陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

ミセス・ワタナベと海外投機筋の戦略差から クロス円の戻り売りが利益獲得のチャンス! ブログ

ミセス・ワタナベと海外投機筋の戦略差から クロス円の戻り売りが利益獲得のチャンス!

■中朝首脳会談での「確約」は、あくまで「メンツ文化」の象徴 米中貿易戦争勃発かと思いきや、中国政府が譲歩する姿勢を暗示したことで、極端なリスクオフの市場センチメントが後退しているようにみえる。

 当然のように、中国政府もこの手あの手で対米工作を仕掛け、次の交渉に有利なポジションを取ろうと必死だ。

 金正恩北朝鮮労働党委員長の、極秘というか電撃というかの北京訪問は、対米牽制という意味合いにおいて、習近平中国国家主席にとって大きな成果を上げたと言える。

 米朝首脳会談が実現されそうだが、今までの流れでそれが実現されれば、対朝貿易の90%を占め、また、原油など戦略物資をほぼ100%支援してきた中国が事実上「排除」されることになる。そうなれば、中国の「宗主国」としてのメンツは丸つぶれとなり、中国共産党や習氏の権威も大きく傷付くだろう。

 「アメとムチ」を存分にほのめかし、金氏を北京に呼び出したことによって、少なくとも形式上、中国の権威は保たれたから、これが対米交渉でも有利に働くに違いない。

 とはいえ、北京で発表された「北朝鮮が半島非核化確約」といった対談成果を確信する者はいないだろう。こういった「確約」は、金家の祖父の代から繰り返し破られてきたからだ。中国は「宗主国」のメンツにはこだわるものの、中国政府自体も認めたように、対北朝鮮の影響力は極めて限定的であり、確約された内容が実行される保証はない。

 実際、北朝鮮が口約束どころか、正式な国際条約も平気で反故にしてきた「伝統」から考えると、中国政府の発表は、あくまで「メンツ文化」の象徴であり、実効性は極めて疑わしいものだと言える。

■米ドル/円の切り返しが行きすぎたリスクオフの後退を物語る 一方、リーダーになって以来、自国から出なかった金正恩氏の中国訪問自体は、世界で最も閉鎖的な国家の変化の兆しと受け止められ、緊張ムードが緩和されつつあることも確かである。

 米中貿易戦争の可能性も、米朝交渉にからんで低下していく余地があると思われ、リスクオフの一服につながったこと自体も当然の成り行きだと思う。

 このような視点から米ドル/円の下げ一服、また切り返しを見ると、一応それが「説明」できるかと思う。米株安の一服に円高進行のいったんの終焉は、共にそれまでのリスクオフの行きすぎを示唆しており、米中貿易戦争に関する「行きすぎた」懸念の後退を物語る。

米ドル/円 日足(クリックで拡大)(出所:IG証券)

 経済指標では、昨年(2017年)第4四半期GDPの上方修正をはじめ、米サイドのデータはおおむね堅調、市場センチメントを支えていることも見逃せない。

■ユーロ/円、英ポンド/円、豪ドル/円はさらなる下落トレンドへ 半面、ユーロ/円の日足を見ればわかるように、3月13日(火)の一時ブレイク(緑矢印)を除き、先週(3月19日~)から今週(3月26日~)にかけて、ユーロ/円はいったん安値を更新してから切り返しを果たしているものの、総じてメインレジスタンスゾーン(黄色)に拒まれ、頭の重い構造が露呈している。

 これは1月高値を起点とした下落波の進行を示唆している。

ユーロ/円 日足(クリックで拡大)(出所:IG証券)

 英ポンド/円も、2016年安値から引かれたサポートラインを割り込んで以降、同ラインの回復を試してきたが、先週(3月19日~)も今週(3月26日~)も高値が同ラインの延長線の下に制限され、一転してレジスタンスラインとして意識されている。

英ポンド/円 週足(クリックで拡大)(出所:IG証券)

 このような市況は、「教科書どおり」に展開されるなら、やはり1月高値からの下落が続く、という判断につながる。

 豪ドル/円に至っては、3月13日(火)の頭打ち自体が、2017年11月安値の水準が新たなレジスタンスであることを示し、そこから2017年4月安値の割り込みもあって、すでに新たな下落変動レンジに入ったと見なされる。

豪ドル/円 日足(クリックで拡大)(出所:IG証券)

 さらに、繰り返し指摘してきたように、日足における大型「三尊型(※)」のフォーメーションの指示どおりなら、これから78円の節目手前まで下値余地が拡大されるので、リバウンドは弱いものに留まり、また、下落トレンドが継続される公算が大きい、といった従来のシナリオが維持される。

(※編集部注:「三尊型」はチャートのパターンの1つで、天井を示す典型的な形とされている。仏像が3体並んでいるように見えるために「三尊型」と呼ばれていて、人の頭と両肩に見立てて「ヘッド&ショルダー」と呼ぶこともある)

