーの反動、この程度なら容認範囲 今さら驚かされるような解釈をしている方々は、トランプ氏の主張をきちんと理解していたかどうかを疑われる上に、政治家とは「有言不実行」の方が常識だ、と言いたがっているのでは…と思われる。

 だから、トランプ氏を最初から批判しているならば問題ないが、トランプ氏の当選をまったく予想できなかった上、ただ、「トランプ・ラリー」に便乗し、それをもって一転してトランプ氏礼賛に回った人々の愚痴は、今さら聞く必要はまったくないといえる。

「有言不実行」の政治家が多いなか、トランプ氏は「有言実行」の普通のことをしているだけか

(C) Chip Somodevilla

 つまるところ、「トランプ・ラリー」をトランプ氏の功績と礼賛し、足元の「トランプ・プルバック(PULLBACK)」をトランプ氏のせいにするのは、一部市場関係者のエゴにすぎない。

 トランプ氏はまったく変わっておらず、変わったのは一部市場関係者の勝手な評価である。彼らが自らの変節をもってマーケットを勝手に解釈しているから、余計な混乱がもたらされているとも言える。

 確かにトランプ氏の露骨な発言で米ドルがまた反落余地を拡大し、米ドル安も延長されてきたが、行きすぎた「トランプ・ラリー」に対する反動、また、スピード調整という意味合いでは、足元までのこの程度の米ドル安は容認範囲である。

 また、米大統領とはいえ、為替市場に対する口先介入があっても、実はそのインパクトは限定的だと思う。

■2月2日安値が下落ウェッジの下限に合致 このような見方を証左してくれるのはほかならぬ、マーケット自体の内部構造である。

 マーケットは万衆の判断や思惑の大集合によって成り立っているから、その内部構造はファンダメンタルズの「諸行無常」を、先見の明をもって織り込んでいるはずだ。

 ましてやトランプ氏が打ち出している諸政策は、最初から主張されてきたものだけに、別に先見の明がなくても、予想できた材料のはずだ。マーケットが今さら驚き、また、突然軌道修正してきたわけではないから、ジタバタする必要はない。

 前回のコラムでもドルインデックスを分析していたが、その延長でいうと、1月30日(月)の高値打診は4回目の「ダマシ」であった。

【参考記事】

●米ドル反落はコップの中の嵐。ドル/円は115.62円突破なら戦略的高値追いも!(2017年1月27日、陳満咲杜)

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

 「ダマシ」があるたびに、「下落ウェッジ」というフォーメーションが新たに引かれるものの、同フォーメーションの健在は証左されている。昨日(2月2日)の安値が、同フォーメーションの下限に合致しているところは見逃せない。

 実際、昨日(2月2日)のザラ場でも、米ドルの…
米ドル反落はコップの中の嵐。ドル/円は 115.62円突破なら戦略的高値追いも! ブログ

米ドル反落はコップの中の嵐。ドル/円は 115.62円突破なら戦略的高値追いも!

■米ドル全体の安値打診は「コップの中の嵐」にすぎない 反落していた米ドル全体が底打ちすることは、想定より遅れてはいたものの基本的には規定路線で、米ドル高基調が維持される公算が高い。

米ドルVS世界の通貨 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 日足)

 この意味合いでは、米ドル全体の安値打診は、本質的には「コップ中の嵐」にすぎず、トレンド自体を修正できるほどのモメンタムを持ち合わせていないから、米ドル高基調の修正があっても、それは足元で起こることではなく、後ずれすることになるだろう。

 前回のコラムで既述したように、米ドル全体の反落は、昨年(2016年)12月15日(木)あたりから始まったわけだから、だいぶ時間が経ってきた。

【参考記事】

●トランプ氏の米ドル高牽制発言で米ドルの反落終了か。祝大統領就任でドル高に?(2017年1月20日(金)、陳満咲杜)

 新年(2017年)に入り、ドルインデックスの日足は「下落ウェッジ」のフォーメーションを形成しつつ、安値をトライしており、これは昨日(2017年1月26日)安値まで続いていたとみなされる。が、昨日(1月26日)安値の打診をもって、底打ちに成功したとみる。

 昨日(1月26日)のドルインデックス日足は、典型的な「強気リバーサル」のサインを灯した。ザラ場にていったん安値更新を果たしたものの、その後、急反発。月曜日(23日)朝にできた「ギャップ」も埋めたから、シグナルとして示唆に富んでいる。

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

 このときは、新年(2017年)に入り、米ドル全体の下落が続いていた中、1月17日(火)のトランプ氏の発言に続き、次期財務長官に指名されたムニューチン氏も米ドル高を牽制、23日(月)に米ドルの下落をさらに推し進めた格好になったのだった。

