陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

なぜ、2019年年末の株価は安泰なのか? 分水嶺の200日線上にある豪ドル/ドルに注目 ブログ

なぜ、2019年年末の株価は安泰なのか? 分水嶺の200日線上にある豪ドル/ドルに注目

■米下院のトランプ大統領弾劾訴追可決にも、市場は動かず 米下院によるトランプ米大統領弾劾案の可決があったが、市場はまったくと言っていいほど波乱にならなかった。共和党主導の上院で可決される見通しは、今のところは皆無に近いから、市場が問題視していないことは明らかである。

 S&P500は昨日(12月19日)も高値を更新、「史上最高値更新」という点では、もう6取引日連続で更新を果たし、弾劾案を嘲笑するような強さを見せている。

S&P500 日足(出所:TradingView)

 一方、年末に近づき、一段と変動率の低下もみられた。為替市場では、英ポンド以外の主要通貨は総じて値動きが限定され、「トランプ砲」に助けてもらいたいほどだとトレーダーたちが冗談を言うくらいだ。

■英ポンドの反落は「買われすぎ」の修正にすぎない 英ポンドは高値から反落、表面上、ジョンソン英首相の発言に左右されたように見えるが、本質的にはこれ以前に起こった英与党圧勝による急騰に対する反動であり、また、英ポンドの「オーバーボート」に対する修正にすぎないとみる。

英ポンド/米ドル 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 日足)

 もっとも、「オーバーボート」とは買われすぎなので、かなり強気トレンドでなければ買われすぎもないはずだ。ゆえに、目先、英ポンドは調整しているが、ブル(上昇)トレンド自体は維持されており、いったん頭打ちがあっても、ベア(下落)トレンドへ転換することはなかろう。しばらく高値圏での保ち合いに留まるだろう。

■ユーロと豪ドルが英ポンドに続く可能性あり そうなると、そのほかの主要外貨、特にユーロと豪ドルの切り返しがこれから英ポンドのパフォーマンスを追ってくる可能性がある。

 英ポンド/米ドルの急伸も一服する兆しが鮮明になってきたので、ユーロや豪ドルの優位性がじわじわ浮上してきている。これはユーロ/英ポンドや英ポンド/豪ドルのチャートを見るとよくわかる。

ユーロ/英ポンド 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/英ポンド 日足) 

英ポンド/豪ドル 日足 (リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/豪ドル 日足)  

■ドルインデックスは200日線を簡単には上回れないだろう こういった見方ができる背景には、米ドル全体の反落基調の継続がある。

 これまでのコラムで既述のように、ドルインデックスにとっては200日移動平均線(200日線)が重要であり、これを下回れば一段と反落の余地が拡大する。そして、現在は反落の初期段階にある可能性が大きい。

【参考記事】

●株も米ドル/円も今回は経験則を覆す!?日経平均、米ドル/円の上昇余地は大きい!(2019年12月13日、陳満咲杜)

 前述の200日線を巡る攻防は、10月、11月に続き、今月(12月)前半もあったから、その明白な下放れで10月安値を割り込み、「三度目の正直」で割り込みの可能性を証左しただけに、これから米ドル全体の反発があったとしても、同線を簡単には上回れないだろう。

ドルインデックス 日足(出所:TradingView)

 さらに、200日線を巡る「最後の攻防」では、プライスアクション上における「ダマシ」のサインを灯してから安値更新を果たしたわけなので、そのような可能性が一層高まる。

 そのサインは12月6日(金)の陽線だった。200日線をいったん下回ってから高く大引けし、いったん「強気リバーサル」のサインを点灯したから、本来そこから切り返しを継続してもおかしくなかった。しかし、その後は一貫して下落を続け、同日安値の割り込みをもって「ダマシ」のサインを点灯、下落トレンドの継続を強く示唆したわけだ。

ドルインデックス 日足(出所:TradingView)

 10月安値を割り込んだこともあって、下値余地は大幅に拡大しており、目先の反発はあくまで途中のスピード調整と見なされる。12日6日(金)安値の97.20前後は一転してレジスタンスと化す公算が高い。

 整合性を持ってユーロ/米ドルを見ると…
株も米ドル/円も今回は経験則を覆す!? 日経平均、米ドル/円の上昇余地は大きい! ブログ

株も米ドル/円も今回は経験則を覆す!? 日経平均、米ドル/円の上昇余地は大きい!



