西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

「ロシアゲート」問題勃発でリスクオフ! 米ドル/円急落で今後のカギを握るのは…!? ブログ

「ロシアゲート」問題勃発でリスクオフ! 米ドル/円急落で今後のカギを握るのは…!?

■ドル/円の115円台半ば突破は時間の問題だったが… みなさん、こんにちは。

 先週(5月8日~)は、懸念されたフランス大統領選が中道派のマクロン氏の勝利で終わったこと、東アジア問題も(解決にはほど遠いものの…)いったん沈静化したこと、加えて原油も減産継続が報道されるなど、一連のリスクオフ要因は霧散し、ユーロ/円中心にヘッジの買い戻しが活発化。

【参考記事】

●93年以来! 低水準の恐怖指数は何を意味する? 好材料多いユーロ/円が相場牽引!(5月15日、西原宏一&大橋ひろこ)

 米ドル/円は114円台で底堅く推移し、日経平均も2万円超え目前と、米ドル/円の115.50円台ミドル超えは時間の問題といった展開でした。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

日経平均 日足(出所:Bloomberg)

 ユーロ/円も節目の125.00円を突破し、一時125.82円まで急騰しました。

ユーロ/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 4時間足)

■FBI長官解任に加え、トランプ大統領の機密情報漏洩も… ところが、この「円安トレンド」を一変させたのが「ロシアゲート」問題。

 まず先週、5月9日(火)にトランプ大統領がコミーFBI(米連邦捜査局)長官を解任したことから、トランプ政権は不安定に。

 今週(5月15日~)に入り、トランプ大統領がロシアの高官に機密情報を漏らしたという報道で雲行きが怪しくなると、コミーFBI長官に対し、フリン前安全保障担当補佐官のロシア疑惑に関する捜査打ち切りを要請していたことが明らかになり、問題は深刻化。

 捜査打ち切りを要請していたとの見方から、ニクソン大統領が自らの不法行為との関係を捜査していた特別検察官を解任し、正副司法長官を辞任させたウォーターゲート事件にちなみ、「ロシアゲート」という言葉も飛び出し、トランプ政権の土台が揺らぎかねない展開に。

コミーFBI長官の解任に加えて、トランプ大統領がロシアの高官に機密情報を漏らしたとの報道もあって、トランプ政権の土台が揺らぎかねない展開に (C)Mark Wilson/Getty Images

 この「ロシアゲート」問題が深刻化するにしたがって…
「ロシアゲート」問題勃発でリスクオフ! 米ドル/円急落で今後のカギを握るのは…!? ブログ

「ロシアゲート」問題勃発でリスクオフ! 米ドル/円急落で今後のカギを握るのは…!?

■ドル/円の115円台半ば突破は時間の問題だったが… みなさん、こんにちは。

 先週(5月8日~)は、懸念されたフランス大統領選が中道派のマクロン氏の勝利で終わったこと、東アジア問題も(解決にはほど遠いものの…)いったん沈静化したこと、加えて原油も減産継続が報道されるなど、一連のリスクオフ要因は霧散し、ユーロ/円中心にヘッジの買い戻しが活発化。

【参考記事】

●93年以来! 低水準の恐怖指数は何を意味する? 好材料多いユーロ/円が相場牽引!(5月15日、西原宏一&大橋ひろこ)

 米ドル/円は114円台で底堅く推移し、日経平均も2万円超え目前と、米ドル/円の115.50円台ミドル超えは時間の問題といった展開でした。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

日経平均 日足(出所:Bloomberg)

 ユーロ/円も節目の125.00円を突破し、一時125.82円まで急騰しました。

ユーロ/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 4時間足)

■FBI長官解任に加え、トランプ大統領の機密情報漏洩も… ところが、この「円安トレンド」を一変させたのが「ロシアゲート」問題。

 まず先週、5月9日(火)にトランプ大統領がコミーFBI(米連邦捜査局)長官を解任したことから、トランプ政権は不安定に。

 今週(5月15日~)に入り、トランプ大統領がロシアの高官に機密情報を漏らしたという報道で雲行きが怪しくなると、コミーFBI長官に対し、フリン前安全保障担当補佐官のロシア疑惑に関する捜査打ち切りを要請していたことが明らかになり、問題は深刻化。

