陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

売り材料のないFOMC後になぜ米ドル安? 気をつけろ! それは相場反転のサインだ ブログ

売り材料のないFOMC後になぜ米ドル安? 気をつけろ! それは相場反転のサインだ

■FOMC後に米ドルが急落、米ドル安が一段と進む 米ドル安が一段と進んでいる。7月26日(水)のFOMC(米連邦公開市場委員会)を受けた後の急落もあって、ドルインデックスは一時93.15の安値にトライし、2016年6月以来の安値を更新、ユーロ/米ドルは2015年1月以来の高値にトライしている状況だ。

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

ユーロ/米ドル 週足(出所:Bloomberg)

 米ドル/円に至っては、112円前半の抵抗を再度確認、中段保ち合いを余儀なくされている。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

 米ドル安トレンドの進行は、トレンドフォローの視点では当然の成り行きなので、本コラムが強調してきた「ユーロは買うのみ」という考え方もロジック的に正しかった。

■ユーロは「買うのみ」から「買ってもよいが、気をつけて」へ しかし、ここまで来て、このロジックを若干修正する必要が出ている。慎重なスタンスも取り入れて、「ユーロは買うのみ」から「買ってもよいが、気をつけて」へ変更したいと思う。

 まず、テクニカルの視点では、米ドル安のトレンドがこれからも続くと思われるが、目先の状況は明らかに「オーバーシュート」(売られすぎ)であり、少なくともいったんスピード調整(切り返し)を起こす確率が高いだろう。

 場合によっては、オーバーシュートの深刻さと比例して、切り返しも相応の値幅になるかと思う。

■米ドル全体が「売られすぎ」のサインが随所に オシレーター系の中では、RSIがもっとも代表的指標なので、同指標をもって週足を見ると、足元でRSIの安値は2012~2013年の位置を下回り、2011年5月安値に接近する勢いを見せている。

 一方、昨日(7月27日)、ドルインデックスは93.15の安値にトライし、2016年6月安値に迫ったものの、2011年5月の安値(約72.70)に比べれば、はるかに高いレベルにあるのがわかる。

ドルインデックス 週足(出所:Bloomberg)

 こうなると、答は1つしかないだろう。すなわち、米ドル全体が売られすぎている。あまりにも売られすぎているから、RSIは記録的な安値に接近しており、マーケットの「一辺倒」が逆に近々の反転可能性を暗示している。

■FOMCの声明内容はドル売り材料になるようなものだった? この見方は、ファンダメンタルズ上の視点でも検証される。7月26日(水)のFOMCを受けて米ドル全体が急落したが、FOMC自体が材料であったかと言えば、非常に微妙なところだ。

 一部巷の解釈では、FOMC声明に「ハト派」と受け取られる節があったから米ドルが売られた云々もあったが、結果論にすぎず、恣意的な解釈であろう。

 実際のところ、金利の据え置きにしても、これからのスタンスに関する声明にしても、マーケットの予想どおりだったのだから、米ドル売り自体は材料の中身と関係なく進められた側面が大きい。

 これこそトレンドの慣性であり、また行きすぎの証拠の1つである。なにしろ、米ドル売りは「材料なし」、または予想どおりのFOMCが「意外な材料」として利用されたのである。このような「ネコも杓子も」米ドル売りにつながる状況は「正常」ではない。

 米ドル売りモメンタムの強さに感心させられるが…
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売り材料のないFOMC後になぜ米ドル安? 気をつけろ! それは相場反転のサインだ

■FOMC後に米ドルが急落、米ドル安が一段と進む 米ドル安が一段と進んでいる。7月26日(水)のFOMC(米連邦公開市場委員会)を受けた後の急落もあって、ドルインデックスは一時93.15の安値にトライし、2016年6月以来の安値を更新、ユーロ/米ドルは2015年1月以来の高値にトライしている状況だ。

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

ユーロ/米ドル 週足(出所:Bloomberg)

 米ドル/円に至っては、112円前半の抵抗を再度確認、中段保ち合いを余儀なくされている。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

 米ドル安トレンドの進行は、トレンドフォローの視点では当然の成り行きなので、本コラムが強調してきた「ユーロは買うのみ」という考え方もロジック的に正しかった。

■ユーロは「買うのみ」から「買ってもよいが、気をつけて」へ しかし、ここまで来て、このロジックを若干修正する必要が出ている。慎重なスタンスも取り入れて、「ユーロは買うのみ」から「買ってもよいが、気をつけて」へ変更したいと思う。

