西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

2017年のドル/円は調整あっても130円へ! リスクオフの円高が継続しないワケとは? ブログ

2017年のドル/円は調整あっても130円へ! リスクオフの円高が継続しないワケとは?

■これほど「リスクオフ」が話題になった年はない みなさん、こんにちは。

 激動の2016年も残り少なくなってきました。

 振り返ってみれば2016年ほど、「リスクオフ」が話題になった年はないのではないでしょうか?

 英国がEU(欧州連合)から離脱する、ドイツ銀行が破綻する、中国経済がハードランディングする、トランプ米大統領が誕生するなど……。

 これらの中には、ウワサだけで終わったものもあるのですが、Brexit(英国のEU離脱)とトランプ米大統領の誕生は、現実となっています。

【参考記事】

●EU離脱ショックで英ポンド暴落! 米7月利下げ観測も浮上! ドル/円、次は95円へ(6月24日、西原宏一)

●レーガノミクス再来か。トランプ次期大統領のトランポノミクスのもと、ドル/円は109円へ(11月10日、西原宏一)


■Brexitにトランプ氏当選でも円高は一時的だった では、マーケットが懸念したように、大規模なリスクオフが起きたのか?

 つまり、グローバルな株価の急落と、円高が実現したのか?

 答えは「ノー」です。

 今世紀最大と言われたBrexitという負荷がマーケットにかかったとき、米ドル/円は99.02円まで円高が進みました。

6月24日(金)Brexit決定前後の米ドル/円 5分足(出所:Bloomberg)

 予想外にトランプ米大統領が誕生した時点での米ドル/円の安値は101.20円でした。

11月9日(水)トランプ氏当選決定前後の米ドル/円 5分足(出所:Bloomberg)

 マーケットが恐れていたことが現実化したわけですが、円高は一時的な現象で終わっています。

米ドル/円 週足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 週足)

■リスクオフの円高は米ドル買いの好機に 2008年までの金融市場では、円キャリートレード(※)がもてはやされており、グローバルに円ショートのポジションが増殖していました。

(※編集部注:「キャリートレード」とは一般に金利が非常に低い通貨で資金を調達し、それを相対的に金利の高い通貨に替えて運用する手法のことをいう)

2002年~2013年の豪ドル/円 月足(出所:Bloomberg)

 しかし、リーマンショック以降、金利がゼロなのは円だけではありません。

 ユーロもマイナス金利に突入するほどの低金利となっています。

 そして、かつては高金利通貨といわれた豪ドルですが、現在の豪州の政策金利はわずか1.50%という低金利に…。

【参考記事】

●豪ドルを買う理由がなくなってしまう!? 米ドル/円は「買い遅れ組」の動きに注目!(12月19日、西原宏一&大橋ひろこ)

豪州政策金利(詳しくはこちら → 経済指標/金利:各国政策金利の推移)

 このような状況では、マーケットに大きな負荷がかかっても、リスクオフの円高は継続しません。巻き戻すだけの円キャリーポジションが存在しないからです。

 2017年には米国は3回ほど利上げすることが予測されているため、来年(2017年)にかけて円キャリーポジションというものが再び脚光を浴びるようになるかもしれません。

米ドル/円 週足(出所:Bloomberg)

 ただ、それは来年(2017年)の話。

 今年(2016年)の相場を振り返ると、リスクオフトレードによる円高は長続きしませんでした。

 短期的な円高で終わることが多いため、「リスクオフによる円高」は、むしろ米ドル買いの好機となっているという認識は当面、持っておいたほうがいいかもしれません。

 ともあれ、トランポノミクスへの期待を背景にした…
米ドル高のスピードに市場参加者も驚愕! 来年のドル/円は130円へ上昇の可能性も ブログ

米ドル高のスピードに市場参加者も驚愕! 来年のドル/円は130円へ上昇の可能性も

■1カ月強で17円! ドル/円の上昇速度に市場参加者は驚愕 みなさん、こんにちは。

 トランポノミクス(※)への期待から始まった米ドル/円の急騰劇は収まることを知らず、節目の115円もあっさり突破。

(※編集部注:「トランポノミクス」とは、次期米大統領のドナルド・トランプ氏とエコノミクス(経済学)を合わせた造語で、トランプ政権が進める経済政策を指す)