 要するに、米ドル/円はドルインデックスと同様、底打ちの兆しを露呈しているものの、主要クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の多くはむしろ一時の下げ止まりであるとしか思えず、これからさらなる下落トレンドの継続が有力視される。

 仮に、クロス円の動向がより相場全体の構造を…
中国の自業自得で米中全面対決の冷戦へ! リスクオフムードはクロス円で顕著 ブログ

中国の自業自得で米中全面対決の冷戦へ! リスクオフムードはクロス円で顕著

■米中貿易戦争などを理由に、リスクオフムード高まる 米国株の急落や円高でリスクオフのムードが高まっている。投資家心理を悪化させた背景には米中貿易戦争のほか、米保護主義や今後の米利上げペース加速に対する懸念が広がりつつあることは、見逃せない。

 昨日(2018年3月22日)、トランプ米大統領は中国製品に高関税を課す制裁案に署名し、600億ドル相当の大規模関税引き上げ措置を正式に発動した。

トランプ米大統領は、中国製品に高関税を課す制裁案に署名した (C) Chip Somodevilla

 中国がWTO(世界貿易機関)に加盟して以来、ずっと享受してきた最恵国待遇が事実上なくなるわけなので、中国からの猛反発、また厳しい対抗策(一部はすでに発表)の発動も十分想定される。さらに同じく対米貿易黒字を確保している日本も、米国から厳しい視線が向けられるといった思惑が広がり、米通商政策における保護主義がこれから世界景気を押し下げる恐れも十分考えられるだろう。

■中国に対する強硬姿勢自体は、中国の自業自得だが… トランプ政権の対中強硬姿勢自体は非難されるべきではないと思う。

 中国がWTOに加盟した当時に約束された国内開放策の大半はいまだに実現されていない。そして、中国は国有企業をはじめ、国内企業を手厚く保護する一方、欧米日の知的財産権に対して、大規模かつ継続的な侵害を繰り返しながら、対米を中心に自国製品のダンピングを計画的に実施してきた。

 経済成長率では中国は優等生だが、WTOの規則を守れたかどうかの視点ではかなりの「悪ガキ」なので、ついに米国の堪忍袋の緒が切れ、「商人体質」のトランプ政権から罰されるのも自業自得としか言いようがない。

 その上、対朝談判から対台湾関係(台湾旅行法の立案)まで、トランプ政権の対中強硬策は、経済、貿易面に留まらず、「冷戦」を彷彿とさせるような対中全面対決の様相を呈している。

 もう1人の「悪ガキ」のロシアは、今では中国広東省の経済規模(GDP比)より小さい「二流国家」に衰退しているから、少なくとも経済面で米国の脅威になれない。しかし、早ければ2040年前後に米経済規模を抜くとされる中国の脅威は、米国にとって確実かつ、かなり緊迫した問題なので、対中全面対決や衝突はこれから「常態化」しつつ、また軋轢が大きくなることも容易に想定される。

 けれど、すでに経済規模世界2位の座を仕留めた中国との全面対決は、主要国全部を巻き込むリスクが大きい上、今回トランプ政権が発動させた制裁案に対日の免除がないように、いわゆる“同盟国”の利益が損なわれるリスクも多い。

 実際、ドイツや英国、日本などの主要国は対中関係に温度差があり、足並みの乱れも今に始まったことではないから、米自国第一主義が鮮明になりつつある現在は、一段と関係がねじれ、世界経済成長にとって大きなマイナス要素になってこよう。

■「意外」に底堅い米ドル/円が、逆サプライズ さらに、米国務長官解任など人事のゴタゴタが続くトランプ政権は、安全保障の面でも不信感を持たれている。

 トランプ政権の政策や人事が頻繁に変わるなか、どれぐらい一貫性や継続性がみられるかに市場関係者は当然不安を抱え、リスクオフの動きを一斉にとってしまう。

 日本の場合、周知のとおり、「森友問題」による安倍内閣退陣の懸念もあるから、火に油を注ぐような状況だといえる。

 ゆえに、昨日(2018年3月22日)、NYダウが700ドル超下げたことにしても、日経平均の執筆中の現時点での-4%超えの下げ幅にしても、また、アジア全域の株式市場の総崩れにしても、当然というか、仕方がないというか、リスクオフの結果として受け入れるしかない。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

(出所:Bloomberg)

 米ドル/円の安値更新、また104円台半ばへの接近も当然の成り行きでサプライズはないが、どうしてもサプライズと言うのなら、筆者の感覚からすれば下げ幅が「意外」に小さい、ということではないかと思う。

 株式市場の総崩れ、また前述の米中全面対決のリスクから考えれば、今は104円台ではなく、102円台に到達していてもおかしくないから、「意外」に米ドル/円は「底固い」とさえ感じる。

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 もう1つ「意外」だとすれば、ドルインデックス…
森友問題の深刻化でクロス円が下落しても 米ドル/円が底割れするとは限らないワケ ブログ

