陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

度肝を抜かれた4円超の急落! ドル/円の シナリオを再考、考えに考え抜いた結論は? ブログ

度肝を抜かれた4円超の急落! ドル/円の シナリオを再考、考えに考え抜いた結論は?

■数分間で米ドル/円が4円超の急落! 今後のシナリオは? 新年早々、為替相場ではフラッシュ・クラッシュが発生した。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

 2019年1月3日(木)未明、数分間で米ドル/円が4円超の急落を演じ、一気に105円の節目割れを果たしたことで、市場関係者は度肝を抜かれた。もちろん、筆者もそのうちの1人であった。

 となると、正月からずっと考えざるを得なかったのは、米ドル/円のシナリオだ。

 2019年は米ドル高・円安と考えた方向性は果たして間違いだったのだろうか。今年(2019年)はやはり、円高トレンドを形成していくのだろうか。

【参考記事】

●2019年、ドル/円は125円超への上昇期待!株価は歴史的な安値圏にあり。反発は近い(2018年12月21日、陳満咲杜)

■円高方向への急伸は、あくまで「事故にあった結果」 相場を再度点検し、また、だいぶ悩んだ後の結論として、2019年年初のクラッシュがあったからこそ、変動レンジ自体は下方修正せざるを得ないものの、基本的な方向性、すなわち、「米ドル高・円安という方向性についての見方は不変」とまず申し上げる。

 もっとも、2019年年初の急落は、ウェリントン市場における薄商いの時間帯を狙った意図的な仕掛けであったことは間違いない。

 一部報道では、トルコリラ/円のストップを狙った大物投機筋の仕掛けだったと言われるが、その真相はどうであれ、円の急伸自体、その値動きのすべてを「正当化」できるかどうか、疑問視されるのは確かだ。

 だから、米ドル/円にしても、ユーロ/円などクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)相場にしても、1月3日(木)において共通した日足が形成され、いわゆる「スパイクロー」(安値と終値の距離が長く、長い足でまた、ひげがつく足型)のサインが点灯していた。

世界の通貨VS円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)

【スパイクローについての参考記事】

●陳満咲杜氏監修、欧米流プライスアクションがMT4チャート上へ表示できるように!

 同足型は、先週(2018年12月31日~)の週足でも確認されたから、相場自体の構造を暗示していたのではないかと思う。

世界の通貨VS円 週足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 週足)

 要するに、円高方向への急伸自体が「正当化」できる値動きなら、1月3日(木)の米ドル/円やクロス円の急落後でも、円高方向へ続伸でき、週足における「足」あるいは「ひげ」の部分を埋めていたのではないかと推測される。

 実際、米ドル/円の週足に照らして考えると、その「足」あるいは「ひげ」部分の値幅は実に4円超を記録したから、円高方向への急伸は、あくまで「事故にあった結果」と考えるべきではないかと思う。

■今回の急落の値動きは、Brexit時のチャートに似ている!? 仮にこのような考え方が正しければ、今回の値動きは、あのBrexitショック時の足型を彷彿とさせ、また、その後の行方から大きな示唆を得られるのではないかと思う。

 2016年6月24日(金)に発生したBrexitショックによって円高方向への急伸が見られたが、結果的に同週において米ドル/円は3.56円程度の「下ひげ」を形成、その足型はその後の米ドル/円相場の反転をもたらした。

米ドル/円 週足 言ってみれば、「スパイクロー」は往々にして円急騰(円高)のクライマックス的な段階に出現し、また、その出現によって急激な円高が一気に達成されたからこそ、その後は逆に円安に振られやすいのではないかと推測される。

 実際、2019年年初の急落で、積み上げられてきた円売りポジションが一掃されたことは、ほぼ間違いなく、ここからの円高余地は、2016年夏場と同様、逆に限定されるのではないかとみる。

 もちろん、米ドル/円は急落してきた以上、たちまちV字回復する…
2019年、ドル/円は125円超への上昇期待! 株価は歴史的な安値圏にあり。反発は近い ブログ

2019年、ドル/円は125円超への上昇期待! 株価は歴史的な安値圏にあり。反発は近い

■日米株は大幅に下落、2018年年初来安値を更新 週明け(12月17日)以降、日米株はともに崩れ、米政府閉鎖の可能性が伝えられる中、昨日(12月20日)大幅に続落。2018年年初来安値を更新した。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

日経平均 日足(出所:Bloomberg)

 米ドル/円も一気に10月安値を割り込み、にわかに本格的なリスクオフの流れを示している。

米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

■2019年は株安・円高局面に進むのか? 果たして来年(2019年)は、株安・円高局面へ大きく推進するだろうか。

 結論から申し上げると、このような可能性は否定できないものの、確率としては低いかと思う。

 ここでまず強調しなければならないのが、本格的なリスクオフの定義である。なにしろ、日米株がともに2018年年初来安値を更新しているから、リスクオフの流れがすでに始まっていることは間違いない。

 したがって、これから続いていくかどうかが焦点となり、本格的なリスクオフとは、トレンドを完全に修正してしまう流れだとご理解いただきたい。

 まず、米利上げサイクルに関する観測だが、2019年は4回ではなく2回しか利上げできないといった見方が強まっている。米利上げの早期打ち切り観測もあって、目先、米国株急落の解釈材料としてよく語られるが、すこし前の解釈とだいぶ違っている。

 来年(2019年)、4回の利上げがあり、また、再来年(2020年)まで利上げが続くといった予測が、つい最近まで論議されていたから、「米金利の急上昇が米国株への圧力と化し、株下落の理由になる」とよく語られていた。

 しかし、最近になると、一転して「2019年の米利上げの回数が少なくなり、また、早期に利上げを打ち切るから株が売られた」という解釈が圧倒的に多く聞かれるようになった。