■年初来「ダマシ」が連発した意味合いとは? プライスアクションの視点では、新年(2017年)に入ってからいわゆる「ダマシ」が連続的に発生していたことがはっきりしている。

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

 まず、1月3日(火)の日足(上記チャートの1)では、高値更新または2016年12月に形成された「トリプル・トップ」をいったんブレイクしたものの、その後、続伸できず反落した。これは典型的な「フォールス・ブレイクアウト」、すなわち、かつての重要レジスタンスゾーンの更新自体が「ダマシ」であったと示唆された。

 次に、1月11日(水)の日足(上記チャートの2)は、5日(木)、9日(月)のチャートが示した「ダブル・トップ」に対するブレイクが短期に終わっただけでなく、当日大きく反落して大引けしたから、「フォールス・ブレイクアウト」に「弱気リバーサル」のサインを点灯したわけだ。

 最後に、19日(木)の50日移動平均線打診(上記チャートの3)も、そのまま続かず陰線引けしたから、17日(火)、18日(水)のチャートで形成された「インサイド(はらみ足)」のサインに対する上放れの試しが「ダマシ」であったことが露呈した。

 ゆえに、23日(月)の急落、また、25日(水)、26日(木)の連続した安値更新につながったわけだが、連続した「ダマシ」の意味合いは「下落ウェッジ」というフォーメーションの形成から考えると、むしろ、その可能性の高さに納得するほどだ。

 要するに、「下落ウェッジ」の形成、また進行のニーズがあったからこそ、「ダマシ」のサインが連続して点灯したわけだ。つまるところ、連続したダマシの出現は、フォーメーションの可能性を示唆していたというほかあるまい。

 だから、米ドルの反落は、基本的に「下落ウェッジ」の中に制限されるもので、トランプ氏や次期財務長官の米ドル高牽制発言と相まって一時の急落があったとしても、基本的にそれは「コップ中の嵐」なのである。

■新年初! 下落でなく、上昇方向の「ダマシ」のサインが… また、より重要なのは、「下落ウェッジ」の形成が、連続した「ダマシ」をもって形成され、また、その確実性が証明された以上、同フォーメーションの完成、すなわち、米ドルの底打ちが、逆の「ダマシ」のサイン点灯をもって示唆されるはずということだ。また、逆の「ダマシ」のサインが点灯すれば、米ドル底打ちの可能性が証左されるだろうといった推測も、あらかじめできるわけである。

 だから、昨日(2017年1月26日)の反騰は、日足における意味合いが大きかった。

 なにしろ、昨日(1月26日)の「強気リバーサル」のサインは、一時的な安値更新なしでは典型的なサインになれなかった。そして、その一時的な安値更新を「ダマシ」と見なした場合、それは新年(2017年)に入ってはじめて、下落ではなく、上昇の方向を示唆する「ダマシ」のサインと見られる。

 ゆえに、昨年(2016年)12月15日(木)あたりを起点とした米ドル全体の下落は、昨日(1月26日)にてすでに底打ちした公算が高く、これから続伸してくるだろう。

 米ドル/円の足型はより堅調であった。1月3日(火)高値から…
トランプ氏の米ドル高牽制発言で米ドルの 反落終了か。祝大統領就任でドル高に? ブログ

トランプ氏の米ドル高牽制発言で米ドルの 反落終了か。祝大統領就任でドル高に?

■米ドル下げ一服、トランプ氏発言の影響は限定的 米ドル全体は下げ一服の様子を見せている。ドルインデックスが1月17日(火)安値100.26から切り返していることを重視すれば、米ドル高基調がなお維持され、場合によってはまた高値更新される可能性があるとみる。 

ドルインデックス 1時間足(出所:Bloomberg)

 というのは、1月17日(火)安値が重要な意味合いを持つからだ。

 なにしろ、この日はトランプ氏が「米ドルは強すぎる」と発言し、これが米ドル全面安をもたらした。言い換えれば、米大統領が米ドル高を牽制することは一大事であるため、米ドルの急落も当然の成り行きだと思われる。

米ドル高を牽制する発言をしたトランプ氏だが、牽制するのが遅すぎたぐらいなのかも…? (C)Spencer Platt/Getty Images

 ここでまず言っておきたいのは、トランプ氏が米ドル高を牽制するのは至って自然な出来事で、むしろ牽制してこない方がおかしいということだ。

 いわゆる「トランプ・ラリー」がかなり米ドル高を推し進めてきたことから、「トランプ氏が安倍政権と密約、米ドル高を牽制してこない」といった怪しすぎる観測が日本の一部市場関係者に語られたことは、笑止千万と言うほかあるまい。

