陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

2017年内は英利上げなしと思った方がよい。 英国発のブラックスワンを再度警戒! ブログ

2017年内は英利上げなしと思った方がよい。 英国発のブラックスワンを再度警戒!

■米ドルは一進一退ながらも堅調な値動き 米ドル全体は一進一退しながら、堅調な値動きを示している。ドルインデックスも米ドル/円も、あるポイントをいったんブレイクしたことで、地合いが強化された。

 これはほかならぬ、5月30日(火)高値のいったんブレイクである。

 前回のコラムにて指摘したように、ここを「転換点」と見なしたわけだから、同高値の打診があったからこそ反騰継続のサインが点灯したと言える。さらに、これから再度打診があれば、一段と基調の好転がもたらされるだろう。

【参考記事】

●為替相場にトランプ・ラリー再来!? 米ドル続伸のサイン点灯、米国株もまだ崩壊しない!(2017年6月16日、陳満咲杜)

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

米ドル/円 日足(出所:FXブロードネット)

 しかし、同高値はいったん打診されたものの、米ドルの急伸は見られず、保ち合いの状況が続いている。米ドル反騰のモメンタムが明らかに強くなく、相場が足踏み状態にあることも確かである。

■米ドル足踏みの理由は米金利の弱含みにあり その背景としては、やはり、米10年国債利回りの動向がいまいちというところが大きいのではないだろうか。特に米10年国債利回りと米ドル/円の相関性は最近高い。

 米10年物国債の利回りは先週(6月12日~)の安値(米利上げ直前の2.10%)から若干上昇してきたものの、目先2.15%前後で推移しており、弱含みの状態であることは否めない。

米10年物国債の利回り(米長期金利) 日足(出所:Bloomberg)

 米国債利回りの低迷は米国債価格の堅調を意味するものだから、これは市場関係者の多くが米利上げ見通しを疑問視していることを物語っている。

 もっとも、米2年物国債利回りの方が、FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策により敏感に反応するとされるが、先週(6月14日)の米利上げ後、同利回りはあまり動いていない。ここに市場コンセンサスが表れている。

米2年物国債の利回り 日足(出所:Bloomberg)

 もちろん、米利上げ見通しを疑問視する市場コンセンサスの形成は、最近の米経済指標の不振に基づいているが、市場関係者の認識が正しいとは限らない。

 なにしろ、FRBは最近の米経済指標の不振を承知した上で、利上げ継続、さらにはバランスシート縮小のプランを提示したほど、「自信」を見せているのだ。

 ゆえに、状況は流動的で、これからの米景気次第というところではないかと思う。

 さらに言ってみれば、市場コンセンサスが米ドル高に懐疑的であり、また、ポジションもこういった懸念に基づき、米ドルのロングポジションに傾いていないからこそ、何らかの材料でセンチメントが修正されると、米ドルが買われる余地が大きいといえる。

■FRBの「タカ派」スタンスは米株高・金利安を狙ってのこと? この意味では、FRBの「自信」について違う視点をもって探る必要があるかもしれない。

 要するに、FRBは「根拠なき自信」を示すわけがない。最近の米景気の状況を踏まえた上で、あえて「タカ派」のスタンスを維持したのであれば、米株高・金利安といった「安定局面」を狙った意図も透けてみえる。

 換言すれば、一般的に利上げはともかく、バランスシートの圧縮が開始されると、非常にインパクトが強い緊縮政策の推進となるから、それが金利の急上昇を招き、株式市場の急落をもたらすといったマイナスの側面が懸念されてもおかしくない。

 目先、市場センチメントが利上げ、また緊縮政策の継続に懐疑的な見方に傾いていることを察しているからこそ、FRBはタカ派スタンスを表明したわけだ。この意味において、これから市場が徐々にFRBの意図を織り込んでいくなら、米国債利回りも米ドル全体も反騰しやすいかと思う。

 いずれにせよ、目先の市場センチメントの強さから考えると、米ドル全体の反騰が継続されても緩やかなスピードに留まる可能性が大きい。

 だから、ドルインデックスも米ドル/円も5月30日(火)高値をいったん打診したものの、力強い続伸に至らなかったわけだ。底固めをしてから再度切り返していくといった市況が想定される中、何らかの材料なしでは、急騰するような値動きは期待薄かもしれない。

 ところで、米ドル全体の値動きはモメンタムに欠けて…
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2017年内は英利上げなしと思った方がよい。 英国発のブラックスワンを再度警戒!

■米ドルは一進一退ながらも堅調な値動き 米ドル全体は一進一退しながら、堅調な値動きを示している。ドルインデックスも米ドル/円も、あるポイントをいったんブレイクしたことで、地合いが強化された。

 これはほかならぬ、5月30日(火)高値のいったんブレイクである。

 前回のコラムにて指摘したように、ここを「転換点」と見なしたわけだから、同高値の打診があったからこそ反騰継続のサインが点灯したと言える。さらに、これから再度打診があれば、一段と基調の好転がもたらされるだろう。

【参考記事】

●為替相場にトランプ・ラリー再来!? 米ドル続伸のサイン点灯、米国株もまだ崩壊しない!(2017年6月16日、陳満咲杜)

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

米ドル/円 日足(出所:FXブロードネット)

 しかし、同高値はいったん打診されたものの、米ドルの急伸は見られず、保ち合いの状況が続いている。米ドル反騰のモメンタムが明らかに強くなく、相場が足踏み状態にあることも確かである。