森友問題の深刻化でクロス円が下落しても 米ドル/円が底割れするとは限らないワケ

■日米ともに政局不安で再び円高傾向に! 日米ともに政局不安がくすぶり、円高傾向が再度強まってきた。

 トランプ米大統領による、ティラーソン米国務長官解任については、ティラーソン氏とトランプ氏が「犬猿の仲」だったことと、トランプ氏の性格からすれば、解任自体は必ずしもサプライズではないが、トランプ政権のゴタゴタに、マーケットは嫌気がさしたのも当然であった。

 対して日本は、「森友問題」の進展がさらに混乱を招き、最悪の場合、安倍政権の退陣もあり得ると言われているだけに、米国より深刻かと思われる。

■安倍政権退陣なら米ドル/円は5円程度下落も! ところで、「森友問題」で安倍政権が退陣するかどうかについて、政治評論家たちの予想はわかれているようだが、市場のコンセンサスはまだ定かではないようだ。

 何しろ、円高傾向が強まってきたとはいえ、米ドル/円は3月2日(金)の安値を更新しておらず、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)もリバウンドの一服を確認した程度で、まだ安値更新を果たしていない。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

 一般論として、安倍政権退陣までのリスクを織り込んでいるなら、米ドル/円はとっくに105円の節目割れを果たし、クロス円の多くも新たな安値を打診しているのではないかと思う。

 その功罪はともかく、安倍政権が続いているからこそ、アベノミクスの後押しで日銀の量的緩和やマイナス金利政策が維持されてきたわけで、もしも、安倍内閣の退陣があれば、それこそ日銀政策の「出口戦略」が近いといった思惑を招くだろう。この場合、日経平均の暴落と共に大幅な円高の進行が考えられるから、日経平均は2000円程度、米ドル/円は5円程度の下落があってもおかしくなかろう。

 政治の世界は、一寸先は闇と言われており、安倍内閣が安泰と言い切れない限り、日経平均暴落や円暴騰のリスクを当然警戒しておきたい。

■主要クロス円の多くが円高トレンドに復帰してきた しかし、マーケットの値動きに照らして考えると、円高の進行があるとすれば、政局不安がもたらす要素よりも、クロス円が牽引する傾向の方がより気になり、また、ここに相場の内部構造が露呈されているのではないかと思う。

 それはほかならぬ、主要クロス円の多くが一時的なリバウンドを終え、円高トレンドに復帰してきたことだ。

 ユーロ/円のリバウンドは、3月13日(火)高値まで続いたが、2月高値を起点とした全下落幅の38.2%反騰位置前後に留まり、再度下落してきた構図は鮮明である。

ユーロ/円 日足(クリックで拡大)(出所:IG証券)

 英ポンド/円も3月13日(火)高値まで一時反発したが、その高値は2016年安値から引かれた元サポートラインの延長線に合致した。そして、そこから再度反落してきたことで、同ラインが今はレジスタンスになっていることを証明した。

英ポンド/円 日足(クリックで拡大)(出所:IG証券)

 豪ドル/円に至っては、3月13日(火)高値までの一時的なスピード調整(リバウンド)が、同じく1月高値を起点とした全下落幅の38.2%反騰位置に留まったほか、2017年5月高値や同11月安値で形成されたゾーンに頭を抑えられ、同水準はレジスタンスゾーンと化していたことを証左。

 さらに、下のチャートに表示しているように、2017年9月高値を「ヘッド」とする「ヘッド&ショルダーズ・トップ」というフォーメーションの形成もあり得るから、ここからさらに下値余地を拡大する公算が高いだろう。

(※編集部注:「ヘッド&ショルダーズ・トップ」とはチャートのパターンの1つで、天井を示す典型的な形とされている。「三尊天井」とも呼ばれる。)

豪ドル/円 日足(クリックで拡大)(出所:IG証券)

 結論から申し上げると、筆者はクロス円の大逆転を主張してきただけに、近々安値更新ありという見方は変わらず、3月13日(火)高値までのスピード調整があったからこそ、主要クロス円における下落トレンドはより健全化されたとみる。

 ゆえに、ここからより長いベア(下落)トレンドの継続を有力視しており、目先はまだまだ途中であろうと思う。

 一方、クロス円のベアトレンドが、米ドル/円の「底割れ」を意味…
ECBの声明は本来ならユーロ高になる内容 だったのに、なぜユーロは下落したのか? ブログ

ECBの声明は本来ならユーロ高になる内容 だったのに、なぜユーロは下落したのか?