 保護主義を全面的に打ち出し、また、米製造業の復活を声高に主張するトランプ氏の政策からして、今まで米ドル高を牽制しなかったこと自体がおかしいほどだ。

 要するに、米ドル自体が本当に高すぎるかどうかは問題ではなく、トランプ氏の立場からみると、強い米ドルよりも弱い米ドルの方が都合がよいわけだ。

 しかし、米大統領のごく「自然」な発言があっても、それをもってマーケットにおけるトレンドを完全に修正できるかと聞かれると、答は明らかにノーだ。ないしろ、いわゆる「高官発言」のみで、マーケットの内部構造をチェンジできた前例はないからだ。

■トランプ氏の米ドル高牽制は米ドル反落のクライマックス!? 前回のコラムでも強調させていただいたように、米ドルの反落は今年(2017年)から始まったものではなく、実は昨年(2016年)12月15日(木)あたりからすでに展開されてきたわけだから、トランプ氏の発言をもって米ドル安の始まりと捉えるのではなく、むしろ、米ドル反落のクライマックスを示唆するサインとして受け止めるべきだと思う。

 ドルインデックスの時間足で検証すると、1月17日(火)のトランプ氏の発言がもたらした下落幅は147pipsぐらいで、それ以前の223pipsや252pipsの下落幅に比べ、むしろ縮小していた。

【参考記事】

●ドルのスピード調整はもう完了したのか? 「風見鶏たちの変節」を観察せよ!(2016年1月12日、陳満咲杜)

ドルインデックス 1時間足(出所:Bloomberg)

 だから、トランプ氏の米ドル高牽制で米ドル安が止まらない…
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ドルのスピード調整はもう完了したのか? 「風見鶏たちの変節」を観察せよ!

■米雇用統計結果&トランプ氏会見後、米ドル反落 前回のコラムの指摘どおり、米ドル全体が反落してきた。 

【参考記事】

●相場のサインを見逃すな! 米ドル/円のダマシを事前に見極める方法とは?(2017年1月13日、陳満咲杜)

米ドルVS世界の通貨 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 4時間足)

 先週末(2017年1月6日)のまだら模様の米雇用統計に続き、今週(1月11日)の、一部市場関係者に期待されたトランプ氏の記者会見で、具体的な経済対策への言及がなかったことが失望売りを招き、米ドルの反落を加速させたとみる。

 もっとも、本コラムが繰り返し指摘してきたように、いわゆる「トランプ・ラリー」自体がそもそも行きすぎだったから、この程度の反落はまだ微々たるスピード調整にすぎず、当然の成り行きであるどころか、むしろ「遅れた」値動きだと思う。

 したがって、米ドル全体がいったん頭打ちになり、また反落してくることは、ずいぶん前からテクニカル上のサインが点灯していたから、今さら後付けの解釈は不要だ。

■米ドルのスピード調整はすでに完了したのか? ところで、ドルインデックスの頭打ちを、上昇途中のスピード調整と位置づければ、いずれスピード調整自体が終わるから、足元の焦点は、同スピード調整がすでに完了したのかどうかにあるのではないだろうか。

 言い換えれば、筆者自身は米ドル高の継続性に懐疑的な見方を取るが、足元のスピード調整を過大評価するつもりはない。何しろ、米ドル高のトレンドは、なおはっきり維持されているからだ。

 このような感触は、昨日(1月12日)の値動きによって、一段と強化されている。ドルインデックスの日足は、昨日(1月12日)、50日移動平均線(50日線)を下回ったものの、再度同線の上で大引けしたことから考えて、米ドル売りが継続されるとは言い切れない。 

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

 50日線が200日線を上回った2016年10月20日(木)以来、ザラ場安値をもって50日線を下回ったのはあの11月9日(水)、すなわちトランプ氏が当選した日のみであり、同線をキープできるなら、米ドル安の進行が深まっていくといった判断は性急だとみる。

 また、ドルインデックスは、2016年12月高値と2017年1月3日高値で形成されたいわゆる「トリプル・トップ」の前から、RSIとのはっきりした「弱気ダイバージェンス」のサインを点灯していた。ここから、足元までの反落が始まったのは、実は2016年12月15日(木)あたりからと計算される。 

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

 こうなると、もう1カ月以上の調整を果たしていることになるから、調整自体が一服してもおかしくなかろう。

 その上、RSIを観察すればわかるように、2016年11月9日(水)のちょっと前(A)に、RSIは主要な安値を形成していた。同安値レベルを足元のRSIは下回っており、いわゆる「リバーサル」のサイン形成を暗示している。 