 捜査打ち切りを要請していたとの見方から、ニクソン大統領が自らの不法行為との関係を捜査していた特別検察官を解任し、正副司法長官を辞任させたウォーターゲート事件にちなみ、「ロシアゲート」という言葉も飛び出し、トランプ政権の土台が揺らぎかねない展開に。

コミーFBI長官の解任に加えて、トランプ大統領がロシアの高官に機密情報を漏らしたとの報道もあって、トランプ政権の土台が揺らぎかねない展開に (C)Mark Wilson/Getty Images

 この「ロシアゲート」問題が深刻化するにしたがって…
120円が見えてきた! 3月には跳ね返された ドル/円の115円台、今回はブレイク濃厚! ブログ

120円が見えてきた! 3月には跳ね返された ドル/円の115円台、今回はブレイク濃厚!

■米ドル/円は115円台に向けてじわじわ回復 みなさん、こんにちは。

 米ドル/円は前回のコラムでご紹介した115円台に向け、じわじわと回復しており、現在、114円台前半で推移しています。

【参考記事】

●仏大統領選を無事通過してリスクオン再開。米ドル/円は115円に向けて反発する公算大(4月27日、西原宏一)

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

■過去2カ月のマーケットを振り返る ここで、ゴールデンウィークを挟んでのマーケットを振り返ってみます。

 過去2カ月、マーケットはグローバルなリスクオフ要因に振り回される展開。

 フランス大統領選挙でのルペンリスクや東アジアの地政学リスクが高まるにつれて、投資資金はどうしてもリスクオフに備えざるを得ない展開でした。

 結果、米ドル/円も安値圏で推移。

【参考記事】

●地政学リスクはシリアから東アジアへ! 北朝鮮有事は円高要因か? 円安要因か?(4月13日、西原宏一)

●今週はセル・ザ・ファクトのユーロ安に注意。豪ドルが示すリスクオン相場の盲点とは?(5月8日、西原宏一&大橋ひろこ)

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 日経平均も上値が重い展開でした。

 それが、東アジア情勢の沈静化で、米ドル/円も少しずつじり高に推移しており、本稿執筆時点で、114円台前半で推移しています。

■米ドル/円反発の要因は3つ 米ドル/円反発の要因はまずドル金利の反発。

米長期金利(米10年物国債利回り)(出所:Bloomberg)

 そして、2万円近くまで急騰している日経平均の動向。

日経平均 日足(出所:Bloomberg)

 それに加えて、英ポンド/円の上昇。

 このコラムなどでも紹介させていただいたように、昨年(2016年)のBrexit(英国のEU離脱)決定以降、英ポンド/円と米ドル/円の相関は極めて高いものがあります。

【参考記事】

●仏大統領選を無事通過してリスクオン再開。米ドル/円は115円に向けて反発する公算大(4月27日、西原宏一)

 その英ポンド/円は本稿執筆時点では、147.80円と堅調推移。

 これは、英ポンド/円の重要なレジスタンスである75週移動平均線の147.31円を超えてきています。

英ポンド/円 週足(出所:Bloomberg)

 そして、今週(5月8日~)になって、英ポンド/円に加えて米ドル/円を…
仏大統領選を無事通過してリスクオン再開。 米ドル/円は115円に向けて反発する公算大 ブログ

仏大統領選を無事通過してリスクオン再開。 米ドル/円は115円に向けて反発する公算大

■フランス大統領選前、ユーロ/円暴落への警戒感が高まる みなさん、こんにちは。

 前回のコラムでご紹介させていただいたように、4月18日(火)に、英国のメイ首相が総選挙を6月8日(木)に前倒しして実施すると発表したことから、英ポンドクロス(英ポンドと米ドル以外の通貨との通貨ペア)は急伸。

【参考記事】

●メイ英首相の決断がゲームチェンジャーに? 英ポンドは対豪ドルやNZドルの動きに注目(4月20日、西原宏一)

 英ポンド/NZドルは一気に1.87NZドル近くまで急騰しました。

英ポンド/NZドル 4時間足(出所:Bloomberg)

 英ポンド/円も大きく値を伸ばしましたが、対円での動きはまだ限定的でした。

 それは、2017年最大の政治リスクと言われていた、フランス大統領選挙を4月23日(日)に控えていたため。

 フランス大統領選での混乱は、昨年(2016年)6月のBrexit(英国のEU離脱)同様、通貨であるユーロの急落に加え、株の急落も引き起こすため、多くの投資家は、ユーロ/円でのヘッジに走ります。