■市場の動向を左右する材料が続出! 春の足音が聞こえるなか、市場の動向を左右する材料も続出している。

 米大統領が、安全保障を理由に鉄鋼とアルミニウムの関税を引き上げ、輸入制限を課す法案に署名した。ただ、その一方、しばらくは一部の国に対して免除が適用され、いくぶん柔軟な対応をみせた。

 そして、北朝鮮は挑発を繰り返すかと思いきや、今度は一転して南北首脳会談のみでなく、トランプ米大統領の訪朝も報道され、あわただしい展開だ。

 金正恩氏は若造のわりに、なかなかの戦略家で、狡猾かつ大胆な外交手腕を発揮している。

 安全保障されるならば非核化も可能と言い切り、窮地打開を図っている金氏の本心がどうであれ、目先は少なくとも米朝緊張の緩和が確認されている。

 トランプ氏も、中国にギリギリまで妥協を迫りながら、最後は柔軟な姿勢をみせ、何らかの合意に導く意図が伺えるから、貿易戦争に対する懸念もいくぶん後退しているようにみえる。

 ゆえに、日米株は反発し、米ドル/円もいくぶん切り返しの様子を見せている。

NYダウ日足(出所:Bloomberg)

日経平均 日足(出所:Bloomberg)

米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

 リスクオン・オフの視点ですべてが片づけられるとは思わないが、材料の織り込みや状況の緩和でリスク要素が後退したことは確かなので、米ドル全体の切り返しに寄与するに間違いない。

■市場の内部構造は米ドル高を示唆している? 前回のコラムでも指摘したように、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の大逆転が確認された以上、米ドル安一服の可能性は高い。したがって、諸材料があっても最後は米ドルの切り返しに寄与するのならば、相場の内部構造は示唆されているかと思う。

【参考記事】

●主要クロス円の大逆転が意味するのは米ドル安の終焉!ただし米ドル/円だけは…(2018年3月2日、陳満咲杜)

 言い換えれば、トランプ政権の大型減税や保護主義に基づく政策は、一般的に米ドル売りの材料として解釈され、また、中長期的に米ドル安をもたらすといった向きが多いなか、短期スパンでは市場に織り込み済みであり、また、いくぶん緩和の気配でかえって米ドルの切り返しにつながったなら、市場の内部構造はむしろ米ドル高を示唆しているのではないかとみる。

 現在のウォール街のセンチメント、すなわち米ドル安一辺倒の見方は、これからも相場の試練にさらされるだろう。

 この見方は、昨日(3月8日)のECB(欧州中央銀行)理事会後…
主要クロス円の大逆転が意味するのは 米ドル安の終焉!ただし米ドル/円だけは… ブログ

主要クロス円の大逆転が意味するのは 米ドル安の終焉!ただし米ドル/円だけは…

■主要クロス円は新たな変動レンジへ移行! 円高が進行している。執筆中の現時点で、米ドル/円は再び106円の節目にトライ、主要クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)もそろって下値打診を試している。

世界の通貨VS円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)

 ユーロ/円をはじめ、クロス円の大逆転は本コラム(2月16日、23日コラムをご参照)にて繰り返し指摘したとおりだが、ここに来て2つのポイントを指摘しておきたい。

【参考記事】

●過大評価されるユーロと過小評価される円、是正する道はユーロ/円の大逆転のみ!(2018年2月16日、陳満咲杜)

●米ドル安・ユーロ高基調が終わっても、ドル/円は安値圏での保ち合いにとどまる!?(2018年2月23日、陳満咲杜)

 まずは、ユーロ/円、英ポンド/円や豪ドル/円がそろって新たな変動レンジに入っていること。もちろん、その変動レンジは「外貨安・円高」のレンジである。

■ユーロ/円はメインレジスタンスゾーンを割り込む ユーロ/円は、2017年8月高値や11月安値で形成されたサポートゾーンが最も重要であったが、完全に下放れした以上、トップアウトを認定することはもちろん、ここからの変動レンジも下方修正されるだろう。

ユーロ/円 日足(クリックで拡大)(出所:IG証券)

 今年(2018年)1月安値は133円の節目前後に位置している。上放れできず、昨日(3月1日)の安値打診につながったわけだから、新たなレンジの上限は133円近辺と見なすのが適切であろう。

 レンジの下限は前回のコラムでも強調したように、126円台~128円台にまず据え置くが、場合によっては上限の下方修正も十分あり得るだろう。

【参考記事】

●米ドル安・ユーロ高基調が終わっても、ドル/円は安値圏での保ち合いにとどまる!?(2018年2月23日、陳満咲杜)

 何しろ、元々のメインサポートゾーンが破れたのだから、一転してこれがレジスタンスゾーンと化してもおかしくない。ここから切り返しがあっても131円台後半~132円台前半に留まる可能性が大きい。

■英ポンド/円はサポートゾーンとサポートライン両方割り込む 英ポンド/円はより大幅な下落を達成したので、週足で見ないと全体像をつかめない。

 2016年12月高値、2017年5月、7月高値で形成された元々のレジスタンスゾーンが、2017年10月や11月安値で再確認されたわけだから、ここがメインサポートゾーンとして重要な意味を持つことが示されていた。

 よって、足元ではそのゾーンを大きく割り込んでいる以上、ブル(上昇)トレンドの終焉、また、変動レンジの下方修正は当然であろう。

英ポンド/円 週足(クリックで拡大)(出所:IG証券)

 2016年安値から引かれるメインサポートラインを大きく下回ったことも然り。新たなレンジは、143円台後半(2016年安値を起点とした全上昇幅の38.2%反落位置)~148円の節目前後とするのが適切であろう。