■予想どおり、英ポンドの上昇相場が続いている 英ポンドは急騰した。前回のコラムで指摘したとおり、英ポンドのブル(上昇)相場はしばらく続くから、わかりやすい市況であると思う。

【参考記事】

●英ポンドの上昇は当面続く! わかりやすい時期に多く稼がないと!!(2019年12月6日、陳満咲杜)

英ポンド/米ドル 日足 

(出所:TradingView)

 当然のように、繰り返し言ってきた英ポンド/円のリードも然り。英ポンド/円が主要クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)を引っ張る形で、総じて円売り優勢の展開となり、それゆえ、米ドル/円も底堅い展開となっている。

世界の通貨VS円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)

 「それは、選挙の出口調査で英保守党の勝利が予測されたからにすぎないだろう」といった反論が聞こえるが、相場の本質は前回のコラムでも強調したように、「値動きが先」なので、相場の内部構造に注目しておけば、選挙に関する予測も、実は相場自体が一番正しいことを悟れる。

【参考記事】

●英総選挙の出口調査で保守党が圧勝!対中関税も見送りへ…ポンド急騰&円下落(2019年12月13日)

●英ポンドの上昇は当面続く! わかりやすい時期に多く稼がないと!!(2019年12月6日、陳満咲杜)

 要するに、相場は市場参加者の集大成であるから、あらゆる予測や思惑を織り込んでいる。だからこそ、トレーダーなら、政治や選挙に関する知識がなく、または予測できなくても、いわゆる識者の見解を読まなくても(往々にして読めば読むほど難しくなり、余計結論が出せない)、値動きをていねいにフォローしておけば、おのずと正しい判断ができる。もちろん、順張りの意味合いにおいてだが…。

■為替市場は一段とリスクオン、クロス円はさらなる上昇へ さて、2019年の年末が近づいている中、為替市場は一段とリスクオンの環境に恵まれている。これまでのコラムでも話してきた2つの検証条件が揃ったので、リスクオンの結果として、主要クロス円が一段と上昇することが予想できる。

【参考記事】

●米ドル/円は112 .41円への道筋がついた! 200日線乗せ達成で株高・円安傾向鮮明に(2019年11月29日、陳満咲杜)

 2つの条件は、実にシンプルである。1つはドルインデックスが200日移動平均線(200日線)を下回ること。もう1つは、米ドル/円が200日線を上回ることだ。現在両方確認されているから、クロス円にとって追い風に間違いない。

ドルインデックス 日足(出所:TradingView)

米ドル/円 日足(出所:TradingView)

 昨日(12月12日)、4円に近い上昇幅を見せた英ポンド/円は、確かに目先過熱気味で、すぐに上値を追えるかどうかは検証する必要があるが、2019年年内に150円の節目をトライすることは、もはや短期スパンでの目標と化すだろう。ユーロ/円や豪ドル/円の追随もこれからだとみる。

 株の方も順調だ。トランプ米大統領による「米中合意間近」のツイートもあって、米主要3指数は揃ってまた史上最高値を更新した。

NYダウ 日足(出所:TradingView)

 それに比べ、日経平均や米ドル/円のパフォーマンスはかなり「出遅れて」いるようにみえ、これからの上昇余地が大きいだろう。

米ドル/円 月足(出所:TradingView)

 日経平均の2018年高値更新があっても、もはやターゲットではなく、通過点にすぎないだろう。株の強気変動は、少なくとも来年(2020年)前半まで継続できる見通しで、年間通して強気基調を維持できてもおかしくないから、目先は「もうはまだなり」の段階かとみる。

■ウォール街さえ見通しを誤った根本の原因は? 株も米ドル/円も、なぜか弱気予想がなお多く、また近々の暴落を待つ方が多いと聞く。こういった話を聞くと、強気派の自分は逆に安心できる。なぜなら、猫も杓子も強気になった場合は、むしろ天井に近いからだ。反対の立場に立つ方が多いほうが、シナリオの強化につながる。

 ここ2、3年、ウォール街でさえ、繰り返し株暴落の可能性に警鐘を鳴らしてきたことに照らして考えると、米国株の強気トレンド維持や高値更新は納得できる。

 この意味では、強気派の筆者は、弱気派のスタンス維持を祈るほど、反対勢力の存在に安堵している。

 では、ウォール街さえ見通しを誤った根本の原因はどこにあるのか? それはほかならぬ、経験則に頼りすぎて、より大きな歴史的スパンの存在に気配りできなかったからではないかと思う。

 2009年安値を起点とした米国株の強気変動があまりにも長く続いてきたから、「暴落必至」といった判断につながりやすかったというほかあるまい。

 ちなみに、現時点ではウォール街のコンセンサスは改まっており、来年(2020年)は株のブル基調継続、といった予測が大半を占めている模様だ。

 株の話はさておき、米ドル/円の行方にも、悲観論が…
英ポンドの上昇は当面続く! わかりやすい時期に多く稼がないと!! ブログ

英ポンドの上昇は当面続く! わかりやすい時期に多く稼がないと!!