 どちらが正しいかはもはや重要ではなく、利上げ見通し自体がどちらに転んでも、株の下落の根拠になるわけなので、結局、株価次第だと思う。

 要するに、仮に株が下落ではなく、上昇した場合は、米利上げ見通しの強さは米景気見通しの強さと関連させられ、株価上昇の根拠として解釈されるだろう。

 そして、米利上げ見通しが弱い場合は、利上げ一服で米国株の圧迫要素がなくなることが取り上げられ、それが株高の要素として語られるだろう。どちらに転んでも後付け的な解釈が可能だと思う。

 つまるところ株価次第なので、株価動向に沿った安易な解釈に流されるのではなく、自ら判断の基準を持つべきだと思う。

■目先はむしろ中段保ち合いの一環 ここで重要なコンセプトとしてまず指摘しておきたいのは、米利上げ見通しがどうであれ、来年(2019年)は米利上げがあり、また、利上げサイクルが終了していないうちは、米国株の本格的なリスクオフ、すなわちメイントレンドを完全に否定するような値動きにはなりにくいということだ。

 これは過去の相場に照らして考えた「経験測」にすぎないが、相場の本質が変わらない限り、「経験測」をバカにしてはいけない。

 言い換えれば、2018年は日米貿易戦争などいろいろなリスク要素が噴出し、日米株ともに10月の2018年年内高値から一転して、目先、2018年年初来安値を更新、リスクオフの流れを強め、また、大きな波乱の動きとなってきたが、米利上げサイクルがまだ完了していないうちは、これはむしろ中段保ち合いの一環と見なすことができる。

 さらに、そのように位置づければ、目先の動きは行きすぎている可能性が大きい。もちろん、行きすぎとは株の売られすぎのことを指す。

■今はクリスマスセール! NYダウは年末年始に大幅反発も NYダウの週足を見ればわかるように、RSIで測れる「売られすぎ」のサインが鮮明になりつつある。

NYダウ 週足(出所:Bloomberg)

 目先、2万3000ドルを割り込むまで大きく反落してきたものの、2016年10月末の1万8800ドル台や、同1月半ばの1万5800ドル台よりずいぶん高い水準にあり、対応するRSIの方は、もう2016年安値に対応する水準に切りこみ、「クリスマスセール」の様相を呈している。

 目先、市場の弱気ムードは極限まで来ていると思うが、早ければ年末年始において、その反動、すなわち大幅な切り返しがあってもおかしくないとみる。

■株価は歴史的な安値圏にあり 日本株は基本的に米国株次第の側面が大きく、また「売られすぎ」のサインも米国株と同じく鮮明になりつつあるが、テクニカルよりもファンダメンタルズや市場センチメント上の割安感が目立つ。

 以前のコラムでも指摘したように、日本株は今年(2018年)、最大規模の「外国人売り」(外国人投資家の売り越し、国内投資家の海外経由も含め)にさらされ、その金額はなんと12兆円にも達すると推測されるから、10月高値から大きく反落し、また、日経225先物の一時2万円の割り込みがあっても、史上最大規模の売り越しにさらされたにしては健闘している方だと思う。

【参考記事】

●記録的な外人売りの割に日経平均は大して下がっていない。米ドル/円は現状「割安」!?(2018年1月26日、陳満咲杜)

 日経平均の予想PER(株価収益率)が11.5倍以下に沈み、アベノミクス相場以来最低レベルに下がっていることも大きなポイントであろう。つまるところ、テクニカルでも、ファンダメンタルズでも日本株の「割安」感が目立ってきたので、弱気一辺倒な市場心理自体が来年(2019年)の反動を暗示するものと思う。

 つまり、来年(2019年)は続落よりも反動高になりやすく、目先は歴史的な安値圏ではないかとみる。米国株にしても、日本株にしても、「クリスマスセール」後、総じて回復していく可能性が高いから、来年(2019年)の相場の見通しに関して、逆に過度な弱気は不要だと思う。

■年末年始は米ドル押し目買いの好機! 同じロジックにおいて、米ドル全体や米ドル/円の見方に関しても、メインスタンスを維持していきたい。メイン基調として米ドル高は来年(2019年)もみられ、米ドル/円に至っては反動的な上値トライがあってもおかしくなかろう。

 なにしろ、今年(2018年)の値幅は10円程度で、戦後の米ドル/円相場においても、最も低い変動率になるから、来年(2019年)は反動的に大幅な米ドル高か、反動的に大幅な米ドル安になりやすいかとみる。

【参考記事】

●ザイFX!で2018年を振り返ろう!(1) 米ドル一強! その時トルコショックが起きた

 日本株と米ドル/円の関連性から考えて、日本株に関するロジックが間違いでなければ、来年(2019年)は米ドル安ではなく、米ドル高になりやすいだろう。

 昨日(12月20日)、米政府閉鎖の可能性が伝えられ、米国株の急落とともに米ドル/円も急落してきたが、200日移動平均線の打診や3月安値を起点とした全上昇幅の38.2%反落水準の達成に伴い、下落は一時的なものに留まり、ここからの下値余地は限定的だろう。

米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

 年末年始においては横ばいに推移する公算だが、来年(2019年)の米ドル/円は株の反発とともに上値トライ、といったシナリオが想定され、年末年始はむしろ、米ドル押し目買いの好機かと思う。

 冒頭における株の話と同じように、足元では来年(2019年)…
2019年、ドル/円は125円超への上昇期待! 株価は歴史的な安値圏にあり。反発は近い ブログ

2019年、ドル/円は125円超への上昇期待! 株価は歴史的な安値圏にあり。反発は近い

■日米株は大幅に下落、2018年年初来安値を更新 週明け(12月17日)以降、日米株はともに崩れ、米政府閉鎖の可能性が伝えられる中、昨日(12月20日)大幅に続落。2018年年初来安値を更新した。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