【参考記事】

●レーガノミクス再来か。トランプ次期大統領のトランポノミクスのもと、ドル/円は109円へ(11月10日、西原宏一)

●トランポノミクスが「株高・円安」を促進!? ドル/円は押し目買い継続、次は109円へ!(11月14日、西原宏一&大橋ひろこ)

 本稿執筆時点で、米ドル/円は一時、117.86円まで急騰しています。

米ドル/円 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)

 11月9日(水)、トランプ米大統領が誕生した日の米ドル/円の安値が101.20円。

 つまり、1カ月強で約17円の暴騰。

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 僕も長く為替市場とおつき合いしていますが、米ドル/円が1カ月でこれほどボラティリティを高めたのは久しぶり。

 米ドル/円は歴史に残る急騰を演じており、米ドル高のスピードに多くの市場参加者が驚愕しています。

 NYダウは大台の2万ドルに急接近。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

 ユーロ/米ドルも昨年(2015年)の安値に急接近しており、対円のみならず、対ユーロでも米ドル高が進行。

ユーロ/米ドル 週足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 週足)

■まさにゲームチェンジャー、「Gゼロ」の概念を否定! 米国株や、為替市場の活況から判断すると、トランプ次期米大統領の選挙スローガンであった「Make America Great Again(アメリカを再び偉大にしよう)」へと、すべてのことが進行しているようにみえます。

 これは数年前、一世を風靡したGゼロという概念を否定する展開。

 Gゼロは、米国主導の体制が終わり、リーダー不在の時代がやってくるという考え方です。

 オバマ政権までは、イアン・ブレマー氏(※)の予言するとおりだったのですが、トランプ次期米大統領は、中国に対して強硬なスタンスを変えていません。

(※編集部注:イアン・ブレマー氏は、著名な国際政治学者。毎年初めに発表する「世界の10大リスク」が大きな注目を集めている。「Gゼロ」は同氏が提唱した概念)

 一方、トランプ次期米大統領はロシアへは急接近と、グローバルにも強烈な存在感を見せつけ始めています。

 トランプ米大統領登場で、米国は国際社会においても強烈なプレゼンスを見せつけ始めています。

 つまり、Gゼロからの脱却。トランプ米大統領の誕生はまさにゲームチェンジャーと言えそうです。

 ともあれ、トランプ米大統領誕生以降の金融市場は…
「トランプラリー終焉」との表現に違和感。 NYダウは2万ドル、ドル/円は120円へ上昇! ブログ

「トランプラリー終焉」との表現に違和感。 NYダウは2万ドル、ドル/円は120円へ上昇!

■NYダウは2万ドルに向け続伸、日本株も堅調 みなさん、こんにちは。

 「トランプラリー」は沈静化を見せず、12月7日(水)のNYダウとS&P500指数は最高値更新。

 12月7日(水)のNYダウは1万9549ドルと2万ドルに向けて上昇中。S&P500指数は2241.35まで上昇。

NYダウ 日足(出所:CQG)

S&P500 日足(出所:CQG)

 NYダウは来年(2017年)、2万ドルを超えるというのがコンセンサスになりつつありますが、今月(12月)中にも大台に急接近しそうな勢いです。

 連れて日経平均も続伸。本稿執筆時点で前日比219円高の1万8715円と堅調。

 今年(2016年)の日本株は、年前半の急落のイメージが強烈なので、どうしても軟調推移と言われがちですが、「トランプラリー」のおかげでセンチメントが劇的に改善。

 今年(2016年)の日経平均のオープニングは1万8818円。

 今月(12月)もう一段上昇して引ければ、年足も陽転する可能性が出てきました。

【参考記事】

●FOMC利上げ100%織り込む! ユーロは長期トレンドライン割れでパリティも視野に(12月5日、西原宏一&大橋ひろこ)