■米中協議に暗雲漂い、米ドル/円の上値は重い 米中協議にまた暗雲が漂ってきたので、米ドル/円はまた上値が重くなってきた。

 せっかく乗せていた200日移動平均線を目先、再度下回り、スピード調整の一環としてフォローしていくしかないとみる。

【参考記事】

●米ドル/円は112 .41円への道筋がついた! 200日線乗せ達成で株高・円安傾向鮮明に(11月29日、陳満咲杜)

米ドル/円 日足(出所:TradingView)

 一方、英ポンド/円の高値更新に見られたように、主要クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)は総じて底堅く推移。

 また、本コラムでずっと指摘してきたように、英ポンド/円がリードする展開が引き続き確認されており、リスクオン環境の継続を示唆。

【参考記事】

●主要クロス円の反落は押し目買いの好機。NYダウのバブルは3万ドルを超えてから!(11月15日、陳満咲杜)

英ポンド/円 日足(出所:TradingView)

 リスクオンとリスクオフの検証は、主要クロス円のパフォーマンスをもって行えば、よりやりやすいだろう。

■主要クロス円の高値トライは、まだこれから 一般論として、典型的なリスクオフは米ドル高・円高の同時進行(リーマンショック後の市況が代表的)と思われるが、リスクオンなら、その反対で米ドル安・円安の同時進行となる。

 もちろん、ここでいう米ドルの高安は米ドル全体(ドルインデックス)を指し、米ドル/円は別格扱いだ。また、米ドル/円と米ドル全体は、往々にして連動しない特徴を知っておくべきだ。

米ドル/円&ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

 本稿執筆時点では、米ドル全体の再反落が確認され、これからの米ドル安の蓋然性が高まる一方、米ドル/円における円安進行はいったん鈍くなっているように見える。

 それでも、英ポンド/円の高値更新が見られているから、結論から申し上げれば、主要クロス円の高値トライはまだまだこれから、米ドル/円の中段保ち合いがあっても、早晩、上値を再打診する公算。

世界の通貨VS円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)

 クロス円のブルトレンドが…
米ドル/円は112 .41円への道筋がついた! 200日線乗せ達成で株高・円安傾向鮮明に ブログ

米ドル/円は112 .41円への道筋がついた! 200日線乗せ達成で株高・円安傾向鮮明に

■NYダウの3万ドル乗せが現実的なターゲットに! 米中合意の結果を待つ、静かな市況が続いているが、米国株は「静かに」市場最高値を再更新、米ドル/円も「静かに」200日移動平均線(200日線)に乗せてきた。

【参考記事:FX初心者のための基礎知識入門】

●移動平均線は、テクニカル指標の超定番。SMA・WMA・EMAの違いは…?

NYダウ 日足(出所:TradingView)

米ドル/円 日足(出所:TradingView)

 前回のコラムで指摘した2つの条件のうち、1つがまずクリアされたことで、メインシナリオは一層鮮明になってきた。

【参考記事】

●「相場が間違っている」という論調は危険!カギは米ドル/円と200日線の関係にあり(2019年11月29日、陳満咲杜)

 来年(2020年)に向けて、株高・円安のトレンドは、目先なおその途上にあるというメインシナリオは不変、NYダウの3万ドル乗せが現実的なターゲットとなってきた。

 いつものように、専門家の論調や市場センチメントは市況に合わせて変化するものなので、出そろったウォール街大手による来年(2020年)の予測の大半も、株高の継続に傾いてきた。

■トレンドに乗れていなかった機関投資家がこれから参入? ウォール街の面々は、ここ数年、ずっと米国株バブルの可能性を指摘してきた。急落するたびに、「今回こそ暴落」とか、「リーマン級の調整」などと警鐘を鳴らしていた。ゆえに、株高が続いているにもかかわらず、機関投資家の多くは、過去の平均と比べると現金比率が高めで、トレンドに乗ってこなかったと報道されている。

 だから、今のトレンドは「長く維持されず、早晩崩れる」という見方が圧倒的だったが、現在は一転して、「現金の割合が多いから、これからトレンドを押し上げる余地が大きい」と解釈されている模様だ。

 このように、割と簡単な材料1つでも、解釈によって買いでも売りでも、どっちの根拠にもなりうる。筆者が常に主張してきたように、「材料に関する他人の解釈は、たとえお偉い先生のお話でも距離をおくべきだ」ということの本当の理由は、実にそこにある。