日経平均 日足(出所:Bloomberg)

 米ドル/円も一気に10月安値を割り込み、にわかに本格的なリスクオフの流れを示している。

米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

■2019年は株安・円高局面に進むのか? 果たして来年(2019年)は、株安・円高局面へ大きく推進するだろうか。

 結論から申し上げると、このような可能性は否定できないものの、確率としては低いかと思う。

 ここでまず強調しなければならないのが、本格的なリスクオフの定義である。なにしろ、日米株がともに2018年年初来安値を更新しているから、リスクオフの流れがすでに始まっていることは間違いない。

 したがって、これから続いていくかどうかが焦点となり、本格的なリスクオフとは、トレンドを完全に修正してしまう流れだとご理解いただきたい。

 まず、米利上げサイクルに関する観測だが、2019年は4回ではなく2回しか利上げできないといった見方が強まっている。米利上げの早期打ち切り観測もあって、目先、米国株急落の解釈材料としてよく語られるが、すこし前の解釈とだいぶ違っている。

 来年(2019年)、4回の利上げがあり、また、再来年(2020年)まで利上げが続くといった予測が、つい最近まで論議されていたから、「米金利の急上昇が米国株への圧力と化し、株下落の理由になる」とよく語られていた。

 しかし、最近になると、一転して「2019年の米利上げの回数が少なくなり、また、早期に利上げを打ち切るから株が売られた」という解釈が圧倒的に多く聞かれるようになった。

 どちらが正しいかはもはや重要ではなく、利上げ見通し自体がどちらに転んでも、株の下落の根拠になるわけなので、結局、株価次第だと思う。

 要するに、仮に株が下落ではなく、上昇した場合は、米利上げ見通しの強さは米景気見通しの強さと関連させられ、株価上昇の根拠として解釈されるだろう。

 そして、米利上げ見通しが弱い場合は、利上げ一服で米国株の圧迫要素がなくなることが取り上げられ、それが株高の要素として語られるだろう。どちらに転んでも後付け的な解釈が可能だと思う。

 つまるところ株価次第なので、株価動向に沿った安易な解釈に流されるのではなく、自ら判断の基準を持つべきだと思う。

■目先はむしろ中段保ち合いの一環 ここで重要なコンセプトとしてまず指摘しておきたいのは、米利上げ見通しがどうであれ、来年(2019年)は米利上げがあり、また、利上げサイクルが終了していないうちは、米国株の本格的なリスクオフ、すなわちメイントレンドを完全に否定するような値動きにはなりにくいということだ。

 これは過去の相場に照らして考えた「経験測」にすぎないが、相場の本質が変わらない限り、「経験測」をバカにしてはいけない。

 言い換えれば、2018年は日米貿易戦争などいろいろなリスク要素が噴出し、日米株ともに10月の2018年年内高値から一転して、目先、2018年年初来安値を更新、リスクオフの流れを強め、また、大きな波乱の動きとなってきたが、米利上げサイクルがまだ完了していないうちは、これはむしろ中段保ち合いの一環と見なすことができる。

 さらに、そのように位置づければ、目先の動きは行きすぎている可能性が大きい。もちろん、行きすぎとは株の売られすぎのことを指す。

■今はクリスマスセール! NYダウは年末年始に大幅反発も NYダウの週足を見ればわかるように、RSIで測れる「売られすぎ」のサインが鮮明になりつつある。

NYダウ 週足(出所:Bloomberg)

 目先、2万3000ドルを割り込むまで大きく反落してきたものの、2016年10月末の1万8800ドル台や、同1月半ばの1万5800ドル台よりずいぶん高い水準にあり、対応するRSIの方は、もう2016年安値に対応する水準に切りこみ、「クリスマスセール」の様相を呈している。

 目先、市場の弱気ムードは極限まで来ていると思うが、早ければ年末年始において、その反動、すなわち大幅な切り返しがあってもおかしくないとみる。

■株価は歴史的な安値圏にあり 日本株は基本的に米国株次第の側面が大きく、また「売られすぎ」のサインも米国株と同じく鮮明になりつつあるが、テクニカルよりもファンダメンタルズや市場センチメント上の割安感が目立つ。

 以前のコラムでも指摘したように、日本株は今年(2018年)、最大規模の「外国人売り」(外国人投資家の売り越し、国内投資家の海外経由も含め)にさらされ、その金額はなんと12兆円にも達すると推測されるから、10月高値から大きく反落し、また、日経225先物の一時2万円の割り込みがあっても、史上最大規模の売り越しにさらされたにしては健闘している方だと思う。

【参考記事】

●記録的な外人売りの割に日経平均は大して下がっていない。米ドル/円は現状「割安」!?(2018年1月26日、陳満咲杜)

 日経平均の予想PER(株価収益率)が11.5倍以下に沈み、アベノミクス相場以来最低レベルに下がっていることも大きなポイントであろう。つまるところ、テクニカルでも、ファンダメンタルズでも日本株の「割安」感が目立ってきたので、弱気一辺倒な市場心理自体が来年(2019年)の反動を暗示するものと思う。

 つまり、来年(2019年)は続落よりも反動高になりやすく、目先は歴史的な安値圏ではないかとみる。米国株にしても、日本株にしても、「クリスマスセール」後、総じて回復していく可能性が高いから、来年(2019年)の相場の見通しに関して、逆に過度な弱気は不要だと思う。

■年末年始は米ドル押し目買いの好機! 同じロジックにおいて、米ドル全体や米ドル/円の見方に関しても、メインスタンスを維持していきたい。メイン基調として米ドル高は来年(2019年)もみられ、米ドル/円に至っては反動的な上値トライがあってもおかしくなかろう。