 オプションマーケットではユーロ/円の1カ月物のリスク・リバーサルが、マイナス6.7%まで急低下(※)。

(※編集部注:「リスク・リバーサル」とはざっくり言うと、ある一定の同一条件でオプションのコール(買う権利)とプット(売る権利)を同時に反対売買する取引のこと。理論的にはこのときのコールとプットの価格は同一になるが、市場参加者の相場観によって実際には同一にならない。このとき、その差の数値が市場参加者のリスク認識を示す指標として使われ、この指標も「リスク・リバーサル」と呼ばれている(以下のグラフ)。この数値がマイナスになっている場合、市場参加者のリスク認識が売り方向に優勢であることを示している)

ユーロ/円の1カ月物リスクリバーサル 日足(出所:Bloomberg)

 簡単にいってしまえば、多少コストを払っても、ユーロ/円の暴落に備えざるを得なかったというほど、オプション市場ではユーロ/円急落に対する警戒感が高まっていたのでした。

ユーロ/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 日足)

■フランス大統領選挙を無事通過し、リスクオン再開 しかし、1回目の投票結果はマーケットが一番好感する「マクロンVSルペン」という結末に。

 この組み合わせですと、5月7日(日)に実施される決戦投票でもマクロンが勝利する可能性が極めて高く、メディアによっては早くも「マクロン新大統領」という表現も見られるようになります。

 そして、この結果を受けて、マーケットは即座にリスクオンに。

 まさかの事態に備えていたユーロ/円のヘッジはオプションも含めて、価値が急速に下がりますので、オプションのカバーに加え、ユーロ/円の急速な買い戻しが進み急騰。

ユーロ/円の1カ月物リスクリバーサル 日足(出所:Bloomberg)

ユーロ/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 日足)

 先週(4月17日~)、急騰していた英ポンド/円も、レジスタンスだった140円台を回復し、一時143円台ミドルまで急上昇しました。

 そして、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の急騰に加え、東アジアにおけるリスクが一段落したため、米ドル/円も上昇開始。

 リスクを嫌って待機していた投資資金もいっせいにマーケットに戻ってきており、米国株も日本株も急上昇。日経平均は1万9200円台をあっさり回復しました。

日経平均 日足(出所:Bloomberg)

 米ドル/円も一時、111円台ミドルまで反発。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

 昨年(2016年)同様、今年(2017年)も多くのリスク要因が…
メイ英首相の決断がゲームチェンジャーに? 英ポンドは対豪ドルやNZドルの動きに注目 ブログ

メイ英首相の決断がゲームチェンジャーに? 英ポンドは対豪ドルやNZドルの動きに注目

■リスクオフに傾斜しそうなイベントはまだ多く控える みなさん、こんにちは。

 今週(4月17日~)も北朝鮮問題は解決策を見いだせず、不透明なまま。

 加えて、マーケットがリスクオフに傾斜するきっかけになりそうなイベントが数多く控えています。

・4月23日(日)フランス大統領選挙第1回投票

・4月25日(火)北朝鮮軍創建85周年記念日

 通常、こうしたイベント前は本邦機関投資家の動きは限定的なのですが、今週、4月18日(火)から、彼らからの円売りが突如マーケットに断続的に持ち込まれています。

 米ドル/円相場では、108.30~108.50円で米ドル買い注文がかなりまとまって並んでいる模様。

米ドル/円 4時間足(出所:Bloomberg)

 これは2週間前、110円台前半で本邦機関投資家が米ドル買い注文を並べていたのと同じ風景です。

【参考記事】

●ドル/円の上値重いが節目110円も割れず。話題の「忖度」と米ドル買いに関係が…!?(4月6日、西原宏一)

 マーケットのウワサによれば、前回、彼らは110円台前半でかなりまとまった米ドル買い注文を置いており、110.00円のサポートとなっていたのですが、地政学リスクがシリアから東アジアに移行したことで、その米ドル買い注文の多くをいったんキャンセルしたといわれています。

【参考記事】

●地政学リスクはシリアから東アジアへ! 北朝鮮有事は円高要因か? 円安要因か?(4月13日、西原宏一)

 前述のように、リスクオフに傾斜するようなイベントはまだ多く控えていますが、彼らのヘッジ外しと思われる円売りが再開したのはなぜか?

