陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

米国株の強気相場史上最長がリスクオンを 裏付け! 「8月の円高」はもう終わったか ブログ

米国株の強気相場史上最長がリスクオンを 裏付け! 「8月の円高」はもう終わったか

■米国株は史上最長の強気相場を記録! 海外出張で本コラムを1回お休みさせていただいた間、またいろいろな材料が出てきた。いつものように、いろいろな見方があるが、もっとも重要なのは、以下の2つではないかと思う。

 1つは、米国株ブルラリーの史上最長記録更新。もう1つは、トランプ米大統領による米利上げ牽制だ。

 米国株の総合指数とされるS&P500は、8月22日(水)までの過去3453日連続という新記録をもって、史上最長の強気相場を記録した。2009年3月9日(月)安値から320%の上昇率を達成し、この間、弱気相場の定義とされる20%以上の調整はなかったから、ブルラリーとして歴史に刻まれるに違いない。

S&P500 月足(出所:Bloomberg)

 しかし、注意していただきたいのは、この記録は目先も毎日更新されており、20%以上の下落がなければ強気相場が継続し、また、いつ終焉するかは誰も判定できないということだ。

 「米株『史上最長』の強気相場を疑う」といったウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)などの有力紙の記事タイトルからしても、市場関係者の多くは新記録に「浮かれている」わけではなさそうだ。だからこそマーケットセンチメントはなお、正常範囲にあると考えられる。

 高揚感を伴わないバブルは存在しないから、逆に冷静な市場心理が広がっているうちは、バブルの心配があっても、行きすぎた懸念は不要だと思う。

■米国株の動向はリスクオン・オフを左右する最大決定要因 筆者が米国株の動向をもっとも大事な要素として挙げてきた理由は、他ならぬ、リスクオン・オフを左右する最大決定要因と考えているからだ。

 たびたび指摘してきたように、米利上げサイクルにおいて、米国株は容易には崩れないから、逆説的に言えば、米国株が堅調なうちは、米経済成長は健全で、利上げの余地がまだ大きいことが示唆される。

 だからこそ、米国株が堅調でさえあれば、本格的なリスクオフ云々はあり得ないと言い切れたわけだ。

 このロジックを理解できれば、中国株や中国人民元の暴落(※)にしても、トルコをはじめ、新興国通貨の暴落にしても、また米中貿易戦争の泥沼化にしても、さまざまな悪材料が出てきても為替市場に本格的なリスクオフがもたらされなかったことに、納得できるかもしれない。

(※執筆者注:中国人民元安は一時、2015年のチャイナショック時を超えた値幅だった)

■トランプ氏が常識外れのことを言っても影響は限定的 次に、トランプ氏が「FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げを牽制した発言」についてだが、発言自体は品がなく、また常識外れであり、「違法」とまで言われてもおかしくないレベルのものだった上、トルコ大統領のエルドアン氏の言うことと大して変わらず、この意味では「衝撃」だった。

 しかし、これで米ドル安が決定されると思うのも、短絡すぎて幼稚である。トルコリラが暴落したように、米ドル全体が暴落する気配はまったくなく、これからトランプ氏が何を言おうと、基本的にマーケットにもたらす影響は一時的で、また限定的であると思う。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

 なぜなら、米国は成熟した民主主義国家であり、いくら変わり者が大統領になったとはいえ、大統領個人の思想で国の根幹やしくみが変わるはずもないことを、市場はよく知っているからだ。

 FRBの、中央銀行としての独立性が憲法によって保障されている以上、トランプ氏の発言がいくら過激だったとしても、市場関係者は深刻に受け取らないはずだ。

 一方、トルコや中国のような新興国、特に全体主義色の…
円高進行は日銀のせいとの説に疑問符。 円高の原因は円ではなく、外貨にあり! ブログ

円高進行は日銀のせいとの説に疑問符。 円高の原因は円ではなく、外貨にあり!

 先週(8月6日~)の日銀金融政策決定会合以降、日銀政策に関する解釈や見方はなお分かれたままだが、そんな中で「やはり円高傾向になってきた」といった論調が流行っている。「やはり」ということは、「今回の日銀政策により円が買われる」という主張があったからこそだが、本当はどうだろうか?