 仮に陽転すれば、アベノミクスが始まって以来、5年連続の陽線引けとなります。

日経平均 年足(出所:Bloomberg)

 この日本株急騰のおかげで、2016年に席巻していた「アベノミクスの終焉」という言葉は年末間近にまったく聞かれなくなりました。

 日本株の急激な回復と比較すると…
米次期財務長官は元GS・ムニューチン氏。 強気材料豊富なドル/円、次は120円へ! ブログ

米次期財務長官は元GS・ムニューチン氏。 強気材料豊富なドル/円、次は120円へ!

■米ドル/円は節目の115円へ急接近 みなさん、こんにちは。

 今週(11月28日~)も米ドル/円の急伸は止まらず。

 当コラムで直近の目安としていた112円をあっさり突破。

【参考記事】

●予想どおりドル/円は109円へ。ここからは調整局面。次は112円、来年は115円へ!(11月17日、西原宏一)

 11月最終日のNY市場で上昇幅を広げると、12月1日(木)の東京市場で一時114.83円まで上昇し、節目の115円へ急接近しています。

米ドル/円 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)

 米ドル/円急伸の材料に変化なし。

 トランプ次期米大統領の政権下での「インフレへの政策」、そして、日銀の「指値オペ」が示唆するように「無制限」な追加緩和期待で、米ドル/円を取り巻く環境は強気な材料が豊富なまま。

米ドル/円 週足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 週足)

 こうした状況では、米ドル/円が上昇するのに違和感はないのですが、マーケットが逡巡したのがその上昇スピード。

 3週間で約14円という値幅を伴った急伸は、1995年や2012年の急騰を彷彿とさせるもの。

米ドル/円 月足

(出所:CQG)

■ドル買い遅れ組さらに続出、ドル/円の下値余地は限定的 特筆すべきは、今回は2012年の米ドル/円の上昇テーマであった「アベノミクス」ほど明確なテーマがなく、多くのマーケット参加者は米ドル買いを逡巡することに。

米ドルVS世界の通貨 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 日足)

 唯一、米系投資家のみは「トランプ大統領の誕生」より、むしろ米共和党が上下院とも押さえ、「ねじれ」が解消されたことを好感。

 彼らが米大統領選挙直後から猛烈に米ドル買いに動いていたのと比較すると、日欧のマーケット参加者の米ドル買い遅れが目立つことになり、両者の投資スタンスに大きな相違が生じることとなります。

 結果、3週間で約14円の急騰を演じた米ドル/円相場には、先週(11月21日~)と比較しても、さらに米ドル買い遅れ組が続出し、米ドル/円の下落余地はさらに限定的に。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

 そして、11月30日(水)に報道された次のニュースが…
日銀の「指値オペ」、その真の意味とは? ユーロ/米ドルは超長期サポート割れ寸前 ブログ

日銀の「指値オペ」、その真の意味とは? ユーロ/米ドルは超長期サポート割れ寸前

■米ドル/円急騰を演出した2つの要因とは? みなさん、こんにちは。

 先週(11月14日~)109円台後半まで急騰した米ドル/円ですが、さすがに一服感が出て、一時108円台まで反落。

 しかし、十分な時間調整もなく、米ドル/円は一気に節目の110円台を回復。

 11月21日(月)早朝のシドニー市場では、111.00円のバリアオプション(※)もあっさり上抜け、一時111.18円まで急騰しました。

(※編集部注:オプションには「バニラ」と「エキゾチック」の2種類がある。上記の「バリアオプション」は、エキゾチックオプションのひとつで、権利行使価格に一度でも到達してしまえば、そのオプションは消えてしまうというような特殊なルールが加えられているもの)

米ドル/円 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)

 本稿執筆時点でも、米ドル/円は110円台を維持しており、110円台後半で推移。

 この米ドル/円急騰を演出したのが、トランポノミクス(※)に加え、日銀の指値オペ。

(※編集部注:「トランポノミクス」とは、次期米大統領のドナルド・トランプ氏とエコノミクス(経済学)を合わせた造語で、トランプ氏が掲げる経済政策のこと)

■日銀が実施した「指値オペ」、その真の意味とは? では、指値オペとはなにか?

