西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

米ドル/円は半年サイクルでトレンド転換! FOMCきっかけの米ドル高は継続か? ブログ

米ドル/円は半年サイクルでトレンド転換! FOMCきっかけの米ドル高は継続か?

■FOMCの方針とともに、米ドル/円は方向性を転換 みなさん、こんにちは。

 このところの米ドル/円は、FOMC(米連邦公開市場委員会)の方針とともに、方向性を転換させる傾向があります。

 トランプラリーで約17円暴騰し、118.66円まで到達した米ドル/円を反転させたのが昨年(2016年)12月14日(水)のFOMCの利上げ。

【参考記事】

●豪ドルを買う理由がなくなってしまう!? 米ドル/円は「買い遅れ組」の動きに注目!(2016年12月19日、西原宏一&大橋ひろこ)

 そして、米ドル/円が115円台ミドルへの上昇を反転させたのが、3月15日(水)のFOMCの利上げでした。

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 そのため、6月14日(水)のFOMCにマーケットの注目が集まっていました。

 結果は、マーケットのコンセンサスどおり利上げ。

(出所:FRBのデータを基にザイFX!編集部が作成)

 これまでの動きを先取りするかのように、FOMC直前に米ドル/円は108.83円まで急落。

 ただ、今回はFOMC後に米ドル/円は反発に転じています。


■FOMCのバランスシート縮小計画が流れを変えた 確かに、FOMCは利上げを決定したのですが、マーケットの流れを大きく変えたのが、FOMCが発表したバランスシートの縮小計画。

米FOMC、利上げ決定 年内にバランスシート縮小開始へ

米連邦準備理事会(FRB)は14日まで開催した米連邦公開市場委員会(FOMC)で、継続的な経済成長や労働市場の堅調さを踏まえ、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を1.0─1.25%に引き上げることを決定した。また年内にバランスシートの縮小に着手する方針を明らかにした。

FOMC声明は、経済は力強さを引き続き増す一方、雇用の伸びも引き続き底堅いとし、足元のインフレ軟化をFRBがおおむね一時的とみていることが示された。

年内はあと1度の利上げを見込み、足元で強弱まちまちとなっている経済指標は重視しない考えを示唆した。

また「委員会は現時点で、経済がおおむね想定通りに進展すれば、バランスシートの正常化プログラムを今年開始すると予想している」とし、償還資金の再投資縮小を通じた明確なバランスシート縮小計画を示した。

出所:ロイター

 ここで、FOMCが発表したバランスシートの縮小計画は以下のとおり。

●FOMC バランスシート縮小計画

(1)米国債

米国債については、月当たりの再投資見送り額を当初60億ドルに設定。

その後、月額300億ドルに達するまで、1年をかけて3カ月おきに60億ドル増やす。

(2)MBS(=モーゲージ担保証券)

MBS(モーゲージ担保証券)については、月あたりの再投資見送り額を40億ドルに設定。月額200億ドルに達するまで1年をかけて3カ月ごとに40億ドル増やす。

 加えて、FRB(米連邦準備制度理事会)のイエレン議長は「比較的早期に」バランスシート縮小を開始する可能性があるとの考えを表明。

 今回のFOMCでは、足元で強弱まちまちとなっている経済指標は重視せず、金融政策の正常化に踏み切る模様。

 FRBのバランスシート縮小はもちろん、金融引き締め策のひとつで、米ドル高を誘引することは間違いないところ。

米ドルVS世界の通貨 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 日足)

 イエレン議長の英断により、多くの主要通貨に対して米ドルは急反発。

 FOMC直前には、一時108.83円まで急落していた米ドル/円が、数日で一気に111円台をも回復しています。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

 では、このFOMCをきっかけとした米ドル高が継続するか…
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米ドル/円は半年サイクルでトレンド転換! FOMCきっかけの米ドル高は継続か?