■米ドル/円での円高は限定的。クロス円で円高が加速 7月31日(火)の日銀金融政策発表当日の安値は110.75円前後、その前の安値は7月26日(木)の110.59円だったので、昨日(8月9日)安値の110.70円はその2つの安値の中間にあった。

 となると、少なくとも現執筆時点(8月10日(金)14時30分)では、7月26日(木)の安値を割り込んでいないから、米ドル/円で測る円高傾向、あっても極めて限定的だといえる。

米ドル/円 4時間足(出所:Bloomberg)

 一方、主要クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の市況は違った風景を見せている。英ポンド/円の5月安値更新をはじめ、ユーロ/円の7月安値更新や128円の大台割れでわかるように、円高進行が加速している。

世界の通貨 vs 円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨 vs 円 日足)

 となると、結論として当然であり、また、わかりやすいと思うが、目先言われている円高の傾向はクロス円主導であり、また、円高よりも外貨安のほうが主な原因であると言える。換言すれば、外貨安につられた受動的な円高傾向を「やはり云々」と解釈されても、納得できないところが大きい。

■チャートは米ドル高のスピードが加速すると語っている もっとも、クロス円が下落してきた原動力が外貨安にあったなら、米ドル高はもっとも重要な背景となる。

 筆者が繰り返し指摘してきたように、ドルインデックスは6月14日以降、大型アセンディング・トライアングル(上昇三角形型)を形成、昨日(7月9日)、同フォーメーションの上限にトライし、一時、高値を更新した以上、ここからは米ドルの一段高はもちろん、米ドル高のスピードアップも想定される。

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

 なにしろ、6月14日(木)から形成されてきたアセンディング・トライアングル、時間をかけて形成され、また、煮詰まってきた以上、いったんブレイクすると、その分、モメンタムが加速される公算が大きい。したがって、ここから米ドル高のスピードは加速するだろう。

■1.15ドルを割れたユーロ/米ドルは1.13ドル前後をめざすか 米ドルの対極として位置づけられるユーロは、ユーロ/米ドルで1.15ドル割れを果たした。ここから1.13ドル前後の下値打診に道筋をつけるだろう。

 ユーロ/米ドルはほぼドルインデックスと反対の値動きになるから、わかりやすいかと思う。ドルインデックスの6月14日(木)の大陽線が決定的な役割を果たしたのと同じく、ユーロ/米ドルも6月14日(木)の大陰線をもって下落トレンドを決定、また、これがその後の保ち合いにつながっていた。

 違うところがあれば、ドルインデックスのアセンディング・トライアングル形成と異なり、ユーロ・米ドルはほぼシンメトリカル・トライアングル(対称三角形型)を形成してきたということだ。7月19日(木)安値を割り込んだことで同トライアングルの下放れが示唆されていたから、一昨日(8月8日)までの小幅な戻しは戻り売りのチャンスを提供してくれたと言える。

 以上の理屈は8月8日(水)に配信したレポートをもって説明したい。本文は以下のとおり。

ユーロ/米ドル 日足(8月8日作成、クリックで拡大)(出所:FXブロードネット)

ユーロ/米ドルは昨日の反騰に続き、本日一旦1.1628まで戻ったものの、目先また軟調な値動きを見せている。GMMAチャートにおける短期スパンの抵抗ゾーンを確認、また6月安値から引かれた元サポートラインの抵抗役割を確認という意味合いでは、本日このまま弱く大引けすれば、戻りの限界を果たした公算が高い。

もっとも、繰り返し指摘してきたように、6月14日高値から大型トライアングルを形成しきたから、前記元サポートラインはトライアングルの下限でもある。同トライアングルの下放れ、7月19日(スパイクロー)の安値割れをもって確認された以上、ベアトレンドへの復帰が確認され、一昨日安値からの切り返しをあくまで途中のスピード調整と見なす。

トライアングルに限らず、フォーメーションの破れが生じた後、往々にして元サポートライン、あるいは抵抗ラインのところへ一回押してくるケースが多く、今回も然りだとみる。重要なのは、ラインの役割のチェンジの有無にあるが、本日高値の意味合いに鑑み、元サポートが一転して抵抗となる公算。

今回の下落の起点を7月31日高値と見なすが、同日罫線自体が「フォールス・ブレイクアウト」のサインを点灯していたから、本日にて再度頭打ちとなるなら、下落トレンドの延長をもたらすでしょう。戻り売りの限界を果たせば、そろそろ安値更新をもたらす。

 ユーロ安は構造的なもので…
米ドル高予想変わらず!「偉大なアメリカ」の 利上げに対し日銀政策は「コップの中の嵐」 ブログ

米ドル高予想変わらず!「偉大なアメリカ」の 利上げに対し日銀政策は「コップの中の嵐」

■日銀会合後、円は買われなかった 日銀会合後、円は買われなかった。

米ドル/円 4時間足(出所:IG証券)

 これは、前回のコラムで提示したシナリオ(結果としては無風通過、また円買い派を失望させる内容になる)のとおりだったが、具体的な政策に関していろんな解釈が行われ、これからの見通しもいつものように見方がわかれるところだ。

