陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

ドル/円は高値更新なら上昇トレンド加速! 今後はクロス円よりドルストレートが狙い目 ブログ

ドル/円は高値更新なら上昇トレンド加速! 今後はクロス円よりドルストレートが狙い目

■株と為替の乖離が続いているが、今後どうなる? 株と為替の「乖離」が続いている。NYダウやS&P500、日経平均が高値更新し続けているが、米ドル全体(ドルインデックス)にしても、米ドル/円にしても伸びきれず、勢いに欠ける。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

日経平均 日足 

(出所:Bloomberg)

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

(※以上のチャート画像は11月9日(木)14時前後にキャプチャしています)

 もっとも、米国株と米ドルの関連性はそもそも高くないので、米株高が米ドル高に連動という発想はない。

 対照的に、日本株高と円安は連動する傾向が強く、足元の日経平均の強さからすると、米ドル/円の「出遅れ」が一段と目立つと感じる。

 そのわけに関しては、前回のコラムで詳説したので、ここでは重複して説明しないが、強調しておきたいのは、株高がホンモノなら、米ドル/円は早晩高値トライし、パフォーマンス上の「乖離」を縮小していく見通しということだ。これはもはや時間の問題だと思う。

【参考記事】

●日経平均2倍以上なのに円安は少しだけ。2002~2007年の市況からヒントが得られる?(2017年11月6日、陳満咲杜)

 言い換えれば、株式市場が崩れない限り、米ドル/円もブル(上昇)基調を保ち、あとはスピードの問題。米ドル/円の上昇モメンタムが強くないからといって、円高トレンドに戻るのでは…といった見方は少なくとも目先杞憂である。

 ゆえに、米ドル/円に関しては、引き続きロング目線で臨むのが適切であろう。

■米ドル/円が出遅れた理由とは? 米ドル/円の「出遅れ」は、テクニカル要素からみると115円の心理的大台乗せにいったん失敗しているところが大きいが、円のショートポジションが積み上げられ、米ドル/円が上昇するたびに利益確定の売りが出やすい、という側面も大きいだろう。

 ファンダメンタルズにおいては、やはり、米税制改革の進捗や米長期金利の水準に影響される。こちらは米ドル/円のみでなく、米ドル全体の頭を押さえ込む要素としてフォローしていく必要がある。

 米減税案の中身に関する米与野党の攻防が続いているが、ゴールドマンサックスの予想では来年(2018年)春に成立する確率は65%ほどある。米長期金利(10年国債利回り)は先々週(10月23日~)いったん2.477%まで上昇してからやや反落してきたものの、5月、7月高値のブレイクを果たしただけに、これからも切り返していくと思われる。

 したがって、米ドル/円がいったん5月、7月高値を更新したものの、再度反落してきたのは、米長期金利と連動している側面があり、また、米減税案審議のゴタゴタに影響されたことが大きいからと言える。

 さらに、トランプ米大統領訪日に伴い、米サイドの円安牽制や北朝鮮挑発の懸念が浮上してきたことも、米ドル/円の頭を押さえ込んでいると言える。

 この意味では、米ドル/円が11月6日(月)にいったん5月、7月高値を更新したものの、その後、続かず、軟調な推移に留まっているのも仕方がない。

 とはいえ、112円台前半~113円節目前後の…
日経平均2倍以上なのに円安は少しだけ。 2002~2007年の市況からヒントが得られる? ブログ

日経平均2倍以上なのに円安は少しだけ。 2002~2007年の市況からヒントが得られる?

■芳しくない米雇用統計も、米ドル高基調はキープ 先週末(11月3日)に発表された10月米雇用統計は予想より劣ったものの、米ドル高の基調は総じて保たれた。ドルインデックスは95の節目近くで大引けし、次の上昇余地を示唆していた。

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

 もっとも、「米12月利上げは規定路線なので、今回の数字がどうであれ、米ドル高のトレンドは不変」というロジックを持っていた筆者からみれば、米雇用統計に関する予想などはまったくといっていいほど当てにならないものだから、予想より云々とか、また、その予想に基づく市場のセンチメント云々ということ自体がおかしい。

 ゆえに、いつものように、事後的な解釈は、統計が発表されたあとの値動きに合わせる傾向が強く、たとえ事前の予想とかなりかけ離れていたとしても、その解釈だけを聞くと蓋然性に納得するほどだ。

■ハリケーンの影響を織り込んだ予想が外れたというのに… その好例として、前回(9月米雇用統計)に関する解釈が記憶に新しいだろう。事前予想では、非農業部分雇用者数が8~9万人増だったが、フタを開けてみたら3万3千人減だった。にも関わらず、少なくともその直後、米ドル買いが広がったから、解釈の方もすぐ「ハリケーンがあったから仕方がない」とお茶を濁したのだった。