 あえて聞くとするなら、材料に流されずにあえて反対意見を述べる方の話だ。なぜなら、少なくとも風見鶏ではないから、もしかしたら“慧眼持ち”の可能性がある(もちろん単に“曲がり屋”であるリスクも大きいが…)。

 つまるところ、市況に合わせて材料を解釈する話を聞く暇があるなら、相場をもっと張るべきだと思う。

■株高はやっと「正当化」され、為替はこれから「正常化」へ ウォール街の見方に話を戻すが、今はアナリストの大半が「買い余力たっぷり」を根拠に、来年(2020年)米株高継続のシナリオを提示しているようだ。

 S&P500の2020年のターゲットは、クレディ・スイスの10.36%高、ゴールドマン・サックスの9.55%高をはじめ、株高予想が約8割にのぼり、7%以上の上昇率(いずれも現在と比べ)を予想。モルガン・スタンレーやUBSなど少数派(株安予想)でも、マイナス3%超の予想に留まり、来年(2020年)は米国株が調整に向かっても値幅限定という見方だ。

 日本株に関しても同じだ。散々割高と言われる日経平均に関して、最近になって「相場は悲観の中で生まれ」 、「2018年秋→2018年クリスマスへの株価下落は、今年(2019年)の製造業指数悪化を織り込む動きだった 」、「2018年クリスマス→今日(2019年11月)までの株価上昇は、今秋の製造業指数底入れを織り込む動きだった 」と解釈され、そして、本日(11月29日)の日経新聞の報道では、2019年4~9月非製造業の純利益率は最高水準を更新、生産性改善の兆しも濃厚になってきたという。

 要するに、株が上がれば、解釈もあとからついてきて、市場センチメントだけでなく、ファンダメンタルズの材料さえも、あとからついてくるから、相場の真実である「価格が先で材料が後」が再度証明されたわけだ。

 株高がようやく「正当化」された以上、為替市場の「正常化」もこれからだと思う。株高・円安のセットはまだまだこれからなので、米ドル/円の200日線乗せはあくまで最初のサインとみるべきだ。

 11月7日(木)高値109.50円のブレイクもあり、これからやってくる110円の節目打診やブレイクはもはや通過点にすぎず、筆者が繰り返し指摘してきたように、2019年4月高値112.41円へ「全値戻し」への道筋をすでにつけたとみる。

米ドル/円 日足(出所:TradingView)

 米ドル/円の堅調は、最近の日足におけるサインが鮮明…
「相場が間違っている」という論調は危険! カギは米ドル/円と200日線の関係にあり ブログ

「相場が間違っている」という論調は危険! カギは米ドル/円と200日線の関係にあり

■香港デモ激化も、日経平均は底堅く推移 米中合意がなかなか発表されない中、いろんな報道や憶測が出て、マーケットも一進一退を繰り返している。

 もっとも、日米とも株高の局面にあり、高値圏でのスピード調整といった側面が大きく、材料による影響はたいぶ低下しているように見える。

 香港デモ激化の中、米上下院による「香港人権法案」が可決され、香港株の急落をもたらしたが、日経平均は底固かった。日経225先物は昨日(11月21日)ザラ場において一時、2万2720円にトライしたものの、大引けは2万3130円を回復、執筆中の現時点で一時、2万3220円を達成し、完全回復の様子を示している。

日経225先物 1時間足(出所:TradingView)

 米ドル/円も108.28円にトライしたものの、その後、切り返し、現在まで、値幅は限定的ではあるが、堅調な値動きを保っているようにみえる。

米ドル/円 1時間足 (出所:TradingView)

 日米株とも「割高」と言われ、また、専門家と世の中の両方から「手を出すな」、「暴落必至」、「様子見すべき」などの声が多数聞こえる中、日米株のスピード調整は「意外」に値幅が限定的であり、また、前述のように、リスクオフを引き起こしてもおかしくなかった材料に「鈍感」になってきたことは、示唆に富んでいると思う。

■見方の高度な一致は「異常」な状況 だいぶ前に本コラムにて書かせていただいたように、そもそも「正常な相場」は常に意見の相違が目立つもので、専門家同士においても、一般投資家同士においても、皆の意見がわかれ、また、対立する状況は日常茶飯事である。

【参考記事】

●正しいのは相場! 市場心理に惑わされず、勇気をもって行動した少数派が勝つ!(2019年9月20日、陳満咲杜)

 それに対して、「異常な相場」の特徴は他ならぬ、見方の高度な一致だ。専門家同士や一般投資家同士のみでなく、専門家グループにおける共通認識が、巷の共通認識あるいはセンチメントとかなり合致している時は、気をつけなければいけない。