■豪ドル/円の新レンジは79円前半~83円前半か 豪ドル/円も週足で確認しておきたい。

 豪ドル/円は2017年11月安値を大きく割り込んだ以上、2017年9月高値を「ヘッド」とする「ヘッド&ショルダーズ(※)」のフォーメーションを完成させたと言える。そして、この「ヘッド&ショルダーズ」はスパンの短いパターン(黄色の曲線で表示)やスパンの長いパターン(黄緑色の曲線で表示)の両パターンを示唆している。

(※編集部注:「ヘッド&ショルダーズ」はチャートのパターンの1つで、天井を示す典型的な形とされているもの。チャートの形を人の頭と両肩に見立てて、「ヘッド&ショルダーズ」と呼ばれている。仏像が3体並んでいるように見えるため、「三尊型」と呼ばれることもある)

豪ドル/円 週足(クリックで拡大)(出所:IG証券)

 したがって、豪ドル/円はこれからさらに大幅な下値余地を拡大してもおかしくないから、近々の変動レンジを79円前半~83円前半というように、下方修正するべきかとみる。

 主要クロス円における変動レンジを下方修正する必要があれば…
主要クロス円の大逆転が意味するのは 米ドル安の終焉!ただし米ドル/円だけは… ブログ

主要クロス円の大逆転が意味するのは 米ドル安の終焉!ただし米ドル/円だけは…

■主要クロス円は新たな変動レンジへ移行! 円高が進行している。執筆中の現時点で、米ドル/円は再び106円の節目にトライ、主要クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)もそろって下値打診を試している。

世界の通貨VS円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)

 ユーロ/円をはじめ、クロス円の大逆転は本コラム(2月16日、23日コラムをご参照)にて繰り返し指摘したとおりだが、ここに来て2つのポイントを指摘しておきたい。

【参考記事】

●過大評価されるユーロと過小評価される円、是正する道はユーロ/円の大逆転のみ!(2018年2月16日、陳満咲杜)

●米ドル安・ユーロ高基調が終わっても、ドル/円は安値圏での保ち合いにとどまる!?(2018年2月23日、陳満咲杜)

 まずは、ユーロ/円、英ポンド/円や豪ドル/円がそろって新たな変動レンジに入っていること。もちろん、その変動レンジは「外貨安・円高」のレンジである。

■ユーロ/円はメインレジスタンスゾーンを割り込む ユーロ/円は、2017年8月高値や11月安値で形成されたサポートゾーンが最も重要であったが、完全に下放れした以上、トップアウトを認定することはもちろん、ここからの変動レンジも下方修正されるだろう。

ユーロ/円 日足(クリックで拡大)(出所:IG証券)

 今年(2018年)1月安値は133円の節目前後に位置している。上放れできず、昨日(3月1日)の安値打診につながったわけだから、新たなレンジの上限は133円近辺と見なすのが適切であろう。

 レンジの下限は前回のコラムでも強調したように、126円台~128円台にまず据え置くが、場合によっては上限の下方修正も十分あり得るだろう。

【参考記事】

●米ドル安・ユーロ高基調が終わっても、ドル/円は安値圏での保ち合いにとどまる!?(2018年2月23日、陳満咲杜)

 何しろ、元々のメインサポートゾーンが破れたのだから、一転してこれがレジスタンスゾーンと化してもおかしくない。ここから切り返しがあっても131円台後半~132円台前半に留まる可能性が大きい。

■英ポンド/円はサポートゾーンとサポートライン両方割り込む 英ポンド/円はより大幅な下落を達成したので、週足で見ないと全体像をつかめない。

 2016年12月高値、2017年5月、7月高値で形成された元々のレジスタンスゾーンが、2017年10月や11月安値で再確認されたわけだから、ここがメインサポートゾーンとして重要な意味を持つことが示されていた。

 よって、足元ではそのゾーンを大きく割り込んでいる以上、ブル(上昇)トレンドの終焉、また、変動レンジの下方修正は当然であろう。

英ポンド/円 週足(クリックで拡大)(出所:IG証券)

 2016年安値から引かれるメインサポートラインを大きく下回ったことも然り。新たなレンジは、143円台後半(2016年安値を起点とした全上昇幅の38.2%反落位置)~148円の節目前後とするのが適切であろう。

■豪ドル/円の新レンジは79円前半~83円前半か 豪ドル/円も週足で確認しておきたい。

 豪ドル/円は2017年11月安値を大きく割り込んだ以上、2017年9月高値を「ヘッド」とする「ヘッド&ショルダーズ(※)」のフォーメーションを完成させたと言える。そして、この「ヘッド&ショルダーズ」はスパンの短いパターン(黄色の曲線で表示)やスパンの長いパターン(黄緑色の曲線で表示)の両パターンを示唆している。

(※編集部注:「ヘッド&ショルダーズ」はチャートのパターンの1つで、天井を示す典型的な形とされているもの。チャートの形を人の頭と両肩に見立てて、「ヘッド&ショルダーズ」と呼ばれている。仏像が3体並んでいるように見えるため、「三尊型」と呼ばれることもある)

豪ドル/円 週足(クリックで拡大)(出所:IG証券)

 したがって、豪ドル/円はこれからさらに大幅な下値余地を拡大してもおかしくないから、近々の変動レンジを79円前半~83円前半というように、下方修正するべきかとみる。

 主要クロス円における変動レンジを下方修正する必要があれば…
米ドル安・ユーロ高基調が終わっても、 ドル/円は安値圏での保ち合いにとどまる!? ブログ

米ドル安・ユーロ高基調が終わっても、 ドル/円は安値圏での保ち合いにとどまる!?