■FOMCの方針とともに、米ドル/円は方向性を転換 みなさん、こんにちは。

 このところの米ドル/円は、FOMC(米連邦公開市場委員会)の方針とともに、方向性を転換させる傾向があります。

 トランプラリーで約17円暴騰し、118.66円まで到達した米ドル/円を反転させたのが昨年(2016年)12月14日(水)のFOMCの利上げ。

【参考記事】

●豪ドルを買う理由がなくなってしまう!? 米ドル/円は「買い遅れ組」の動きに注目!(2016年12月19日、西原宏一&大橋ひろこ)

 そして、米ドル/円が115円台ミドルへの上昇を反転させたのが、3月15日(水)のFOMCの利上げでした。

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 そのため、6月14日(水)のFOMCにマーケットの注目が集まっていました。

 結果は、マーケットのコンセンサスどおり利上げ。

(出所:FRBのデータを基にザイFX!編集部が作成)

 これまでの動きを先取りするかのように、FOMC直前に米ドル/円は108.83円まで急落。

 ただ、今回はFOMC後に米ドル/円は反発に転じています。


■FOMCのバランスシート縮小計画が流れを変えた 確かに、FOMCは利上げを決定したのですが、マーケットの流れを大きく変えたのが、FOMCが発表したバランスシートの縮小計画。

米FOMC、利上げ決定 年内にバランスシート縮小開始へ

米連邦準備理事会(FRB)は14日まで開催した米連邦公開市場委員会(FOMC)で、継続的な経済成長や労働市場の堅調さを踏まえ、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を1.0─1.25%に引き上げることを決定した。また年内にバランスシートの縮小に着手する方針を明らかにした。

FOMC声明は、経済は力強さを引き続き増す一方、雇用の伸びも引き続き底堅いとし、足元のインフレ軟化をFRBがおおむね一時的とみていることが示された。

年内はあと1度の利上げを見込み、足元で強弱まちまちとなっている経済指標は重視しない考えを示唆した。

また「委員会は現時点で、経済がおおむね想定通りに進展すれば、バランスシートの正常化プログラムを今年開始すると予想している」とし、償還資金の再投資縮小を通じた明確なバランスシート縮小計画を示した。

出所:ロイター

 ここで、FOMCが発表したバランスシートの縮小計画は以下のとおり。

●FOMC バランスシート縮小計画

(1)米国債

米国債については、月当たりの再投資見送り額を当初60億ドルに設定。

その後、月額300億ドルに達するまで、1年をかけて3カ月おきに60億ドル増やす。

(2)MBS(=モーゲージ担保証券)

MBS(モーゲージ担保証券)については、月あたりの再投資見送り額を40億ドルに設定。月額200億ドルに達するまで1年をかけて3カ月ごとに40億ドル増やす。

 加えて、FRB(米連邦準備制度理事会)のイエレン議長は「比較的早期に」バランスシート縮小を開始する可能性があるとの考えを表明。

 今回のFOMCでは、足元で強弱まちまちとなっている経済指標は重視せず、金融政策の正常化に踏み切る模様。

 FRBのバランスシート縮小はもちろん、金融引き締め策のひとつで、米ドル高を誘引することは間違いないところ。

米ドルVS世界の通貨 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 日足)

 イエレン議長の英断により、多くの主要通貨に対して米ドルは急反発。

 FOMC直前には、一時108.83円まで急落していた米ドル/円が、数日で一気に111円台をも回復しています。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

 では、このFOMCをきっかけとした米ドル高が継続するか…
FOMCの利上げは間違いとの意見多数! 米国株調整入りなら米ドル/円も下落へ… ブログ

FOMCの利上げは間違いとの意見多数! 米国株調整入りなら米ドル/円も下落へ…

■予想どおり、米国株が調整入りしそう… みなさん、こんにちは。

 前回のコラムで「米国経済を反映しているのは、米国株か米国債か?」ということがマーケットで話題になっていることをご紹介させていただきました。

【参考記事】

●米国株と米国債、米経済はどちらを反映? レイ・ダリオ氏の警告。米ドル急落に警戒!(6月8日、西原宏一)

 そして、米国株ではなく米国債の動向が正確に米国経済を反映していると判断し、米国株は早晩調整に入るのではと結論づけたのですが、実際に米国株は調整に入りそうです。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

■米国株急落の背景に「FANG」銘柄アリ 6月9日(金)、米国株市場で突如、ナスダック総合指数が急落。

ナスダック総合指数 日足(出所:Bloomberg)

 新型iPhoneの機能への懸念や、ゴールドマン・サックスのレポートが原因だとも言われていますが、最大の要因は、エヌビディア。

 半導体大手のエヌビディアが6%以上も急落。

エヌビディア 日足(出所:Bloomberg)