 なぜなら、それは「異常」な状況なので、相場に突っ込まれるリスクの方が高いからだ。

 そもそも相場の不確実性から言えば、相場参加者の合意が「突っ込まれ」また「裏切られる」リスクのほうが高いこと自体は理にかなう。

 そうでないと、猫も杓子も相場で食っていけるから、誰も働かなくてすんでしまう。だから、見方や意見の高度な一致は信頼できるサインではなく、むしろ疑わしいシグナルなので、安易に流されないように注意が必要だ。

 もちろん、これは総論で、個別の事象についてはケースバイケースになることもあることは併記しておきたい(この意味では、今回、総意自体が正しいという可能性もある)。

 重要なのは相場自体の値動きだ。猫も杓子も…
主要クロス円の反落は押し目買いの好機。 NYダウのバブルは3万ドルを超えてから! ブログ

主要クロス円の反落は押し目買いの好機。 NYダウのバブルは3万ドルを超えてから!

■ユーロ/円、豪ドル/円の反落が米ドル/円の頭を押さえた 米中合意の可能性が注目される中、為替相場は米ドル全体がやや米ドル高の方向に傾いた。ドルインデックスは200日移動平均線(200日線)の支持を確認した形で98前半を再打診、主要外貨のうち、ユーロと豪ドルの反落が大きかった。

【参考記事:FX初心者のための基礎知識入門】

●キング・オブ・テクニカル指標。相場の動きをなめらかにする移動平均線とは?

ドルインデックス 日足(クリックで拡大)(出所:TradingView)

 クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)において、ユーロ/円と豪ドル/円の反落が米ドル/円の頭を押さえ、200日線乗せの本格化を後ずれさせた感じだ。

世界の通貨VS円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足) 

米ドル/円 日足(クリックで拡大)(出所:TradingView) 

 しかし、米国株を中心に、堅調な値動きが続く以上、リスクオフに逆戻りはなかろう。したがって、ドルインデックスの反発をリスクオフの前兆とは解釈できないだろう。

 要するに、途中のスピード調整という位置づけでフォローしていけば、メインシナリオから外れることはない。

 なにしろ、典型的なリスクオンの局面では、「米ドルは対円のみ上昇の傾向が鮮明となり、米ドルは対主要外貨ではむしろ反落した結果、主要クロス円が揃って上昇を加速する」といった市況が想定されるから、本格的なリスクオンの局面はこれからだともいえる。

■バブルの話はNYダウが3万円台に乗せてからでも 筆者が繰り返し指摘してきたように、足元の米国株はバブルではないことも、非常に重要な視点である。米国株のバブル化があれば、むしろこれからなので、それは為替市場の値動きと整合性をもって表れるだろう。

【参考記事】

●米国株の本格的なバブルはこれからだ! 米ドル/円の反落はスピード調整にすぎない(2019年11月1日、陳満咲杜)

 具体的な数値を言うのは躊躇されるところもあるが、あえて言うなら、NYダウが3万ドルの大台を超えたあとでバブル云々を言っても遅くなかろう(とはいえ、NYダウの3万ドル達成があればバブルと認定できる、とは限らないから、ご注意を)。

NYダウ 日足(クリックで拡大)(出所:TradingView) 

 いずれにせよ、目下の米ドル/円は非常に「出遅れている」感が強い。何しろ、今月(11月)の米ドル/円は、変動率が非常に小さく(値幅は1.6円程度しかない)、このままでは2019年年初来、最低水準の変動率となる。

 しかし、2019年年初来の値幅自体も大したものではない。4月高値112.41円から8月安値104.45円で計算すれば、約8円程度なので、このままで年末を迎えれば、昨年(2018年)の10円足らずよりも低い水準を記録してしまう。

米ドル/円 週足(クリックで拡大)(出所:TradingView) 

 昨年(2018年)は歴史的に低い変動率だったことから考えて、記録更新の可能性もあるが、やはりこれから動く可能性も大きいのではないかと思う。今年(2019年)ももう少しで終わるところではあるが…。

 ゆえに、仮にこれから米ドル/円が上昇を加速していっても、別にサプライズではなかろう。「正常な」市況に戻るだけなので、むしろ当然な成り行きであろう。米ドル/円の続伸、また、上昇モメンタムの加速があれば、クロス円の上昇なしでは整合性が取れないから、前述のドルインデックスの位置づけに関する見方と合致する。

 前述の見方が正しければ、目下みられるユーロ/米ドルの…
8月の安値トライは究極のダマシ! 米ドル/円は2018年高値114.55円突破へ! ブログ

8月の安値トライは究極のダマシ! 米ドル/円は2018年高値114.55円突破へ!