■ドルインデックスは底打ち、ユーロ高は終焉か? 猫も杓子も米ドル安一辺倒、特にユーロに対する強気は過剰なので、そろそろ潮の流れが変わってもおかしくなかろう、といった話が、前回の本コラムの趣旨であった。実際に、その兆しがすでに露呈しつつあると思う。

【参考記事】

●過大評価されるユーロと過小評価される円、是正する道はユーロ/円の大逆転のみ!(2018年2月16日、陳満咲杜)

 2月15日(木)、ドルインデックスは1月安値を更新した上、その下で大引けした。米ドルの全面安が加速されるだろうと思われたが、翌日(16日)一転して強く反騰し、日足では安値更新(ブレイクアウト)自体が「フォールス」、すなわち「ダマシ」の可能性が示唆された。

ドルインデックス 日足(クリックで拡大)(出所:IG証券)

 切り返しが継続できれば、2月8日(木)高値を上回れる見通しだ。この場合、底打ちのパターンが完成、といった判断につながる。

 当然のように、米ドルの対極としてユーロには反対のサインが点灯している。ユーロ/米ドルは2月16日(金)にて1月高値を更新したものの、当日一転して陰線で大引けし、その後の反落もあって、高値更新(ブレイクアウト)自体が「フォールス・ブレイクアウト」の可能性を示唆している。

ユーロ/米ドル 日足(クリックで拡大)(出所:IG証券)

 この疑いは、2月9日(金)安値の割り込みがあれば認定されるから、ユーロ高終焉の現実味が増しているとみる。

■いったんユーロ安基調に転換すると、加速する可能性も 週足では、RSIなどのオシレーター系指標が弱気ダイバージェンスのサインを構築、2月安値の更新があれば、一段と効いてくるだろう。

ユーロ/米ドル 週足(クリックで拡大)(出所:IG証券)

 前回のコラムでも指摘したように、IMM市場におけるユーロのネットロングポジションが記録上最大の水準に膨らんでいたので、反落があれば、投げ売りが発生すると推測され、また投げ売りが次の投げ売りを呼ぶといった逆循環が始まってもおかしくない。

【参考記事】

●過大評価されるユーロと過小評価される円、是正する道はユーロ/円の大逆転のみ!(2018年2月16日、陳満咲杜)

 よって、どこかの時点でユーロ高基調が一転してユーロ安基調に転換し、また昨年(2017年)年初からほぼ一貫して継続していたユーロ高のトレンドが長かっただけに、いったんユーロ安の基調に転換すれば、今度は連続して反落してくる市況を想定しておきたい。

 一方、米ドル/円に関してはいろいろ見方がある…
過大評価されるユーロと過小評価される円、 是正する道はユーロ/円の大逆転のみ! ブログ

過大評価されるユーロと過小評価される円、 是正する道はユーロ/円の大逆転のみ!

■米ドル安継続、長期金利との相関性は完全に崩壊 米ドル安が続いている。米ドル/円は昨年(2017年)安値を割り込み、ユーロ/米ドルは1月高値に接近(※1)している。ドルインデックスでみると、1月安値をいつ割り込んでもおかしくない状況(※2)だ。

(※編集部注1:本記事寄稿後の編集中に、ユーロ/米ドルは1月高値を超えた)

(※編集部注2:本記事寄稿後の編集中に、ドルインデックスは1月安値を割り込んだ)

米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

ユーロ/米ドル 日足(出所:Bloomberg)

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

 その一方で、米長期金利(米10年物国債利回り)は2.9%水準前後の高値圏で推移し、米ドルとの相関性が完全に崩れている模様だ。

米長期金利(米10年物国債利回り) 日足(出所:Bloomberg)

 米長期金利の上昇が米国株の急落をもたらした、という解釈が一般的に受け入れられている。理屈として間違いではないが、昨日(2月15日)は米国株の続伸もあり、目先、米国株の回復ぶりも鮮明になっている中、米ドルの「一人負け」っぷりはひときわ目立つ。米ドル安はこれからも続くのだろうか。

■ユーロ高進行なくして米ドル安の進行なしだが、果たして? 米ドルの高安と言えば、米ドル/円をまず頭に浮かべる方が多いと思うが、為替市場ではまずユーロ/米ドルを見なければいけない。ユーロは米ドルの対極なので、ユーロ高の進行なくして米ドル安の進行なしと言っても過言ではなかろう。ユーロ/米ドルのチャートを今一度検証する必要がある。