 エヌビディアは、本来、GPU(画像処理半導体)のトップメーカー。ただ昨今ではAIのキーカンパニーとされており、自動運転車用AIにおいては、突出した存在です。

 加えて、エヌビディアのGPUは、ビットコインなど暗号通貨のマイニング(採掘)にも使われるため、関連銘柄として物色されたこともあります。

 エヌビディア暴落の要因は、空売りファンドのシトロン・リサーチがエヌビディアの株価を割高とするレポートを発表したことがきっかけ。

 これに呼応して、「FANG」が急落。

 「FANG」はフェイスブック、アマゾン・ドット・コム、ネットフリックス、グーグルの頭文字。アップルを加えて「FAANG」とする場合もあります。いずれも読み方は「ファング」です。

【参考記事】

●半年サイクルなら、6月のドル/円は安値に到達!? そのカギは「FANG」銘柄が握る?(6月12日、西原宏一&大橋ひろこ)

 米国株高を牽引してきたニューエコノミーの象徴である「FANG」が売り込まれたことにより、米国債が示唆していた米国株の調整がより現実的に。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

 今週(6月12日~)の最大の注目は…
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FOMCの利上げは間違いとの意見多数! 米国株調整入りなら米ドル/円も下落へ…

■予想どおり、米国株が調整入りしそう… みなさん、こんにちは。

 前回のコラムで「米国経済を反映しているのは、米国株か米国債か?」ということがマーケットで話題になっていることをご紹介させていただきました。

【参考記事】

●米国株と米国債、米経済はどちらを反映? レイ・ダリオ氏の警告。米ドル急落に警戒!(6月8日、西原宏一)

 そして、米国株ではなく米国債の動向が正確に米国経済を反映していると判断し、米国株は早晩調整に入るのではと結論づけたのですが、実際に米国株は調整に入りそうです。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

■米国株急落の背景に「FANG」銘柄アリ 6月9日(金)、米国株市場で突如、ナスダック総合指数が急落。

ナスダック総合指数 日足(出所:Bloomberg)

 新型iPhoneの機能への懸念や、ゴールドマン・サックスのレポートが原因だとも言われていますが、最大の要因は、エヌビディア。

 半導体大手のエヌビディアが6%以上も急落。

エヌビディア 日足(出所:Bloomberg)

 エヌビディアは、本来、GPU(画像処理半導体)のトップメーカー。ただ昨今ではAIのキーカンパニーとされており、自動運転車用AIにおいては、突出した存在です。

 加えて、エヌビディアのGPUは、ビットコインなど暗号通貨のマイニング(採掘)にも使われるため、関連銘柄として物色されたこともあります。

 エヌビディア暴落の要因は、空売りファンドのシトロン・リサーチがエヌビディアの株価を割高とするレポートを発表したことがきっかけ。

 これに呼応して、「FANG」が急落。

 「FANG」はフェイスブック、アマゾン・ドット・コム、ネットフリックス、グーグルの頭文字。アップルを加えて「FAANG」とする場合もあります。いずれも読み方は「ファング」です。

【参考記事】

●半年サイクルなら、6月のドル/円は安値に到達!? そのカギは「FANG」銘柄が握る?(6月12日、西原宏一&大橋ひろこ)

 米国株高を牽引してきたニューエコノミーの象徴である「FANG」が売り込まれたことにより、米国債が示唆していた米国株の調整がより現実的に。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

 今週(6月12日~)の最大の注目は…
米国株と米国債、米経済はどちらを反映? レイ・ダリオ氏の警告。米ドル急落に警戒! ブログ

米国株と米国債、米経済はどちらを反映? レイ・ダリオ氏の警告。米ドル急落に警戒!

■米国経済を反映しているのは、米国株か米国債か? みなさん、こんにちは。

 過去2カ月、マーケットでは米経済を反映しているのは、米国株なのか米国債なのかという論議が行われていました。

 AmazonやFacebook、AppleなどのIT系が牽引し、底堅く推移している米国株をみていると、最近停滞気味の経済指標にも関わらず、米経済は好調を維持しているように見えます。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

 一方、6月13日(火)~14日(水)に開催されるFOMC(米連邦公開市場委員会)での利上げをほぼ織り込んでいる金融市場では、米金利の停滞が続いています。

米長期金利(米10年物国債利回り) 日足(出所:Bloomberg)

 好調な米国株を材料視すると、米ドル/円も底堅く推移するはずですが、チャートが示しているように、米ドル/円は米国株に追随していません。

米ドル/円&NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

 むしろ、このところは逆相関ともいえる展開。

 では、連動しているといわれている日経平均と米ドル/円はどうか?