 お茶を濁すという表現は決して意地の悪い揶揄ではない。なにしろ、事前予想はハリケーンの影響を織り込んだ上での予想だったのだ。それでいて、発表されたあとに「ハリケーンがあったから云々」という言い訳は通用しない。

 笑えるほど明らかに予想とかけ離れた数字が出たあと、米ドルが売られたのではなく、買われたので、そう言うしかなかったと思われる。

 逆に、米ドルが売られていたら、それこそ「想定よりずいぶん悪かったので米ドル売り」といった「真っ当な」解釈が行われていたであろうことが、容易に推測される。

■10月米雇用統計がどうであれドル高トレンド維持は当然だった ところで、今さら9月米雇用統計を検証するつもりはない。言いたいのは以下の2点である。

 まず、9月雇用統計をもって米ドル高基調の継続がすでに検証済であったこと。

 次に、米利上げが規定路線であり、また、米ドル高基調がすでに検証済であった以上、10月米雇用統計がどうであれ、米ドル高のトレンドが維持されること。

 この意味では、先週末(11月3日)は、雇用統計で判断を迷うことはまったくなかったはずだ。要するに米ドル高の継続は当然の成り行きで、米ドル高の加速はむしろこれからだ、ということを指摘しておきたい。

 当然のように、米ドル/円もドルインデックスと連動した形で上昇していく公算が高い。

 一方、前回のコラムでも述べたように、米ドル/円と日経平均の連動性が薄れているように見える。

【参考記事】

●今からでも遅くない! 米ドルは買い!! 日経平均の上げっぷりにドル/円も追いつく

米ドル/円VS日経平均 週足(出所:Bloomberg)

 バブル崩壊後の最高値(1996年の2万2750円)に迫る日経平均のパフォーマンスから考えると、米ドル/円はずいぶん遅れており、日経平均に連動しなくなるのでは…といった懸念も生じてきた。

 執筆中の現時点では、米ドル/円は7月高値のブレイクを果たしたとはいえ、まだ115円の節目に乗せられていないから、3月高値が115.50円前後だったことからみれば、日経平均のパフォーマンスとは、なお「雲泥の差」がある印象だ。

 しかし、歴史に照らしてみればわかるように、米ドル/円と日経平均…
今からでも遅くない! 米ドルは買い!! 日経平均の上げっぷりにドル/円も追いつく ブログ

今からでも遅くない! 米ドルは買い!! 日経平均の上げっぷりにドル/円も追いつく

■ユーロ/円の反落が今後の相場の流れを暗示? ユーロ/円は、一昨日(10月25日)、9月高値を更新したものの、昨日(10月26日)、大きく反落してきた。円安をリードしてきたユーロ/円の変化は、これからの相場の流れを暗示していると思う。

ユーロ/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 日足)

 昨日(10月26日)のユーロの急落は、ECB(欧州中央銀行)政策の決定がきっかけだった。ECBは量的金融緩和の規模半減と、2018年9月までの延長を決定し、また、将来の規模拡大・再延長の可能性も示唆した。

 QE(量的緩和策)縮小自体は既定路線だったが、その内容が「緩やか」な出口戦略だったとして、ユーロ売りの口実に使われた模様だ。

 というのも、ユーロの頭打ち、また反落は、日足では大型「三尊型(※)」天井の形成をもってすでに示唆されていた。ECB政策の発表は、下落の引き金を引いたにすぎないとみるべきであろう。

(※編集部注:「三尊型」はチャートのパターンの1つで、天井を示す典型的な形とされている。仏像が3体並んでいるように見えるために「三尊型」と呼ばれていて、人の頭と両肩に見立てて「ヘッド&ショルダー」と呼ぶこともある)

【参考記事】

●ひどい米雇用統計結果でも米ドルは予想どおり上昇! でも続かなかった理由とは?(2017年10月13日、陳満咲杜)

 換言すれば、仮にECBが今回「急激」な政策を打ち出して、ユーロの切り返しがあったとしても、上値は限定的だったと思われる。

 こういった構造的なポイントは、ユーロ/米ドルとドルインデックスを比較対照してみれば、よりわかりやすいだろう。

ユーロ/米ドル 日足(クリックで拡大)(出所:FXブロードネット)

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

■メインクロス円の上昇モメンタムは低下 ユーロ/円をはじめ、メインクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の多くはブル(上昇)トレンドをなお維持しているものの、上昇モメンタムの低下がみられてきた。

 豪ドル/円は9月高値トライどころか、再度87円の節目割れの可能性も示唆され、英ポンド/円は切り返しを維持しているものの、9月高値まではなお距離あり、といった状況だ。

豪ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/円 日足)

英ポンド/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/円 日足)