■米ドル足踏みの理由は米金利の弱含みにあり その背景としては、やはり、米10年国債利回りの動向がいまいちというところが大きいのではないだろうか。特に米10年国債利回りと米ドル/円の相関性は最近高い。

 米10年物国債の利回りは先週(6月12日~)の安値(米利上げ直前の2.10%)から若干上昇してきたものの、目先2.15%前後で推移しており、弱含みの状態であることは否めない。

米10年物国債の利回り(米長期金利) 日足(出所:Bloomberg)

 米国債利回りの低迷は米国債価格の堅調を意味するものだから、これは市場関係者の多くが米利上げ見通しを疑問視していることを物語っている。

 もっとも、米2年物国債利回りの方が、FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策により敏感に反応するとされるが、先週(6月14日)の米利上げ後、同利回りはあまり動いていない。ここに市場コンセンサスが表れている。

米2年物国債の利回り 日足(出所:Bloomberg)

 もちろん、米利上げ見通しを疑問視する市場コンセンサスの形成は、最近の米経済指標の不振に基づいているが、市場関係者の認識が正しいとは限らない。

 なにしろ、FRBは最近の米経済指標の不振を承知した上で、利上げ継続、さらにはバランスシート縮小のプランを提示したほど、「自信」を見せているのだ。

 ゆえに、状況は流動的で、これからの米景気次第というところではないかと思う。

 さらに言ってみれば、市場コンセンサスが米ドル高に懐疑的であり、また、ポジションもこういった懸念に基づき、米ドルのロングポジションに傾いていないからこそ、何らかの材料でセンチメントが修正されると、米ドルが買われる余地が大きいといえる。

■FRBの「タカ派」スタンスは米株高・金利安を狙ってのこと? この意味では、FRBの「自信」について違う視点をもって探る必要があるかもしれない。

 要するに、FRBは「根拠なき自信」を示すわけがない。最近の米景気の状況を踏まえた上で、あえて「タカ派」のスタンスを維持したのであれば、米株高・金利安といった「安定局面」を狙った意図も透けてみえる。

 換言すれば、一般的に利上げはともかく、バランスシートの圧縮が開始されると、非常にインパクトが強い緊縮政策の推進となるから、それが金利の急上昇を招き、株式市場の急落をもたらすといったマイナスの側面が懸念されてもおかしくない。

 目先、市場センチメントが利上げ、また緊縮政策の継続に懐疑的な見方に傾いていることを察しているからこそ、FRBはタカ派スタンスを表明したわけだ。この意味において、これから市場が徐々にFRBの意図を織り込んでいくなら、米国債利回りも米ドル全体も反騰しやすいかと思う。

 いずれにせよ、目先の市場センチメントの強さから考えると、米ドル全体の反騰が継続されても緩やかなスピードに留まる可能性が大きい。

 だから、ドルインデックスも米ドル/円も5月30日(火)高値をいったん打診したものの、力強い続伸に至らなかったわけだ。底固めをしてから再度切り返していくといった市況が想定される中、何らかの材料なしでは、急騰するような値動きは期待薄かもしれない。

 ところで、米ドル全体の値動きはモメンタムに欠けて…
為替相場にトランプ・ラリー再来!?米ドル続伸 のサイン点灯、米国株もまだ崩壊しない! ブログ

為替相場にトランプ・ラリー再来!?米ドル続伸 のサイン点灯、米国株もまだ崩壊しない!

■米利上げで「バイ・ザ・ファクト」、米ドル下落トレンド終焉か このところ、米経済指標が示す景気状況はまだら模様だが、今週(6月12日~)のFOMC(米連邦公開市場委員会)直前に発表された指標は予想を下回る内容だった。

 しかし、これは「塞翁が馬」で、結果的に米ドルの反転をもたらしたとみる。

 前回の本コラムの指摘どおり、3月利上げ後の米ドルのパフォーマンスが典型的な「セル・ザ・ファクト」だったから、今回は直前まで米ドルが下落していたことが逆に「バイ・ザ・ファクト」をもたらし、米ドルの反転を促したわけだ。

【参考記事】

●過去2回の米利上げ後は米ドル安に…。でも今回は違うとみる! それはなぜか?(2017年6月9日、陳満咲杜)

 ドルインデックスから考えてみると、一昨日(6月14日)の安値トライは2017年年初来の安値更新を果たしたものの、高く大引けして、同日の安値更新が「ダマシ」である可能性を示唆した。

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

 昨日(6月15日)大きく反騰し、6月9日(金)高値のブレイクをもって一昨日(6月14日)のチャートの意味合いを明確化した。

 すなわち、一昨日(6月14日)のチャートは「フェイクセットアップ」のサインを点灯、ショート筋が「わな」に引っ掛かったことで、一転して上昇方向へ「セットアップ」されたわけで、これから続伸する公算が高い。

 反騰トレンドの継続は、5月30日(火)高値のブレイクがあれば、一段と強まる見通しで、同高値はベア(下落)トレンドの終焉を意味する「転換点」として位置づけられる。

■米ドル/円は6月2日高値111.70円のブレイクをめざすだろう 同じように、米利上げ直前の安値更新が米ドル/円でも見られたが、昨日(6月15日)の大幅反騰をもって同安値が「ダマシ」であったことを示し、また、6月9日(金)高値のブレイクをもって、昨日(6月15日)のチャートが「フェイクセットアップ」のサインだったとして認定された。