 それは、今週、4月18日(火)に発表されたメイ英首相の決断だといわれています。

■メイ英首相の決断がマーケットを驚かせた 今週(4月17日~)、マーケットを驚かせたのが、メイ英首相の下記の決断でした。

メイ英首相は18日、議会を解散し6月8日の総選挙実施を目指すと発表した。強い基盤を持って欧州連合(EU)離脱交渉に臨むため、予想外の賭けに出た。

同首相が離脱の手続きを正式に開始してから1カ月に満たない。14日からの復活祭休暇に入る前は解散総選挙はないとしていた。

次回総選挙は2020年の予定だったが、与党・保守党の支持率が最大野党を20ポイント以上上回っている現状から、メイ首相は勢力を拡

大できる余地がある。キャメロン前首相から引き継いだ下院でのぎりぎ

りの過半数ではEU離脱交渉を乗り切れないとメイ首相は判断したもようだ。

出所:Bloomberg

議会を解散し6月8日(木)に総選挙実施を目指すと発表したメイ英首相。この決断はマーケットを驚かせた! (C)WPA Pool/Getty Images

 この決断によって、英ポンド/米ドルは急伸。一時1.2905ドルと、あっという間に400ポイント急伸しました。

英ポンド/米ドル 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 1時間足)

 マーケットではこの英ポンド/米ドルの反発に否定的な意見も多数。

 その代表的な意見は下記のとおり。

英ポンド上昇は「行き過ぎ」-ステート・ストリートのフェリッジ氏

18日の英ポンドの上昇は、メイ英首相が解散総選挙を目指すと表明したことが「ソフトブレグジット」につながる可能性が高いとの見方に基づいているものの、 「メイ首相は結局のところ『ハードブレグジット(強硬離脱)』派だ」と、ステート・ストリートの北米マクロ戦略責任者、リー・フェリッジ氏が電話取材で指摘した。

メイ首相は移民と国境管理を優先事項に掲げている。これが交渉の出発点なら、ハードブレグジットは避けられない。今回の解散総選挙の方針表明によって英国のEU離脱のシナリオは大きく変化しない

英ポンドの動きは「ショートスクイーズにほかならない」

ユーロ・英ポンドは1ユーロ=0.8500ポンドを上回る水準に値を戻す見込みで、英ポンド・ドルは来週あたり1ポンド=1.26ドル前後に再び下げる見通し。英ポンドの軟調は中長期的に続きそう

出所:Bloomberg

 ただ、前述のようにマーケットは英ポンド/米ドル急騰で反応。英ポンド/円を筆頭とした英ポンドクロス(英ポンドと米ドル以外の通貨との通貨ペア)も急騰しました。

 その背景には、本邦機関投資家の存在が大きく影響していると…
地政学リスクはシリアから東アジアへ! 北朝鮮有事は円高要因か? 円安要因か? ブログ

地政学リスクはシリアから東アジアへ! 北朝鮮有事は円高要因か? 円安要因か?

■地政学リスクは東アジアへ、米ドル/円は110円決壊 みなさん、こんにちは。

 先週(4月6日)のコラムを配信してから多くの報道が飛び出したので、まずそちらから。

【参考記事】

●ドル/円の上値重いが節目110円も割れず。話題の「忖度」と米ドル買いに関係が…!?(4月6日、西原宏一)

 日本時間4月7日(金)午前10時過ぎ、米軍がシリアに対して巡航ミサイルによる攻撃を行った模様。

 これを受けて一時、円は全面高となり、米ドル/円相場は一気に110円前半まで急落しました。

【参考記事】

●ミサイル攻撃でも崩れなかった米ドル/円、マジノ線死守で市場の雰囲気変わるかも?(4月10日、西原宏一&大橋ひろこ)

 ただ、シリアの報道を受けても110円台前半の米ドル買い需要は引かず、米ドル/円は反発。結局、先週(4月3日~)の米ドル/円は「シリア情勢とは関係なく」反発し、111円台で引けています。

 ところが今週(4月10日~)、地政学リスクがシリアから東アジアに移行します。

 4月5日(水)に実施された北朝鮮のミサイル発射を受けて、米国は対北朝鮮への姿勢を徐々に硬化。

北朝鮮のミサイル発射を受けて、米国の姿勢は徐々に硬化。写真は急遽、朝鮮半島付近に展開することになった米国の原子力空母「カール・ビンソン」 (C)U.S. Navy/Getty Images