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

 なぜなら、足元急落してきたとはいえ、ドルインデックスがまた101台をキープし、2016年11月初頭の96台の数値よりはるかに高いにもかかわらず、RSIのほうはずいぶん落ち込んでいるから、米ドルの反落自体が「スピード違反」の疑いを持たれるわけだ。

 同じ視点をもって米ドル/円を点検すれば…
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 新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

■米ドル高基調に「異変」、スピード調整が続く公算大 2017年の新年早々、米ドル高基調に「異変」が生じてきた。

 昨日(1月5日)の米ドル全体の反落は、少なくとも「トランプ・ラリー」の一服を示唆するサインとして受け取られ、目先、米ドル高基調が維持されても、スピード調整が続く公算が高い。

 ドルインデックスでは昨年(2016年)、トランプ氏が米大統領に選出された11月9日(水)安値を起点とした「上昇ウェッジ」の下放れが確認され、また、「トリプル・トップ」を形成してから反転したわけだから、このサインが妥当なものである可能性は高いと思う。

 この見方が正しければ、行きすぎたいわゆる「トランプ・ラリー」に対する修正も、それなりのインパクトを持つかと思われる。

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

 2016年年末の本コラムで指摘したように、今年(2017年)は相場における不確実性が高く、また、いわゆる「ブラック・スワン」的な事件が頻発する可能性が大きいから、先入観をもって相場に臨むのはもってのほかである。

【参考記事】

●2017年のドル/円は122円まで上昇後、105円へ反落。ブラックスワンで100円割れも(2016年12月27日、陳満咲杜)

 そもそも「トランプ・ラリー」自体が、未知数の「トランプノミクス」が仮に実現される場合の、その成果の大部分を織り込んでいるというか、先走りしてきたものだ。だから、たとえ「ブラック・スワン」が出現しなくても、安心できる状態ではなく、米ドル高一辺倒の見通しとは、やはり距離を置いたほうが賢明だと言える。

■中国人民元の異変は「ブラック・スワン」的性質を持つ 実際、昨日(1月5日)の米ドルの急落は、中国人民元の異変とリンクして発生していたと思われるが、中国人民元相場の異変は「ブラック・スワン」とまで呼ばれなくても、そのような性質をもつ出来事だと思う。

米ドル/中国人民元 日足(出所:Bloomberg)

 同じく中国発の材料である、2016年年初の上海株の急落が、相場に大きなインパクトをもたらした前例に照らして考えると、軽くパスできる問題でもなさそうだ。

 1月4日(水)に、中国人民元安の勢いを止めるべく、中国人民銀行(中央銀行)と見られる介入筋がオフショア中国人民元マーケットにて猛烈な中国人民元買いを仕掛け、また流動性をなくすように中国人民元の貸出をコントロールしたと言われる。

 このような仕掛けを、相場は昨年(2016年)、何度も経験したが、今回の勢いがもっとも大きかった。この中国人民元の急上昇は、リスクオフの材料となり、昨日(1月5日)朝からの米ドル売り・円買いの値動きを加速、米ドル全体の反転をもたらしたわけだ。

 世界経済が中国景気動向に左右されるといっても過言ではない昨今において、不安定な中国人民元相場が為替市場のリスク要素として意識されてもおかしくない。

 それどころか、前提として、2016年8月の人民元切り下げ騒動で見られたように、管理相場である中国人民元相場の動向が、米ドル/円などの自由取引市場に直接大きな影響を及ぼすことが、相場逆転のきっかけになることが十分あり得るので、これからも人民元相場の動向からは目が離せない。

■きっかけは中国人民元だが、本質は相場全体の問題 一方、相場の出来事を単独でとらえる場合、往々にして大局観が失われがちだ。中国人民元相場における変動が米ドル全体の頭打ちにつながったとすれば、それは中国人民元や中国経済云々ではなく、相場全体の問題ととらえるべきだ。

 要するに、「トランプ・ラリー」が行きすぎた分、市場はすでに疑心暗鬼の段階にきているのではないだろうか。トランプ氏のホワイトハウス入りが近づけば近づくほど、市場関係者はポビュリズムから目覚め、だんだん不安になってくるわけだ。

 「我々はトランプ氏に賭けすぎていないか」と自問する市場関係者が多くなるにつれ、ポジションの戻しが生じやすい。何らかの大きな変動があれば、皆が一斉に手持ちのポジションを手仕舞い、リスクを削ろうとするわけだから、米国債が買われ、米ドルが売られ、そして、金が買われたわけだ。

 中国人民元相場における中国人民銀行の介入(正式的には否定されているが)のタイミングであっただけに、中国人民元の急騰が相場全体のポジション調整のきっかけになったわけだ。

 米ドル/円に関しては、目先、「ダブル・トップ」の構造が…