 このサインは、5月高値を起点とした調整子波の終焉を告げる重要なサインであり、これから6月2日(金)高値のブレイクをめざすだろう。

米ドル/円 日足(出所:FXブロードネット)

 同高値を「転換点」と見なし、ブレイクがあれば、4月安値を起点とする上昇波に復帰するわけで、5月高値114.36円の再打診につながる見通しだ。

 ちなみに、6月2日(金)高値111.70円のブレイクがあれば、米ドル/円日足におけるGMMAチャートが再び「トビウオ」(短期移動平均線グループと長期移動平均線グループのゴールデンクロス)のサインを点灯する見込みであるから、米ドルのブル(上昇)基調は一段と証左されるだろう。

 ドルインデックスと米ドル/円の値動きから考えると…
為替相場にトランプ・ラリー再来!?米ドル続伸 のサイン点灯、米国株もまだ崩壊しない! ブログ

為替相場にトランプ・ラリー再来!?米ドル続伸 のサイン点灯、米国株もまだ崩壊しない!

■米利上げで「バイ・ザ・ファクト」、米ドル下落トレンド終焉か このところ、米経済指標が示す景気状況はまだら模様だが、今週(6月12日~)のFOMC(米連邦公開市場委員会)直前に発表された指標は予想を下回る内容だった。

 しかし、これは「塞翁が馬」で、結果的に米ドルの反転をもたらしたとみる。

 前回の本コラムの指摘どおり、3月利上げ後の米ドルのパフォーマンスが典型的な「セル・ザ・ファクト」だったから、今回は直前まで米ドルが下落していたことが逆に「バイ・ザ・ファクト」をもたらし、米ドルの反転を促したわけだ。

【参考記事】

●過去2回の米利上げ後は米ドル安に…。でも今回は違うとみる! それはなぜか?(2017年6月9日、陳満咲杜)

 ドルインデックスから考えてみると、一昨日(6月14日)の安値トライは2017年年初来の安値更新を果たしたものの、高く大引けして、同日の安値更新が「ダマシ」である可能性を示唆した。

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

 昨日(6月15日)大きく反騰し、6月9日(金)高値のブレイクをもって一昨日(6月14日)のチャートの意味合いを明確化した。

 すなわち、一昨日(6月14日)のチャートは「フェイクセットアップ」のサインを点灯、ショート筋が「わな」に引っ掛かったことで、一転して上昇方向へ「セットアップ」されたわけで、これから続伸する公算が高い。

 反騰トレンドの継続は、5月30日(火)高値のブレイクがあれば、一段と強まる見通しで、同高値はベア(下落)トレンドの終焉を意味する「転換点」として位置づけられる。

■米ドル/円は6月2日高値111.70円のブレイクをめざすだろう 同じように、米利上げ直前の安値更新が米ドル/円でも見られたが、昨日(6月15日)の大幅反騰をもって同安値が「ダマシ」であったことを示し、また、6月9日(金)高値のブレイクをもって、昨日(6月15日)のチャートが「フェイクセットアップ」のサインだったとして認定された。

 このサインは、5月高値を起点とした調整子波の終焉を告げる重要なサインであり、これから6月2日(金)高値のブレイクをめざすだろう。

米ドル/円 日足(出所:FXブロードネット)

 同高値を「転換点」と見なし、ブレイクがあれば、4月安値を起点とする上昇波に復帰するわけで、5月高値114.36円の再打診につながる見通しだ。

 ちなみに、6月2日(金)高値111.70円のブレイクがあれば、米ドル/円日足におけるGMMAチャートが再び「トビウオ」(短期移動平均線グループと長期移動平均線グループのゴールデンクロス)のサインを点灯する見込みであるから、米ドルのブル(上昇)基調は一段と証左されるだろう。

 ドルインデックスと米ドル/円の値動きから考えると…
過去2回の米利上げ後は米ドル安に…。 でも今回は違うとみる! それはなぜか? ブログ

過去2回の米利上げ後は米ドル安に…。 でも今回は違うとみる! それはなぜか?

■米雇用統計結果不振で米ドル売りだが、利上げには影響なし 先週末(6月2日)の米雇用統計は、予想をずいぶん下回った。事前のADP民間雇用者数がよかっただけに、マーケットはサプライズの反応を示し、米ドル売りがさらに進んだ。

 ただし、ドルインデックスは97の節目割れがあっても、下落モメンタムが一段と強まりはしなかった。ユーロ/米ドルにしても、やはり昨年(2016年)11月9日(トランプ氏当選日)の高値(1.13ドル)を上回っていない。

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

ユーロ/米ドル 日足(出所:Bloomberg)

 5月雇用統計の不振で、米利上げ中止の観測も一部には出ているが、市場センチメントは「今月(6月)の利上げは確実、その後は状況次第」といったところだ。

 9月利上げがなくなり、12月まで待たなければならないというゴールドマン・サックスさんの予測が今のコンセンサスを代弁しているように聞こえるが、状況は流動的で、米雇用統計に限っては、ウォール街の猛者でも大した根拠を持たないようだ。

 為替業界に身を投じて以来、あらゆる修羅場をくぐってきたが、米雇用統計だけは予測すべきでないことを悟ってきた。これはもはや投資業界の常識といえるぐらいだが、その予測を生業としている方も多いから、あえてそれを口にできないところも大きい。

 いずれにせよ、予測完全不可能とは言い切れないものの、基本的に確率が非常に低いものにあれこれ頭を使ってもしょうがないから、米雇用統計云々を根拠にした米利上げ中止といった予測はまじめに捉えなくてもよいと言い切れる。