■米ドル上昇にともない、クロス円の値動きはどうなる? 上昇モメンタムの失速は、前述のドルインデックスのフォーメーションから大きなヒントを得られる。

 前回のコラムでも暗示したように、クロス円の上昇モメンタムは、緩やかな米ドル高が最も重要な前提条件である。

【参考記事】

●現在のドル/円日足チャートはユーロ/ドルが6月に上昇し始めたときと同じサインが点灯!(2017年10月20日、陳満咲杜)

 米ドル/円が上昇波を展開する一方、ユーロなど主要外貨が米ドルに対して保ち合いを保てれば、結果的にクロス円の上昇を加速させることになる。一昨日(10月25日)のユーロ/円の高値更新はその好例であった。

 しかし、昨日(10月26日)のユーロ急落に照らして考えると、米ドル全体がこれから反騰のスピードを加速していく可能性が大きいから、クロス円の上昇スピードが外貨の下落加速で抑えられることも十分想定されるわけだ。

 とはいえ、米ドル/円がブル基調を保つ限り、クロス円の多くがたちまちベア(下落)トレンドへ転換するとは思わない。場合によっては、いわゆる「深押し」したあと、再度ブルトレンドへ復帰する可能性が大きいから、次の押し目チャンスを狙えばよいだけの話だ。

 ところで、ユーロ、英ポンド、豪ドルのうち…
現在のドル/円日足チャートはユーロ/ドルが 6月に上昇し始めたときと同じサインが点灯! ブログ

現在のドル/円日足チャートはユーロ/ドルが 6月に上昇し始めたときと同じサインが点灯!

■目先の米ドル高が次なるトレンドの推進を示唆 米予算決議案可決が伝わり、現在、米ドル全面高が進んでいる。

ドルインデックス 1時間足(出所:Bloomberg)

 昨日(10月19日)の波乱があったからこそ、目先の米ドル高は次なるトレンドの推進を示唆していると思う。

 昨日(10月19日)はスペインのカタルーニャ独立問題で市場の警戒が再度高まり、米メディアによる次期FRB(米連邦準備制度理事会)議長人事報道(パウエル氏が有力といった内容)もあって、NYダウは一時、100ドルの下げを演じ、日経平均先物の反落とともに、米ドル/円も一時、112.30円まで急落した。

米ドル/円 1時間足(出所:Bloomberg)

 しかし、NYダウが再度史上最高値で大引けしたことからもわかるように、リスクオンはなお、メイン・センチメントとして市場を支配している。

■NYダウ史上最高値更新のたびに市場が警戒するのは健全 もっとも、米国株は連日高値を更新し(※1)、日経平均も昨日(10月19日)まで13連騰を達成(※2)、1988年以来のパフォーマンスとなったから、市場関係者は過熱を警戒し、何らかの材料に過敏に反応してしまうのも理解しやすい。

(※1 執筆者注:S&P500は2017年年初から50回以上の高値更新を果たし、NYダウの史上最高値更新自体も、もはやニュースにならないほど日常化している)

(※2 編集部注:10月20日(金)、本記事寄稿後の編集中に日経平均はまた前日比で上昇して大引け。歴代1位タイの14連騰を記録した)

 が、史上最高値を更新するたびに市場の警戒が強まってきた米国株の経緯からすると、警戒されているうちはまだ健全だ、とも言えるから、目先はトレンド・フォロー、つまり、順張りしかできない。

 ゆえに、米国株のトレンドが修正されると証明されるまで、日本株高・日本円安とセットになったトレンドに、追随するしかない。

 米国株の歴史的な連騰は、単純にテクニカルの視点からみれば、逆張り派(空売り筋)の大損が背景にあったことも容易に推測されるから、前轍を踏まないことは重要だ。

■10月19日の米ドル/円下落は押し目買いの好機だった 米ドル/円に関しては、週明け(10月16日)からの切り返しは明白なトレンドの方向を示唆してくれた上、一昨日(18日)の値動きをもって確認のサインを点灯していた。

 だから、昨日(10月19日)の反落も、出遅れたロング筋にとって押し目買いの好機であった。

 理屈は昨日(10月19日)書いたレポートをもって説明する。本文は以下のとおり。

米ドル/円 日足(10月19日作成、クリックで拡大)(出所:FXブロードネット)

16日に陽線、6日高値を起点とした反落波の底打ちを決定、GMMAにおける「鰯喰い」のサイン(調整一服)を点灯していた。同サインの確認、昨日にて10日高値112.83のブレイクをもって行われたと見る。