 北朝鮮がシリアに続き標的となったとの報道が増えるに連れ、円高圧力が増し、本邦機関投資家の米ドル買い需要でせき止めていた、米ドル/円の110.00円が決壊し、さらなる円高の余地が拡大しました。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

■東アジアでの有事は本当に円高要因なのか? ここでよく話題になる件ですが、東アジアでの有事は本当に円高要因なのかという問題。

 マーケットがリスクオフに直面すると、「株安・円高」になると言われています。

 この理由が円は「安全資産だから」と言われているのですが、そうではありません。

 地政学リスクが発生した場合、本邦投資家が、海外資産を売却して円に戻すため、つまり、レパトリが起こるため円が買われるわけです。

 そして問題は、「考えたくありませんが」日本が紛争に巻き込まれた場合も、本当にレパトリが起き、当事国の通貨である円は買われるのか?ということ。

 これにはいろんな意見が入り乱れていますが、円高派のほうが優勢になっています。

【とんでもない有事に関する参考記事】

●1ドル=167円! ゴジラ上陸なら円安襲来!? でも、なぜ「有事の円高」にならないのか?

 その理由は、2011年3月の東日本大震災時の円高。

 あれだけの災害を受けたのですが、通貨は安くなるどころか、円は急騰しました。

 対米ドルで円は一時8%も急騰しました。

【参考記事】

●米ドル/円が76.25円まで暴落! パニック相場の終息は当局の対応しだいか(2011年3月17日、西原宏一)

2011年1月~4月の米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

 東アジアでの緊張は下記のように…
ドル/円の上値重いが節目110円も割れず。 話題の「忖度」と米ドル買いに関係が…!? ブログ

ドル/円の上値重いが節目110円も割れず。 話題の「忖度」と米ドル買いに関係が…!?

■トランポノミクス失速と北朝鮮問題で「米ドル安・円高」継続 みなさん、こんにちは。

 前回のコラムでもご紹介させていただいたように、トランポノミクス(※)の失速による米ドル安は継続。

(※編集部注:「トランポノミクス」とは、ドナルド・トランプ氏とエコノミクス(経済学)を合わせた造語で、トランプ氏が掲げる経済政策のこと)

 ヘルスケア法案の採決が中止されたことで、トランプ大統領の求心力が低下しています。

【参考記事】

●トランポノミクス失速でさらなる米ドル安も。新年度入りで本邦勢がどう動くかがカギに(3月30日、西原宏一)

●米中首脳会談はあの国がリスク要因に!? 悪材料出尽くしの英ポンドは上昇ターンへ!(4月3日、西原宏一&大橋ひろこ)

 トランポノミクスに対するリスクは、トランプ政権及び共和党の目指す経済政策の実行が遅れてしまうことといわれていましたが、それが現実のものとなります。

 加えて、北朝鮮に絡むリスクが顕在化し、有事リスクが、日本株を押し下げます。

 そして、本日(4月6日)からの米中首脳会談とマーケットには不安定材料が多く、円高要因には事欠きません。

 米国債利回りの低下も相まって、米ドル/円の戻しは極めて重く、本稿執筆時点では110円台ミドルでの攻防を演じています。

米長期金利(米10年物国債利回り) 日足(出所:Bloomberg)

 ただ見方を変えてみれば、米ドル/円の上値が重いことも確かですが、110.00円がなかなか割れないことも確かです。

 マーケットでは、本邦機関投資家からの米ドル買いが110.00円をサポートしているといわれています。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

■新年度入りも、本邦機関投資家からの外貨フローは入らず 今週(4月3日~)から本邦企業は新年度入り。

 マーケット参加者は、本邦投資家からどの程度リスクアセットに資金が向かうかに注目していました。

【参考記事】

●トランポノミクス失速でさらなる米ドル安も。新年度入りで本邦勢がどう動くかがカギに(3月30日、西原宏一)

 ところが、北朝鮮リスクもあり、日経平均は上がるどころか、1万9000円を割り込み軟調な展開となっています。

日経平均 日足(出所:Bloomberg)