 なにしろ、今年(2018年)の値幅は10円程度で、戦後の米ドル/円相場においても、最も低い変動率になるから、来年(2019年)は反動的に大幅な米ドル高か、反動的に大幅な米ドル安になりやすいかとみる。

【参考記事】

●ザイFX!で2018年を振り返ろう!(1) 米ドル一強! その時トルコショックが起きた

 日本株と米ドル/円の関連性から考えて、日本株に関するロジックが間違いでなければ、来年(2019年)は米ドル安ではなく、米ドル高になりやすいだろう。

 昨日(12月20日)、米政府閉鎖の可能性が伝えられ、米国株の急落とともに米ドル/円も急落してきたが、200日移動平均線の打診や3月安値を起点とした全上昇幅の38.2%反落水準の達成に伴い、下落は一時的なものに留まり、ここからの下値余地は限定的だろう。

米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

 年末年始においては横ばいに推移する公算だが、来年(2019年)の米ドル/円は株の反発とともに上値トライ、といったシナリオが想定され、年末年始はむしろ、米ドル押し目買いの好機かと思う。

 冒頭における株の話と同じように、足元では来年(2019年)…
トランプ大統領は中国の救世主!?米中対立 緩和で株高・米ドル高になるとみる根拠とは ブログ

トランプ大統領は中国の救世主!?米中対立 緩和で株高・米ドル高になるとみる根拠とは

■ファーウェイ事件は米中対立を激化させるのか? 前回のコラムではファーウェイ事件を取り上げ、また、ファーウェイ・ショックをもって株式相場全体がいったん底打ちしたか、これから底打ちを果たすだろうという推測をまとめた。

【参考記事】

●米政府がファーウェイ・ショックのタイミングを演出!? 市場も歓迎、株もドル/円も底打ち?(2018年12月7日、陳満咲杜)

 市況はそれ以降、あまり大した進行が見られないが、判断自体は維持しておきたい。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

日経平均 日足(出所:Bloomberg)

 一番大事なところは、やはり市場関係者が心配していたように、「ファーウェイ副会長の逮捕によって、米中対立が一段と激化し、また、それによってリスクオフの流れが強まっていくのかどうか」にあるが、目先の状況に照らして考えると、そのリスクは低下しているようにみえる。

■米国の要求をのみ、中国も大型減税を検討!? 確かに中国はカナダ人2名を逮捕し、カナダ当局に対抗する動きが鮮明になってきたが、中国当局のやり方としてむしろ想定範囲内で、今さらサプライズとなるわけがない。

 肝心なところは、やはり対米の関係だ。カナダがファーウェイ副会長逮捕に踏み切ったのは米国の要請だが、対米闘争激化の兆しは今のところ、中国政府の言動から確認されていない。むしろ、緩和の兆しが鮮明になってきたかとみる。

 トランプ氏が自慢しているように、中国は少なくとも前回の米中首脳会談後の48時間内で、すでに米国産大豆200万トンを買い付け、クリスマス前後にして800万トン~1000万トンの追加買い付けも米側に約束した模様だ。

 さらに、輸入米自動車関税を従来の40%から15%へ大幅に引き下げ、自国企業を優遇したハイテク産業育成政策である「中国製造2025」の見直しなどの措置の検討にも着手したと報道され、対米譲歩の姿勢を鮮明化させつつある。

 中国高官も、米国が提示した90日間の期限、すなわち2019年2月末までには、米国と何らかの形で合意できるとの自信を示した。

 これぐらいは驚くなかれ、実は北京消息筋が最近ささやくウワサの中で、最もインパクトの大きい政策は、なんと、中国も米国の要求をのむカタチで、大型減税を検討しているということだ。

 この規模は5兆人民元とも言われ、実現すれば、中国どころか世界景気の起爆剤にもなり得るから、中国一部国民からさっそく「川皇(※)こそ我々の救世主」と賛美の声が出始まっているようだ。

(※注:トランプ氏の中国訳は「川普(Chuan pu)」と書くため、皇帝の如き「川皇」とも呼ばれる)

■習氏は首脳会談前にファーウェイ副会長逮捕を知っていた!? 中国のこれからの政策について、現時点ではウワサや推測の程度でしかないが、「ファーウェイ副会長の逮捕で米中衝突激化」というシナリオに、筆者は最初から懐疑的であった。

 なにしろ、北京消息筋の話では、どうやら12月1日(土)のアルゼンチンでの米中首脳会談前に、習近平中国国家主席はすでに逮捕の件を知っていた模様で、トランプ氏と会談した際、この件に一切触れなかったこと自体がサインであり、また興味深いところだった。

 いろんな理由があると思われるが、最も大きいのはほかならぬ、対米交渉を何としても合意に持っていきたいとの一心にあるだろう。

 そのほかの諸事情も消息筋にいろいろと教えてもらったが、複雑なので書ききれない。つまるところ、中国景気減速圧力が高まる中、中国指導部は対米講和路線を取らざるを得なくなり、今は「臥薪嘗胆」の時期と自ら定めた模様だ。

 だから、習近平国家主席はすでに逮捕の件を知っていたとしても、12月1日(土)会談の席にてまったく切り出さず、本日(12月14日)に至るまで対米強硬策を打ち出せずにいるわけだ。