【参考記事】

●金融政策変更報道は市場反応を探る日銀のリークか!? 材料出尽くしで来週は円売り!(2018年7月27日、陳満咲杜)

 しかし、だからこそ、市場センチメントは正常な状況にあると思われ、足元のマーケットもバランスが取れているといえる。

■円安派と円高派で日銀政策の重視するポイントが異なる 日銀政策に関する具体的な解釈は、エコノミストの方々にお任せしたいので、ここでは深入りしないが、日銀が長期金利の上昇を容認しつつ、緩和を続けるという「骨太の方針」を把握しておきたい。

 ここから円高の余地を予測する方の多くは、“長期金利上昇の容認”といったポイントに着目し、逆に円安予想派の多くは、“大規模緩和継続”というところをより重視しているだろう。

 ロジックとしてどちらも間違っていないが、相場のことは相場に聞かなければ仕方がないので、やはり相場の値動きのチェックや内部構造の解明を優先させなければならない。

■主要クロス円の軟調で円安モメンタムが抑制されている まず、前述のように日銀会合後、円は買われていなかったが、大幅な円安も観察されていない。日銀政策に関する解釈が分かれたため、相場がそれを織り込むまでに時間がかかることも一因だが、主要クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)における外貨安の進行も、大きな要因であった。

 換言すれば、米ドル/円は前回のコラムにて指摘したように、110円台のトライをもってスピード調整を十分果たしていたが、主要クロス円の軟調が観察され、全体として円安のモメンタムが抑制されているのも鮮明である。

【参考記事】

●金融政策変更報道は市場反応を探る日銀のリークか!? 材料出尽くしで来週は円売り!(2018年7月27日、陳満咲杜)

世界の通貨VS円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨vs円 4時間足)

 ここで注意していただきたいのは、ユーロ/円など主要クロス円の軟調の主因は、円高ではなく外貨安だ。換言すれば、ユーロなど外貨の対米ドルでの下落がまた鮮明になってきたから、クロス円も外貨安につられた形で円高に振れたわけだ。このポイントを見逃すと、相場の全体像を見誤るリスクが大きい。

 つまるところ、米ドル高のモメンタムがまた強まってきたからこそ、円安のモメンタムが抑制されるわけだ。

 米ドル/円のみではなく、米ドル全体、円全体の視点をもって相場をみれば、今の話をよくおわかりいただけるかと思う。

 同じ視点で言えば、米ドルの高安も…
金融政策変更報道は市場反応を探る日銀 のリークか!? 材料出尽くしで来週は円売り! ブログ

金融政策変更報道は市場反応を探る日銀 のリークか!? 材料出尽くしで来週は円売り!

■日米欧&TPP大連合で中国が蚊帳の外に? 米中の軋轢が深まる中、EU(欧州連合)と米国の間で「関税ゼロ」の合意が得られる可能性が伝わっている。

 すでにEUと大半の関税撤廃を決め、来月(8月)、米国との交渉次第で同様の合意が得られる可能性が大きい日本も加えれば、日米欧とTPP(環太平洋パートナーシップ協定 )といった大連合が組織され、中国が蚊帳の外に置かれる情勢がますます現実味を増す。

 こういった出来事は、新しい冷戦につながり、また、世界情勢を根本からチェンジしていくだろう。

 驚くなかれ、中国の味方とされるキッシンジャー元米国務長官は、一転してトランプ米大統領に「連露反中」(ロシアと連携して中国を牽制)と進言した。キッシンジャー氏はニクソン元米大統領の中国国交回復を主導してきたブレーンであるだけに、その「裏切り」は中国にとってかなり衝撃的だ。そしてまた、中国がいかに「包囲」され、「標的」になっているかを物語っている。

 政治力学上の視点では、新たな冷戦になれば、米ドル安ではなく米ドル高が必要とされるが、トランプ氏の主張と逆のように聞こえる。

 しかし、考えてみればわかるように、本来、相場自体が「公正」なレートを形成するメカニズムを有しているから、関税の大半がなくなれば、トランプ政権の好悪と関係なく、為替レートがより各国のファンメンタルズを反映しやすくなっていくだろう。

■利上げ周期の継続と経済成長の強さが米ドル高の主な支え 米ドル高を支える要素は多いが、一番重要なものとして米利上げサイクルの継続と米経済成長の強さが挙げられるだろう。

 「経済成長が強いから、それが利上げの土台となり、また、利上げの途中という認識を強めることが株式など金融市場の堅調さをもたらし、そして、金融市場の堅調さもまた経済成長を刺激する」といった好循環が、今のアメリカにおいて確認されている。