 本邦機関投資家からの外貨フローもほとんど入らず、米ドル/円の上値は極めて限定的に。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

 ただ、本稿執筆時点までは110円台前半の米ドル買い需要が引かず、下げ渋っています。

 前述のように、多くの本邦機関投資家が動いていないのに…
トランポノミクス失速でさらなる米ドル安も。 新年度入りで本邦勢がどう動くかがカギに ブログ

トランポノミクス失速でさらなる米ドル安も。 新年度入りで本邦勢がどう動くかがカギに

■FOMC後のドル安進行継続。ドル/円は110円割れ目前へ みなさん、こんにちは。

 前回、前々回と当コラムでご紹介させていただいたように、3月のFOMC(米連邦公開市場委員会)後の米ドル安は今週(3月27日~)も進行。

【参考記事】

●FOMC後の米ドル下落は想定どおり。ドル/円は113円台へ下落。上値は重いか…(3月16日、西原宏一)

●米利上げ後の米ドル安継続、米ドル/円は110円割れへ。下値模索はなぜまだ続く?(3月23日、西原宏一)

 米ドル/円は一時、110.11円と110円割れ目前まで急落しています。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

 しかし、110円台前半は本邦機関投資家の期末を控えての米ドル買い注文が厚く、下げ止まり。

 本稿執筆時点での米ドル/円は111円台を回復し、111.25円で推移しています。

■値幅的、日柄的にドル/円はいったん調整の保ち合い入り 以下は米ドル/円の日足チャートです。

米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

 トランプラリーの起点となる、2016年11月9日(水)安値が101.20円、そして、同年12月15日(木)高値が118.66円。その50%戻しが109.93円となります。

 今週(3月27日~)の米ドル/円の安値が110.11円。

 本日は3月30日(木)ということで、期末が目前に迫っています。

 結果として、3月15日(水)のFOMCでの利上げをきっかけとした米ドル/円の下落トレンドですが、

(1)値幅的には50%戻し(=109.93円、実際の相場は110.11円)

(2)日柄的には本邦の期末という節目

 というように、値幅的にも、日柄的にもいったん調整の保ち合いに入ったといえます。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

■トランプ米大統領の求心力低下で、市場のセンチメント悪化 ただ、米ドル/円が本格的に上昇トレンドに回帰するのはまだ時間がかかりそうです。

 それは、米国でのヘルスケア法案に関する混乱。

【参考記事】

●FOMCきっかけの米ドル安はまだ続く…。市場は英ポンド安期待も、もう少し買い継続(3月27日、西原宏一&大橋ひろこ)

 3月中旬ごろから、ヘルスケア法案の採決が遅れる可能性をマーケットが懸念し始め、NYダウは反落へ。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

 その懸念は3月24日(金)に現実となり、ヘルスケア法案の採決は中止されました。

米下院共和党は24日、トランプ大統領の指示を受けて医療保険制度改革法(オバマケア)代替法案の採決を中止した。大統領は前日、議席を失いたくないなら法案を支持せよと共和党議員に迫っていたが、最新の法案に反対する共和党議員の数は減るどころか増えていた。

共和党首脳部の側近によると、ライアン下院議長は採決予定時刻の間際にトランプ大統領から電話で要請を受け、採決中止とした。

出所:Bloomberg

 トランポノミクスに対するリスクは、トランプ政権及び共和党の目指す経済政策の実行が遅れてしまうことといわれていましたが、それが現実のものとなります。

 トランプ大統領が「次は税制改革だ!」とコメントしたように、焦点が税制改革に移行することを評価しているマーケット参加者もいますが、トランプ大統領の求心力低下は、マーケットのセンチメントを悪化させています。

ヘルスケア法案の採決中止を受けて「次は税制改革だ!」とトランプ大統領はコメント。これを評価する市場関係者もいるが… (C)Chip Somodevilla/Getty images

 NYダウは3月1日(水)の2万1169ドルを高値に調整局面入り。

 呼応して、米国債利回りも調整で低下気味となっています。

米長期金利(米10年物国債利回り)(出所:Bloomberg)

 そして、米ドル/円もトランポノミクス(※)の失速とともに、調整局面入りとなっています。

(※編集部注:「トランポノミクス」とは、ドナルド・トランプ氏とエコノミクス(経済学)を合わせた造語で、トランプ氏が掲げる経済政策のこと)

 前述のように米ドル/円はトランプラリーの50%戻し水準まで…
米利上げ後の米ドル安継続、米ドル/円は 110円割れへ。下値模索はなぜまだ続く? ブログ

米利上げ後の米ドル安継続、米ドル/円は 110円割れへ。下値模索はなぜまだ続く?