 ゆえに、米中対立激化の懸念でもたらされた株式市場の混乱自体が行きすぎで、また同混乱があったからこそ、これからの市況を推測できるではないかと思う。

 前回のコラムでは、チャート上における米国株や…
トランプ大統領は中国の救世主!?米中対立 緩和で株高・米ドル高になるとみる根拠とは ブログ

トランプ大統領は中国の救世主!?米中対立 緩和で株高・米ドル高になるとみる根拠とは

■ファーウェイ事件は米中対立を激化させるのか? 前回のコラムではファーウェイ事件を取り上げ、また、ファーウェイ・ショックをもって株式相場全体がいったん底打ちしたか、これから底打ちを果たすだろうという推測をまとめた。

【参考記事】

●米政府がファーウェイ・ショックのタイミングを演出!? 市場も歓迎、株もドル/円も底打ち?(2018年12月7日、陳満咲杜)

 市況はそれ以降、あまり大した進行が見られないが、判断自体は維持しておきたい。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

日経平均 日足(出所:Bloomberg)

 一番大事なところは、やはり市場関係者が心配していたように、「ファーウェイ副会長の逮捕によって、米中対立が一段と激化し、また、それによってリスクオフの流れが強まっていくのかどうか」にあるが、目先の状況に照らして考えると、そのリスクは低下しているようにみえる。

■米国の要求をのみ、中国も大型減税を検討!? 確かに中国はカナダ人2名を逮捕し、カナダ当局に対抗する動きが鮮明になってきたが、中国当局のやり方としてむしろ想定範囲内で、今さらサプライズとなるわけがない。

 肝心なところは、やはり対米の関係だ。カナダがファーウェイ副会長逮捕に踏み切ったのは米国の要請だが、対米闘争激化の兆しは今のところ、中国政府の言動から確認されていない。むしろ、緩和の兆しが鮮明になってきたかとみる。

 トランプ氏が自慢しているように、中国は少なくとも前回の米中首脳会談後の48時間内で、すでに米国産大豆200万トンを買い付け、クリスマス前後にして800万トン~1000万トンの追加買い付けも米側に約束した模様だ。

 さらに、輸入米自動車関税を従来の40%から15%へ大幅に引き下げ、自国企業を優遇したハイテク産業育成政策である「中国製造2025」の見直しなどの措置の検討にも着手したと報道され、対米譲歩の姿勢を鮮明化させつつある。

 中国高官も、米国が提示した90日間の期限、すなわち2019年2月末までには、米国と何らかの形で合意できるとの自信を示した。

 これぐらいは驚くなかれ、実は北京消息筋が最近ささやくウワサの中で、最もインパクトの大きい政策は、なんと、中国も米国の要求をのむカタチで、大型減税を検討しているということだ。

 この規模は5兆人民元とも言われ、実現すれば、中国どころか世界景気の起爆剤にもなり得るから、中国一部国民からさっそく「川皇(※)こそ我々の救世主」と賛美の声が出始まっているようだ。

(※注:トランプ氏の中国訳は「川普(Chuan pu)」と書くため、皇帝の如き「川皇」とも呼ばれる)

■習氏は首脳会談前にファーウェイ副会長逮捕を知っていた!? 中国これからの政策について、現時点ではウワサや推測の程度でしかないが、「ファーウェイ副会長の逮捕で米中衝突激化」というシナリオに、筆者は最初から懐疑的であった。

 なにしろ、北京消息筋の話では、どうやら12月1日(土)のアルゼンチンでの米中首脳会談前に、習近平中国国家主席はすでに逮捕の件を知っていた模様で、トランプ氏と会談した際、この件に一切触れなかったこと自体がサインであり、また興味深いところだった。

 いろんな理由があると思われるが、最も大きいのはほかならぬ、対米交渉を何としても合意に持っていきたいとの一心にあるだろう。

 そのほかの諸事情も消息筋にいろいろと教えてもらったが、複雑なので書ききれない。つまるところ、中国景気減速圧力が高まる中、中国指導部は対米講和路線を取らざるを得なくなり、今は「臥薪嘗胆」の時期と自ら定めた模様だ。

 だから、習近平国家主席はすでに逮捕の件を知っていたとしても、12月1日(土)会談の席にてまったく切り出さず、本日(12月14日)に至るまで対米強硬策を打ち出せずにいるわけだ。

 ゆえに、米中対立激化の懸念でもたらされた株式市場の混乱自体が行きすぎで、また同混乱があったからこそ、これからの市況を推測できるではないかと思う。

 前回のコラムでは、チャート上における米国株や…
米政府がファーウェイ・ショックのタイミングを 演出!? 市場も歓迎、株もドル/円も底打ち? ブログ

米政府がファーウェイ・ショックのタイミングを 演出!? 市場も歓迎、株もドル/円も底打ち?

■ファーウェイ・ショックで株価大暴落! 昨日(12月6日)、「ファーウェイ・ショック」が起きた。

 「ファーウェイの副会長で、創立者の任正非氏の娘でもある孟晩舟さんがカナダで逮捕され、アメリカに引き渡される予定である」という報道が流れた途端、米国株先物から大暴落が始まり、日経平均先物に至っては、ザラ場では一時、11月21日(水)安値を下回り、2万1000円の節目に迫った。

日経平均先物 日足(出所:Bloomberg)

 マーケットにとって、この出来事がサプライズであることは間違いないが、事件の内容はかなり深く、市場関係者の想定をはるかに超えていたこともあって、逆にマーケットへの影響は一時的に留まるのではないかと思う。

 なにしろ、事件の真相が解明されるとしても、それは少しずつのことだろう。そうなると、市場関係者は逆に冷静になっていくはずだと推測される。

 まず、昨日(12月6日)のショックは、「せっかく米中対立が一服したのに、同事件でまた激化するのではないか」といった懸念に由来したに違いない。

■ファーウェイ副会長逮捕は巧妙に仕組まれていた? しかし、孟さんの逮捕は、実は報道された昨日(12月6日)ではなく、なんと12月1日(土)だったことがわかり、市場関係者の多くは逆に冷静になれたのではないかと思う。