 ナスダックの史上最高値更新はそれを証左する材料であり、今晩(7月27日)発表されるGDPの数字も裏付けとなってこよう。

ナスダック 日足(出所:Bloomberg)

 ゆえに、繰り返し指摘してきたように、米国株が堅調な間は、米中貿易戦争の激化があっても本格的なリスクオフの値動きにはつながらず、何らかの材料が出てきて一時的な米ドル安・株安があれば、むしろ押し目買いの好機と捉えるべきだ。

 米国株が先行して再度ブル(上昇)基調を強めている以上、日本株と米ドル/円が追随してくるのも時間の問題だと思う。

NYダウVS米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

NYダウVS日経平均 日足(出所:Bloomberg)

 トランプ氏が中国人民元安にいら立ち、先週…
トランプショックでもパニックでもない! 米ドル/円は115円台への上昇も狙える! ブログ

トランプショックでもパニックでもない! 米ドル/円は115円台への上昇も狙える!

■トランプ大統領の米ドル高けん制発言が出たが影響は限定的 米ドル高トレンドが継続される中、トランプ氏の米ドル高けん制発言が出た。当然のように、米ドル高の一服につながり、米ドル/円も反落してきたが、現執筆時点までの値動きを見る限り、その影響は限定的である。

 一方、トランプ米大統領はFRB(米連邦準備制度理事会)の利上げ政策もけん制しており、中国人民元安へ強い不満を表明していたから、問題は単純ではなく、これから市場の反応を見極めるのが大事であろう。

 換言すれば、市場参加者たちの多くはトランプ氏の発言を消化するのに時間がかかり、目先、性急な判断を下さないほうがよいと考える人が多いことも推測される。

■「フォールス・ブレイクアウト」のサインが点灯した可能性 ドルインデックスの日足を見ると、昨日(7月19日)はいったん高値更新を果たしてから反落。辛うじて陽線引けを保ったものの、「上ヒゲ」の長いローソク足となった。

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

 この高値更新は6月21日(木)、28日(木)の高値(これらはダブルトップの高値でもあった)に対する更新であっただけに、昨日(7月19日)の上方突破が失敗に終わったということは、結果として、「フォールス・ブレイクアウト」のサインが点灯した可能性がある。

 「フォールス」とは「ダマシ」ということを意味するから、ブレイクアウト自体がダマシであれば、トランプ氏の発言をきっかけにして米ドル高のトレンドがいったん終焉し、反落してくるリスクが高まるだろう。

■ショックやパニックではなく、むしろ、米ドルの底堅さを暗示 このようなリスクは排除できないものの、筆者はそういった見方に現時点では懐疑的だ。言い換えれば、トランプ氏の発言はあくまでスピードを押さえただけで、米ドル高基調は修正されないと筆者は思う。

 トランプ氏が米大統領として米ドル高をけん制すること自体は問題ないが、FRB政策に対する「文句」を公の場で言ったのは明らかにルール違反だ。少なくとも中銀の独立性が重視される先進国では異例で、米国大統領としては著しく品位に欠ける発言だった。中国人民元の大幅安に苛立ちすぎたせいもあったと思うが、失言であったに違いない。

 それでもマーケットが動揺したかと聞かれると、筆者はノーだと思う。

 一般論として、世界No.1の米国大統領が新興国のリーダー(たとえばトルコ大統領)のように中央銀行の政策に公然と文句を言い始めたら一大事だ。それなら株、通貨、債券市場のトリプル安をもたらしてもおかしくなかったが、今回はそのような急落がみられなかった。

 また、米ドル全体は反落してきたものの、なお高値圏の変動に留まり、米ドル/円に至っては112円台を維持しているから、ショックとかパニックとかの状況にほど遠いばかりか、むしろ、米ドルの底堅さが暗示されているかと思う。

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

■トランプ氏の発言を今、市場関係者は鵜呑みにしていない それに関しては、米大統領云々よりトランプ氏だからこそ、マーケットがその発言を「深刻」に受け取れず、また、消化するのに時間がかかることが主な原因ではないかと思う。

 言ってみれば、トランプ氏は米大統領に選出されて以来、ほぼ一貫してサプライズ的な発言を繰り返してきたから、今さら氏の言葉に一々反応したり、また、一々サプライズとして受け取る市場関係者がいないのだろう。

 トランプ氏の発言はその場しのぎ、かつ感情的な要素が多かっただけに、市場もすぐ鵜呑みにするのではなく、時間をかけて検証していく習性ができていると思う。要するに、トランプ氏だからこそ「許される」し、また、トランプ氏だからこそサプライズを感じないのである。