■過去2回の利上げ後に米ドル高にならなかった理由とは? 6月利上げは確実だから、これからの焦点はやはり、利上げ後の米ドルの反応だ。

 昨年(2016年)年末の利上げも、今年(2017年)3月の利上げも、その後は米ドル高ではなく、米ドル安が続いたから、6月利上げも同様になると思われる節は確かにある。しかし、よく点検すれば、今回は違ってくる可能性があることを見逃せない。

 利上げ後の米ドル安に関しては、後づけで解釈することも実は簡単ではない。なにしろ、市場はあらゆるファンダメンタルズや市場参加者たちの思惑を織り込んで価格を形成しているから、たやすくまとめることはできないのだ。

 一方、複雑な物事だからこそ、本質的にシンプルに捉えるべきだと思うから、ポイントを指摘するなら、以下の理由が挙げられるのではないだろうか。

 まず、昨年(2016年)12月14日(水)の利上げ後に結局は米ドル安になったのは、いわゆる「トランプ・ラリー」の「行きすぎ」、すなわち、米ドル高の「行きすぎ」が明らかな時期と重なっていたからだ。利上げ後に米ドルは一段高を演じたものの、それは長くは続かなかったのである。

 次に、今年(2017年)3月16日(木)の利上げ直後に米ドル安が進んだのは、FRB声明文やイエレン議長の話が効いた側面が大きかったからだ。

 マーケットは昨年(2016年)12月時点のものより、経済見通しは明るくなり、今後の金利引き上げペースは早まると予想していたが、FRBは経済見通しを据え置き、また、今後の利上げペースを早めなかった。マーケットの期待は裏切られる形となったのである。

 言ってみれば、3月利上げ後の米ドル安は、事前に市場予想が良すぎたところに起因していたといえる。

■過去2回と違い、米ドルのマイナス材料はかなり織込み済み だからこそ、今回は違ってくるのではないかと思われる。

 なにしろ、6月利上げ観測は維持されているものの、これからの利上げペースは早まるのではなく、緩やかになると、今は市場参加者が予想しているから、いわゆる「失望売り」が出にくい。

 詰まるところ、2017年年初来、米ドル全体の大幅反落が続いてきたからこそ、米ドルのマイナス材料はかなり織り込まれており、これ以上の下落余地は逆に小さいといえる。

 当然のように、このような思惑は「トランプ・ラリー」がもたらした米ドルの全上昇幅がほぼ帳消しにされたからこそ言える側面も大きい。

 また単純な話で、テクニカルの視点では、昨年(2016年)年末の利上げは「トランプ・ラリー」の最終段階、また、今年(2017年)3月の利上げは同ラリーに対する修正の途中といった位置づけができる。だから、利上げでも米ドル高が続かなかったわけであり、また、これは利上げ直後の米ドル安を理解するカギとして重要な視点だと思う。

 トランプ氏のロシアゲート疑惑が続いていることも…
過去2回の米利上げ後は米ドル安に…。 でも今回は違うとみる! それはなぜか? ブログ

過去2回の米利上げ後は米ドル安に…。 でも今回は違うとみる! それはなぜか?

■米雇用統計結果不振で米ドル売りだが、利上げには影響なし 先週末(6月2日)の米雇用統計は、予想をずいぶん下回った。事前のADP民間雇用者数がよかっただけに、マーケットはサプライズの反応を示し、米ドル売りがさらに進んだ。

 ただし、ドルインデックスは97の節目割れがあっても、下落モメンタムが一段と強まりはしなかった。ユーロ/米ドルにしても、やはり昨年(2016年)11月9日(トランプ氏当選日)の高値(1.13ドル)を上回っていない。

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

ユーロ/米ドル 日足(出所:Bloomberg)

 5月雇用統計の不振で、米利上げ中止の観測も一部には出ているが、市場センチメントは「今月(6月)の利上げは確実、その後は状況次第」といったところだ。

 9月利上げがなくなり、12月まで待たなければならないというゴールドマン・サックスさんの予測が今のコンセンサスを代弁しているように聞こえるが、状況は流動的で、米雇用統計に限っては、ウォール街の猛者でも大した根拠を持たないようだ。

 為替業界に身を投じて以来、あらゆる修羅場をくぐってきたが、米雇用統計だけは予測すべきでないことを悟ってきた。これはもはや投資業界の常識といえるぐらいだが、その予測を生業としている方も多いから、あえてそれを口にできないところも大きい。

 いずれにせよ、予測完全不可能とは言い切れないものの、基本的に確率が非常に低いものにあれこれ頭を使ってもしょうがないから、米雇用統計云々を根拠にした米利上げ中止といった予測はまじめに捉えなくてもよいと言い切れる。

■過去2回の利上げ後に米ドル高にならなかった理由とは? 6月利上げは確実だから、これからの焦点はやはり、利上げ後の米ドルの反応だ。

 昨年(2016年)年末の利上げも、今年(2017年)3月の利上げも、その後は米ドル高ではなく、米ドル安が続いたから、6月利上げも同様になると思われる節は確かにある。しかし、よく点検すれば、今回は違ってくる可能性があることを見逃せない。

 利上げ後の米ドル安に関しては、後づけで解釈することも実は簡単ではない。なにしろ、市場はあらゆるファンダメンタルズや市場参加者たちの思惑を織り込んで価格を形成しているから、たやすくまとめることはできないのだ。