 まず、テクニカルの視点では、米ドル安のトレンドがこれからも続くと思われるが、目先の状況は明らかに「オーバーシュート」(売られすぎ)であり、少なくともいったんスピード調整(切り返し)を起こす確率が高いだろう。

 場合によっては、オーバーシュートの深刻さと比例して、切り返しも相応の値幅になるかと思う。

■米ドル全体が「売られすぎ」のサインが随所に オシレーター系の中では、RSIがもっとも代表的指標なので、同指標をもって週足を見ると、足元でRSIの安値は2012~2013年の位置を下回り、2011年5月安値に接近する勢いを見せている。

 一方、昨日(7月27日)、ドルインデックスは93.15の安値にトライし、2016年6月安値に迫ったものの、2011年5月の安値(約72.70)に比べれば、はるかに高いレベルにあるのがわかる。

ドルインデックス 週足(出所:Bloomberg)

 こうなると、答は1つしかないだろう。すなわち、米ドル全体が売られすぎている。あまりにも売られすぎているから、RSIは記録的な安値に接近しており、マーケットの「一辺倒」が逆に近々の反転可能性を暗示している。

■FOMCの声明内容はドル売り材料になるようなものだった? この見方は、ファンダメンタルズ上の視点でも検証される。7月26日(水)のFOMCを受けて米ドル全体が急落したが、FOMC自体が材料であったかと言えば、非常に微妙なところだ。

 一部巷の解釈では、FOMC声明に「ハト派」と受け取られる節があったから米ドルが売られた云々もあったが、結果論にすぎず、恣意的な解釈であろう。

 実際のところ、金利の据え置きにしても、これからのスタンスに関する声明にしても、マーケットの予想どおりだったのだから、米ドル売り自体は材料の中身と関係なく進められた側面が大きい。

 これこそトレンドの慣性であり、また行きすぎの証拠の1つである。なにしろ、米ドル売りは「材料なし」、または予想どおりのFOMCが「意外な材料」として利用されたのである。このような「ネコも杓子も」米ドル売りにつながる状況は「正常」ではない。

 米ドル売りモメンタムの強さに感心させられるが…
ユーロ/米ドルは1.2ドル打診もあり得る! 今後、豪ドルが買われるとみる理由とは? ブログ

ユーロ/米ドルは1.2ドル打診もあり得る! 今後、豪ドルが買われるとみる理由とは?

■日銀総裁でさえ日銀政策を信じ切れていない!? 日銀は、また物価安定目標の達成時期を延期した。

 2015年4月以来、もう6回目の先送りとなったが、ここまで来ると、もはや「デフレ心理の壁」に拒まれ、今回も期限内には達成できないのでは…といった市場センチメントの醸成につながり、額面どおりに受け止める市場関係者はいないだろう。

 もしかしたら、黒田日銀総裁ご本人でさえ信じきれていないのでは…と思われても仕方ない。

 しかし、前回のコラムでも述べたように、日銀政策そのものの功罪はともかく、目先の効果を考えてみると、必然的にまた構造的な円安の進行が予想されやすい。

【参考記事】

●調整は買いの好機! 黒田氏が日銀総裁である限り、円安トレンド継続に疑いなし!?(2017年7月14日、陳満咲杜)

 日銀が物価目標の達成期限を再延長したことで、当面緩和策が続くので、その他の主要中銀のスタンスとの「背離」が一段と鮮明化し、円売りの安心感につながる公算が高いと思う。

■ユーロ/米ドルは1.2ドル打診もあり得る もっとも、ドルインデックスに照らして考えると、米ドル全体の下落トレンドは一段と強まっている。

 昨日(7月20日)のECB(欧州中央銀行)総裁の記者会見は「ハト派寄り」の内容だったにもかかわらず、ユーロは買われ、トレンドの強さを証左。このままでは、ドルインデックスは2016年安値へいったん逆戻りしてもおかしくなかろう。

ドルインデックス 週足(出所:Bloomberg)

 よって、ユーロ/米ドルは2016年5月高値をブレイク、2015年8月の高値に再トライする勢いを見せている。再度高値更新があれば、一時的であるにせよ、1.2ドルの心理的大台の打診もあり得るので、当面強気変動が保たれるとみる。