というのが、6日の弱気サインが点灯され、その後の反落につながっていたが、10日~12日罫線で形成した「インサイド」の下放れがあったからこそ、16日の安値打診があった。本来、同下放れが指示するターゲットはもっと下方に位置、また6日罫線の意味合いに鑑み、大幅な下値打診があってもおかしくなかったから、前記「インサイド」の「母線」に当たる10日高値のブレイクは底打ちを確認、また「鰯喰い」サインの蓋然性を証左している

わけだ。

もっとも、6日の罫線、弱気「リバーサル」に「フォールス・ブレイクアウト」のサインを点灯していたから、大幅かつ本格的な下落をもたらすリスクもあった。この場合、同日罫線が「フェイクセットアップ」のサインとして点灯する恐れもあるが、昨日の続伸、反落波の一服、または上昇波への復帰を示唆したから、6日高値が再度ブレイクされることも射程圏に収める。

弱気サインを点灯してから、限られた反落幅しか達成できず、再度高値更新になれば、6日罫線の意味合いを一転させる可能性がある。詰まる所、弱気のサインが否定されると、「ダマシ」として解釈され、一転してブル基調の継続や加速を示すサインと解釈されるから、高値更新後の上昇モメンタムに注意。

米ドル/円 週足(10月19日作成、クリックで拡大)(出所:FXブロードネット)

週足では、先週高値のブレイクも重要のサインとみる。4月安値から繰り返してきた「週足四連陽後の陰線引けがあれば、反落が続く」といった変動リズムの打破を証明しているからだ。高値更新があれば、一層強気基調の維持また加速につながる。

 GMMAの「鰯喰い」のサインは筆者の命名で、長期移動平均線グループ(ピンク色)に短期移動平均線グループ(水色)や価格が接近したものの(場合によってはいったんクロスしたものの)、結局、元のトレンドへ復帰してしまうのを示唆するサインを指す。トレンド途中のスピード調整と見なせばわかりやすいかと思う。

 そして、「フェイクセットアップ」はプライスアクションの用語で、トレンドを反転させる可能性を示唆するサインであるだけに、昨日(10月19日)のレポートの指摘どおり、ここから10月6日(金)高値113.44円のブレイクがあれば、一転してトレンド継続、また加速させるサインと化す。したがって、円安トレンドに弾みがつくのは、これからではないかと思う。

 相場のことは相場に聞くしかないので…
ひどい米雇用統計結果でも米ドルは予想 どおり上昇! でも続かなかった理由とは? ブログ

ひどい米雇用統計結果でも米ドルは予想 どおり上昇! でも続かなかった理由とは?

■米雇用統計後、確かに予想どおり、米ドルは上昇したが… 前回(10月6日)の本コラムでは、「米雇用統計に悲観しなくてもよく、米ドル/円は75%の確率で上昇する」と予測していたが、当たったかどうかは微妙なところだ。

【参考記事】

●今晩の米雇用統計は悲観しなくてよい!?よって、米ドル/円は75%の確率で上昇!?(2017年10月6日、陳満咲杜)

 9月米雇用統計に対する市場の反応のみに限定すれば、予測は当たったと思う。何しろ、予想より極端に悪い雇用者数がリリースされても、米ドル全体はほぼ売られずに上昇し、米ドル/円も一時113.44円まで高値にトライした。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

 市況に合わせたような、「ハリケーンの影響を織り込んでいたから」、「雇用者数より時給」、「失業率が悪くなかった」といった「後解釈」の氾濫も、いつものとおりだった。

 もっとも、市場の事前調査では、ウォール街の平均コンセンサスは8万人増だった。当然のように、この数字自体もハリケーンの影響を織り込んだ上の予想だった。

 が、ふたを開けてみると、3.3万人減という数字だったので、本当はショックを受けてもまったくおかしくなかった。ゆえに、前述の「後解釈」の多くがいかに「インチキ」かがおわかりいただけるだろう。

■北朝鮮情勢の影響で、一転して米ドル安に それでも米ドル全体は上昇していたので、このまま米ドル高で大引けかと思っていたところ、一転して米ドル安に転じた。北朝鮮を訪問したロシア下院議員の、「北朝鮮が長距離ミサイル発射実験を計画、米西海岸が射程圏に入る」といった見方が報道されたからだ。

 米ドル/円は一転して大きく反落し、当日ほぼ最安値の112.63円で大引けした。これに関して、通常の「リスクオフの円買い」といった解釈をすることは、大まかには妥当であると言えるだろう。この意味では、米ドル高の一服があっても仕方がない。

 しかし、米ドル/円にしても、ドルインデックスにしても、10月6日(金)高値から反落し、目先まで軟調な推移に留まっている。

米ドル/円 1時間足 

(出所:Bloomberg) 

ドルインデックス 1時間足 

(出所:Bloomberg)  

■米ドルは転換期に向かっているが、今まだなお「底を形成中」 前回(10月6日)も指摘したように、北朝鮮の地政学リスクがあっても、それはメイントレンドを決定する要素ではないはずである。

