陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

トランプ氏が失脚してもしなくてもドル安は 続かず。大統領辞任なら大幅なドル高に! ブログ

トランプ氏が失脚してもしなくてもドル安は 続かず。大統領辞任なら大幅なドル高に!

■ドルインデックス全幅戻しでトランプ・ラリー終焉! トランプ米大統領が弾劾されるかもしれない、といったリスクの浮上で市場は混乱している。一昨日(5月17日)の米国株の急落とともに、米ドル全体は続落、円は大きく買い戻され、昨日(5月18日)いくぶん緩和されたものの、米ドル全体の弱気変動が続く。

NYダウ 4時間足(出所:Bloomberg)

世界の通貨VS円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 4時間足)

 ドルインデックスでみると、一昨日(5月17日)、97.33まで下落、昨年(2016年)11月9日(水)終値の97.58と照らして考えると、ある状況がしっかり確認されたことがわかる。すなわち、「トランプ・ラリー」の「全幅戻し」だ。

ドルインデックス 4時間足(出所:Bloomberg)

 トランプ氏が大統領に当選したのは2016年11月9日(水)であり、当日の金融市場が非常に高い変動率をもって反転したことは、記憶に新しい。

 ここまで下落してくると、少なくとも為替市場における「トランプ・ラリー」の終焉を意味する。「トランプ・ラリー」はもはや過去のものだから、米ドル安が続くのでは…とウォール街の大手投資銀行を含め、多くの市場関係者たちは米ドル安のシナリオに傾き始めている。

 ユーロ/米ドルの見通しに関して、ちょっと前に「パリティ、パリティ」と連呼した者が一転して1.15ドルや1.17ドルへの上昇を予測し、「君子豹変」ぶりをうかがわせる。

■「トランプ・ラリー終焉」と「米ドル高基調終焉」は別物! はたして、そうなるのだろうか。

 市場の行方は誰も事前に断定できないが、為替市場が大きな分岐点に差し掛かっていることは確かだ。

 仮に米ドル全面安のトレンドがこれからも続くなら、足元で確認すべき前提条件があると思う。言い換えれば、この前提条件を確認できていないうちに、米ドル高の終焉を認定するのは性急であり、また、リスキーな判断だと思う。

 それはほかならぬ、記憶に新しいあの「トランプ・ラリー」が始まった2016年11月9日(水)の値動きだ。

 ユーロ/米ドルでいえば、当日1.1299ドルまで一時急伸し、そのあと1.0906ドルまで急落したほどの逆転相場であり、波乱相場だったので、「トランプ・ラリー」が終焉したとはいえ、本格的な米ドル安相場の到来は、やはり、当日高値1.1299ドルの更新が前提条件になるのではないだろうか

ユーロ/米ドル 日足(出所:Bloomberg)

 逆説的になるが、今はトランプ氏の辞任があり得るかも…といった「トランプ・ショック」の真っ只中だから、もし、米ドル安トレンドが本物なら、ユーロ/米ドルは当日の高値を突破していくのも当然の成り行きだと思われる。

 だからこそ、ドルインデックスの当日安値(2016年11月9日安値95.89)割れの有無を確認してから、米ドル高の終焉を判断しても遅くないと思う上に、この安値を割り込まない限り、米ドル高基調の終焉は認定できないとみる。

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

 「トランプ・ラリー」が終焉したとはいえ、米ドル高基調が終焉したとは限らないので、このあたりを区別することが重要であると思う。

 もっとも、「トランプ・ラリー」は行きすぎていた、だからこそ、それに対する反動も大きかった。しかし、その反動自体も最終段階にある疑いが大きく、今「トランプ・ショック」と騒がれているからこそ、そろそろ米ドル全体が底打ちするタイミングが近いのではないかと思う。

■トランプ氏が辞任となれば当選時と同じ値動きに!? なにしろ、今回の騒動が仮にトランプ氏の弾劾、あるいは辞任で収束するとすれば、それこそ米共和党の「思うツボ」だと思われる。

 トランプ氏は共和党から出馬していたが、そもそも商人出身で政治人脈が薄く、また、選挙当初から党内での軋轢が続いていた。言ってみれば、共和党には「勝てる人物」がいなかったから、共和党はトランプ氏を支持していたのだ。トランプ氏があらゆる意味合いにおいて伝統的な「共和党人」でなかったこと、また、いわゆる「政治家」でなかったことは、今となってはもはや周知の事実だ。

 トランプ氏が辞任すれば、副大統領のマイク・ペンス氏、あるいは下院議員のポール・ライアン氏の大統領就任が想定されるが、両氏はともにベテランの政治家である。よって、米両院を支配する共和党にとっては、「異人・怪人」で「問題児」とされるトランプ氏を外してもらった方が政策推進しやすい、というメリットが大きいと言える。

 だから、トランプ氏が弾劾され、また辞任となれば、マーケットの反応は2016年11月9日(水)と同じく、最初は米ドル売りが進み、その後、すぐ逆転し、大幅な米ドル高になるのではないかと推測される。

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

 言ってみれば、トランプ氏の辞任があっても米国が困ることはほとんどなく、政策推進しやすく、また、米国内における政治対立を緩和するのにむしろ好都合だから、市場はそれを好感し、米ドル高・株高につながると推測される。

 場合によっては、氏の辞任があっても米ドル売りになるタイミングさえなく、一気に米ドル高の局面となることもあり得る。

 逆にトランプ氏がこの困難な局面を乗り越えれば…
米ドル/円のGMMAでイワシがクジラに 食われた!? 115.50円のブレイクは近い! ブログ

米ドル/円のGMMAでイワシがクジラに 食われた!? 115.50円のブレイクは近い!