ユーロ/米ドル 週足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 週足)

 もちろん、もうだいぶ上昇してきたので、何らかの形でいったんスピード調整の可能性も大きいが、スピード調整があるからこそ、トレンドはより健全化されるといったロジックはしばらく支配的であろう。

 この意味合いでは、7月7日(金)の本コラムに書かせていただいた「ユーロは買うのみ」の見方は市場に証明され、これからもしばらく正論であり続ける可能性が高いだろう。

【参考記事】

●第二のトランプラリーはもう始まっている!? ユーロは買うのみ! 円安は追随するのみ!(2017年7月7日、陳満咲杜)

■「ロシアゲート」が日銀政策の効果を相殺したかのようだが… さらに、ドルインデックスの大幅続落、また、ユーロの続伸は、トランプ米大統領の「ロシアゲート」疑惑の一段拡大、そして、政策遂行の失敗(オバマケア改廃案の挫折など)につられた側面も大きい。

 だから、米ドル/円は執筆中の現時点で111円台後半に留まり、日銀政策の波及効果が「ロシアゲート」疑惑に「消された」ように見えなくもない。米ドル全面安の進行で、やがて円安の傾向も消されるだろうか。

 そもそも米ドル安の背景には、昨年(2016年)年末の「トランプ・ラリー」がもたらした米ドルの「オーバーボート」があったことは見逃せない。

 言ってみれば、割高になるまで米ドル高が進行していった結果、その大きな修正が行われ、それが足元まで続いているわけだ。この視点を重視する場合、「ロシアゲート」など政治的な要素は二の次で、メインテーマはやはり、金融政策の相違や金利差に関する思惑にあるだろう。

 よって、ユーロの切り返し自体はECBの金融緩和見直しが間近であることがきっかけであったが、その大きな背景として「割安」に対する修正があることは確かだ。

 修正のトレンドが一段と強まっているなら、今回は修正の値動き自体がやがて行き過ぎになる可能性があるので、ユーロ高が一段と進むと、リスク要素としてこの点も注意する必要に迫られるが、目先はまだそこまでの状況ではないと思う。

 が、重要なところは、金利差の優位性は米ドルにあるが…
ユーロ/米ドルは1.2ドル打診もあり得る! 今後、豪ドルが買われるとみる理由とは? ブログ

ユーロ/米ドルは1.2ドル打診もあり得る! 今後、豪ドルが買われるとみる理由とは?

■日銀総裁でさえ日銀政策を信じ切れていない!? 日銀は、また物価安定目標の達成時期を延期した。

 2015年4月以来、もう6回目の先送りとなったが、ここまで来ると、もはや「デフレ心理の壁」に拒まれ、今回も期限内には達成できないのでは…といった市場センチメントの醸成につながり、額面どおりに受け止める市場関係者はいないだろう。

 もしかしたら、黒田日銀総裁ご本人でさえ信じきれていないのでは…と思われても仕方ない。

 しかし、前回のコラムでも述べたように、日銀政策そのものの功罪はともかく、目先の効果を考えてみると、必然的にまた構造的な円安の進行が予想されやすい。

【参考記事】

●調整は買いの好機! 黒田氏が日銀総裁である限り、円安トレンド継続に疑いなし!?(2017年7月14日、陳満咲杜)

 日銀が物価目標の達成期限を再延長したことで、当面緩和策が続くので、その他の主要中銀のスタンスとの「背離」が一段と鮮明化し、円売りの安心感につながる公算が高いと思う。

■ユーロ/米ドルは1.2ドル打診もあり得る もっとも、ドルインデックスに照らして考えると、米ドル全体の下落トレンドは一段と強まっている。

 昨日(7月20日)のECB(欧州中央銀行)総裁の記者会見は「ハト派寄り」の内容だったにもかかわらず、ユーロは買われ、トレンドの強さを証左。このままでは、ドルインデックスは2016年安値へいったん逆戻りしてもおかしくなかろう。

ドルインデックス 週足(出所:Bloomberg)

 よって、ユーロ/米ドルは2016年5月高値をブレイク、2015年8月の高値に再トライする勢いを見せている。再度高値更新があれば、一時的であるにせよ、1.2ドルの心理的大台の打診もあり得るので、当面強気変動が保たれるとみる。

ユーロ/米ドル 週足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 週足)