 ユーロ/米ドルの月足で見る限り、これからユーロ高、すなわち米ドル安の進行があれば、メインレジスタンスゾーンを明白に突破しなければいけない、という構図が浮かび上がる。

ユーロ/米ドル 月足(クリックで拡大)(出所:FXブロードネット)

 黄色のレジスタンスラインは、2008年高値から2011年、2014年高値を連結したラインで、緑のサポートラインは2010年安値から2012年安値を連結したラインである。

 この2つの線が重なっているところで、目先ユーロの頭が押さえられる可能性を軽視すべきではなかろう。

 何しろ、マーケットのコンセンサスは、足元ほぼ米ドル売り一辺倒になっている。IMM(シカゴマーカンタイル取引所・通貨先物市場)におけるポジションの推移でみる限り、投機筋のユーロ買いは依然過去最大レベルを保っており、大した変化が見られない。

シカゴIMM通貨先物ポジションの推移(ユーロ/米ドル)(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)

 さらに、最近報じられた、あるニュースも気になる。ブルームバーグ…
暴落相場でできることとは? ユーロ/円、 英ポンド/円のターゲットは一旦キャンセル ブログ

暴落相場でできることとは? ユーロ/円、 英ポンド/円のターゲットは一旦キャンセル

■米ドル全面安一服と、主要クロス円変調の兆しに注目! 相場環境は急変している。米国株の大幅下落が引き金であったが、為替相場における注目ポイントは以下の2つであると思う。

 1つは、米ドル全面安が一服していること。もう1つは、ユーロ/円をはじめ、主要クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)に変調の兆しが出ていることだ。

 米国株安が必ずしも米ドル安を伴うとは限らないが、今回の米国株の急落(NYダウの2月5日(月)の下落は史上最大記録、2月8日(木)も1000ドル超の下落幅だった)がきつく、米ドルがさらに売られてもおかしくないのに、ドルインデックスは底堅く推移している。この兆しを見逃すべきではないと思う。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

 相場は複雑でありながらシンプルなので、「過激な株安でも、米ドル安が連動していなければ米ドル自体が選好される」、もしくは「ここまでの米ドル安が行きすぎであった」というほか、答えはない。今回の局面は、明らかに後者の方ではないかと思う。

 要するに、昨年(2017年)年初を起点とした米ドル安は、すでにクライマックスの段階に入り、すでに底打ちしたか、そろそろ底打ちを図る局面に来ているという結論が得られる。

 こうなると、当然のように、米ドルの対極として買われてきたユーロは、すでに頭打ちになったか、そろそろ頭打ちになる公算が大きいとみるべきだ。

■相場異変、米ドルの買い戻ししか道がない理由とは? 問題を、相場の内部構造で考えると、やはり、米通貨先物市場における投機筋の動向が気になる。

 主要8つの通貨に対して、1月30日(火)まで米ドル売りの持ち高が連続5週拡大し、ユーロの買い越しは記録開始以来の高い水準を示していた。

IMM(国際通貨先物市場)のポジション状況(ユーロ/米ドル) 1月30日時点 よって、米ドル売りが飽和状態というか、典型的なオーバーシュートの状態だったので、相場に異変があって、ポジションの整理や削減に動くなら、米ドルの買い戻ししか道がない。

 この視点で問題を捉えると、これからの市況を予想しやすいかと思う。別に、米国株の動向がこれからどうなるかを予想できなくても、為替マーケットにおけるトレンドは、大まかに測れる。

 つまり、ポジションの整理と削減が続く可能性が大きいから、ユーロ安・米ドル高が続く公算も高い、ということだ。

■異変も暴落も相場の一部、冷静に付き合うしかない 米国株の暴落は、日本株を含め、世界株の急落をもたらし、これからも大きな影響力を発揮するのは間違いない。米国株急落の原因や背景についてはいろいろと分析がなされ、今は溢れるほどあるから、ここでは検証しないが、米金利の急上昇が株の圧迫要素として効いていることは間違いなかろう。

 相場というものは、不確実性を伴う生き物だ。不確実性があるからこそ相場が生き、なくなれば相場自体が死んでしまう。異変にしても、暴落にしても、相場の一部なので、冷静に付き合っていくしかない。これから相場がどうなるかについて、断定的な結論が出せる個人や集団が存在しないのも、相場の不確実性の一部として考えれば納得できる。

 言いたいのは1つだけ。相場の見通しについて誰も100%の確信を持てないなら、できることはただ1つ、ポジションの圧縮だ。これは個人投資家の弱者にしても、ウォール街の強者にしても共通した行動パターンなので、大した違いはないはずだ。相場の変動率が高まれば高まるほど、こういった動きが鮮明になり、また想定されやすい。

 ゆえに、ポジションの圧縮や削減が進み、売り越されている米ドルは買われ、ユーロをはじめとして、買い越されている外貨は売られるはずだ。米ドル以外の通貨で例外なのは円。円も大幅な売り越しなので、円は買われる可能性がある。