【参考記事】

●今晩の米雇用統計は悲観しなくてよい!? よって、米ドル/円は75%の確率で上昇!?(2017年10月6日、陳満咲杜)

 もちろん、ミサイル発射がまだないために警戒され続けるので、米ドルの頭を抑え込んでいる側面があるが、本当のところは、やはり、まだ本格的な米ドル高の地合いができていない、というテクニカル上の理由が大きいのではないかと思う。

 言ってみれば、ドルインデックスは2017年年初来ほぼ一本調子で下落してきた分、修正されるのにも時間がかかり、また、底打ちのパターンは煮詰まってから効いてくる公算が大きいから、今はなお、底を形成する段階にある。この視点を大事にすれば、最近の市況をより理解できるのではないだろうか。

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)  

 米ドル安のトレンドがすでに一服し、また、米ドル高へ転換する時期に差し掛かっているから、「予想よりだいぶ悪かった米雇用者数が出ても、まず、米ドル高に反応した」ということが、これからのトレンドを暗示する値動きだとみる。

 一方、その後、一転して反落してきたのは、地政学リスク云々というよりは、米ドル全体はなお底を形成する途中なので、一直線にはいかないからではないだろうか。

 実際、ドルインデックスの日足を見る限り…
今晩の米雇用統計は悲観しなくてよい!? よって、米ドル/円は75%の確率で上昇!? ブログ

今晩の米雇用統計は悲観しなくてよい!? よって、米ドル/円は75%の確率で上昇!?

■米ドルの反騰は、千里の道の一歩になる? 米ドル高が続いている。一方、米ドル高という言い方が、必ずしも適切とは言えない側面がある。

 何しろ、2017年年初来、米ドル安が一貫して続き、9月初頭に2015年2月以来の安値を更新したばかりだから、米ドル安派からみれば、足元までの米ドルの反騰は、まだまだスピード調整程度にすぎず、2017年年初来の下落幅に比べ、米ドル高と言えるものかと疑問視されるだろう。

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

 確かにそのとおりだ。

 足元までの米ドル高は、仮に今週(10月2日~)も陽線で引けると週足で「四連陽」を達成する。しかし、そうであっても、「これまで行き過ぎた米ドル安に対する修正、またスピード調整」という見方はできても、米ドル高トレンドに転換したと言う状況にはほど遠い。

ドルインデックス 週足(出所:Bloomberg)

 今晩(10月6日)、米雇用統計の発表があるから、変動率の大きさから考えると、今週(10月2日~)、陽線で引けるかどうかも流動的だ。

 一方、トレンドの転換は、最初は例外なくスピード調整にすぎないだろうと思われる段階を通ってから図られるもの。

 ゆえに、9月安値を起点とした米ドルの反騰が、結果的に新たな米ドル高トレンドの起点になる、という可能性も完全には否定できない。千里の道も一歩から。足元の米ドルの反騰は、確実な一歩を踏み出したと言える。

■米サイドからの良い材料も、米ドル高トレンドを証左 米ドル高の可能性については、前回のコラムでも根拠を説明していたので、ここでは重複して説明しないが、昨日(10月5日)発表された新規失業保険申請件数、貿易収支、製造業受注指数などが軒並み良好であったことから、米景気サイクルにおける成長期間はなお続いている可能性が大きいことを強調しておきたい。

【参考記事】

●トランプ氏への過小評価が撤回され米ドル上昇へ! 米ドル高を徹底的にフォローせよ(2017年9月29日、陳満咲杜)

 相場の歴史を検証すればわかるように、トレンドが始まれば、不思議なことにファンダメンタルズの材料がトレンドの方向を証左する内容になってくる傾向が強い。したがって、米ドル高がホンモノなら、また、米ドル高のトレンドが続いていくなら、米サイドから良い材料が続出するのも当然の成り行きである。

 この意味合いでは、誰も予測できないと言われる米雇用統計だが、今回は悲観しなくてもよいのではないだろうか。

 その上、米予算決議案が下院を通過したことで、米税制改革法案成立の可能性がだいぶ高まっていること、FRB(米連邦準備制度理事会)幹部たちの利上げ予想、また支持の声が相次いでいること、さらに、米8月貿易赤字の縮小がトランプ政権の政績と見なされることなど、このところ、米ドル高を押し上げる材料や市場の解釈が続いており、これがこれからも続く可能性は大きいかと思う。

■北朝鮮の挑発は基本的に「押し目買いの好機」に もっとも、S&P500指数が2013年以来最も長い上昇期間を達成していることが象徴事例であるように、リスクオンの環境は変わらない。