■ドルインデックスがついに底打ち!? その根拠とは? 米ドル全体の底打ちのサインが明確になってきた。同サインがホンモノなら、2017年年初来の米ドル全体の調整はすでに終焉しており、これからブル(上昇)トレンドへ復帰する公算が大きい。

 ドルインデックスの週足から考えると、2017年年初来の反落で形成された「下落ウェッジ」というフォーメーションは、今週(5月8日~)の安値をもって完成した公算が高まっている。

ドルインデックス 週足(出所:Bloomberg)

 いったん安値を更新してから、先週(5月1日~)や先々週(4月24日~)の高値を超えているから、今週(5月8日~)の上昇が「リバーサル」のサインを点灯し、また「アウトサイド」、すなわち「かぶせ」の形態が底打ちの可能性を示唆した。

【参考記事】

●陳満咲杜氏監修、欧米流プライスアクションがMT4チャート上へ表示できるように!

 さらに、先々週の週明け(4月24日)に形成された「ギャップ」を「埋めた」から、同サインの信憑性は高いとみる。

 また、50週移動平均線によるサポートも見逃せない。同線がサポート、また、レジスタンスの役割を果たしてきただけに、今週(5月8日~)底打ちした可能性がより強化されているとみる。

 2017年年初あたりから形成されてきた「下落ウェッジ」は、100.50前後のレジスタンスを突破できれば、上放れを果たすことになり、米ドルの上昇モメンタムを強めるであろうから、これから2017年年初来高値の更新が視野に入る見通しだ。

■ユーロ/米ドルはこれから年初来安値にトライか となると、もっとも推測しやすいのがユーロ/米ドルの値動きであろう。ユーロ/米ドルは、2017年年初来高値を更新してから反落し、先週(5月1日~)、安値を割り込んで「リバーサル&アウトサイド」のサインを点灯し、切り返しの終焉が示唆された。

【参考記事】

●陳満咲杜氏監修、欧米流プライスアクションがMT4チャート上へ表示できるように!

ユーロ/米ドル 週足(出所:FXブロードネット)

 ドルインデックスが2017年年初来高値にトライする余地があれば、ユーロ/米ドルも2017年年初来安値を試す可能性がある。

 もちろん、これは中期スパンの話で、一気に下落することは想定していないということは、改めて記しておきたい。

 ユーロ/米ドルの今週(5月8日~)の頭打ち、そして反落で、2016年5月高値から同11月高値を連結したレジスタンスラインの役割が再確認されたわけだから、ベア(下落)トレンドの継続が有力視される。

 GMMAチャートでは、短期移動平均線グループ(青・鰯)が長期移動平均線グループ(ピンク・鯨)とクロスしようとしているのが確認されているものの、結果的に失敗となる可能性が高いから、いわゆる「鰯食い」のサイン(ゴールデンクロスの失敗)が点灯する公算が大きい。

 そうなると、2017年年初来の値動きが一変してユーロの下落トレンドになる、と想定しておくのも当然の成り行きであろう。

■米ドル/円は早晩3月高値をブレイクか 米ドル/円の週足では、114円台の打診をもって2017年年初来の下落チャネルのブレイクが明確となった。

米ドル/円 週足(FXブロードネット)

 2016年9月安値からの値動きを、大型「上昇フラッグ」というフォーメーションと見なした場合、2017年年初来108.10円までの下落自体が「フラッグ」を形成していたことが確認できる。

 足元の高値トライを考えると、明らかに「上昇フラッグ」の指示どおり、またブルトレンドへ復帰してきた可能性が大きいから、早晩3月高値115.50円のブレイクを果たし、ブル基調がより明確になるだろう。

 GMMAチャートとの整合性から考えると、先々週週明け(4月24日)にて形成された「ギャップ」は、いわゆる「鰯食い」シグナルの一環として捉えられる。

 要するに、4月安値108.10円のトライに伴い、短期移動平均線グループ(青・鰯)と長期移動平均線グループ(ピンク・鯨)の「デッドクロス」が試されていたが、結果的に失敗に終わり、鰯が鯨に食われたというイメージで元のトレンド(上昇)に復帰してきたわけだ。だから、同「ギャップ」は重要な役割を果たしている。

 言ってみれば、同「ギャップ」は2017年年初来の下落トレンドを修正するサインであり、また、これから上昇トレンドを維持していく原点になる存在で、これからしばらく否定されることはないだろう。

 115.50円を突破する前に、いくぶんスピード調整も想定されるが、先々週(4月24日~)安値109.59円以下の深押し、といったリスクはだいぶ後退したといえる。

 換言すれば、米ドル/円に限っては、出遅れたロング筋が深い押しを期待するなら、また失望させられる可能性が大きい。

 もっとも、米ドル/円の切り返しは、ユーロ/円、英ポンド/円の…
年初来の円高局面が円安局面へ転換! でも出遅れの豪ドル/円は出遅れのまま!? ブログ

年初来の円高局面が円安局面へ転換! でも出遅れの豪ドル/円は出遅れのまま!?