 この意味において、マーケットにおける極めて限定的な値動き自体も大きなヒントになるだろう。動揺しない市場はトレンドを修正していくよりも、トレンドを継続させる確率が高いから、前記ドルインデックスの日足における「フォールス・ブレイクアウト」の疑いも近々解消されるのではないとみる。

 改めてドルインデックスの日足を見ると、いくつかのポイントが重要で…
ドル/円112円突破! 裏切られた個人投資家。 次は日経平均、再び「買うなら今でしょ!?」 ブログ

ドル/円112円突破! 裏切られた個人投資家。 次は日経平均、再び「買うなら今でしょ!?」

■素人と専門家の思惑が合致すると相場に裏切られる!? 「相場は理外の理」と言われるが、本質的には「巷の理」は相場の理ではない。また、「巷の理」が蔓延していた時こそ、相場の理が違うところにある、ということではないかと思う。最近の市況は、またその好例を提供してくれている。

 米中対立が一段と激化している中で、「巷の理」はわかりやすかった。それは他ならぬ、リスクオフの動きが想定され、安全資産とされる金、円やスイスフランが買われるだろうというロジックだ。そして、新興勢力であるビットコインを始めとする仮想通貨の出番だといった発想も、基本的には同じく「巷の理」の範疇にあった。

 注意していただきたいのは、巷のロジックがわかりやすかった上、一般市場参加者に広く受け入れやすかったというだけでなく、いわゆる市場の専門家の多くも同じロジックを展開し、いかにも「市場は間違っている」といった論調を展開していたところも大きかったということだ。

 だいぶ前だが、本コラムでも指摘していたように、ファンダメンタルズ由来のロジックは、素人と専門家の意見や思惑が合致すればするほど、また、ロジックが単純化すればするほど、裏切られるリスクが大きいから、気をつけないといけない。

【参考記事】

●過大評価されるユーロと過小評価される円、是正する道はユーロ/円の大逆転のみ!(2018年2月16日、陳満咲杜)

 案の定、そういった「巷の理」が浸透している中、伝統的な安全資産とされる金や円、そして、スイスフランは売られ、ビットコインはバブル崩壊後の最安値を更新していく勢いを示している。今回も「巷の理」が完全に裏切られたわけだ。

金価格 日足(出所:Bloomgerg)

世界の通貨VS円 4時間足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 4時間足)

米ドル/スイスフラン 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/スイスフラン 4時間足)

ビットコイン/米ドル 週足(リアルタイムチャートはこちら→仮想通貨リアルタイムチャート:ビットコイン/米ドル 週足)

■特に日本の個人投資家が裏切られた!? 先週末(7月6日)の本コラムにて「米ドル/円と日本株をいつ買うか、今でしょ」と判断したのも、前述の「巷の理」が裏切られることを予想していたからだ。

【参考記事】

●米ドル/円は3年続いたレジスタンスラインをブレイクする準備完了! 買うなら今でしょ!?(2018年7月6日、陳満咲杜)

 米ドル/円は一気に112円の節目をブレイクし、113円の節目に接近、日経平均が一時、2万2650円超えまで上昇したのも、この前に「巷の理」があったからこそである。

米ドル/円 日足(出所:IG証券)

日経平均 日足(出所:Bloomberg)

 要するに、「巷の理」が理解しやすかった上、専門家たちも同じ見方を示してくれるから、一般個人投資家たちにとって米ドル/円、日経平均などには「売り安心感」があった。

 一概には言えないが、少なくとも米ドル/円のショートスタンス、金やビットコインのロングスタンス自体が個人投資家(特に日本の個人投資家)に好まれる逆張りのスタイルだったので、より仕掛けやすかったのではないかと推測される。

 だからこそ、米ドル/円と日経平均はいったん上放れ、また、金とビットコインはいったん下方突破すれば、その後、損失覚悟の投げが続出するわけだ。

 米ドル/円の上昇は、負けたショート筋の踏み上げなしではスピード感が出ない。足元、ロング筋にとっては「押し目待ちに押し目なし」のような展開であるだけに、その裏で実は円の投げ売りが多かったに違いない。

 もう1つの要因は、これまで「巷の理」に合致していた…
米ドル/円は3年続いたレジスタンスラインを ブレイクする準備完了! 買うなら今でしょ!? ブログ

米ドル/円は3年続いたレジスタンスラインを ブレイクする準備完了! 買うなら今でしょ!?