 北朝鮮の挑発は、これからも続く恐れがあり、また確率が高いと思うが(※)、米朝開戦がない限り、一時のリスクオフに留まり、また、場合によっては、米国株にしても、米ドル/円にしても、押し目買いの好機を再度提供してくるかと推測される。

 これは要するに、9月からのいつもの反応パターンなので、マーケットはすっかり慣れているからだ。

(※執筆者注:ちょっと脱線してしまうが、北朝鮮の挑発は、中国共産党第19回全国代表大会開幕の今月(10月)18日前後が一番リスクが高いと思う。なぜなら、北の将軍様は最大応援者の国連決議同意を相当恨んでおり、最近の挑発は決まって中国のメンツ潰しのタイミングを選んでいるからだ)

 一方、スペイン・カタルーニャ州の独立騒動が発生している…
トランプ氏への過小評価が撤回され米ドル 上昇へ! 米ドル高を徹底的にフォローせよ ブログ

トランプ氏への過小評価が撤回され米ドル 上昇へ! 米ドル高を徹底的にフォローせよ

■米ドル高トレンドへの転換は、これからが正念場 米ドル高が続いている。ドルインデックスは、なお弱い反発に留まっているものの、いったん93後半までトライ。米ドル/円は、一時113円台前半をトライしていた。

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 以前のコラムでも述べているように、9月8日(金)時点での米ドル全体(ドルインデックス)の「売られすぎ」自体が記録的であったから、目先の反発はなおスピード調整の範疇であり、ベア(下落)トレンドを修正できるかどうかはむしろこれからが正念場だろう。

 しかし、結論から申し上げると、トレンド修正の可能性は大きいと思う。

【参考記事】

●さらなる米ドル全面安に懐疑的な2つの理由とは? でも、逆張りの米ドル買いも危険(2017年9月8日、陳満咲杜)

■「値ごろ感」による景気サイクルのトップアウト判断は不適切 9月15日(金)の本コラムでは、米ドル売りを仕掛けるファンダメンタルズ上の根拠を4点示したが、そのすべてが「消滅」しつつあることを記した。

【参考記事】

●米ドル/円は北朝鮮ミサイル発射でも押し目限定的。年内の上値目標は115~116円!(2017年9月15日、陳満咲杜)

 前回は最初の根拠と、それに対する反論しか書いていなかったので、今回は残りの3つの根拠を見てみることにしよう。

 まず1つ目の根拠は、「米景気サイクルがすでにトップアウトしたか、そろそろトップアウトするだろう」といった仮説だ。2017年年初来、米ドルの下落トレンドが長く続いてきたが、これが今後、さらに本格化していくだろうといった見方の多くは、言ってみれば、この仮説に基づいているところが大きい。

 このような視点、また、思惑の多くは、株価のサイクルとリンクした形で、2009年6月から開始した今回の米景気回復の周期は長すぎるのではないか、また、長すぎるからそろそろ頭打ちになってくるだろう、といった推測に基づいているようだ。

 が、昨日(9月28日)もS&P500が高値更新したように、米株価にしても、米景気変動にしても、「常識派」の「常識」を「裏切る」形でなお進行していることも明らかだ。

S&P500 日足(出所:Bloomberg)

 実際、歴史に照らして考えると、景気または株価のサイクルが繰り返されてきたこと自体は事実であり、また、重視しなければならないが、サイクルが節目ごとに天井、底を形成してくれるとは限らない。

 サイクルが単純に循環するのであれば、エコノミストと呼ばれる人々は失業し、政府も気楽に経済運営をでき、また、効果のある景気対策を打ち出せるだろう。このような仮説自体が景気サイクルの存在と矛盾するから、現実はそうはいかないことも明白である。

 米景気サイクルでみればわかるように、1854年から2009年まで計33個の景気サイクルが数えられ、また、総じて上昇期が長く緩やか、下落期が短く急激、といった特徴が、時間の推移とともにより鮮明になってきた。

 だから、8年を超えた米景気回復が、「かつての景気サイクルの平均」や「上昇期は延長されるという特徴」から考えても、特に長すぎたとは言い切れない。

 言い換えれば、「値ごろ感」による景気サイクルのトップアウト判断は適切ではなく、それを基づいた米ドルの頭打ちといった判断はリスキーである。

 2つ目の根拠は、近ごろの「北朝鮮問題がもたらす…
孤独な一人旅楽しむ日銀、円安は道半ば。 米ドル/円は118円、ユーロ/円は140円へ! ブログ

孤独な一人旅楽しむ日銀、円安は道半ば。 米ドル/円は118円、ユーロ/円は140円へ!