 もちろん、もうだいぶ上昇してきたので、何らかの形でいったんスピード調整の可能性も大きいが、スピード調整があるからこそ、トレンドはより健全化されるといったロジックはしばらく支配的であろう。

 この意味合いでは、7月7日(金)の本コラムに書かせていただいた「ユーロは買うのみ」の見方は市場に証明され、これからもしばらく正論であり続ける可能性が高いだろう。

【参考記事】

●第二のトランプラリーはもう始まっている!? ユーロは買うのみ! 円安は追随するのみ!(2017年7月7日、陳満咲杜)

■「ロシアゲート」が日銀政策の効果を相殺したかのようだが… さらに、ドルインデックスの大幅続落、また、ユーロの続伸は、トランプ米大統領の「ロシアゲート」疑惑の一段拡大、そして、政策遂行の失敗(オバマケア改廃案の挫折など)につられた側面も大きい。

 だから、米ドル/円は執筆中の現時点で111円台後半に留まり、日銀政策の波及効果が「ロシアゲート」疑惑に「消された」ように見えなくもない。米ドル全面安の進行で、やがて円安の傾向も消されるだろうか。

 そもそも米ドル安の背景には、昨年(2016年)年末の「トランプ・ラリー」がもたらした米ドルの「オーバーボート」があったことは見逃せない。

 言ってみれば、割高になるまで米ドル高が進行していった結果、その大きな修正が行われ、それが足元まで続いているわけだ。この視点を重視する場合、「ロシアゲート」など政治的な要素は二の次で、メインテーマはやはり、金融政策の相違や金利差に関する思惑にあるだろう。

 よって、ユーロの切り返し自体はECBの金融緩和見直しが間近であることがきっかけであったが、その大きな背景として「割安」に対する修正があることは確かだ。

 修正のトレンドが一段と強まっているなら、今回は修正の値動き自体がやがて行き過ぎになる可能性があるので、ユーロ高が一段と進むと、リスク要素としてこの点も注意する必要に迫られるが、目先はまだそこまでの状況ではないと思う。

 が、重要なところは、金利差の優位性は米ドルにあるが…
調整は買いの好機! 黒田氏が日銀総裁で ある限り、円安トレンド継続に疑いなし!? ブログ

調整は買いの好機! 黒田氏が日銀総裁で ある限り、円安トレンド継続に疑いなし!?

■多少の調整はあれど、結局は中銀スタンスの相違どおり ロシアゲート疑惑の再燃に、イエレンFRB(米連邦準備制度理事会)議長の議会証言が「ハト派」寄りとみられ、米ドル安が続くなか、米ドル/円の一時調整がみられた。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

 しかし、結論から申し上げると、このような調整は短命に終わる可能性が大きく、為替市場におけるメインテーマが変わらない以上、円売りが継続される公算も大きいかと思う。

 なにしろ、ロシアゲートにしても、米利上げ見通しにしても、確かに重要だが、肝心なのはやはり、中銀スタンスの相違である。

 米の資産圧縮、また、欧英のQE(量的緩和策)縮小が既定路線と思われる以上、日銀の緩和政策維持は「浮いている」から、構造的な円売りが継続されやすい、ということに尽きる。

 言ってみれば、円売りの終焉は日銀スタンスの修正を前提条件としているのだから、少なくとも黒田さんが日銀総裁である限り、このような可能性は少ない。

黒田氏が日銀総裁である限り、円売りは終焉しない!?

(C)Bloomberg/Getty Images

 黒田総裁の任期は来年(2018年)春まででいったん切れるが、再任される可能性もあり、また、再任されなくても、氏の路線を継承する方が選ばれる公算が大きいから、当面、金融引き締めの可能性は低いだろう。

■「緩和がやめられない」日銀スタンスの修正は当面難しい 最近、安倍政権の支持率が急落してきた。これを材料に日銀総裁人事、または日銀政策修正の可能性を推測する見方もあるが、飛躍しすぎというか、憶測にすぎないだろう。

 政局の変動があったとしても、たちどころに日銀政策に影響を及ぼすとは到底考えられない。皮肉にも、黒田氏がめざす物価目標2%が達成できず、デフレ脱却の実現が厳しく、また道半ばだからこそ、日銀の基本スタンスは維持され、安易に軌道修正はできないとされている。

 周知のとおり、黒田氏が日銀総裁に就任して以来、日銀政策は「効かないからさらに緩和。こんなに緩和してきたのだから、効かないうちにはやめられない」といったジレンマに陥っている側面が大きい。その功罪はともかく、日銀スタンスの修正が当面、難しいことは確かだ。

 世界主要地域や国家がそろって緩和政策を…
調整は買いの好機! 黒田氏が日銀総裁で ある限り、円安トレンド継続に疑いなし!? ブログ

調整は買いの好機! 黒田氏が日銀総裁で ある限り、円安トレンド継続に疑いなし!?