■中国株大幅安につれ、日本株が下落した真の理由とは? 本日(7月6日)から、米国の対中関税制裁が実施された。米中貿易戦争がいよいよ「実戦」の段階に突入し、世界金融市場に引き続き打撃を与えている。

 中国の大幅株安につれ、日経平均も昨日(7月5日)、一時2万1500円割れとなり、4月上旬以来の安値を更新した。

上海総合指数 4時間足(出所:Bloomberg)

日経平均 4時間足(出所:Bloomberg)

 米国株も芳しくないが、総じて日経平均の方がよりチャイナリスクに敏感で、また変動率が大きかったのも、仕方がないことかと思う。

 というのは、日本の株式市場においては外国人の売買シェアが大きく、また、彼らは中国本土の株式市場にフルアクセスできないため、日経225などの先物取引を通じて、いわゆるチャイナリスクを日本株でヘッジするニーズがあるからだ。日本株の売りも当然の成り行きだと思われる。

 一方で、こういった言い方はあくまで表面上の理由にすぎない。本質的には、市場は思惑で動くものなので、米中対立やチャイナリスクの懸念が市場のセンチメントを支配している以上、仕掛け的な売買で変動率を拡大させ、利益を計上するのが、ヘッジファンドなど投機筋の得意技といえる。

 換言すれば、「上海株の暴落が日本の景気を押し下げる恐れがあるから日本株売り」といったまじめなロジックが正しいかどうかは別問題として、「上海株を材料として日本株を空売りして儲ける」といった発想に基づく取引が行われており、これが日本株下落の直接の原因に違いない。

■「2015年のチャイナショック再来」とはなっていない しかし、日本株下落と円高の同時進行という、「セット」になる現象は、今回鮮明になっていない。場合によっては逆の現象に見える場合もあった。すなわち、上海株につられ日経平均も急落したが、円は逆にやや売られる程度で、リスクオフの円高という状況にはほど遠い、ということだ。

日経平均VS米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

 前回のコラムでも指摘したように、中国株のみでなく、中国人民元暴落の視点からみても同様である。今回の暴落は、実は、あの人民元ショックと言われる2015年よりも深刻な事態になっているが、2015年のように先進国の金融市場を巻き込んだ大混乱はみられていない。

【参考記事】

●人民元急落でも市場が落ち着いているのは米中貿易戦争が幕開けにすぎないから!?(2018年6月29日、陳満咲杜)

 日本株の下落も、値幅がやや大きいが、ショックと言われるほどではなかろう。ここはやはり、大きなポイントだと思う。

 よくある話だが、上海株や中国人民元の暴落で日本株が連れ安になったので、いずれ円も大きく買われるだろうといったロジックもある。しかし、このようなロジックは、どちらかというと素人の発想にすぎないから、あまり鵜呑みにすべきではない。

 なにしろ、国際金融市場は同時進行なので、何らかの因果関係があって、事後的に反応することは、まずありえない。

 仮にこれから実際、円高になっていくとしても、それはまた他の材料や思惑、または市場の内部構造に起因するもので、すでに大きく進行してきた他の市場の値動きに今さら反応、また追随してくることはありえない。

 となると、米中対立や中国株安、中国人民元安に“つられた”日本株と…
人民元急落でも市場が落ち着いているのは 米中貿易戦争が幕開けにすぎないから!? ブログ

人民元急落でも市場が落ち着いているのは 米中貿易戦争が幕開けにすぎないから!?

■米国の対中政策に対抗すべく、禁じ手の人民元安!? 金融市場関係者たちは、固唾を呑んで米中貿易戦争の行方を見守っている。今のところ、米中ともに強硬姿勢を崩しておらず、7月6日(金)から実施発動される米国の対中制裁第一弾は避けられない情勢だ。

 それに対して、多額の対米貿易黒字を有する中国側からの対抗策は少ないと言われる中、中国はつい禁じ手を使ってしまった感がある。それは人民元安だ。オフショア市場で、米ドル/中国人民元(USD/CNH)は11日連続で続伸し、2010年のオフショア市場開設以来の記録を更新した。

米ドル/中国人民元(USD/CNH) 日足(出所:IG証券)

 3月末安値6.2354人民元から計算すれば、目先の高値まで人民元は実に4000pips超も切り下げており、3カ月程度の期間にしてこのような変動率はやはり尋常ではない。

 他国なら、通貨危機と呼ばれてもおかしくないが、中国、すなわち、あのすべてをコントロールしている共産党政権だけに、このような「危機」は他ならぬ、中国政府自らの「演出」であるに違いない。

 換言すれば、いくら米ドル高トレンドとはいえ、中国政府はそもそも通貨市場を厳しく管理してきたから、中国政府の意図なしではここまでの人民元安はあり得ない。人民元の急落は、中国政府のコントロール放棄、さらには誘導した結果だと言っても過言ではなかろう。

■人民元安戦術は、中国にとって諸刃の剣 中国政府は明らかに人民元安を武器とし、米国に対し、牽制や対抗策を仕掛けていくつもりである、もしくは、少なくともそのような意図を見せ、米国の改心を促す戦術を取っていると思われる。