ファーウェイの孟晩舟副会長のプロフィール(ファーウェイ公式サイトより)ファーウェイ創業者・任正非氏の長女であり、ファーウェイ副会長の孟晩舟氏。ファーウェイ入社当初は任正非氏との親子関係を隠し、受付嬢からキャリアをスタートしたという。

 12月1日(土)と言えば、アルゼンチンでトランプ米大統領と習近平中国国家主席が会談した日ではないか。要するに、米政府は会談しながら、孟ファーウェイ副会長の逮捕に踏み切ったのだから、最初から戦略の一環として実行していたことがわかる。

 となると、トランプ政権が最初から徹底的に中国への対抗策として計画した行動なので、米中対立が再度激化するリスクも計算済みだと言える。この逮捕自体も、もはや“談判”の一部であり、また、合意順守を中国に迫る計画の一部として理解できれば、市場関係者のショックもやわらぐのではないかと思われる。

 そして何よりも、ファーウェイ社を事実上、米国から追い出した米国政府は本気だ。ファーウェイ社を追い込む作戦が、もう何年も前からスタートしていたことは、もはや公然の秘密で、中国ZTE社へ厳しい制裁を下したのも、ファーウェイ社制裁への布石と言われるほどだった。

■米政府はファーウェイ社追及の絶好のタイミングを待っていた ZTE社にしてもファーウェイ社にしても、いろいろな疑惑がある中で、最も大きな容疑は米国の対イラン制裁に違反するイランとの秘密貿易、また金融取引であろう。

 ZTE社はその容疑を事実上認め、莫大な罰金を米政府に収め、また10年間米政府の監督下に置かれることで延命しているが、ファーウェイ社への追及は、今まで表面上はまったく動きがなかった。

 しかし、今回の逮捕でわかったのは、米政府は確実な証拠をつかんでおり、絶好のタイミングを待っていたということだ。確実な証拠なしでファーウェイ副会長に刑事責任を課すはずもなく、また米中首脳会談と同時進行の逮捕に踏み切ることはできない。

 ゆえに、ファーウェイ社はZTE社以上に米政府から厳しい処罰を受けるだろう。

 また、確実な証拠をつかまれた以上、中国政府も同事件を理由として、この間に達成した合意を破れない。

 トランプ政権の綿密な計算の下で行われる逮捕劇にマーケットは最初驚くが、その後、すぐその戦略を理解し、また、ある意味では「歓迎」する向きになる可能性さえあるのではないかと思う。

 実際、ZTE社を制裁できたのは、FBIの手柄…
米政府がファーウェイ・ショックのタイミングを 演出!? 市場も歓迎、株もドル/円も底打ち? ブログ

米政府がファーウェイ・ショックのタイミングを 演出!? 市場も歓迎、株もドル/円も底打ち?

■ファーウェイ・ショックで株価大暴落! 昨日(12月6日)、「ファーウェイ・ショック」が起きた。

 「ファーウェイの副会長で、創立者の任正非氏の娘でもある孟晩舟さんがカナダで逮捕され、アメリカに引き渡される予定である」という報道が流れた途端、米国株先物から大暴落が始まり、日経平均先物に至っては、ザラ場では一時、11月21日(水)安値を下回り、2万1000円の節目に迫った。

日経平均先物 日足(出所:Bloomberg)

 マーケットにとって、この出来事がサプライズであることは間違いないが、事件の内容はかなり深く、市場関係者の想定をはるかに超えていたこともあって、逆にマーケットへの影響は一時的に留まるのではないかと思う。

 なにしろ、事件の真相が解明されるとしても、それは少しずつのことだろう。そうなると、市場関係者は逆に冷静になっていくはずだと推測される。

 まず、昨日(12月6日)のショックは、「せっかく米中対立が一服したのに、同事件でまた激化するのではないか」といった懸念に由来したに違いない。

■ファーウェイ副会長逮捕は巧妙に仕組まれていた? しかし、孟さんの逮捕は、実は報道された昨日(12月6日)ではなく、なんと12月1日(土)だったことがわかり、市場関係者の多くは逆に冷静になれたのではないかと思う。

ファーウェイの孟晩舟副会長のプロフィール(ファーウェイ公式サイトより)ファーウェイ創業者・任正非氏の長女であり、ファーウェイ副会長の孟晩舟氏。ファーウェイ入社当初は任正非氏との親子関係を隠し、受付嬢からキャリアをスタートしたという。

 12月1日(土)と言えば、アルゼンチンでトランプ米大統領と習近平中国国家主席が会談した日ではないか。要するに、米政府は会談しながら、孟ファーウェイ副会長の逮捕に踏み切ったのだから、最初から戦略の一環として実行していたことがわかる。

 となると、トランプ政権が最初から徹底的に中国への対抗策として計画した行動なので、米中対立が再度激化するリスクも計算済みだと言える。この逮捕自体も、もはや“談判”の一部であり、また、合意順守を中国に迫る計画の一部として理解できれば、市場関係者のショックもやわらぐのではないかと思われる。

 そして何よりも、ファーウェイ社を事実上、米国から追い出した米国政府は本気だ。ファーウェイ社を追い込む作戦が、もう何年も前からスタートしていたことは、もはや公然の秘密で、中国ZTE社へ厳しい制裁を下したのも、ファーウェイ社制裁への布石と言われるほどだった。

■米政府はファーウェイ社追及の絶好のタイミングを待っていた ZTE社にしてもファーウェイ社にしても、いろいろな疑惑がある中で、最も大きな容疑は米国の対イラン制裁に違反するイランとの秘密貿易、また金融取引であろう。