米ドル/円&日経平均 日足(出所:Bloomberg)

 これも過去1カ月、米ドル/円は日経平均の上昇に追随していません。

 では、米ドル/円を動かしている要因はなにか?

 米ドル/円は米金利の下落に追随して続落しています。

米ドル/円&米長期金利(米10年物国債利回り) 日足(出所:Bloomberg)

 マーケットでは、日本株の上昇に比較して、米ドル/円の反発が弱く、米ドル/円が遅れて追随するとの見方もありましたが、今週(6月5日~)に入っての米ドル/円は節目の110.00 円を割り込み、一時109.12円まで下落しています。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

 この背景には「中東5カ国がカタールとの国交を断絶」との報道が…
米国株と米国債、米経済はどちらを反映? レイ・ダリオ氏の警告。米ドル急落に警戒! ブログ

米国株と米国債、米経済はどちらを反映? レイ・ダリオ氏の警告。米ドル急落に警戒!

■米国経済を反映しているのは、米国株か米国債か? みなさん、こんにちは。

 過去2カ月、マーケットでは米経済を反映しているのは、米国株なのか米国債なのかという論議が行われていました。

 AmazonやFacebook、AppleなどのIT系が牽引し、底堅く推移している米国株をみていると、最近停滞気味の経済指標にも関わらず、米経済は好調を維持しているように見えます。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

 一方、6月13日(火)~14日(水)に開催されるFOMC(米連邦公開市場委員会)での利上げをほぼ織り込んでいる金融市場では、米金利の停滞が続いています。

米長期金利(米10年物国債利回り) 日足(出所:Bloomberg)

 好調な米国株を材料視すると、米ドル/円も底堅く推移するはずですが、チャートが示しているように、米ドル/円は米国株に追随していません。

米ドル/円&NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

 むしろ、このところは逆相関ともいえる展開。

 では、連動しているといわれている日経平均と米ドル/円はどうか?

米ドル/円&日経平均 日足(出所:Bloomberg)

 これも過去1カ月、米ドル/円は日経平均の上昇に追随していません。

 では、米ドル/円を動かしている要因はなにか?

 米ドル/円は米金利の下落に追随して続落しています。

米ドル/円&米長期金利(米10年物国債利回り) 日足(出所:Bloomberg)

 マーケットでは、日本株の上昇に比較して、米ドル/円の反発が弱く、米ドル/円が遅れて追随するとの見方もありましたが、今週(6月5日~)に入っての米ドル/円は節目の110.00 円を割り込み、一時109.12円まで下落しています。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

 この背景には「中東5カ国がカタールとの国交を断絶」との報道が…
ユーロの調整は数日で終了し、反発! ユーロ/円は126円乗せで130円が視野に ブログ

ユーロの調整は数日で終了し、反発! ユーロ/円は126円乗せで130円が視野に

■メルケル首相の発言でユーロ急騰後は調整入り みなさん、こんにちは。

 メルケル首相の「ECBの金融緩和政策の影響で、ユーロは弱すぎる状態だ」とのコメントで、急騰したユーロクロス(ユーロと米ドル以外の通貨との通貨ペア)、ユーロ/円ですが、まずユーロ/米ドルが節目の1.1300ドル(直近高値=1.1268ドル)を超えられなかったこと、加えて、ユーロ/円が125.80円でダブルトップになってしまったことでいったん調整へ。

【参考記事】

●6月FOMC利上げでも米ドル高は限定的? では、ドル/円上昇のカギを握るものとは…!?(5月29日、西原宏一&大橋ひろこ)

ユーロ/米ドル 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)

ユーロ/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 日足)

 このステージで驚いたのが、ユーロ絡みのポジションが目まぐるしくかわったこと。

 フランス大統領選前までは、総じてショートだったユーロのポジションですが、IMM(国際通貨先物市場)によると、投機筋のユーロ買いは6万4845枚と2013年以来の高水準まであっという間に積み上がった模様。