 一方、複雑な物事だからこそ、本質的にシンプルに捉えるべきだと思うから、ポイントを指摘するなら、以下の理由が挙げられるのではないだろうか。

 まず、昨年(2016年)12月14日(水)の利上げ後に結局は米ドル安になったのは、いわゆる「トランプ・ラリー」の「行きすぎ」、すなわち、米ドル高の「行きすぎ」が明らかな時期と重なっていたからだ。利上げ後に米ドルは一段高を演じたものの、それは長くは続かなかったのである。

 次に、今年(2017年)3月16日(木)の利上げ直後に米ドル安が進んだのは、FRB声明文やイエレン議長の話が効いた側面が大きかったからだ。

 マーケットは昨年(2016年)12月時点のものより、経済見通しは明るくなり、今後の金利引き上げペースは早まると予想していたが、FRBは経済見通しを据え置き、また、今後の利上げペースを早めなかった。マーケットの期待は裏切られる形となったのである。

 言ってみれば、3月利上げ後の米ドル安は、事前に市場予想が良すぎたところに起因していたといえる。

■過去2回と違い、米ドルのマイナス材料はかなり織込み済み だからこそ、今回は違ってくるのではないかと思われる。

 なにしろ、6月利上げ観測は維持されているものの、これからの利上げペースは早まるのではなく、緩やかになると、今は市場参加者が予想しているから、いわゆる「失望売り」が出にくい。

 詰まるところ、2017年年初来、米ドル全体の大幅反落が続いてきたからこそ、米ドルのマイナス材料はかなり織り込まれており、これ以上の下落余地は逆に小さいといえる。

 当然のように、このような思惑は「トランプ・ラリー」がもたらした米ドルの全上昇幅がほぼ帳消しにされたからこそ言える側面も大きい。

 また単純な話で、テクニカルの視点では、昨年(2016年)年末の利上げは「トランプ・ラリー」の最終段階、また、今年(2017年)3月の利上げは同ラリーに対する修正の途中といった位置づけができる。だから、利上げでも米ドル高が続かなかったわけであり、また、これは利上げ直後の米ドル安を理解するカギとして重要な視点だと思う。

 トランプ氏のロシアゲート疑惑が続いていることも…
今こそ米ドル/円押し目買いの好機!? 今晩の 雇用統計が悪くてもさほど売られないかも ブログ

今こそ米ドル/円押し目買いの好機!? 今晩の 雇用統計が悪くてもさほど売られないかも

■米国株がリスクオンムードの中、上がりきれない米ドル 昨日(6月1日)、米5月ADP民間雇用者数の大幅増に刺激され、米国株主要3指数(NYダウ、ナスダック、S&P500)はそろって高値を更新した。恐怖指数と呼ばれるVIX指数は20年ぶりの安値をつけ、リスクオンの流れが一段と強まっている。

 しかし、ドルインデックスは辛うじて安値圏での保ち合いに留まり、米ドル/円もせいぜい中段保ち合いでしかなく、為替市場における基調は明らかに異なっている。

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

 いわゆるロシアゲート疑惑がくすぶる中、米国株の高値更新は市場の本音を代弁していると思う。すなわち、リスクオフ云々は「ニセモノ」で、米経済成長が続く、また、米利上げが継続する中で、米国株のブル(上昇)基調は保てる、と思われているということだ。

 もっとも、2008年のリーマンショック後につけた安値から、米国株のブルトレンドはずっと続いてきたから、米国株の「上がりすぎ」、また、VIX指数の「下がりすぎ」といった予測は絶えず、また、時間の推移に比例して「今度こそ」と指摘する声も高くなっていた。

 皮肉にも、こういった予測が盛んになればなるほど米国株の堅調が続き、また、ショート筋の踏み上げがあったからこそブルトレンドが維持されてきた側面もあったと思う。

■上がらない長期金利が米国株高と米ドル安をもたらしている 同じファンダメンタルズ的な要因が、米国株と米ドルに対して与える影響がまったく違っているのは前述のとおりだが、では、米ドル安自体を米国株高を支える要素として挙げてよいかというと微妙だ。

 むしろ、長期金利の軟調が米国株高を支え、また、米ドル安をもたらしている側面が大きいのではないかと思う。

 利上げ周期に入ったとはいえ、欧米金利差が拡大しきれていないところが米ドルの頭を押さえる要因になっているとみる。

■今晩の米雇用統計の結果で違うパターンが見られるか!? 今晩(6月2日)の米雇用統計で、市況はまた一波乱ある可能性があるが、米6月利上げがほぼ確実なので、焦点はやはり、利上げ後の米国債市場の反応にあるだろう。

 「利上げ後の米ドル売り」といった反応パターンがあったからこそ、これが2017年年初来の米ドル安につながったから、今回違うパターンを見せてくれば、米ドル安基調は修正され、リスクオンの環境において、米ドル/円のブルトレンドが確認できるだろう。肝心なのは、今回違うパターンを見せるかどうかだ。

 結論から申し上げると、今回違うパターンをみせてくれる可能性は大きい。

 なにしろ、米10年物国債市場におけるポジション状況はかなりロングポジションに偏っており、また、それは近年の最高水準に達しているから、米国債の価格上昇(金利低下)にはおのずと限界があり、今回の利上げは米国債ロング筋のポジション解消につながりやすいとみる。