■多少の調整はあれど、結局は中銀スタンスの相違どおり ロシアゲート疑惑の再燃に、イエレンFRB(米連邦準備制度理事会)議長の議会証言が「ハト派」寄りとみられ、米ドル安が続くなか、米ドル/円の一時調整がみられた。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

 しかし、結論から申し上げると、このような調整は短命に終わる可能性が大きく、為替市場におけるメインテーマが変わらない以上、円売りが継続される公算も大きいかと思う。

 なにしろ、ロシアゲートにしても、米利上げ見通しにしても、確かに重要だが、肝心なのはやはり、中銀スタンスの相違である。

 米の資産圧縮、また、欧英のQE(量的緩和策)縮小が既定路線と思われる以上、日銀の緩和政策維持は「浮いている」から、構造的な円売りが継続されやすい、ということに尽きる。

 言ってみれば、円売りの終焉は日銀スタンスの修正を前提条件としているのだから、少なくとも黒田さんが日銀総裁である限り、このような可能性は少ない。

黒田氏が日銀総裁である限り、円売りは終焉しない!?

(C)Bloomberg/Getty Images

 黒田総裁の任期は来年(2018年)春まででいったん切れるが、再任される可能性もあり、また、再任されなくても、氏の路線を継承する方が選ばれる公算が大きいから、当面、金融引き締めの可能性は低いだろう。

■「緩和がやめられない」日銀スタンスの修正は当面難しい 最近、安倍政権の支持率が急落してきた。これを材料に日銀総裁人事、または日銀政策修正の可能性を推測する見方もあるが、飛躍しすぎというか、憶測にすぎないだろう。

 政局の変動があったとしても、たちどころに日銀政策に影響を及ぼすとは到底考えられない。皮肉にも、黒田氏がめざす物価目標2%が達成できず、デフレ脱却の実現が厳しく、また道半ばだからこそ、日銀の基本スタンスは維持され、安易に軌道修正はできないとされている。

 周知のとおり、黒田氏が日銀総裁に就任して以来、日銀政策は「効かないからさらに緩和。こんなに緩和してきたのだから、効かないうちにはやめられない」といったジレンマに陥っている側面が大きい。その功罪はともかく、日銀スタンスの修正が当面、難しいことは確かだ。

 世界主要地域や国家がそろって緩和政策を…
第二のトランプラリーはもう始まっている!? ユーロは買うのみ! 円安は追随するのみ! ブログ

第二のトランプラリーはもう始まっている!? ユーロは買うのみ! 円安は追随するのみ!

■米ドル安、円安のトレンドが続く 米ドル安、円安のトレンドが続いている。

 米ドル安とは米ドル全体の下落トレンドを指すが、米ドル/円のみ上昇しているから、結果的にクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の強気変動がもたらされているのも当然の成り行きで、円売りトレンドの継続が確認されているわけだ。

米ドルVS世界の通貨 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 日足)

世界の通貨VS円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)

 ドルインデックスは、前回のコラムで指摘させていただいたように、昨年(2016年)11月9日(水)の米大統領選当日の安値を下回ったから、当面下落トレンドが維持され、また、安易な修正はないだろう。

【参考記事】

●米ドル軟調も米ドル/円はなぜ堅調なのか? 背景にあるファンダメンタルズ的要因とは?(2017年6月30日、陳満咲杜)

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

■各国中銀のスタンスの違いが足元の市場のテーマに マーケットの焦点は、米利上げやFRB(米連邦準備制度理事会)の資産圧縮よりもECB(欧州中央銀行)の軌道修正や英、豪利上げの可能性に集中しており、当面、主要通貨の米ドルに対する強気変動が継続される公算が高い。