「指値オペ」は日銀が適当と判断するイールドカーブから離れた水準に金利が動いたときに、日銀が指定する利回りで国債を無制限に買う措置。

9月に国債買い入れの目安として短期金利をマイナス0.1%、長期(10年債)金利をゼロ%程度で維持する「イールドカーブ・コントロール」政策を決めた際に導入された。

出所:ロイター

 「指値オペ」という説明だと、政策の意味合いがうまく伝わりませんが、ウォール・ストリート・ジャーナルのヘッドラインでは、「Buy Unlimited JGBs at Fixed Rates」となっています。

【参考記事】

●2週間で10円上げたドル/円、111円到達! “買い遅れ涙目”は多い。下げたら買い!(11月20日、西原宏一&大橋ひろこ)

 バイ・アンリミテッド、つまり、「無制限の買い」という意味合いとなり、こちらのほうがわかりやすくマーケットに与えるインパクトは大。

 ともあれ、これは9月の日銀決定会合時に「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」で導入された新型オペ。

【参考記事】

●マイナス金利の深堀りはなく相場乱高下! 日銀は金融政策の何を変更したのか?

 ただ、9月に日銀がイールドカーブ・コントロールやオーバーシュート型コミットメントを発表したときは、多くのエコノミストから「テーパリングである」との批判的な論調が目立ち、多くの参加者が円高予測に傾斜。

 しかし、当コラムで何度かご紹介させていただいたように、日銀の決定に関する欧米勢の理解は「テーパリング」ではなく、日銀の追加緩和。

 つまり、円安要因。

【参考記事】

●日銀決定はテーパリングへの道? それともヘリマネ? 米ドル/円は底固め後、反発へ(9月29日、西原宏一)

 日銀の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」政策に対する欧米勢の見方は、前FRB(米連邦準備制度理事会) 議長のバーナンキ氏やサマーズ氏などが「ヘリマネ」に近いと当初から指摘していました。

 彼らのコメントは以下のコラムを参照してください。

【参考記事】

●日銀決定は実質ヘリマネとの見方ジワリ。異様に底堅いドル/円の100円台は買いか(10月3日、西原宏一)

●日銀会合への市場の評価は真っ二つ! 米ドル/円はこのまま反発しそうな感じも…(9月26日、西原宏一)

 結果、トランポノミクスが誘引する米ドル高に加え、日銀の「アンリミテッド」な追加緩和が加わり、米ドル/円は一気に111円台まで暴騰したわけです。

■本邦機関投資家は米ドル/円急騰にあわてる これにあわてたのが、本邦機関投資家。

 10月に入り、彼らは米ドル/円が100~102円台でM&Aに伴う米ドル買いを一部持ち込んでいたのですが、「トランプリスク」の報道が目立つようになり、米ドル買いをいったん見送り。

 そして、迎えた米大統領選挙。

 選挙結果はトランプ大統領の誕生というサプライズなものとなり、彼らが懸念(期待?)したとおり、米ドル/円では101.20円までの円高相場が訪れたのですが、円高局面は1日ももたず…。

 待ち構えていた米系投資家の米ドル買いにより、逆に米ドル/円は110円台まで暴騰しました。

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 結果として100円レベルという米ドル買いの機会を逸した彼らからの米ドル買い注文は「押し目待ち」という展開となり、米ドル/円の下落余地はさらに限定的。

 次の米ドル/円のレジスタンスは5月30日(土)につけた…
予想どおりドル/円は109円へ。ここからは 調整局面。次は112円、来年は115円へ! ブログ

予想どおりドル/円は109円へ。ここからは 調整局面。次は112円、来年は115円へ!