 実際、今晩(6月2日)の米雇用統計次第でこのような値動きが想定されるので、米金利の上昇とともに、米ドル全体また米ドル/円の上昇が想定される。

■テクニカル的にはドル/円の調整はすでに終わった可能性大 テクニカルの視点では、米ドル/円の調整がすでに完成し、これから上昇波に復帰する可能性が高いと思われる節がある。

 前回のコラムにて、米ドル/円の押し目について指摘し、5月23日(火)安値を割り込んだ場合、一段と押し目が深くなる可能性(4月末に形成していたギャップを埋める値動き)も想定していた。

 しかし、今週(5月29日~)の値動きから考えると、同日安値110.86円割れがあっても一段の反落を回避しているところからして、5月安値をもってすでに調整波動を完成させ、4月安値を起点とした上昇波動に復帰している、といった可能性が大きいとみる。

【参考記事】

●ドル/円の窓埋めは押し目買いのチャンス!?商人トランプ氏の手腕で米ドル持ち直すか(2017年5月26日、陳満咲杜)

米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

 今晩(6月2日)の米雇用統計次第では、また安値トライの可能性を否定できないが(※)、米ドル全体がすでに大きく売られてきた以上、仮に米雇用統計の数字が多少悪くても、米ドル売りに激しく反応するとは限らないだろう。

(※執筆者注:米雇用統計にはADP民間雇用者数のデータからは予測できない面があり、米雇用統計が油断できないことはもはや常識)

 米ドル/円に限らず、米ドル全体の底値狙いは当面のストラテジーとして有効だと思う。

 したがって、目先高騰しているユーロ/米ドルの上昇がこのまま…
今こそ米ドル/円押し目買いの好機!? 今晩の 雇用統計が悪くてもさほど売られないかも ブログ

今こそ米ドル/円押し目買いの好機!? 今晩の 雇用統計が悪くてもさほど売られないかも

■米国株がリスクオンムードの中、上がりきれない米ドル 昨日(6月1日)、米5月ADP民間雇用者数の大幅増に刺激され、米国株主要3指数(NYダウ、ナスダック、S&P500)はそろって高値を更新した。恐怖指数と呼ばれるVIX指数は20年ぶりの安値をつけ、リスクオンの流れが一段と強まっている。

 しかし、ドルインデックスは辛うじて安値圏での保ち合いに留まり、米ドル/円もせいぜい中段保ち合いでしかなく、為替市場における基調は明らかに異なっている。

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

 いわゆるロシアゲート疑惑がくすぶる中、米国株の高値更新は市場の本音を代弁していると思う。すなわち、リスクオフ云々は「ニセモノ」で、米経済成長が続く、また、米利上げが継続する中で、米国株のブル(上昇)基調は保てる、と思われているということだ。

 もっとも、2008年のリーマンショック後につけた安値から、米国株のブルトレンドはずっと続いてきたから、米国株の「上がりすぎ」、また、VIX指数の「下がりすぎ」といった予測は絶えず、また、時間の推移に比例して「今度こそ」と指摘する声も高くなっていた。

 皮肉にも、こういった予測が盛んになればなるほど米国株の堅調が続き、また、ショート筋の踏み上げがあったからこそブルトレンドが維持されてきた側面もあったと思う。

■上がらない長期金利が米国株高と米ドル安をもたらしている 同じファンダメンタルズ的な要因が、米国株と米ドルに対して与える影響がまったく違っているのは前述のとおりだが、では、米ドル安自体を米国株高を支える要素として挙げてよいかというと微妙だ。

 むしろ、長期金利の軟調が米国株高を支え、また、米ドル安をもたらしている側面が大きいのではないかと思う。

 利上げ周期に入ったとはいえ、欧米金利差が拡大しきれていないところが米ドルの頭を押さえる要因になっているとみる。

■今晩の米雇用統計の結果で違うパターンが見られるか!? 今晩(6月2日)の米雇用統計で、市況はまた一波乱ある可能性があるが、米6月利上げがほぼ確実なので、焦点はやはり、利上げ後の米国債市場の反応にあるだろう。

 「利上げ後の米ドル売り」といった反応パターンがあったからこそ、これが2017年年初来の米ドル安につながったから、今回違うパターンを見せてくれば、米ドル安基調は修正され、リスクオンの環境において、米ドル/円のブルトレンドが確認できるだろう。肝心なのは、今回違うパターンを見せるかどうかだ。

 結論から申し上げると、今回違うパターンをみせてくれる可能性は大きい。

 なにしろ、米10年物国債市場におけるポジション状況はかなりロングポジションに偏っており、また、それは近年の最高水準に達しているから、米国債の価格上昇(金利低下)にはおのずと限界があり、今回の利上げは米国債ロング筋のポジション解消につながりやすいとみる。

 実際、今晩(6月2日)の米雇用統計次第でこのような値動きが想定されるので、米金利の上昇とともに、米ドル全体また米ドル/円の上昇が想定される。

■テクニカル的にはドル/円の調整はすでに終わった可能性大 テクニカルの視点では、米ドル/円の調整がすでに完成し、これから上昇波に復帰する可能性が高いと思われる節がある。

 前回のコラムにて、米ドル/円の押し目について指摘し、5月23日(火)安値を割り込んだ場合、一段と押し目が深くなる可能性(4月末に形成していたギャップを埋める値動き)も想定していた。

 しかし、今週(5月29日~)の値動きから考えると、同日安値110.86円割れがあっても一段の反落を回避しているところからして、5月安値をもってすでに調整波動を完成させ、4月安値を起点とした上昇波動に復帰している、といった可能性が大きいとみる。