■2017年年初来の円高局面が転換された! マクロン氏がフランス大統領に当選した。「ホワイトスワン」だから相場に織り込み済みと見なすが、ドルインデックスの安値保ち合いから考えると、米ドル全体の底打ちといった判断は、なお早計な気がする。しかし、2017年年初来の円高局面から再度円安局面へ転換されたことは確かだ。

 昨年(2016年)の英EU(欧州連合)離脱決定、また、米大統領選の結果が「ブラックスワン」だったから、市場はかなり警戒していただけに、先々週(4月24日~)からどうやら「ホワイトスワン」なのでは…とマーケットが気づき始めると、ユーロの上昇が著しかった。

ユーロVS世界の通貨 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロVS世界の通貨 日足)

 過度なリスクオフに対する修正が始まったわけだから、このところの円買いが一転して円売りと化し、米ドル/円の上昇につながったわけだ。

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 米ドル安・円安共存の局面では、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)のパフォーマンスが必然的に一番良くなる。ユーロ/円の高値更新は象徴的な出来事だ。

 4月17日(月)安値115.75円から、昨年(2016年)高値124.09円のブレイクまで、ユーロ/円は、ほぼスピード調整なしで上昇し、V字反騰を果たした。

ユーロ/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 日足)

 2016年高値更新には至っていないものの、英ポンド/円も同じ構造を示し、米ドル/円の反騰と相まって、急速な円売りが進んでいることは明白である。

英ポンド/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/円 日足)

 米ドル/円の108円台底値の維持、また113円節目の打診はユーロ/円、英ポンド/円のパフォーマンスに比べれば地味に見えるものの、総じて底打ちのサインとして重視されるべきであろう。

■ここからは米ドル全体とユーロ/米ドルの値動きが焦点 ここからの焦点は、やはり、米ドル全体の動向にあり、また、ユーロ/米ドルの値動きにあるだろう。

 ユーロ/米ドルにしても、ユーロ/円にしても、「フランスブラックスワン」の懸念や朝鮮有事などの地政学リスクによってもたらされたリスクオフに対する修正と言うなら、一直線な値動き自体にも目先「オーバーボート」の疑いが浮上し、これが米ドル全体の底打ちにつながる可能性がある。

■ユーロ高・米ドル安の地合いは続かないだろう もっとも、先週末(5月5日)の米雇用統計の堅調もあって、米6月利上げの確率はほぼ100%であり、金融政策の違いによって、ユーロ高・米ドル安の地合いは続かない公算が高い。

 足元のユーロ高が、行きすぎた懸念に対する修正という位置づけなら、通過したからこそ「事実の売り」になりやすい。さらに、マクロン氏の当選がEUの政治リスクをすべてなくしたわけではないから、楽観しすぎるのも禁物だ。

 ただし、フランスから「ブラックスワン」が飛ばなかったことで、ECB(欧州中央銀行)がこれから徐々に政策の正常化を図る余裕を得られたとみなされ、これが中長期的にはユーロの支えになると思われる。

 この意味では、近々ユーロ高に対する修正は見られると思うが、ベア(下落)トレンドへ復帰するには何らかの材料が必要だと思う。

 現時点では、あくまでユーロのスピード調整、といった視点で臨んだほうがよさそうだ。換言すれば、近々ドルインデックスの底打ちがあっても、ブル(上昇)基調に復帰するのは、利上げ以外の材料なしでは容易ではない。

 米ドル高基調を確認する、また加速させる材料として…
ユーロ/円、英ポンド/円が大幅切り返し! 円高終焉を示唆するサインに一句詠む ブログ

ユーロ/円、英ポンド/円が大幅切り返し! 円高終焉を示唆するサインに一句詠む

■市場の基調が転換、リスクオンムードに 週明け(4月24日)から、市場の基調が大きく変わった。米ドル全体の一段安が見られる一方、円安の基調がより鮮明になり、結果としてユーロ/円をはじめ、多くのクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)が「ギャップ」を形成してから大きく上昇した。

世界の通貨VS円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 4時間足)

 円安への基調転換は、過度なリスクオフに対する修正という視点でみれば、米ドル/円の上昇も当然の成り行きだが、その背景には、前回のコラムで指摘した「公式」が効いていると思う。

【参考記事】

●仏大統領選・ルペン候補の支持率が市場を翻弄!? 勝てばユーロ/米ドルはパリティへ!?(2017年4月21日、陳満咲杜)