■トランポノミクス期待で米ドル/円は109円台到達 みなさん、こんにちは。

 トランポノミクス(※)への期待から、上昇トレンドが鮮明となった米ドル/円は今週(11月14日~)も続伸。

(※編集部注:「トランポノミクス」とは、次期米大統領のドナルド・トランプ氏とエコノミクス(経済学)を合わせた造語で、トランプ氏が掲げる経済政策のこと)

 11月16日(水)には一時、110.00円に迫る109.76円まで急騰。

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 これで、当コラムで紹介してきた米ドル/円の目標値、109円台に到達。

【参考記事】

●レーガノミクス再来か。トランプ次期大統領のトランポノミクスのもと、ドル/円は109円へ(11月10日、西原宏一)

●原油上昇と金反落が米ドル/円をサポート。105円突破すれば109円台へ上昇濃厚!(10月13日、西原宏一)

 109円台では私も含め、2カ月近く米ドル/円のロングをキープしていたヘッジファンド勢も、いっせいに利益確定の米ドル売りに出て、米ドル/円は上げ渋り。

 本稿執筆時点では再び108円台後半に反落しています。

 今週(11月14日~)の急騰で、9月の日銀金融政策決定会合から始まった米ドル/円の上昇トレンドは、トランポノミクスを材料に109円台まで加速し、ひと相場終了。

 1週間で約9円近く急騰した米ドル/円ですので、いったん調整局面へ。

米ドル/円 日足(出所:CQG)

■米ドル/円は調整後、112円がメド。来年には115円も ここで、米ドル/円の動きをチャートで確認してみます。

 まず、今年(2016年)の米ドル/円の上値を阻んでいた2つのレジスタンスは超えています。

(1)75日移動平均線=102.88円

(2)日足・一目均衡表の雲の上限=102.45円

 そして、200日移動平均線(=106.47円)もブレイク。

米ドル/円 日足(出所:CQG)

 さらには、200週移動平均線(=108.47円)も上抜きつつあり、テクニカル分析の観点からすれば、劇的に円安方向に改善しています。

米ドル/円 週足(出所:CQG)

 では上値のメドですが、2015年の米ドル/円の高値である125.86円と、今年(2016年)の米ドル/円の安値である99.02円の38.2%戻しが109.27円。

 これが戻しの最初のメドとなり、今週(11月14日~)、まずこのレベルに到達。

 調整後の次の高値メドは50%戻しとなる112.44円。

 そして、来年(2017年)になるのでしょうが、61.8%戻しの115円。

米ドル/円 週足(出所:CQG)

 米ドル/円は調整局面に入り、いったんもみ合うものの、上昇トレンドは変わらず。

 今回のトランポノミクス相場は、リスクオン/オフの文脈ではなく…
<i style=”font-style:normal;font-size: 97%;”>レーガノミクス再来か。トランプ次期大統領の</i> トランポノミクスのもと、ドル/円は109円へ ブログ

<i style=”font-style:normal;font-size: 97%;”>レーガノミクス再来か。トランプ次期大統領の</i> トランポノミクスのもと、ドル/円は109円へ

■トランプ大統領誕生! 米ドル/円は105円台に急反発 みなさん、こんにちは。

 激しい接戦が予想され、異様な注目を集めた今回の米大統領選は、トランプ大統領の誕生という結末で終了しました。

【参考記事】

●米大統領選挙は予想外のトランプ氏勝利! リスクオフで米ドル/円急落も意外な動き…

激しい接線が予想され、異様な注目を集めた米大統領選挙はトランプ氏が当選

(C)Scott Olson/Getty Images

 今回のマーケットの動きは、米大統領選挙の結果発表直前と直後の動きに限っては、Brexit(英国のEU離脱)の時と同じ展開。

【参考記事】

●ついに英国のEU離脱が確定的な状況に!! 英ポンド暴落、米ドル/円も100円割れ!