 ちなみに、このような戦術は、中国にとって明らかな諸刃の剣だ。人民元は管理されている通貨だからこそ、今まで過大評価され、また、資本の海外逃避(キャピタルフライト)を防いでいるとされてきた。

 人民元管理を放棄、また、人民元安を誘導するような事態が長く続けば、今度こそキャピタルフライトが本格化し、すでに大きく膨らみ、かなり危険な状況である中国資産バブルの崩壊を招くのも不思議ではないから、当局にとって今も薄氷の上を歩いている状況であろう。

■2015年の人民元切り下げ後、必死に先安感を消した ところで、足元の人民元の急落は、値幅やスピードが凄まじいものの、水準として2015年年末と同様のレベルにあり、2016年高値より600pips近く距離がある。となると、2015年の人民元切り下げや、その後の大幅人民元安がいったん是正されていたことがわかる。

 実際、2018年3月安値(米ドルの安値・人民元の高値)で測ると、2014年の米ドル/人民元相場の安値を起点とした全上昇幅の78.6%反落も果たしているから、その是正の度合いも大きかったことがわかる。

米ドル/中国人民元(USD/CNH) 日足(出所:IG証券)

 それは他ならぬ、中国当局が人民元先安感を消すのに躍起になっていたという経緯があったからだ。

 2015年の人民元切り下げ以降、人民元先安の観測が急速に高まり、厳しい資本規制があったにもかかわらず、中国から大規模な資金逃避、すなわちキャピタルフライトがみられ、中国外貨準備高はなんと1兆ドル超も減少した。そのため、中国当局はあわてて人民元高の政策を取り、意図的に人民元のショート筋を踏み上げさせたのだ。

 それが功を奏したからこそ、キャピタルフライトの流れを食い止めたわけだから、足元、再度人民元安の路線に走れば、また、同じ危機を招く可能性が大きいかと思う。

 中国人民銀行(中銀)が預金準備率の引き下げを決定したにもかかわらず、上海総合指数は続落が続き、昨日(6月28日)、再度安値を更新してきたことはその前兆であり、また、結果であると思われる。

 テクニカル上、中国株はもう完全にベア(下落)トレンドに突入したから、これから事態がますます悪化していく可能性を否定できない。

上海総合指数 日足(出所:Bloomberg)

 注意していただきたいのは、米中貿易戦争は…
米中貿易戦争激化でも中国株以外はなぜ 安定?中国が早晩、妥協するとみる理由は? ブログ

米中貿易戦争激化でも中国株以外はなぜ 安定?中国が早晩、妥協するとみる理由は?

■米中対立が深まり、上海総合指数は大きく下落 米中の軋轢は拡大する気配を見せている。

 譲歩しない中国政府に対して、「話し合うより制裁措置の発動で対抗」というトランプ政権の強硬姿勢が鮮明になってきたから、これが世界金融市場にまた波乱をもたらしている。リスク回避の動きが深刻になってもおかしくないが、今のところ、大きな打撃を受けているのは中国株式市場だ。

 端午節の休場を経て、中国株式市場は6月19日(火)から取引をスタートさせたが、その当日、上海総合指数は一時、前日比マイナス5%超の暴落となり、2016年6月以来の安値を記録した。

上海総合指数 日足(出所:Bloomberg)

 下げはその後も続き、本日(6月22日)、また安値を更新したものの、現執筆時点ではやや持ち直し、やっと一服した模様。

 とはいえ、心理的な節目となる3000の大台をかなり下回った株価指数は、完全なベア(下落)トレンドの構造を露呈。これから2016年1月安値の2638を下回ってきてもおかしくないとみられるだけに、中国リスクが急速に浮上してきたと言える。

上海総合指数 週足(出所:Bloomberg)

 なにしろ、この2016年1月安値は2015年夏に発生した中国株の大崩壊後につけた安値だったので、同安値への再接近や安値割り込みがあれば、中国経済に深い影を落とすに違いないだろう。

 2015年の混乱と言えば、あの人民元ショックやそれがもたらした世界金融市場の混乱が記憶に新しい。今回は早くも世界同時株安を危惧する声が広がっているが、今のところ、大きな影響はみられていないから、市場関係者も一安心したところではないかと思う。

■ロス米商務長官は中国と全面対決の姿勢を打ち出した とはいえ、やはり、米中全面対決を懸念する声は多い。なにしろ、米中政府はともに強硬な態度を取り始め、少なくとも表面上の交渉は中断している模様なのだ。ここから衝突が一段と激化しかねない。