■円安の可能性を示す2つの理由とは? 前回のコラムで、円安(米ドル高)の可能性を強調したこと自体は正解であったが、提示した英ポンド/円のターゲット(151円)が先週金曜(9月15日)当日に達成されたことは、筆者自身にとってもサプライズであった。

【参考記事】

●米ドル/円は北朝鮮ミサイル発射でも押し目限定的。年内の上値目標は115~116円!(2017年9月15日、陳満咲杜)

英ポンド/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/円 日足)

 英ポンド/円の急上昇は、利上げ観測の高まりで英ポンドが急伸してきた側面が大きかったが、円安トレンドの一環と捉えれば、より理解しやすかったかと思う。

 米ドル/円やメジャークロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)における円安の可能性は、大きな視点でみると、主に以下の2点に起因すると思う。

 1つは、北朝鮮問題で引き起こされた地政学リスクが一時的なリスクオフにつながったものの、このリスクオフの動き自体が「ダマシ」となったことから、反動的なリスクオンが進行してきたこと。

 もう1つは、やはり金融政策の相違がより意識され、また、さらに鮮明になってきたことで、円安の可能性が再度認識されてきたところではないかとみる。

■日銀は唯一緩和策を堅持し、“孤独な一人旅”を満喫!? 2番目の視点は本来「蛇足」であるはずだが、ここに来て再認識されてきたことは、やはり、今回のFOMC(米連邦公開市場委員会)であろう。

 日銀が、主要国において唯一緩和策を堅持する中央銀行であること自体は周知の事実だから、今さら政策の相違を強調する必要はない、という意味合いでは「蛇足」であるが、FRB(米連邦準備制度理事会)のバランスシート圧縮(資産圧縮)が正式に表明されないうちは、マーケットはどうもこの根本的な問題を見逃しがちで、北朝鮮の挑発に大袈裟に反応していた。

 その反応の結果、一時的に円高進行が確認されたものの、結果的に一時的な「ダマシ」になったことも、根本的な政策の相違に市場関係者の焦点が再び集まってきたからであるといえる。

 FRBの資産圧縮は、来月(2017年10月)から始まり、2021年か2023年まで続き、60%もの資産が削減される見通しで、0.28%の利上げなら、3回の利上げ効果相当と計算される。

 リーマンショック以降に実施された世界的な大規模量的緩和策に終止符を打ち、引き締めの流れが始まろうとしている現在は、まさに大きな転換点に位置し、これから徐々に緊縮の色合いが濃厚になっていくと予想される。

 そのような中で、「一人旅」を続ける日銀は異色であり、また、「孤独」である。昨日(9月21日)、黒田日銀総裁は「必要なら緩和拡大」と繰り返し、異色また孤独な「旅」を続けることを表明。市場関係者の目には、場合によっては「一人旅」を楽しんでいるような印象にさえ映る。

黒田日銀総裁は「必要なら緩和拡大」と繰り返し、日銀が「異色で孤独な一人旅」を引き続き楽しむことを表明した (C)Bloomberg/Getty Images

 このような政策の相違をより鮮明化させ、また、市場関係者に強く意識させることで円安トレンドを維持、さらに推進することが黒田さんの狙いではないかと思われる。その意味で、従来のセリフを繰り返しただけでも、日銀総裁が発したメッセージのインパクトは大きい。

 つまるところ、FRBの資産圧縮は規定路線であって、また、日銀の政策維持も想定されていたから、本来まったくサプライズではないのに、「サプライズ」になったように解釈されること自体が間違いである。

 FRBの歴史的な政策転換は、米ドル安に終止符を打ち、「一人旅」を続ける日本の円は売られるといった単純な理屈が、相場にやっと反映されたにすぎない、そして、そのほかに理由はあるまいといえる。

 このことを理解できれば、足元の円安はなお途中…
米ドル/円は北朝鮮ミサイル発射でも押し目 限定的。年内の上値目標は115~116円! ブログ

米ドル/円は北朝鮮ミサイル発射でも押し目 限定的。年内の上値目標は115~116円!

■米ドルは下げ一服、切り返しの兆しが見られる 前回の本コラムでは、さらなる米ドルの全面安に懐疑的な見方を示した。

【参考記事】

●さらなる米ドル全面安に懐疑的な2つの理由とは? でも、逆張りの米ドル買いも危険(2017年9月8日、陳満咲杜)

 まだ初歩的な段階にすぎないが、結果的に先週末(2017年9月8日)の安値トライが目先の底であることが示唆され、今週(9月11日~)の週明けから米ドルは下げ一服、また、切り返しの兆しが見られる。

ドルインデックス 4時間足(出所:Bloomberg)

 先週(9月4日~)の続落、また安値更新は、北朝鮮の核実験がもたらした地政学リスクの強まりや、ハリケーンの損害が米利上げ観測の後退につながったことなど、諸要素の重なりによって引き起こされた結果といえる。