 前回のコラムでは、「これから市場の基調を決定する要素は、フランス選挙の行方>米国経済政策>地政学リスク」と指摘させていただいたが、週明け(4月24日)からの円安進行は、まさにそのとおりだった。

 フランス大統領選の第1回投票が、想定どおりの結果となったことを好感したマーケットは、再びリスクを取り始め、また米経済政策に敏感に反応するようになった。

 朝鮮有事など地政学リスクは、どちらかというとやや蚊帳の外という感じだ。もちろん、北朝鮮が核実験に踏み切れなかったところも大きいが、それも一応想定範囲だった。

 なにしろ、前回のコラムでも強調したように、巷の論調と違って、北朝鮮問題は今そこにある危機という性質のものではない。北朝鮮が核開発を取りやめるとは思わないが、厳重な警告を受け、追いつめられる中、あえて自ら危機の引き金を引くわけにはいかない。独裁者ほど自らの延命ばかりを考えるものだし、また、中露との駆け引きで勝手なことはできず、身動きが取れない。

【参考記事】

●仏大統領選・ルペン候補の支持率が市場を翻弄!? 勝てばユーロ/米ドルはパリティへ!?(2017年4月21日、陳満咲杜)

 一方、米国が北朝鮮に安易な軍事行動を取れないのも明らかだ。韓国滞在の米国軍民(25万人ほど)の安全確保、また世界4番目の規模をもつ北朝鮮軍を一気に制圧できるかどうかなど、トランプ政権といえども、やはり安易に解決できる問題ではない。

 あえて言うなら、米国がイラク戦争を仕掛けられたのは、イラクは北朝鮮と違って、口先と裏腹に大量破壊兵器も核兵器を持っていないとわかっていたからだ。だからこそ、北朝鮮には安易な手出しができないことも明白だ。

■リスクオフが過度に行きすぎていた、とも言える この意味では、シリア攻撃から朝鮮有事云々と大げさに語られた4月半ばの時点で、リスクオフの動きがすでに行きすぎていた。地政学リスクに加え、フランス大統領選に関する心配や憶測も行きすぎていたと思われ、米国経済政策の可能性は見向きもされなかったといった感じが強い。

 2016年年末の時点で、猫も杓子もトランプ・ラリーばかりを口にしたのと同じく、巷はフランスのEU(欧州連合)離脱やら、第二次朝鮮戦争やらともっぱら大げさな話に夢中で、そのことがセンチメントの行きすぎを物語っていた。

 行きすぎたトランプ・ラリーが大きく修正されてきたのと同じく、今週(4月24日~)に入ってから過度なリスクオフが急激な値動きをもって修正されてきた。この意味では、週明け(4月24日)からの値動きは、別にサプライズではなく、可能性の高かった成り行きと思われる。

 さらに、トランプ政権は「史上最大規模」とされる税収改革プランを提示したが、あまり現実味がないとみられ、マーケットはそれほど反応しなかった。しかし、これから法案の中身が修正されたり、また、本国投資法の策定による米ドルの本国還流が予想されたりといった流れになれば、一段と米ドル高基調につながりやすいのではないだろうか。

 言い換えれば、足元は行きすぎたリスクオフに対する修正という「初歩段階」にすぎず、米ドル全体の回復は米経済政策の進行次第だから、むしろこれからだ。

■市場はマクロン氏の勝利を織り込みつつある もっとも、ユーロ/米ドルが週明け(4月24日)から「ギャップ」を形成して急騰してきたから、米ドル全体の続落は当然の結果である。

ユーロ/米ドル 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 4時間足)

 これからの仏大統領選の最終選挙は、なお油断できないが、仮にマクロン氏の勝利であっても、ユーロ/米ドルがあのGS(ゴールドマン・サックス)が予測していたように、1.3ドルの節目を打診していくとは限らない。巷ではすでにマクロン氏の勝利を織り込みつつあるから、ユーロ高が維持されても上値余地は限定される公算が高い。

 米ドル/円に関して、4月14日(金)の本コラムが指摘した…
仏大統領選・ルペン候補の支持率が市場を 翻弄!? 勝てばユーロ/米ドルはパリティへ!? ブログ

仏大統領選・ルペン候補の支持率が市場を 翻弄!? 勝てばユーロ/米ドルはパリティへ!?

■仏大統領選を控えているのに市場の反応が薄いのはなぜ? 地政学リスクにトランプ米大統領の米ドル高牽制発言が米ドルの圧迫材料として引き続き意識され、ドルインデックスは再度99半ばまで続落している。

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

 フランス大統領選を控えているにもかかわらず、ユーロはやや強含みの展開を見せ、米ドル全体の軟調が一段と目立つ。

 もっとも、混迷を深めているフランス大統領選​の行方は、油断できない。ユーロがどう反応してくるかは選挙結果次第だが、肝心の世論調査や事前予測を、もはや信じるべきではないというセンチメントがマーケットを支配し、ユーロの行方が一段と不透明になったと思う。

【参考記事】

●極右と極左が人気!? 恐怖指数は急上昇! 混沌の仏大統領選とユーロ相場を徹底解説(松崎美子)

●波乱含みになってきたフランス大統領選! 結果次第でEUの存続も危うくなるかも!?