■米ドル/円は一時、2019年8月高値をブレイク! 米国株は高値(もちろん史上最高値)を更新し続け、米ドル/円も切り返してきた。

NYダウ 日足 

(出所:TradingView) 

米ドル/円 日足 

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 前回(2019年11月1日)のコラムのタイトル「米国株の本格的なバブルはこれからだ! 米ドル/円の反落はスピード調整にすぎない」が示したとおりの値動きだ。

【参考記事】

●米国株の本格的なバブルはこれからだ!米ドル/円の反落はスピード調整にすぎない(2019年11月1日、陳満咲杜)

 前回執筆日(11月1日)の安値が押し目買いのポイントであったことが、目下の値動きによって証左されただけでなく、昨日(11月7日)、一時109.49円にトライして、8月1日(木)高値の109.33円をブレイクした、という点も見逃せない。同高値のブレイクは重要な意味合いをもち、これからの見通しを一段と明るくしたと言っても過言ではない。

■8月高値突破の可能性はテクニカル的に根拠があった もっとも、11月に入ってからの切り返しは、早晩8月高値の突破を果たす、という可能性を示していた。テクニカル上の詳細を昨日(11月7日)の夜配信したレポートをもって説明する。

【参考記事:FX初心者のための基礎知識入門】

●歴史は繰り返す!? 相場予測に欠かせないテクニカル分析って、なにを分析するの?

 原文は以下のとおり。

米ドル/円 日足(2019年11月7日配信、11月8日再作成) 

(出所:ひまわり証券) 

 ドル/円は1日から切り返し、同日安値107.89は重要なポイントを示した。まず、8月安値から10月安値を連結するサポートライン(紫)と合致、次は一目均衡表における基準線のサポートを証明、最後にGMMAにおける短期スパンの支持も印証した値動きだとみる。

 200日線にめぐる攻防、本日の値動きからみるとロング勢に軍配を挙げられ、本日ザラ場安値(現時点)も短期スパンの機能を証明している。昨日高値を完全にブレイクできれば、プライスアクションのサインも再び強気として解釈され、上値トライしやすい環境に。

 もっとも大事なのは、直近の10月30日の「スパイクハイ」風陰線(緑矢印)は8月1日の大陰線(赤矢印)と同様、109前半の抵抗を示しているが、「三度目の正直」で突破されやすいでしょう。換言すれば、「スパイクハイ」にしても、8月1日の弱気「リバーサル&アウトサイド」にしても、目先は「否定」される寸前なので、両日の高値がむしろ「磁石」の効用を発揮、値動きを引き寄せる力がある。

 ゆえに、ブレイク必至と思われ、またブレイク後の基調の一段改善で4月高値112.41への全値戻しを図るでしょう。RSIでみる現状、全く過熱になれず、上昇途中というか、上昇の初歩段階さえと読み取れ、8月高値を超えれば、息の長いトレンドへ。

 このように、8月高値のブレイクは、テクニカル的に…
米国株の本格的なバブルはこれからだ! 米ドル/円の反落はスピード調整にすぎない ブログ

米国株の本格的なバブルはこれからだ! 米ドル/円の反落はスピード調整にすぎない

■ドル/円の下落はシナリオ変更するほどの値動きではない FOMC(米連邦公開市場委員会)に日銀会合、その後、米中貿易合意に関するウワサなど材料が多く、昨日(10月31日)の為替マーケットはまた波乱となった。とはいえ、基本的には想定の範囲内、あるいは許容範囲内の値動きなので、メインシナリオは変わらない。

 メインシナリオは今まで繰り返し指摘してきたとおり、「米ドル全体(ドルインデックス)は反落する一方、米ドル/円は堅調、そして主要外貨の対米ドルでの切り返しが続くから、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)はブル(上昇)トレンドへ復帰」といったところだ。

 昨日(10月31日)、米ドル/円は大きく反落してきたが、メインシナリオを否定するほどの値動きではないことを、まず記しておきたい。

米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

 FOMCの利下げや日銀政策据え置きはほぼ予想どおりだったので、大げさに解釈する必要はないかと思う。声明文やらFRB(米連邦準備制度理事会)議長や日銀総裁の発言をいちいち取り上げ、言葉のニュアンスの分析をもって政策見通しに充てる一部市場関係者の見方も、違和感が大きい。

 つまるところ、過度な解読や解釈は不要で、マーケットのメイントレンドをしっかりフォローしていけば、ベストな判断につながるはずだと思う。

■米国株はすでにバブル? それとも続伸? たびたび指摘してきたように、2009年底値から米国株は一貫してブルトレンドを保ち、また、昨年(2018年)からたびたび高値波乱を繰り返し、特に昨年(2018年)夏から年末までの反落が大きかったから、米国株の頭打ち、またベア(下落)トレンドへの転換を予想する声は多かった。