【参考記事】

●ドル/円の窓埋めは押し目買いのチャンス!?商人トランプ氏の手腕で米ドル持ち直すか(2017年5月26日、陳満咲杜)

米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

 今晩(6月2日)の米雇用統計次第では、また安値トライの可能性を否定できないが(※)、米ドル全体がすでに大きく売られてきた以上、仮に米雇用統計の数字が多少悪くても、米ドル売りに激しく反応するとは限らないだろう。

(※執筆者注:米雇用統計にはADP民間雇用者数のデータからは予測できない面があり、米雇用統計が油断できないことはもはや常識)

 米ドル/円に限らず、米ドル全体の底値狙いは当面のストラテジーとして有効だと思う。

 したがって、目先高騰しているユーロ/米ドルの上昇がこのまま…
ドル/円の窓埋めは押し目買いのチャンス!? 商人トランプ氏の手腕で米ドル持ち直すか ブログ

ドル/円の窓埋めは押し目買いのチャンス!? 商人トランプ氏の手腕で米ドル持ち直すか

■米ドル全体に底打ちの兆し、安値追いは避けたい! トランプ氏の、いわゆるロシアゲート疑惑がくすぶり、米ドル全体も大きく落ち込んできたが、最近底打ちの兆しが現れ始めた。ドルインデックスの値動きから考えると、97の節目割れをもって2017年年初来の反落が一服する可能性が浮上し、夏場に近づくにつれ、米ドル全体の回復が見込めるとみる。

 ドルインデックスの2017年年初来の下落は、きれいな下落チャネルを形成し、また、ダブルジグザグ変動構造を示している。

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

 同チャネルの下限を打診したこと、また、ダブルジグザグ変動構造の完成(Y≒W、c≒a)から考えると、足元は大型調整変動の最終段階にあると思われる。

 このような見方が正しければ、足元強い変動を保ち、また、5月23日(火)にて2017年年初来高値を更新したユーロ/米ドルも、すでに頭打ちになったか、近々頭打ちになるだろう。

ユーロ/米ドル 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)

 さらに、前回のコラムで指摘したように、ユーロのブル(上昇)トレンドを認定するには、少なくとも昨年(2016年)、トランプ氏が米大統領に当選した11月9日(水)高値の1.13ドル以上の推移が前提条件となるから、目先慎重なスタンスを持ちたい。

 結論を強調するなら、米ドルの安値追いを避けたいということに尽きるだろう。

【参考記事】

●トランプ氏が失脚してもしなくてもドル安は続かず。大統領辞任なら大幅なドル高に!(2017年5月19日、陳満咲杜)

■予算教書リリースで政治リスクが緩和 ファンダメンタルズ面では、トランプ氏が弾劾されるリスクが低下している。トランプ米政権が5月23日(火)に2018年度予算教書の概要をリリースしたことで政治リスクがやわらぎ、米国株の回復から考えると、マーケットはリスクオンのムードに復帰した可能性が大きい。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

 予算教書では、今後10年で3兆5630億ドルという過去最大規模の歳出削減が提案され、低所得者向け医療保険や生活保護も減らす上、医療保険制度改革法(オバマケア)の見直しや政府機関の再編などを通じて支出の圧縮を図るとされている。

 一方、個人所得税率の簡素化や法人税率の大幅引き下げ(35%~15%)など大胆な税収改革を宣言、経済成長率を3%に高めることをめざし、財政収支を黒字転換させる目標も掲げられている。

■トランプ氏の政策はほとんどが米ドル高を誘導するもの トランプ氏の主張どおりの過去最大規模の歳出削減と大型減税は、見通しの甘さが指摘されている上、皮肉にもトランプ氏のコア支持者(低所得層)に不利、富裕層に有利とされるこの予算案に対する批判も多いが、仮に全部ではなく、一部が実現されても景気に大きなプラス要素であることは間違いない。

 たびたび指摘してきたように、トランプ政権は米ドル高を牽制しているものの、推進する経済政策のほとんどが米ドル高を誘導する内容であり、事実上、米ドルの支えになるはずだ。

【参考記事】

●トランプ氏が失脚してもしなくてもドル安は続かず。大統領辞任なら大幅なドル高に!(2017年5月19日、陳満咲杜)

 特に企業に対する大型減税は、米経済成長を刺激するだけでなく、「米企業が海外で稼いだ多額な利益を海外に留まらせず、米本土に回帰させる」という今まで問題となってきた点を解消する意味で大きなインパクトを持つ。トランプ氏が商人としての本領を発揮するなら、ここは勝負どころだと思われる。

 今後10年間で2000億ドルのインフラ投資も提案されており、インフラ投資が盛んになれば、米ドルも自然に強くなっていくことが想定される。

 今のところ、予算教書は「たたき台」にすぎないが、米上下院に正式に提出されていることは見逃せない。トランプ氏が当選したあとの「トランプ・ラリー」、その背景が氏の経済政策に対する期待であったなら、現在やっとその中身が見えてきたのだから、マーケットはそろそろ評価してくるのではないだろうか。

 ロシアゲートで政治リスクばかり注目されてきたが、弾劾リスク自体の後退で、トランプ政権が押し進める経済政策に対する評価も徐々に持ち直してくるだろう。この意味では、米ドル全体の持ち直しは間近だと思う。