 なにしろ、昨年(2016年)の二大イベント、すなわち、英EU(欧州連合)離脱にしても、米大統領選にしても、事前の世論調査や選挙情勢に関する統計あるいは予測が、見事と言っていいほど外れていた。

 ゆえに、足元のフランス大統領選に関する事前調査やアンケートの数字をマーケット全体が冷めた視線で見詰め、あまり反応しなくなっているのが事実であり、また、そのような反応になるのも納得できる。

■為替市場のカギを握るのはルペン候補の支持率! とはいえ、4月23日(日)には第1回の投票が行われるわけで、来週(4月24日~)からの為替市場はマリーヌ・ルペン候補の支持率に左右される形で波乱になってくる可能性を無視できない。

来週(4月24日~)からは、仏大統領選のルペン候補の支持率が、為替市場を左右するだろう 。(C)Anadolu Agency/Getty Images

 米ドルの対極にあるユーロ。その離脱を明確に打ち出したルペン女史の姿勢は、ユーロ崩壊につながりかねないだけに、同氏の支持率の変化にマーケットは神経を尖らせている。

 ゴールドマン・サックスの分析によると、ルペン候補の支持率が10%増えるたびに、ユーロ/米ドルは2%下落し、同氏の勝利が確定した場合、ユーロ/米ドルのパリティ(1ユーロ=1米ドル)を覚悟すべきということだ。

ユーロ/米ドル 週足 

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 週足) 

■ルペン氏敗北ならユーロ/米ドルは1.13ドルの節目打診!? 反対に、第1回投票でルペン氏が敗北した場合、ユーロ/米ドルは5%上昇することもあり得るため、1.13ドルの節目打診につながるだろうと推測される。

ユーロ/米ドル 週足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 週足) 

 さらに、穏健派のマクロン氏やフィヨン氏が第2回投票に無事進んだとしても、ユーロ圏分裂の可能性がゼロにはならないので、ユーロの上昇余地は限定されると思われる。

 ただし、最悪の場合(ル・ペン氏優勢の場合)、ECB(欧州中央銀行)が選挙の間でも通貨政策を打ち出す可能性があるという。

 したがって、来週(4月24日~)から市場の基調を決定する要素は、地政学リスクからフランス大統領選にシフトしていくことだけは確かだ。

 もっとも、前回のコラムで指摘させていただいたように…
トランプ氏の米ドル高牽制発言で、米ドル安 終焉!? 米ドル/円は200日線の攻防に注目! ブログ

トランプ氏の米ドル高牽制発言で、米ドル安 終焉!? 米ドル/円は200日線の攻防に注目!

■リスクオフとトランプ氏の米ドル高牽制で円高に 米ドル/円の110円節目割れが示したように、地政学リスクの高まりで円がリスクオフ通貨として選好される傾向はなお強い。

 そして、トランプ米大統領の米ドル高牽制発言も重石となり、円の続伸(円高)をもたらした。

 一方、ドルインデックスでみると、トランプ氏の発言が市場にもたらし影響は、短命に終わる可能性がある。

ドルインデックス 1時間足(出所:Bloomberg)

 4月12日(水)のWSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)のインタビューで、トランプ米大統領は「米ドルが強すぎるのは、人々が私を信頼しているためだから、自分のせいだ」と語り、米ドルの急落をもたらしたが、昨日(4月13日)、ドルインデックスはだいぶ戻り、米ドルの下落分を帳消しとする可能性を示唆している。

トランプ米大統領は「米ドルが強すぎるのは、人々が私を信頼しているためだから、自分のせいだ」と語り、米ドルの急落をもたらした。(C)Alex Wong/Getty Images

 トランプ米大統領の米ドル高牽制は、本来かなりインパクトの強い発言であったにもかかわらず、「意外」とその影響力が限定的と思われる節があるとすれば、それはほかでもない、トランプ氏がほぼ同時に、あまりにも多くの前言を翻したからだ。

 選挙時に中国を名指しして、「為替操作国」と非難したトランプ氏は、インタビューの中で一転して、「為替操作国ではない」と明言した。

 また、FRB(連邦準備制度理事会)に関しては、低金利を維持するのが好ましいと言い、イエレン議長の留任も暗示したが、周知のとおり、選挙時には、FRBの低金利政策を非難し、イエレン議長の解任までほのめかしていた経緯があった。

 君子豹変もいいところだが、トランプ米大統領の前言撤回はさらに続く。

 NATO(北大西洋条約機構)は「時代遅れではない」と言い直し、合衆国輸出入銀行も「支持」すると表明した。

 もちろん、氏はつい最近まで、「NATO自体はもはや時代遅れ」と繰り返し、合衆国輸出入銀行は米国雇用を犠牲にした組織と批判していた。その経緯は記憶に新しいところだ。