 中国から輸入される商品への関税引き上げ総額は、すでに公表された500億ドル以外に、これから2000億ドルでも4000億ドルでも追加して構わない、と意思表明したトランプ米大統領の発言と整合的に、昨日(6月21日)、ロス米商務長官はより厳しい発言をした。

 ロス氏は「関税、非関税双方を含む大規模な障壁を設ける貿易相手国が一段と苦痛を味わう環境を整える必要がある」と言い、中国に関しては「知的財産権の侵害や技術移転の強制、サイバーセキュリティー問題なども重なる」と警告、また、中国を強く牽制した。

ロス米商務長官は「一段と苦痛を味わう環境を整える必要がある」といったきっつ~い表現を使いながら、中国を強く牽制した。写真は2018年6月のセレクトUSA投資サミット時のもの。 (C)Bloomberg/Getty Images

 こういった全面対決の姿勢が打ち出されたことは、トランプ政権が対中闘争に勝てる自信ありとの意思を表明したとも受け取れるだろう。

 では、米国があの万能に見える中国共産党政権に勝てる勝算はどこにあるのか? その答えは昨日(6月21日)、ロス氏の発言にあり、また大きなヒントを得られるかと思う。

 まず、なんといっても…
ショック以外の形容詞がないほど強烈な ユーロ下落はなぜ起こったのか? ブログ

ショック以外の形容詞がないほど強烈な ユーロ下落はなぜ起こったのか?

■ショック以外の形容詞がないほど強烈なユーロ下落 米朝会談に米利上げなど、重要イベントを無事通過したものの、マーケットは昨日(6月14日)のECB(欧州中央銀行)会合に大きく反応した、ユーロの大幅急落は、ショック以外の形容詞がないほど強烈であった。

ユーロ/米ドル 4時間足(出所:IG証券)

 ところで、ECB政策やドラギECB総裁の発言自体は、ショッキングな内容ではなかった。2018年年内にてQE(量的緩和)策を終焉させるのも規定路線で市場の想定範囲内であり、また、2019年夏まで利上げを行わないといった方針も特にサプライズではないと思う。

 イタリア問題などを抱える中、早期利上げを表明するほうがリスキーなので、ECBの保守的な姿勢も推測できなかったとは言えないから、マーケットの反応に戸惑う市場関係者も多いのではないかと思う。

 よく考えてみると、ECBのハト派姿勢は、利上げ継続の米政策との格差を広げたことよりも、イタリア問題など南欧のリスクを市場関係者に再認識させるきっかけになったのではないかと思う。

 換言すれば、「EU(欧州連合)内部の問題をECBがどう見ているか」ということを市場関係者は意識し、早期利上げを否定したECBの決定自体をリスクを測るパラメータとしたところが大きかったかと推測される。

 いずれにせよ、米政策の孤高感が一段と鮮明になった以上、米ドルの独歩高を覚悟しておきたい。

■ユーロはスピード調整が終了し、ベアトレンドへ復帰している テクニカルの視点では、昨日(6月15日)のユーロの急落が発したメッセージが明白だ。それはほかならぬ、「ユーロのスピード調整(反騰)がすでに終わり、ベア(下落)トレンドへ復帰している」ということであろう。

ユーロ/米ドル 日足(出所:IG証券)

 換言すれば、米ドル全体(ドルインデックス)のブル(上昇)トレンドは想定より強く、また、雄大な進行が推測されるから、より大きなスパン(週足や月足)でも本格的なブルトレンドへ復帰する公算が高まる。

 日足で観察されるドルインデックスの基調は、すでにかなりのブルだったので、本来、もう少し調整(反落)があってもおかしくなかったが、昨日(6月14日)の大陽線が典型的な強気「リバーサル」のサインを点灯していたから、一段と強気変動の継続を想定しておきたい。

 よく観察すればわかるように、昨日(6月14日)の値動きは、ザラ場では一時、直近3週間の安値を更新したが、一転して急上昇、また、終値として(2月底打ち以来の)高値更新を果たしたので、典型的な「フェイクセットアップ」のサインとしても解釈できる。

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

 当然のように、ここで言う「フェイク」とは「ダマシ」のこと。いったんの安値更新自体が大きな「ダマシ」だったからこそ、その後の急騰をもたらしたのであり、上昇方向への「セットアップ」を果たす公算が大きいわけだ。

 となると、ドルインデックスのブル基調は、昨日(6月14日)の急騰があったからこそ一段と強められ、また、加速していく公算が大きいと言えるだろう。2017年10月高値のブレイクは必至なので、2016年11月9日(金)安値の95.89の打診ももはや短期ターゲットとして浮上してこよう。

 2016年11月9日(金)と言えば、トランプ氏が米大統領に…