 主要中銀が揃ってFRBに追随する姿勢を見せている中、唯一日銀のスタンスは変わらない。

 本日(2017年7月7日)午前中の日銀の買い入れオペが前回から増額したことを受け、円安傾向が一段と強まり、執筆中の現時点では、米ドル/円は113.83円まで上昇、ユーロ/円は130円の節目寸前に迫り、英ポンド/円は5月11日(木)以来の高値を更新している。

世界の通貨VS円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)

 要するに、足元の市場のテーマは、中銀のスタンスの違いそのものである。日銀のスタンスが当面維持されるからこそ、円売りには「安心感」がある。よって、クロス円を中心として円安トレンドは当面維持されるとみる。

 最も強いユーロ/円に関しては、前回のコラムで提示していたターゲット、130円の心理的大台はもはや目前で、これを超えてくると今度は133~135円台の目標も射程圏内に収めるだろう。

【参考記事】

●米ドル軟調も米ドル/円はなぜ堅調なのか? 背景にあるファンダメンタルズ的要因とは?(2017年6月30日、陳満咲杜)

ユーロ/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 日足)

 もっとも、米ドル/円の値動きが日米金利差と連動する傾向が…
第二のトランプラリーはもう始まっている!? ユーロは買うのみ! 円安は追随するのみ! ブログ

第二のトランプラリーはもう始まっている!? ユーロは買うのみ! 円安は追随するのみ!

■米ドル安、円安のトレンドが続く 米ドル安、円安のトレンドが続いている。

 米ドル安とは米ドル全体の下落トレンドを指すが、米ドル/円のみ上昇しているから、結果的にクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の強気変動がもたらされているのも当然の成り行きで、円売りトレンドの継続が確認されているわけだ。

米ドルVS世界の通貨 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 日足)

世界の通貨VS円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)

 ドルインデックスは、前回のコラムで指摘させていただいたように、昨年(2016年)11月9日(水)の米大統領選当日の安値を下回ったから、当面下落トレンドが維持され、また、安易な修正はないだろう。

【参考記事】

●米ドル軟調も米ドル/円はなぜ堅調なのか? 背景にあるファンダメンタルズ的要因とは?(2017年6月30日、陳満咲杜)

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

■各国中銀のスタンスの違いが足元の市場のテーマに マーケットの焦点は、米利上げやFRB(米連邦準備制度理事会)の資産圧縮よりもECB(欧州中央銀行)の軌道修正や英、豪利上げの可能性に集中しており、当面、主要通貨の米ドルに対する強気変動が継続される公算が高い。

 主要中銀が揃ってFRBに追随する姿勢を見せている中、唯一日銀のスタンスは変わらない。

 本日(2017年7月7日)午前中の日銀の買い入れオペが前回から増額したことを受け、円安傾向が一段と強まり、執筆中の現時点では、米ドル/円は113.83円まで上昇、ユーロ/円は130円の節目寸前に迫り、英ポンド/円は5月11日(木)以来の高値を更新している。

世界の通貨VS円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)

 要するに、足元の市場のテーマは、中銀のスタンスの違いそのものである。日銀のスタンスが当面維持されるからこそ、円売りには「安心感」がある。よって、クロス円を中心として円安トレンドは当面維持されるとみる。

 最も強いユーロ/円に関しては、前回のコラムで提示していたターゲット、130円の心理的大台はもはや目前で、これを超えてくると今度は133~135円台の目標も射程圏内に収めるだろう。

【参考記事】

●米ドル軟調も米ドル/円はなぜ堅調なのか? 背景にあるファンダメンタルズ的要因とは?(2017年6月30日、陳満咲杜)

ユーロ/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 日足)

 もっとも、米ドル/円の値動きが日米金利差と連動する傾向が…
米ドル軟調も米ドル/円はなぜ堅調なのか? 背景にあるファンダメンタルズ的要因とは? ブログ

米ドル軟調も米ドル/円はなぜ堅調なのか? 背景にあるファンダメンタルズ的要因とは?