■マンチェスターテロ後の金の値動きからわかること2点 5月22日(日本では23日朝)に、イギリスのマンチェスターにてテロ事件が発生したが、金(ゴールド)の切り返しは鈍かった。

金(ゴールド)価格 日足(出所:Bloomberg)

 金の値動きから考えると、少なくとも以下の2点を認識できるのではないだろうか。

 まず1点は、今はリスクオフの局面ではないこと、次に、米ドルはだいぶ安くなっているのでこれ以上は下げにくいことだ。

 ところで、米ドル全体の底打ち、また、切り返しがあれば…
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ドル/円の窓埋めは押し目買いのチャンス!? 商人トランプ氏の手腕で米ドル持ち直すか

■米ドル全体に底打ちの兆し、安値追いは避けたい! トランプ氏の、いわゆるロシアゲート疑惑がくすぶり、米ドル全体も大きく落ち込んできたが、最近底打ちの兆しが現れ始めた。ドルインデックスの値動きから考えると、97の節目割れをもって2017年年初来の反落が一服する可能性が浮上し、夏場に近づくにつれ、米ドル全体の回復が見込めるとみる。

 ドルインデックスの2017年年初来の下落は、きれいな下落チャネルを形成し、また、ダブルジグザグ変動構造を示している。

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

 同チャネルの下限を打診したこと、また、ダブルジグザグ変動構造の完成(Y≒W、c≒a)から考えると、足元は大型調整変動の最終段階にあると思われる。

 このような見方が正しければ、足元強い変動を保ち、また、5月23日(火)にて2017年年初来高値を更新したユーロ/米ドルも、すでに頭打ちになったか、近々頭打ちになるだろう。

ユーロ/米ドル 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)

 さらに、前回のコラムで指摘したように、ユーロのブル(上昇)トレンドを認定するには、少なくとも昨年(2016年)、トランプ氏が米大統領に当選した11月9日(水)高値の1.13ドル以上の推移が前提条件となるから、目先慎重なスタンスを持ちたい。

 結論を強調するなら、米ドルの安値追いを避けたいということに尽きるだろう。

【参考記事】

●トランプ氏が失脚してもしなくてもドル安は続かず。大統領辞任なら大幅なドル高に!(2017年5月19日、陳満咲杜)

■予算教書リリースで政治リスクが緩和 ファンダメンタルズ面では、トランプ氏が弾劾されるリスクが低下している。トランプ米政権が5月23日(火)に2018年度予算教書の概要をリリースしたことで政治リスクがやわらぎ、米国株の回復から考えると、マーケットはリスクオンのムードに復帰した可能性が大きい。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

 予算教書では、今後10年で3兆5630億ドルという過去最大規模の歳出削減が提案され、低所得者向け医療保険や生活保護も減らす上、医療保険制度改革法(オバマケア)の見直しや政府機関の再編などを通じて支出の圧縮を図るとされている。

 一方、個人所得税率の簡素化や法人税率の大幅引き下げ(35%~15%)など大胆な税収改革を宣言、経済成長率を3%に高めることをめざし、財政収支を黒字転換させる目標も掲げられている。

■トランプ氏の政策はほとんどが米ドル高を誘導するもの トランプ氏の主張どおりの過去最大規模の歳出削減と大型減税は、見通しの甘さが指摘されている上、皮肉にもトランプ氏のコア支持者(低所得層)に不利、富裕層に有利とされるこの予算案に対する批判も多いが、仮に全部ではなく、一部が実現されても景気に大きなプラス要素であることは間違いない。

 たびたび指摘してきたように、トランプ政権は米ドル高を牽制しているものの、推進する経済政策のほとんどが米ドル高を誘導する内容であり、事実上、米ドルの支えになるはずだ。

【参考記事】

●トランプ氏が失脚してもしなくてもドル安は続かず。大統領辞任なら大幅なドル高に!(2017年5月19日、陳満咲杜)

 特に企業に対する大型減税は、米経済成長を刺激するだけでなく、「米企業が海外で稼いだ多額な利益を海外に留まらせず、米本土に回帰させる」という今まで問題となってきた点を解消する意味で大きなインパクトを持つ。トランプ氏が商人としての本領を発揮するなら、ここは勝負どころだと思われる。

 今後10年間で2000億ドルのインフラ投資も提案されており、インフラ投資が盛んになれば、米ドルも自然に強くなっていくことが想定される。

 今のところ、予算教書は「たたき台」にすぎないが、米上下院に正式に提出されていることは見逃せない。トランプ氏が当選したあとの「トランプ・ラリー」、その背景が氏の経済政策に対する期待であったなら、現在やっとその中身が見えてきたのだから、マーケットはそろそろ評価してくるのではないだろうか。

 ロシアゲートで政治リスクばかり注目されてきたが、弾劾リスク自体の後退で、トランプ政権が押し進める経済政策に対する評価も徐々に持ち直してくるだろう。この意味では、米ドル全体の持ち直しは間近だと思う。

■マンチェスターテロ後の金の値動きからわかること2点 5月22日(日本では23日朝)に、イギリスのマンチェスターにてテロ事件が発生したが、金(ゴールド)の切り返しは鈍かった。

金(ゴールド)価格 日足(出所:Bloomberg)

 金の値動きから考えると、少なくとも以下の2点を認識できるのではないだろうか。

 まず1点は、今はリスクオフの局面ではないこと、次に、米ドルはだいぶ安くなっているのでこれ以上は下げにくいことだ。

 ところで、米ドル全体の底打ち、また、切り返しがあれば…