■米ドル/円は107.33円割れの有無がポイントに ただし、米ドル/円は下のチャート上で示したように、大型トライアングルにあり、このトライアングルのブレイク待ちの状況なので、円売りポジションの整理は、昨年(2017年)安値107.33円割れの有無が1つの検証ポイントになってこよう。

米ドル/円 週足(出所:Bloomberg)

 2017年安値を割り込めなければ、なお、このトライアングル内に値動きが制限される可能性もある。

 もっとも、米ドル/円は昨年(2017年)11月に上値トライに…
ドル/円相場はなぜユーロ/円次第なのか? 日銀がECBの出口政策に追随しないワケ ブログ

ドル/円相場はなぜユーロ/円次第なのか? 日銀がECBの出口政策に追随しないワケ

■ウォール街からはユーロ/米ドル上昇継続の予想が 米ドル安が続いている。ドルインデックスで確認してみると、足元は先週(1月22日~)の安値近辺で推移し、反騰の気配を見せていない。

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

 トレンドが進行すればするほどトレンドに沿った予想の方が増え、また、重視されるから、いつものように、ウォール街でも米ドル安継続の予想が大手から出そろっている。ゴールドマン・サックスとUBSは共にユーロ/米ドルの2018年の年間ターゲットを1.3ドルへ上方修正し、米ドル安が加速すると読んでいる模様だ。

■円高については見解が割れている理由とは? 一方、米ドル/円に関する見方は分かれる。「米ドル安だから円高」、「米ドル安だけれど、円安も伴う」とそれぞれだが、「米ドル安だから円高」派でも円高のモメンタムについて、ユーロ高ほど確信は持っていないようだ。

 何しろ、日銀の「出口政策」が憶測されているが、いつ実行されるかはまったくわからない。黒田総裁も「出口政策尚早」と繰り返して、市場を牽制している。仮に黒田さんの続投がなく、新総裁が「出口政策」を模索しても2018年年内にできるかどうかは疑問だ。よって、日銀の出遅れが確実視される中、円高の余地がどれだけあるか、今のところ推測しにくいのだ。

 もっとも、日銀政策に関する憶測の多くは、「ECB(欧州中央銀行)の資産購入の終了が近づいているから、日銀も追随するだろう」といったロジックに依存している側面が大きい。しかし、ドイツ中銀の伝統を汲むECBはインフレ退治を使命としており、それをもってデフレ脱却を第一目標とする日銀のスタンスを推測するのは、無理なところがある。

■ムニューシン騒動は押し目の好機だった!? さらに、円高かどうかは米ドル/円のみでなく、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の状況も総合的に見ないとわからない。

 実際、昨日(2月1日)はユーロ/円も英ポンド/円も高値更新したので、筆者が主張する「米ドル安だが、円高と言い切れない」状況は続いていることが示されている。

 こういったロジックを重視すれば、主要クロス円における調整があれば、押し目買いの好機と見なし、また、実行すべきだったであろう。

 先週(1月24日)、米財務長官による「米ドル安容認」の発言がもたらした一時の円高は、まさにそのとおり、押し目の好機を提供してくれた。テクニカル上のポイントも見極めやすかったので、トレードに利用しなければもったいなかったと思う。詳細は1月31日(水)のレポートをもって見てみよう。本文は以下のとおりである。

ユーロ/円 日足(1月31日作成、クリックで拡大)(出所:FXブロードネット)

英ポンド/円 日足(1月31日作成、クリックで拡大)(出所:FXブロードネット)

昨日ユーロ/円もポンド/円も「スパイクロー」、即ち「たぐり」線をもって反落の一服を示唆していた。重要なのはGMMAにおける50や60日EMA線を一旦打診してから高く大引け、典型的な「鰯喰い」のサインを点灯したこと、同サインの確認でブルトレンドの継続、また押し目がすでに完成された可能性を示唆している。

もっとも、昨年11月から両通貨ペアは度々「鰯喰い」のサインを形成してからブルトレドを維持してきた。上のチャートに表示されたように、「鰯喰い」のサインに伴うプライスアクションのサインも然りだったので、今回も蓋然性が高いとみる。

要するに繰り返してきたパターンなので、順張りで再度高値更新が期待されるでしょう。また、再度押し目があれば、昨日のサインを完全に否定できない限り、引き続き押し目の好機と見なせるでしょう。ユーロ/円の135前後、ポンド/円の153後半はサポートゾーンとなれば、上昇モメンタムの一段加速が想定される。

 「鰯喰い」はGMMAチャートにおけるシグナルの1つで、筆者が命名したものだが、要するに、トレンド途中でスピード調整があったものの、トレンドを修正できず、また元のトレンドへの復帰を示唆するサインである。

 上のチャートが示したように、昨年(2017年)11月末からたびたび同サインが形成され、また、ブル(上昇)基調の継続を示してきた。そして、押し目も結局繰り返されてきたパターンなので、「1月30日(火)までの調整は押し目買いの好機」と見なしたのも、自然な成り行きであった。

 そして、こういった「自然な成り行き」が成立する…