 しかし、昨日(10月31日)、S&P500が再度史上最高値を更新し、再び悲観論者らの見方を否定したようにみえる。

S&P500 日足(出所:Bloomberg)

 ここまでくると、ベア派集団内部でも分裂が始まった模様だ。一部は従来の見方を改め、一転して「米国株バブル」論に転向、残った者の多くは一層論調を強めた。

 言い換えれば、米国株の高値更新があればあるほど、ベア派の方々は「より危険なレベルに達している、だから歴史的な大暴落は必至」といった自らの判断に、逆に自信を深めているようだ。

 相場の本質は不確実性にあり、また将来に関する断定は誰もできないが、少なくともベア派の多くはここ数年同じ論調を繰り返し、それによって「受難」してきたのが事実である。

 その上、トレンドフォローの視点では、米国株は頭打ちよりも続伸していく確率が高いことも確かなので、米国株がベアトレンドへ転換するサインを待ってから、弱気に転換しても遅くないかと思う。

 より本質的には、マーケットにおいてベア派の視点を持つ市場関係者が多く、また、米国株の続伸に疑心暗鬼の方が多数存在しているからこそ、米国株には続伸の余地があり、ブルトレンドを伸ばしていけるかと思う。

 昨年(2018年)からウォール街大手のレポートを読み漁ってきたが、90%以上が「米国株バブル、大逆転必至」の論調だったことに照らして考えると、目先ブルトレンドはまだ続く公算が高いと思う。

 ただし、一番強いS&P500でさえ、テクニカルのみの視点でも…
10月暴落説が喧伝されたが日米株は暴騰も! 米ドル/円は上昇前のスピード調整 ブログ

10月暴落説が喧伝されたが日米株は暴騰も! 米ドル/円は上昇前のスピード調整

■ドルインデックスは大きく反落し、200日線にトライ 前回(2019年10月11日)のコラムで指摘したとおり、米ドル全体(ドルインデックス)は頭打ちを果たし、大きく反落してきた。

【参考記事】

●まだ早いけど、言っちゃった!米ドル/円日足に「逆三尊」の可能性(2019年10月11日、陳満咲杜)

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

 日足における「三尊天井(※)」の形成や下放れが確認され、また200日移動平均線(200日線)にいったんトライしたのも想定の範囲内であり、目先いくぶんスピード調整があっても、反落波自体の進行は続く公算が高い。

(※編集部注:「三尊天井」=「三尊型」。「三尊型」はチャートのパターンの1つで、天井を示す典型的な形とされている。仏像が3体並んでいるように見えるために「三尊型」と呼ばれていて、人の頭と両肩に見立てて「ヘッド&ショルダー」と呼ぶこともある)

 もっとも、ドルインデックスでみるとわかるように、夏場(6月末)から米ドル全体は大きく上昇してきたが、その上昇波は実に2018年8月から形成されてきた「ウェッジ」型上昇波の一部として数えられ、いったん頭打ちになると、比較的大きな反落になりやすいかと思われる。

ドルインデックス 日足 

(出所:Bloomberg) 

■200日線をしっかり割り込むか否かにも注目 一方、200日線のサポートもしかり。

 今年(2019年)6月の安値打診は、同線を一時下抜け、比較的深い押し目を形成したが、結局うまく回復し、また1月、3月の安値も同線にサポートされてきたことに照らして考えると、米ドル全体がもう一段調整するには、まず200日線を下放れすることが前提条件となる。したがって、サイン待ちの局面でもある。

ドルインデックス 日足 

(出所:Bloomberg)  

■クロス円の堅調から市場センチメントの改善もうかがえる たびたび強調してきたように、米ドル全体の反落が米ドル/円の反落を伴わない場合は、往々にしてリスクオン(あるいはリスクオフではない)ムードにあり、これはクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の方が最も上昇しやすい時期でもある。

 英ポンド/円をはじめ、主要クロス円の反転や堅調な値動きから考えると、市場センチメントの改善もうかがえる。

世界の通貨VS円 日足 

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足) 

 そもそも、市場センチメント云々自体が適切ではないかもしれない。確かに米中貿易戦争や英EU離脱問題が長引いたことでセンチメントは大きく悪化していたが、米国株は波乱があってもベア(下落)基調に転換してはいなかった。

 セクターごとにセンチメントを反映していたかもしれないが、マーケットの全体からみると、必ずしも悲観一色になったとは限らなかった。

 為替市場もそうであった。確かに米中合戦の真只っ中、トランプ米大統領の「怒りのツイート」もあって、米ドル/円は8月に一時2019年年初来安値を更新したが、たちまち回復し、終値をもって105円の節目を割ったことはなかった。