■米ドル高はトランプ氏への信頼ではなく、失望の現れ? 商人出身のトランプ米大統領の「変節」は、よく言えば現実的で柔軟性がある、悪く言えば「節操なし」の範疇に入ると思われるが、ここで重要なのは、氏の言葉を真面目かつ深刻に受け取る必要がないことを、マーケットが習得しているかもしれないことだ。

 だから、米ドル高牽制発言がもたらした影響が短命に終わる可能性があっても、おかしくなかろう。

 そもそもトランプ氏がいう「米ドル高は自分のせい」というところは否定しないが、「人々が私を信頼しているため」かどうかはかなり微妙だ。

 基本的に、「トランプ・ラリー」がもたらした米ドル急伸は、人々がトランプ氏を信頼していたというよりも、氏の経済政策への強い期待感の現れであった。ここへきての米ドル下落が物語るのは、そういった氏への期待がかなり裏切られた、という失望感の表れではないかと思う。

 ゆえに、「トランプ・ラリー」がすでに失速し、また米ドル高もかなり修正されてきた目先、トランプ氏の「自画自賛」がやや滑稽に見えたのも仕方がない。

 さらに、米ドル高の本質が米金利の正常化が進む段階に…
米軍シリア空爆でもドル/円は110円死守! 米雇用統計後にここが守られるかがカギ ブログ

米軍シリア空爆でもドル/円は110円死守! 米雇用統計後にここが守られるかがカギ

■米軍のシリア空爆で、金や円が買われる 「多事の秋(※)」ならぬ、「多事の春」が来ている。

(編集部注:「多事の秋」とは、「多事多難な時」、「問題が多発する季節」を表す中国の言葉)

 この原稿を書いている間に、米軍がシリア政府軍空爆、というニュースが伝えられ、「有事の金」や「リスクオフの円」が買われるといった、いつもの反応パターンが見られた。

世界の通貨VS円 15分足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 15分足) 

金価格 5分足 (出所:Bloomberg)

■トランプ大統領はロシア、中国双方に圧力をかけた? ところで、今回のトランプ米大統領の決定は、かなり大胆かつ綿密であると思う。なにしろ、習近平中国国家主席が訪米している真っ只中に軍事行動を決定するのが普通ではない上、「親露」とされるトランプ氏がロシアへの対抗を辞さないという強いメッセージを発しているのだ。これはロシアのみならず、中国への圧力とも読み取れる。

 今回の米中首脳会談のメインテーマは、北朝鮮問題であると言われる中、中国の援助なしでは事実上維持できない北朝鮮にとって、中国の態度が重要であることは言うまでもない。

 すでに米単独軍事行動も選択肢の1つと明言したトランプ政権は、今回のシリア攻撃を通じて、一石二鳥の効果を狙っているのではないかと推測される。

 大胆な決定を下した一方、ロシア側に事前通知したとも報道されたように、ロシアとの全面対決を回避する用意をうかがわせる注意深い一面も見られ、さすがトランプ流の手腕だと感心させられた。この報道もあったせいか、米ドル/円は執筆中の現時点で、110円の心理的節目を割り込めずにいる。

米ドル/円 5分足 

 (リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 5分足)

■シリアも北朝鮮も支援なしでは成り立たない国家だが… シリアが地政学上の問題児とされるなら、北朝鮮も然りであろう。前者はロシアの直接軍事支援、後者は中国の経済支援によって成り立っている「ならず者」に近い国家であり、簡単な打開策は見つからないままだ。

 ロシアの軍事支援によってアサド政権が存続し、中東の混迷が深まる一方、北朝鮮は核兵器を手に入れ、また、その攻撃能力を確実に向上させているという。

 米国にとって、ロシア、中国と直接渡り合うのが問題解決の近道とされるが、そう簡単な構図にはならないと思う。特に北朝鮮の場合、かなり厄介である。

 今や中国にとっても、北朝鮮は危険な存在になりつつあるに違いない。なにしろ、中国の援助(特に石油)なしでは成り立たないにもかかわらず、金政権はまったく中国の話を聞かず、最近はもっぱら核兵器の使用をほのめかすため、中国指導部は神経を尖らせている。

 わかりやすく言えば、「ならず者国家」が「支援してくれないと、こちらは自爆もあるぞ、自爆は核爆弾だからこわいぞ」と言っているような話だ。

 このあたり、中国はかつての苦い経験があるからこそ…
思わず俳句を詠んでしまった3月27日の 米ドル/円ローソク足で重要なこととは? ブログ

思わず俳句を詠んでしまった3月27日の 米ドル/円ローソク足で重要なこととは?