 ヒラリー氏優勢と伝えられるとそれを織り込みにいく動きで、米ドル/円は105円台を回復。

 その後、ヒラリー氏が優勢という状況は変わりませんでしたが、マーケットは「セル・ザ・ファクト」の動きで米ドル/円は反落開始。

 そして、トランプ大統領誕生の可能性の高まりとともに米ドル/円の下落が加速しました。

【参考記事】

●激戦州のオハイオなどでトランプ氏勝利! ドル/円は101円台、日経平均は900円超安

 米ドル/円は一気に101.20円まで急落。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

 ここまでは、Brexitのときの米ドル/円の動きとまったく同じ。

 ただ、その後の動きはまったく異なり、米ドル/円は急反発しました。

 NY市場に入ると、状況は一変し、株が上昇。NYダウは一時、前日比300ドル以上のプラスに。

NYダウ 日足(出所:CQG)

 米10年債利回りも2.00%を回復。

米長期金利(米10年物国債の利回り) 日足(出所:CQG)

 日本国債利回りは日銀の政策により、当面0%で抑えられますので、米国債利回りの上昇は米ドル/円をサポート。

 米ドル/円はあっという間に105円台後半まで急騰。

米ドル/円 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)

 

  その背景は、「レーガノミクスの再来」という…
トランプリスクさえ乗り切ればドル/円上昇。 米大統領選の注目度高めた2つの理由は? ブログ

トランプリスクさえ乗り切ればドル/円上昇。 米大統領選の注目度高めた2つの理由は?

■過去の米大統領選挙は為替相場で材料視されず みなさん、こんにちは。

 今回の米大統領選挙のテレビ討論会は、あまり興味深いものではありませんでした。

 それは、「政策」よりも「個人攻撃」に終始する討論が繰り広げられたからです。

 このような「テレビ討論」を見せられる米国民は次期米大統領にどのような希望をもつのか?と個人的に危惧するほどの個人攻撃の応酬でした。

ヒラリー氏とトランプ氏のテレビ討論会は、「政策」ではなく、「個人攻撃」の応酬だった

(C)Steve Pope/Getty Images

 ただ結果として、ヒラリー氏優位に進んできました。

 もともと米大統領選挙が為替相場に直接的な影響を及ぼしたという記憶はありません。

 たとえば、2008年に「オバマ大統領」が選出された時の米ドル/円は、暴落を演じていますが、これは「リーマンショック」によるもので、オバマ大統領の勝利によるものではありませんでした。

2007年10月~2009年9月の米ドル/円 週足(出所:CQG)

■米大統領選挙の注目度を高めた2つの理由とは? このように、もともとは為替相場に直接的な影響を与えるわけではない「米大統領選挙」が、今回、マーケットの注目度を高めた理由は2つあります。

 まずひとつは「トランプ氏」の存在。

 トランプ氏の過激なコメントはメディアの注目を集めますが、彼が米大統領になることはまず考えにくいというのがマーケットのコンセンサス。

 ただ、マーケットが警戒しているのは、ポピュリズムの台頭。

 現在の米国では、中間層の不満が高まっています。

 彼らの人生プランはこれまで順調に進んできましたが、それがいつの間にか入り込んできた、インドなどからの外国人技能労働者に職を奪われ、結果、没落している現状があります。

 こうした環境下では、「現在の政治では、自分たちの生活はよくならないのではないか?」という不満が増大します。

 そこに現れたのがトランプ氏。

 彼は、外国人技能労働者に規制をかけると主張。

 こうした彼の主張は、不満が高まる中間層への十分なアピールとなります。

外国人技能者に規制をかけるといったトランプ氏の主張は、不満が高まる中間層への十分なアピールになる (C)Chip Somodevilla/Getty Images

 米国の報道などによると、全米の選挙人の数から考えれば、ヒラリー氏の圧倒的優位は変わらず。

 それにも関わらず、トランプ氏が巻き返してきたという報道だけで警戒感からヘッジ売りが持ち込まれるのは、わずか数カ月前にマーケットが経験したBrexit(英国のEU離脱)が記憶に新しいため。