■ユーロ/円は米ドル/円ではなく、ユーロ/米ドルの牽引で上昇 ユーロ/円は高値トライ、130円の心理的節目打診が視野に入っている。

ユーロ/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 日足)

 これは筆者の想定どおりだが、背景となるユーロ/米ドルと米ドル/円の値動きについては、以前行った筆者の予測に当たったものと外れたものがあった。

【参考記事】

●今こそ米ドル/円押し目買いの好機!? 今晩の雇用統計が悪くてもさほど売られないかも(2017年6月2日、陳満咲杜)

●過去2回の米利上げ後は米ドル安に…。でも今回は違うとみる! それはなぜか?(2017年6月9日、陳満咲杜)

 ユーロ/米ドルは予測が外れ、米ドル/円は正解だったため、ユーロ/円上昇の値動きは当然ではあったが、より強い変動となり、また目先、強気変動が維持されやすいとみる。

 というのは、筆者はユーロ/円が早晩130円の節目を打診するだろうという予測を繰り返してきたが、それは主に米ドル/円の上昇を予測の根拠にしていた。

 が、6月27日(火)からユーロ/米ドルが大幅上昇し、昨年(2016年)11月9日(水)の高値を突破したから、ユーロ/円の強気変動は、むしろ、ユーロ/米ドルの高値更新がもたらした結果と言える。

ユーロ/米ドル 日足(出所:Bloomberg)

 ユーロ/米ドルはドルインデックスの対極的な存在であり、ユーロ/米ドルの強気変動はそのまま米ドル全体の弱気変動を意味する。

 ドルインデックスは、6月14日(水)安値割れをもって、同日のチャートが示したプライスアクションのサインを否定し、一気に昨年(2016年)11月9日(水)安値を割り込み、2017年年初来の米ドル安の流れは一段と深まった。

【参考記事】

●為替相場にトランプ・ラリー再来!? 米ドル続伸のサイン点灯、米国株もまだ崩壊しない!(2017年6月16日、陳満咲杜)

ドルインデックス  日足(出所:Bloomberg)

 ユーロ/米ドルの高値トライが当面想定されやすいなら、米ドル全体の下落、また、弱気変動がしばらく続き、従来の米ドル全体に関する底打ちのシナリオは、完全には否定されていないものの、底打ちのサインなしでは目先、安易に底打ちを認定できないだろう。

■米ドルを続落させた5つのファンダメンタルズ要因 ファンダメンタルズ的には、米ドルを続落、また、安値更新させた材料として、主に以下の5つが挙げられる。

1.ドラギECB(欧州中央銀行)総裁の強気発言

2.IMF(国際通貨基金)の米経済成長見通し下方修正

3.イエレンFRB(米連邦準備制度理事会)議長の「ハト派」発言

4.米上院での医療改革法案投票の延期

5.FRB投票権をもつ委員による「低インフレ」警戒論

 また、さらに追加材料として、英中銀総裁・カーニーさんの発言(利上げ否定から利上げの可能性に言及)も数えられるが、同総裁のあだ名は「頼りにならない彼氏」であるだけに、これを材料視するのはやや性急かと思っているところだ。

【参考記事】

●“頼りにならない彼氏”の裏切りに英ポンド怒りの急落! 続く米雇用統計は果たして!?(2015年11月6日、陳満咲杜)

■ユーロ/米ドルの下落サインは「ダマシ」と化した テクニカル面では、ユーロ/米ドル日足におけるサインが代表的であろう。6月14日(水)の日足は「スパイクハイ」のサインを点灯して頭打ちをいったん示唆していたが、5月30日(火)安値を割りこめず、一転して6月14日(水)高値を更新、同サイン自体が「ダマシ」と化した。

ユーロ/米ドル 日足(出所:FXブロードネット)

 「ダマシ」のサインがあったからこそ、トレンドの強気が証左されるわけで、目先、ユーロ/米ドルの強気変動は維持され、また、高値トライしやすい構造にあることが想定される。したがって、ユーロ/米ドルの切り返しはすでに最終段階に入ったものの、同サインの点灯を軽視すべきではないと思う。

 ちなみに、6月20日(火)までの押しは、GMMAチャートにおける長期移動平均線のサポートを受けた形で再上昇してきたから、同サインも強気変動における「鰯喰い」(スピード調整)のサインと見られる。換言すれば、ユーロの上昇波はテクニカル上、一貫して維持されてきたから、値ごろ感による判断をすべきではないことが示唆される。

 対照的に、米ドル/円におけるサインは有効であった…
米ドル軟調も米ドル/円はなぜ堅調なのか? 背景にあるファンダメンタルズ的要因とは? ブログ

米ドル軟調も米ドル/円はなぜ堅調なのか? 背景にあるファンダメンタルズ的要因とは?