■米ドル全体が底打ちした可能性大! 桜を待つ間、為替市場も変調の兆しが出てきた。結論から申し上げると、米ドル全体が底打ちした可能性は大きいと思う。

 ドルインデックスでみると、週明け(2017年3月27日)からいきなり「ギャップ」を空けて急落し、2月安値をいったん割り込んだが、急落せず、翌日(3月28日)から反転、足元まで継続してリバウンドしてきた。

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

 これは、大きなサインを灯したとみる。このサインとは「フォールス・ブレイクアウト」、すなわち2月安値に対するブレイクがダマシだったことを示唆するものであり、米ドルの底打ちを強く暗示している。

 相場は詭道なり、ゆえに、ダマシほど有効なシグナルはないと言われる。

 2月安値のいったん更新が結局ダマシだったとすれば、ショート筋が踏み上げられ、さらに、ここぞとばかりに新規ロング筋が参入したことが推測される。そして、これらが足元までのリバウンドをもたらしているとみるのが、相場の真実に近いかと思う。

■ダマシは市況を一変させる? 米ドル/円が好例 重要な高値、安値に対するブレイクが結果的に「フォールス」、すなわちダマシに終わったのであれば、往々にして市況を一変させる力を持つ。最近の好例を挙げるなら、米ドル/円は一番説得力があるだろう。

 米ドル/円は3月10日(金)の高値トライが、2月15日(水)高値や1月末高値をいったん更新できたものの、続伸せず一転して大きく下落したので、「フォールス・ブレイクアウト」のサインを点灯していた。

米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

 同サインが点灯したからこそ、2月安値を割り込んだわけだから、2017年年初来の米ドル安がさらに延長されたわけだ。

 この前例を見ると、ドルインデックスのサインがホンモノであれば、ここから3月高値を再トライ、また更新していくことが推測される。こうなれば、2017年年初来続いてきた米ドル全体の調整は、すでに今週(3月27日~)の安値をもって完成され、これから米ドル高基調を強めていくことが想定される。

 週足では、たびたび指摘してきたように、2015年における重要な高値(3月と11月)前後はメインレジスタンスゾーンであったから、2016年11月にてやっと上放れを果たしただけに、一転してサポートゾーンになりやすい。

ドルインデックス 週足(出所:Bloomberg)

 なにしろ、ブレイクするのにかなり時間がかかったから、役割の交替(元レジスタンスがサポートになる)は確認されやすいものだ。週明けの「フォールス・ブレイクアウト」のサインが、究極の証左材料と見なせるだろう。

 当然のように、ユーロ/米ドルの場合、反対の方向を…
オレは高値づかみさせられたのでは…。 ロング筋はおびえ、戦々恐々としている ブログ

オレは高値づかみさせられたのでは…。 ロング筋はおびえ、戦々恐々としている

■トランプ政権の実行力への不安が、米ドル下落の最大要因 米ドル安が続いている。

米ドルvs世界の通貨 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルvs世界の通貨 4時間足)

 米ドルが米利上げ後に反落したり、米株安を背景に下落したりしているのは、大きく進行した「トランプ・ラリー」に対する反動という視点において、トランプ政権の実行力に対する不安がもっとも大きな要因だと思う。

 オバマケア代替法案の採決が見送られたことに象徴されるように、マーケットがトランプ政権の「現実的妥協」の可能性に備えようとしていることが、米株安、米ドル安をもたらしている、もっとも大きな原因だとみる。

■米ドル&米国株、足元の調整はまだ「初歩」的? 強硬で不遜な態度で知られるトランプ大統領が、いざ国政運営に入ると、周りをまとめられず、政策を推進できないなら、「トランプ・ラリー」どころか、むしろ「トランプ・ライト」のリスクが大きいのでは…と市場関係者が警戒しているのは確かだ。

政策推進がはかどらないトランプ政権のリスクを、市場関係者は警戒し始めている。

(C)Chip Somodevilla/Getty images

 そもそも、「トランプ・ラリー」自体が行きすぎた側面が大きかったから、いまさら大きな声で言えなくても、「オレは高値づかみさせられたのでは」とロング筋がおびえ、戦々恐々としているのが実情だ。

 この意味では、足元の米国株や米ドル全体の調整は、まだ「初歩」的な段階にすぎない可能性がある。

 そして、米国株にしても、米ドルにしても、ロング筋の憂鬱は含み損を抱えていることよりも、実はそこにあるのではないかと推測される。

■「トランプ・ラリー」便乗があまりにうまくいったので… 換言すれば、トランプ氏が「有言実行」してくれないと、今までのスタンスが180度転換される、というリスクの現実味が増し、一部市場関係者が真剣に「ドテン」の可能性を考え始めているということだ。

 もっとも、金融市場における戦略は、大成功を収めることはあっても、永久に有効といった事例は1つもなかった。言うまでもないが、こういった戦略が存在すれば、市場自体が壊れるから、当たり前のことといえばそのとおりだ。

 しかし、あまりにも長く、またパフォーマンスがよかった戦略につい錯覚を覚えてしまう事例は、枚挙に暇がない。「トランプ・ラリー」に便乗する戦略、すなわち米株買い、債券売り、そして、米ドル買いがあまりにも成功し、また、あまりにも大きな成果を挙げたから、「トランプ・トレード」に錯覚があったとしても、別におかしくなかろう。