■FOMC後のセル・ザ・ファクトによる米ドル安継続 みなさん、こんにちは。

 前回、前々回と当コラムでご紹介してきた、FOMC(米連邦公開市場委員会)の利上げ後の「米ドル安・円高」は今週(3月20日~)に入って加速しています。

【参考記事】

●FOMC後のセル・ザ・ファクトを警戒! 米ドル/円が115円を突破するカギは…!?(3月9日、西原宏一)

●FOMC後の米ドル下落は想定どおり。ドル/円は113円台へ下落。上値は重いか…(3月16日、西原宏一)

●セル・ザ・ファクトによる米ドル安が継続。ドル/円は111.60円、節目110円も視野に?(3月20日、西原宏一&大橋ひろこ)

 米ドル/円は、2月の安値である111.60円をも割り込み、一時110.73円まで急落。

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 この米ドル安は対円である米ドル/円だけでなく、ユーロ/米ドル、英ポンド/米ドルなど、主要通貨に対して広範に米ドル安が進行しています。

米ドルVS世界の通貨 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 日足)

 FOMCでの利上げが織り込まれている場合、利上げ後はセル・ザ・ファクトで米ドル安が進むという、マーケットの教科書どおりの相場が展開されました。

■トランプ政策への懸念で米国株の調整が鮮明に では、この米ドル安はどこまで続くのでしょうか?

 今週(3月20日~)、米ドル安・円高が加速した背景には、米国株の下落があります。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

 米国株の調整が鮮明になってきた背景は、トランプ政策への懸念。

 トランポノミクス(※)への期待から続伸してきた米国株ですが、今月(3月)に入っても「トランプ米政権の減税、インフラ投資、金融規制緩和」の具体的な内容が示されないことに失望感が広がっています。

(※編集部注:「トランポノミクス」とは、ドナルド・トランプ氏とエコノミクス(経済学)を合わせた造語で、トランプ氏が掲げる経済政策のこと)

 きっかけとなったオバマケア(米医療制度改革法)の改廃を巡る迷走が収まらないと、米国株の調整は続き、米ドル安・円高も継続することになります。

米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

 ここで昨年(2016年)12月、FOMCが利上げをしたあと、米ドル/円で…
FOMC後の米ドル下落は想定どおり。 ドル/円は113円台へ下落。上値は重いか… ブログ

FOMC後の米ドル下落は想定どおり。 ドル/円は113円台へ下落。上値は重いか…

■FOMC後はセル・ザ・ファクトで米ドル下落 みなさん、こんにちは。

 本日(3月16日)未明、注目のFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催されました。

 コンセンサスどおり、FFレート(※)のターゲット・レンジは0.25%引き上げられ、0.75%~1.00%へ。

(※編集部注:「FFレート」とは、フェデラルファンド金利のことで、FF金利とも呼ばれる。米国の政策金利)

(出所:FRBのデータを基にザイFX!編集部が作成)

 政策金利見通しでは引き続き、FOMCが今年(2017年)3回、来年(2018年)3回(中央値ベース)の利上げを予想しているという内容にとなり、きわめてハト派的なトーンに終始しました。

 結果、発表後の米ドル/円は、米ドル売りに。

 米ドル/円は115.00円レベルから、一気に113円台前半に反落しました。

米ドル/円 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)

 米ドル/円は、昨年(2016年)12月のFOMCで利上げを発表した局面で到達した、118.66円が高値となり反落したのと同じ流れに。

 つまり、セル・ザ・ファクト。

【参考記事】

●昨年12月FOMCの値動きが再現される? ドル/円はイベント注視して短期的に売りも(3月13日、西原宏一&大橋ひろこ)

●FOMC後のセル・ザ・ファクトを警戒! 米ドル/円が115円を突破するカギは…!?(3月9日、西原宏一)

 今回も、米ドル/円は115.51円の高値に到達した後、FOMCを受けて反落。

 これで当面、115円台ミドルを高値に米ドル/円は調整へ。

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 以下のチャートは、前回のコラムでもご紹介した…