■ユーロ/円は米ドル/円ではなく、ユーロ/米ドルの牽引で上昇 ユーロ/円は高値トライ、130円の心理的節目打診が視野に入っている。

ユーロ/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 日足)

 これは筆者の想定どおりだが、背景となるユーロ/米ドルと米ドル/円の値動きについては、以前行った筆者の予測に当たったものと外れたものがあった。

【参考記事】

●今こそ米ドル/円押し目買いの好機!? 今晩の雇用統計が悪くてもさほど売られないかも(2017年6月2日、陳満咲杜)

●過去2回の米利上げ後は米ドル安に…。でも今回は違うとみる! それはなぜか?(2017年6月9日、陳満咲杜)

 ユーロ/米ドルは予測が外れ、米ドル/円は正解だったため、ユーロ/円上昇の値動きは当然ではあったが、より強い変動となり、また目先、強気変動が維持されやすいとみる。

 というのは、筆者はユーロ/円が早晩130円の節目を打診するだろうという予測を繰り返してきたが、それは主に米ドル/円の上昇を予測の根拠にしていた。

 が、6月27日(火)からユーロ/米ドルが大幅上昇し、昨年(2016年)11月9日(水)の高値を突破したから、ユーロ/円の強気変動は、むしろ、ユーロ/米ドルの高値更新がもたらした結果と言える。

ユーロ/米ドル 日足(出所:Bloomberg)

 ユーロ/米ドルはドルインデックスの対極的な存在であり、ユーロ/米ドルの強気変動はそのまま米ドル全体の弱気変動を意味する。

 ドルインデックスは、6月14日(水)安値割れをもって、同日のチャートが示したプライスアクションのサインを否定し、一気に昨年(2016年)11月9日(水)安値を割り込み、2017年年初来の米ドル安の流れは一段と深まった。

【参考記事】

●為替相場にトランプ・ラリー再来!? 米ドル続伸のサイン点灯、米国株もまだ崩壊しない!(2017年6月16日、陳満咲杜)

ドルインデックス  日足(出所:Bloomberg)

 ユーロ/米ドルの高値トライが当面想定されやすいなら、米ドル全体の下落、また、弱気変動がしばらく続き、従来の米ドル全体に関する底打ちのシナリオは、完全には否定されていないものの、底打ちのサインなしでは目先、安易に底打ちを認定できないだろう。

■米ドルを続落させた5つのファンダメンタルズ要因 ファンダメンタルズ的には、米ドルを続落、また、安値更新させた材料として、主に以下の5つが挙げられる。

1.ドラギECB(欧州中央銀行)総裁の強気発言

2.IMF(国際通貨基金)の米経済成長見通し下方修正

3.イエレンFRB(米連邦準備制度理事会)議長の「ハト派」発言

4.米上院での医療改革法案投票の延期

5.FRB投票権をもつ委員による「低インフレ」警戒論

 また、さらに追加材料として、英中銀総裁・カーニーさんの発言(利上げ否定から利上げの可能性に言及)も数えられるが、同総裁のあだ名は「頼りにならない彼氏」であるだけに、これを材料視するのはやや性急かと思っているところだ。

【参考記事】

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■ユーロ/米ドルの下落サインは「ダマシ」と化した テクニカル面では、ユーロ/米ドル日足におけるサインが代表的であろう。6月14日(水)の日足は「スパイクハイ」のサインを点灯して頭打ちをいったん示唆していたが、5月30日(火)安値を割りこめず、一転して6月14日(水)高値を更新、同サイン自体が「ダマシ」と化した。

ユーロ/米ドル 日足(出所:FXブロードネット)

 「ダマシ」のサインがあったからこそ、トレンドの強気が証左されるわけで、目先、ユーロ/米ドルの強気変動は維持され、また、高値トライしやすい構造にあることが想定される。したがって、ユーロ/米ドルの切り返しはすでに最終段階に入ったものの、同サインの点灯を軽視すべきではないと思う。

 ちなみに、6月20日(火)までの押しは、GMMAチャートにおける長期移動平均線のサポートを受けた形で再上昇してきたから、同サインも強気変動における「鰯喰い」(スピード調整)のサインと見られる。換言すれば、ユーロの上昇波はテクニカル上、一貫して維持されてきたから、値ごろ感による判断をすべきではないことが示唆される。

 対照的に、米ドル/円におけるサインは有効であった…