 だからこそ、足元で広がっている懐疑、葛藤または恐怖といったセンチメントは、本当のところはむしろ健全な市場心理だといえる。

■トランプ氏の主張の多くは最初から不確実性が高かった なにしろ、トランプ氏の主張の多くは最初から不確実性が高く、大型財政支出計画に具体性が欠けるといった批判が多かった。にもかかわらず、マーケットは期待先行で評価してきたから、時間の推移につれ、反動が出るのは自然の成り行きであり、また、なお許容範囲にとどまっているとみる。

 ゆえに、「トランプ・トレード」の失速が確認されていること自体は「健全」な動きであり、「トランプ・ラリー」に対する反動が一段とみられたとはいえ、「ドテン」されるほど深刻化していないと思う。

 言い換えれば、「トランプ・ラリー」に対するスピード調整がある程度延びた方が、逆に「トランプ・ラリー」が完全に終わっていないという可能性を保つことができる。

 この視点から言えば、米国株に比べ、為替市場の状況がより「健全」かもしれない。何しろ、ドルインデックスは2017年年初から調整してきたわけだから、足元で米ドル全面安とはいえ、それは基本的には2017年年初からの調整変動の一環と見なされる。

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

 調整のスパンがだいぶ長くなり、「トランプ・ラリー」に対する懸念が強まる足元だからこそ、実はスピード調整の終盤が近い、といった可能性もある。

 トランプ大統領の支持率が、また最低水準を更新した…
米利上げで米長期金利低下、米ドル安に。 なぜそうなる? 理由は市場の疑心暗鬼に!? ブログ

米利上げで米長期金利低下、米ドル安に。 なぜそうなる? 理由は市場の疑心暗鬼に!?

■米利上げ後、米ドル全体は反落 米ドル全体は反落している。

米ドルvs世界の通貨 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルvs世界の通貨 4時間足)

 米利上げ後、FOMC(米連邦公開市場委員会)の声明文が市場関係者らの想定よりタカ派基調になれなかったとか、年4回の利上げ予想が3回に留まったとか、(いつものように)いろいろ後付けの理由が挙げられているが、問題の本質は米長期金利(米10年物国債の利回り)であろう。

 前回のコラムで指摘したように、カギは米長期金利(米10年物国債の利回り)にあった。米国債のショートポジションがかなり膨らんでいたため、利上げ後、これが買い戻された模様で、政策金利は上がったのに、米長期金利(米10年物国債の利回り)は低下することになった。

【参考記事】

●米ドル/円115円台復帰も精彩を欠く米ドル。ドルがなかなか上がらない2つの理由とは?(2017年3月10日、陳満咲杜)

米長期金利(10年物国債の利回り) 日足(出所:Bloomberg)

 こういった値動きのパターンは、通常、「事実の売り」と言われているが、今回も然り。

■ドルインデックスは三尊型を形成するのか? ところで、ドルインデックスの値動きから考えると、米ドルの反落自体よりも、この間の高値水準が注目されるべきではないだろうか。なにしろ、米ドルの失速で日足における「三尊型(※)」の形成が疑われてきたからだ。

(※編集部注:「三尊型」はチャートのパターンの1つで、天井を示す典型的な形とされている。仏像が3体並んでいるように見えるために「三尊型」と呼ばれていて、人の頭と両肩に見立てて「ヘッド&ショルダー」と呼ぶこともある)

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

 仮に、このようなトップアウトのフォーメーションが成立する場合、これから2月安値99.23割れをもって、下値余地を大きく拡大するだろう。果たしてこのような市況になるだろうか。

■米長期金利の動向から米ドルのパフォーマンスを推測 米ドルと米長期金利(米10年物国債の利回り)の相関性で問題を整理すると、シンプルな見方として、以下のような答えが出てくるだろう。

 すなわち、仮にドルインデックスが2月安値を割り込み、日足における「三尊型」のフォーメーションが成立して大幅に下値余地を拡大する場合、米長期金利(米10年物国債の利回り)もそれなりに、重要な下値サポートを割り込むだろう。

 同じく2月の安値水準では、同利回りが2.31%を記録していたから、果たして米長期金利(米10年物国債の利回り)が同水準を下回れるのかどうかが、問題の争点であろう。

 米長期金利(10年物国債の利回り)の週足でみると、2016年12月高値を超えられなかったから、利回りの反落は自然の成り行きに見えるが、2017年2月安値を割り込むのは、だいぶハードルが高いだろう。

米長期金利(10年物国債の利回り) 週足(出所:Bloomberg)

 なにしろ、1月高値をいったんブレイクしたので、1月安値と2月安値で形成した「ダブルボトム」の構造がなお維持されていることがわかる。

 そうなると、足元の反落はむしろ上昇途中におけるスピード調整と見なされ、ダブルボトムの構造を完全に否定するのは何らかのサプライズなしでは難しいのではないだろうか。

 実際、前述のダブルボトムの構造を否定する場合、米長期金利が再度ベア(下落)トレンドへ復帰する恐れも高まるから、サプライズもだいぶ大きなものでなければならない。

 では、米長期金利を頭打ちにし、場合によってはベアトレンドへ…