 が、2017年年初来、ほぼ一本調子の急落を果たしてきただけに、売られすぎの極みで、いわゆるベア(下落)トレンドのクライマックスを迎えていたことは見逃せない。

 そもそも、先週末(9月8日)の安値で計算すれば、2017年年初来、米ドルの下落幅はすでに11%に達していたことがわかる。

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

 それは、1985年のプラザ合意以来、最も悪いパフォーマンスだ。あのブレトンウッズ体制が崩壊した1973年でさえ、10%の下落に留まったことから考えると、いくら何でも2017年年初来の米ドル安が行きすぎであったことを悟れるのではないだろうか。

 2017年年末まで、あと3カ月半もあるから、米ドル安の進行が今のスピードを保つなら、それこそプラザ合意の1985年を超える下落幅を達成してしまう。

■さらなる米ドル売りの可能性が小さくなったとする理由とは? しかし、米利上げサイクルにあり、また、米国株が上昇し続けている状況において、1985年を超える米ドル安の進行があれば(有事の米ドル売りと言われているが)、まさに「非常事態」というほかあるまい。

 仮に、このような米ドル安継続の市況があれば、今回は「逆プラザ合意」、すなわち米ドル安を阻止する国際協力体制が構築されてもおかしくなかろう。

 当然のように、「相場は理外の理」、また、「相場のことは相場に聞け」と言われるように、市場における値動きの形成にはそれなりの理由があり、ここまで米ドルが売られてきたのにも当然わけがあった。

 しかし、今一度見直せば、さらなる米ドル売りの可能性がだいぶ小さくなったのもおわかりいただけるかと思う。

 まとめてみれば、米ドル売りを仕掛ける投機筋の動機は…
さらなる米ドル全面安に懐疑的な2つの理由 とは? でも、逆張りの米ドル買いも危険 ブログ

さらなる米ドル全面安に懐疑的な2つの理由 とは? でも、逆張りの米ドル買いも危険

■米ドル全面安の理由は「有事の米ドル売り」だけではない ドルインデックスは、また安値を更新した。執筆中の現時点では、91の節目手前に迫っており、割り込みそうな勢いを示している。

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

 相応するように、ユーロ/米ドルはまた高値更新し、米ドル/円は4月安値を一時下回った。

(※編集部注:本記事の寄稿後、編集作業中に米ドル/円は107円台半ばまで下落し、108.10円台の4月安値を完全に下回ったままの状態となっている)

ユーロ/米ドル 日足(出所:Bloomberg)

米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

 8月29日(火)のミサイル発射に続き、9月3日(日)には北朝鮮の核実験が行われ、地政学リスクが増大する一方である。

 「有事の米ドル買い」ではなく、「有事の米ドル売り」が最近市場の反応パターンなので、米ドル全体の一段安は「理にかなう」側面もあったが、昨日(9月7日)から再び強まった米ドル売り圧力は米新規失業保険申請件数によるところが大きかった。

■ハリケーンの影響大きく、フィッシャー副議長辞任も追い打ち 9月2日(土)までの統計では、米新規失業保険申請件数(週間)は先週に比べ、6.2万人増の29.8万人となり、2012年11月以来最高の増加率を記録した。米大型ハリケーンの影響が大きく、失業者を押し上げたと見られる。

 ハリケーンの影響があまりに大きいので、ウォール街は米第3四半期GDPや9月米雇用統計の下方修正に動いている。一部の見方では、ハリケーンの影響がまだ続いているから、9月米新規雇用者数がマイナスになる可能性さえあるという主張もあり、米ドル安を推し進めていると思われる。

 さらに、昨日(9月7日)、フィッシャーFRB(米連邦準備制度理事会)副議長が辞任を発表したことも、要因の1つであろう。

 フィッシャー氏は、辞任は個人的な理由としているが、真相はトランプ政権の金融規制緩和への反発であるという見方もある。来年(2018年)早々任期満了を迎えるイエレンFRB議長の後任人事を含め、金融政策の一貫性にも懸念が持たれるようなことになったため、米ドル売りの反応が強まったといえる。

■ハリケーンがもたらした影響には、マイナスではないものも 一方、ハリケーンがもたらした影響は、すべてがマイナスというわけではなさそうだ。トランプ氏が、民主党案を受け入れる形で債務上限の引き上げを「電撃合意」したことは、明らかに、ハリケーンがもたらした損害を前にして、米共和党、民主党の妥協が促進された結果だ。

 ただし、共和党内部では、安易な妥協に不満を持つ議員もいると言われ、財政改革案の審議について、トランプ氏が「身内」の反発も覚悟しなければならないと予想される。それゆえ、「電撃合意」が米ドルを支える効果は小さかった。

 テクニカルの視点では、ドルインデックスが8月29日(火・北朝鮮ミサイル発射)…