 このBrexitが今回の米大統領選挙の注目度を高めた2つめの要因となっています。

 数カ月前に、マーケットは驚愕のBrexitを…
なぜ、日本株と米ドル/円はじりじり上昇? カギ握る中東マネー。ドル/円は109円台も ブログ

なぜ、日本株と米ドル/円はじりじり上昇? カギ握る中東マネー。ドル/円は109円台も

■リスク許容度改善で日経平均は1万7000円台回復 みなさん、こんにちは。

 根強いマーケット参加者のリスクオフ懸念とは裏腹にマーケットのリスク許容度は改善。

 WTI原油価格は一時50ドル台に、日経平均は1万7000円台に値を戻しており、本稿執筆時点では、1万7300円で推移しています。

WTI原油先物 日足(出所:CQG)

日経平均 日足(出所:株マップ.com)

 米ドル/円でも円安がじわじわと進行しており、104円台ミドルで推移。

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

■新興国通貨も堅調。豪ドル/円は一時80円台に グローバルなリスクに敏感な新興国通貨も堅調推移。

 ブラジルレアルも底堅く推移。先週のコラムでもご紹介したとおり、「通貨防衛の必要性の低下」により、ブラジル中銀は4年ぶりの利下げを決定しました。

【参考記事】

●ブラジル4年ぶりの利下げ決定でリスクオフ拡大の可能性低下? その理由とは…!?(10月20日、西原宏一)

ブラジルレアル/円 日足(出所:CQG)

 新興国通貨の上昇とともに、資源国通貨である豪ドルも強含んでおり、対円で一時80円台を回復。

 豪ドル/円は今年(2016年)、上値を阻んできた200日移動平均線が80.15円に位置しており、今回もいったんレジスタンスとなっていますが、リスク許容度の改善とともに、このラインを超える公算が高まっています。

豪ドル/円 日足(出所:CQG)

  日本株反発要因のひとつが中東勢の…
ブラジル4年ぶりの利下げ決定でリスクオフ 拡大の可能性低下? その理由とは…!? ブログ

ブラジル4年ぶりの利下げ決定でリスクオフ 拡大の可能性低下? その理由とは…!?

■ブラジル中銀が4年ぶりに利下げを決定 今週(10月17日~)のマーケットの話題は19日(水)に決定された、4年ぶりのブラジルの利下げ。

(出所:ブラジル中央銀行)

ブラジル中央銀行は19日の金融政策委員会で、政策金利を0・25%引き下げ、14・0%にすることを決めた。利下げは2012年10月以来、約4年ぶり。

中銀は15年7月以降、14・25%の高金利を維持してきた。インフレ率が落ち着きを見せ始めたことから、低迷が続く景気に配慮して利下げを決めた。決定は全会一致だった。

出所:Bloomberg

 低迷が続く景気に配慮という点もありますが、主要国と違って、新興国通貨にとっての利下げは通貨防衛策の必要性の低下を意味します。

米ドル/ブラジルレアル 日足(出所:CQG)

 グローバルな株の急落といったマーケットに強い負荷がかかった場合、新興国通貨は真っ先に売られる傾向にあります。

 こうした局面では、中銀が「利上げ」という手段を使い、通貨を防衛しようとします。

 今回ブラジルが利下げ、つまり、金融緩和を決断したということは、マーケットでウワサされているような「トランプリスク」や「ドイツ銀行の経営破たん」といったリスクオフ拡大の可能性が低下したという意味でもあります。

■WTI原油は51ドル台、日経平均は1万7000円台回復 こうした環境下、前回のコラムでも取り上げたWTI原油価格は51ドル台まで回復。

【参考記事】

●原油上昇と金反落が米ドル/円をサポート。105円突破すれば109円台へ上昇濃厚!(10月13日、西原宏一)

WTI原油先物 日足(出所:CQG)

 日経平均も久しぶりに、1万7000円台を回復。

日経平均 日足(出所:CQG)

 多くのリスクオフ要因がメディアで取り上げられていますが…