 また繰り返しとなるが、2018年3月の安値は米中貿易戦争の勃発に対応した値動きだが、少なくとも2019年8月末の時点において、米中合戦の激しさは増す一方だったので、2018年3月安値104.56円の水準から考えると、2019年8月末には本来、100円の大台を割り込んでもおかしくなかった。

【参考記事】

●世界経済が大混乱なのに米ドル/円は底割れを回避。それが意味するものは?(2019年8月16日、陳満咲杜)

 ましてや、英EU離脱問題もあった。合意なき離脱が避けられないと思われる時期でもあったが、米ドル/円は前述のように、終値をもって105円の大台を割り込めなかった。このこと自体が、市場センチメントが巷で思われているほど悪化していなかったことを示唆している。

 このような言い方は、捉え方によっては適切ではない可能性もあるから、「市場センチメントが悪化したにもかかわらず、米ドル/円は底割れしなかったから、内部構造をもって円高の限界を示した」という言い方の方が、よりわかりやすいかもしれない。

 いずれにせよ、目先、米ドル/円は200日線に接近し、また8月1日(木)高値にも接近している以上、今さら弱気はいらない。

米ドル/円 日足 

(出所:Bloomberg)  

 前回のコラムで提示した「逆三尊」のフォーメーション…
まだ早いけど、言っちゃった! 米ドル/円日足に「逆三尊」の可能性 ブログ

まだ早いけど、言っちゃった! 米ドル/円日足に「逆三尊」の可能性

■市場のリスクオフ懸念が和らいできた? リスクオフにおびえてきた市場の、緊張感がすこし和らいできた。その証拠として、金(ゴールド)と米ドル全体(ドルインデックス)の反落、そして円の軟調が挙げられる。

金価格 日足(出所:Bloomberg)

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

世界の通貨VS円 日足 

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足) 

 米中協議や英EU離脱問題などのリスク要素は、なお決着がついていないが、少しでも緩和の兆しがあれば、マーケットは一斉にリスクオンのムードに傾く。実質的な材料は何もないのに、英・アイルランド首脳会談だけで昨日(10月10日)、英ポンドが急伸したことは、象徴的な出来事であろう。

 もっとも、たびたび指摘してきたように、市場センチメントは最悪で逆イールドになるなど金利低下も著しかったが、肝心の米国株は昨年(2018年)から高値圏においてかなり波乱の展開となってきたものの、ベア(下落)トレンドへ転換はしていない。

NYダウ 週足(出所:Bloomberg)

 だから、相場全体の状況をよく吟味すればわかるように、リスクオフにおびえながら、相場自体は決して本格的なリスクオフになっていない。ゆえに、たとえ実質的な材料が出なくても、少し兆しがあれば、マーケットは激しくそれに反応し、「リスクオフに警戒」というセンチメントに食傷気味だったことが浮き彫りになる。

■「希望」や「確信」がないから「失望」や「サプライズ」もない 筆者は米ドル全体(ドルインデックス)の高値波乱や反落のリスクをずっと指摘してきただけに、目先の市況は想定の範囲。もちろん、米中協議も英EU離脱も、諸リスク要素はなくなっていないから、これから何らかの報道で再度米ドル全体が急伸する場面があってもおかしくない。

 しかし、その場合でもドルインデックスがガンガン高値をつけていくとは思わない。なにしろ前述のように、そもそも市場関係者の大半は「リスク警戒感」に「疲れ」ており、その上、米中協議にしても、英EU離脱問題にしても、目先、確かに期待している向きもあるが、どれぐらい期待しているかと聞かれると、ほとんどの市場関係者は苦笑することだろう。

 要するに、そもそも期待があっても、「希望」や「確信」なんかは誰も持っていないから、仮にリスク要素の再浮上があっても、「失望」とか「サプライズ」とかのセンチメントには至らないはずだ。だから、激しい値動きにはなりにくく、リスクオフの継続があっても「底割れ」の状況を回避できると思う。

 言いたいことも、実に繰り返し指摘してきているが、シンプルに言えば、「今はリスクオフの時期ではない」ということに尽きる。

 それはより大きな視点、また、より高い位置から市場の内部構造を俯瞰しないとなかなか説明しきれないから、今回はそのテーマを深追いしないが、値動き、すなわちプライスアクションのポイントを、前回の続きでフォローしておきたい。

【参考記事】

●米雇用統計の結果にかかわらず株高になる!? 米ドル/円は保ち合い継続か(2019年10月4日、陳満咲杜)

 昨日(10月10日)の反落で、かねてから指摘して…