 ZTE社はその容疑を事実上認め、莫大な罰金を米政府に収め、また10年間米政府の監督下に置かれることで延命しているが、ファーウェイ社への追及は、今まで表面上はまったく動きがなかった。

 しかし、今回の逮捕でわかったのは、米政府は確実な証拠をつかんでおり、絶好のタイミングを待っていたということだ。確実な証拠なしでファーウェイ副会長に刑事責任を課すはずもなく、また米中首脳会談と同時進行の逮捕に踏み切ることはできない。

 ゆえに、ファーウェイ社はZTE社以上に米政府から厳しい処罰を受けるだろう。

 また、確実な証拠をつかまれた以上、中国政府も同事件を理由として、この間に達成した合意を破れない。

 トランプ政権の綿密な計算の下で行われる逮捕劇にマーケットは最初驚くが、その後、すぐその戦略を理解し、また、ある意味では「歓迎」する向きになる可能性さえあるのではないかと思う。

 実際、ZTE社を制裁できたのは、FBIの手柄…
パウエル発言に小躍りする市場に落とし穴。 米利上げ早期停止観測が間違っていたら… ブログ

パウエル発言に小躍りする市場に落とし穴。 米利上げ早期停止観測が間違っていたら…

■市場はFRBのハト派示唆を待っていた!? ドルインデックスは一昨日(11月28日)、高値再更新の一歩手前で失速した。FRB(米連邦準備制度理事会)議長の講演を受けた値動きだった。

ドルインデックス 4時間足(出所:Bloomberg)

 「これで米ドル高も終わったのでは」という論調が再度強まっているが、前回の本コラムで指摘したように、これは米早期利上げ終了観測の一環であり、このような値動きになったことは、市場関係者の解釈に依存する側面が大きかったとも言える。

【参考記事】

●記録的な外人売りの割に日経平均は大して下がっていない。米ドル/円は現状「割安」!?(2018年11月26日、陳満咲杜)

 もっとも、10月から最近まで続いてきた米国株の大型調整が米利上げ見通しからくる圧力と解釈されていた経緯があったことも大きかった。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

 換言すれば、米国株の切り返しに何らかの「理由付け」が必要ならば、米利上げ見通しの修正がもっともふさわしく、また、解釈されやすいからだ。

■パウエル発言の出たタインミングが絶妙だった だから、11月28日(水)のパウエルFRB議長の講演が重要であった。

 今の政策金利は「中立水準をわずかに下回る」という発言が議長から出ると、マーケットはたちまち米利上げが近く終了するとの観測を広げた。言い換えれば、マーケットはFRBに何らかの「ハト派」示唆を待っていたので、こういった発言のタイミングが絶妙だったと言える。

市場がFRBになんらかの「ハト派」示唆を待っていたところに、絶妙のタイミングでパウエル議長の「中立水準をわずかに下回る」発言が出たと言える (C)Bloomberg/Getty Images News

 FOMC(米連邦公開市場委員会)のドットチャートから市場の観測を読む限り、パウエルFRB議長が講演する前は、2018年に1回、2019年に3回の利上げが示唆されていたが、講演後はCMEフェドウォッチツールによると、2019年12月までに合計4回以上利上げする確率は9%程度と、11月27日(火)の12%から急速に低下。また、ひと月前の18%からは半減しており、市場センチメントの急変がうかがえる。

 さらに、11月29日(木)に公表した11月FOMC議事要旨では、追加利上げが「間もなく」正当化される公算が大きいとの見解が表明される一方、利上げ打ち止め時期やその伝達方法を巡って議論が始まったことも記録されており、市場センチメントの急変を一段と支持する内容になっていた。

■急変した市場センチメントに大きな「落とし穴」も しかし、急変した市場センチメントには大きな「落とし穴」もあるかと思う。

 確かにパウエルFRB議長の発言やFOMC議事録の変動を「ハト派」と捉えても不思議ではないが、これで市場センチメントの大幅急変のすべてを正当化することはできないと思う。

 足元の市場センチメントは、明らかに利上げの早期打ち止めに傾いているが、FRBが表明した「本音」よりは、かなり先走りしている模様だ。

 パウエルFRB議長は、単に中立金利に近付いてきたことを表明しただけだし、また、FOMC議事録は「機械的な利上げ」から「状況次第の利上げ」へのスタンス変化を表明しただけなのに、利上げの早期打ち止めと解釈されるのは性急であり、また、間違っているリスクも大きいのではないかと思う。

 市場センチメントの急変や先走りはよく見られる現象であるだけに、今回もその「不確実性」に注目しておきたい。

 まとめてみると、マーケットは米早期利上げ打ち止めを織り込もうとしているが、FRBのこれからのステップを先取りしようとした分、不確実になる可能性が大きい。

 逆説的になるが、米利上げのステップがこれから再度強まってくる場合、目下の市場センチメントが大きく裏切られることが推測され、また、値動きも大きくなってくる公算が高い。

 さらに注目すべきなのは、米早期利上げ打ち止め観測が強まる今…
パウエル発言に小躍りする市場に落とし穴。 米利上げ早期停止観測が間違っていたら… ブログ

パウエル発言に小躍りする市場に落とし穴。 米利上げ早期停止観測が間違っていたら…

■市場はFRBのハト派示唆を待っていた!? ドルインデックスは一昨日(11月28日)、高値再更新の一歩手前で失速した。FRB(米連邦準備制度理事会)議長の講演を受けた値動きだった。

ドルインデックス 4時間足(出所:Bloomberg)

 「これで米ドル高も終わったのでは」という論調が再度強まっているが、前回の本コラムで指摘したように、これは米早期利上げ終了観測の一環であり、このような値動きになったことは、市場関係者の解釈に依存する側面が大きかったとも言える。

【参考記事】

●記録的な外人売りの割に日経平均は大して下がっていない。米ドル/円は現状「割安」!?(2018年11月26日、陳満咲杜)

 もっとも、10月から最近まで続いてきた米国株の大型調整が米利上げ見通しからくる圧力と解釈されていた経緯があったことも大きかった。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

 換言すれば、米国株の切り返しに何らかの「理由付け」が必要ならば、米利上げ見通しの修正がもっともふさわしく、また、解釈されやすいからだ。

■パウエル発言の出たタインミングが絶妙だった だから、11月28日(水)のパウエルFRB議長の講演が重要であった。

 今の政策金利は「中立水準をわずかに下回る」という発言が議長から出ると、マーケットはたちまち米利上げが近く終了するとの観測を広げた。言い換えれば、マーケットはFRBに何らかの「ハト派」示唆を待っていたので、こういった発言のタイミングが絶妙だったと言える。

市場がFRBになんらかの「ハト派」示唆を待っていたところに、絶妙のタイミングでパウエル議長の「中立水準をわずかに下回る」発言が出たと言える (C)Bloomberg/Getty Images News

 FOMC(米連邦公開市場委員会)のドットチャートから市場の観測を読む限り、パウエルFRB議長が講演する前は、2018年に1回、2019年に3回の利上げが示唆されていたが、講演後はCMEフェドウォッチツールによると、2019年12月までに合計4回以上利上げする確率は9%程度と、11月27日(火)の12%から急速に低下。また、ひと月前の18%からは半減しており、市場センチメントの急変がうかがえる。

 さらに、11月29日(木)に公表した11月FOMC議事要旨では、追加利上げが「間もなく」正当化される公算が大きいとの見解が表明される一方、利上げ打ち止め時期やその伝達方法を巡って議論が始まったことも記録されており、市場センチメントの急変を一段と支持する内容になっていた。

■急変した市場センチメントに大きな「落とし穴」も しかし、急変した市場センチメントには大きな「落とし穴」もあるかと思う。

 確かにパウエルFRB議長の発言やFOMC議事録の変動を「ハト派」と捉えても不思議ではないが、これで市場センチメントの大幅急変のすべてを正当化することはできないと思う。

 足元の市場センチメントは、明らかに利上げの早期打ち止めに傾いているが、FRBが表明した「本音」よりは、かなり先走りしている模様だ。

 パウエルFRB議長は、単に中立金利に近付いてきたことを表明しただけだし、また、FOMC議事録は「機械的な利上げ」から「状況次第の利上げ」へのスタンス変化を表明しただけなのに、利上げの早期打ち止めと解釈されるのは性急であり、また、間違っているリスクも大きいのではないかと思う。

 市場センチメントの急変や先走りはよく見られる現象であるだけに、今回もその「不確実性」に注目しておきたい。

 まとめてみると、マーケットは米早期利上げ打ち止めを織り込もうとしているが、FRBのこれからのステップを先取りしようとした分、不確実になる可能性が大きい。

 逆説的になるが、米利上げのステップがこれから再度強まってくる場合、目下の市場センチメントが大きく裏切られることが推測され、また、値動きも大きくなってくる公算が高い。

 さらに注目すべきなのは、米早期利上げ打ち止め観測が強まる今…
記録的な外人売りの割に日経平均は大して 下がっていない。米ドル/円は現状「割安」!? ブログ

記録的な外人売りの割に日経平均は大して 下がっていない。米ドル/円は現状「割安」!?

■原油、ビットコイン暴落でも“リスクオフの円買い”確認されず 米ドル高のトレンドは続いている。さらに、米ドル/円もリンクした値動きを強め、外貨安に起因してクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の多くは軟調な値動きだが、総じて「底割れ」を回避できるパターンを示しており、リスクオフの円買い云々はやはり適切ではないと思う。

世界の通貨VS円 日足 

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足) 

 ここで誤解しないでいただきたいのは、リスクオフかどうかは問題ではなく、“リスクオフの円買いが確認されていない”ということが重要ということだ。

 米国株市場の不振、さらに原油市場やビットコインの暴落に照らして考えれば、本来ならリスクオフの円買いが猛烈に発生してもおかしくないが、円の動きはかなり限定的だったので、円のパフォーマンスに限定すれば、リスクオフの動きとはほど遠いと言える。

NYダウ 日足

(出所:Bloomberg)

WTI原油先物 日足(出所:Bloomberg)

ビットコイン/米ドル 日足 

 (リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ビットコイン/米ドル 日足) 

米ドル/円 日足

 (リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)  

■米国株に先行して日経平均が反発したのは興味深い値動き 円の値動きと関連しているかどうかは定かではないが、先週末(2018年11月23日)、米国株は一段安の様相を見せたものの、本日(11月26日)、日経平均は先行してリバウンドし、小さい「ダイバージェンス」の様子をうかがわせた。

NYダウ 日足

(出所:Bloomberg)

日経平均 日足

(出所:Bloomberg)

 NYダウも、S&P500も10月末安値に再度迫っている中、日経平均の先行反発は興味深い値動きだ。

■2018年の日本株は海外投資家が記録的な売り越し 日経平均について、今年(2018年)注目される大きな現象は、いわゆる「外国人売り(海外投資家による売り。国内投資家による海外経由も含む)」だ。

 統計によると、2018年年初来、海外投資家の売り越しはすでに11兆円を超えており、これは間違いなく記録的な規模だ。

 ちなみに、先物などデリバティブを含まない売り越しの元最高記録は、1987年の7兆円だったが、当時はデリバティブ取引が限定的だったので、海外投資家によるトータルの売り越し額は今年(2018年)が最大規模になるに違いない。

 問題の焦点は、なぜ「外人売り」がこんなに大規模になるのか…