IMM(国際通貨先物市場)ポジション状況(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)

 買い越しに転じたのが5月2日(火)。ユーロ買いのペースはあまりにも急激でしたので、いったん調整に入っても仕方のないところ。

 前述のように、メルケル首相のコメントが(学生向けとはいえ)あまりにもあからさまな「ユーロ安」批判だったため、投機筋のロングが積み上がった模様。

 ただ、前回のコラムでもご紹介しましたが、メルケル首相は、ECB(欧州中央銀行)を批判しているというよりも、トランプ政権から貿易黒字に対する批判を繰り返されても、ECBの金融緩和が変わらなければどうしようもないということを言っているのみ。

【参考記事】

●メルケル発言よりも本邦勢の欧州投資がユーロに追い風! 130円突破なら135円へ(5月25日、西原宏一)

 加えて、5月29日(月)の海外市場ではイタリアにも…
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ユーロの調整は数日で終了し、反発! ユーロ/円は126円乗せで130円が視野に

■メルケル首相の発言でユーロ急騰後は調整入り みなさん、こんにちは。

 メルケル首相の「ECBの金融緩和政策の影響で、ユーロは弱すぎる状態だ」とのコメントで、急騰したユーロクロス(ユーロと米ドル以外の通貨との通貨ペア)、ユーロ/円ですが、まずユーロ/米ドルが節目の1.1300ドル(直近高値=1.1268ドル)を超えられなかったこと、加えて、ユーロ/円が125.80円でダブルトップになってしまったことでいったん調整へ。

【参考記事】

●6月FOMC利上げでも米ドル高は限定的? では、ドル/円上昇のカギを握るものとは…!?(5月29日、西原宏一&大橋ひろこ)

ユーロ/米ドル 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)

ユーロ/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 日足)

 このステージで驚いたのが、ユーロ絡みのポジションが目まぐるしくかわったこと。

 フランス大統領選前までは、総じてショートだったユーロのポジションですが、IMM(国際通貨先物市場)によると、投機筋のユーロ買いは6万4845枚と2013年以来の高水準まであっという間に積み上がった模様。

IMM(国際通貨先物市場)ポジション状況(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)

 買い越しに転じたのが5月2日(火)。ユーロ買いのペースはあまりにも急激でしたので、いったん調整に入っても仕方のないところ。

 前述のように、メルケル首相のコメントが(学生向けとはいえ)あまりにもあからさまな「ユーロ安」批判だったため、投機筋のロングが積み上がった模様。

 ただ、前回のコラムでもご紹介しましたが、メルケル首相は、ECB(欧州中央銀行)を批判しているというよりも、トランプ政権から貿易黒字に対する批判を繰り返されても、ECBの金融緩和が変わらなければどうしようもないということを言っているのみ。

【参考記事】

●メルケル発言よりも本邦勢の欧州投資がユーロに追い風! 130円突破なら135円へ(5月25日、西原宏一)

 加えて、5月29日(月)の海外市場ではイタリアにも…
メルケル発言よりも本邦勢の欧州投資が ユーロに追い風! 130円突破なら135円へ ブログ

メルケル発言よりも本邦勢の欧州投資が ユーロに追い風! 130円突破なら135円へ

■フランス大統領選が2017年前半の最大のリスクイベントに みなさん、こんにちは。

 2017年初頭は、フランス大統領選はそれほど注目を集めていませんでした。

 しかし、フランス大統領選が近づくにつれて、多くの機関投資家は、2017年前半の最大のリスクイベントをフランス大統領選に絞って警戒を高めるようになりました。

 その要因は、昨年(2016年)のBrexit(英国のEU離脱)決定。

 2016年6月は衝撃のBrexitを受け、英ポンド/円は暴落しました。

【参考記事】

●EU離脱ショックで英ポンド暴落! 米7月利下げ観測も浮上! ドル/円、次は95円へ(2016年6月24日、西原宏一)

 Brexitを懸念し始めた2015年を起点とすれば、英ポンド/円は一時、70円以上も急落しています。

英ポンド/円 月足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/円 月足)

 この英ポンド/円大暴落の連想が働き、多くの投資家はフランス大統領選を控えてリスクオフに備えざるを得なくなります。

【参考記事】

●仏大統領選を無事通過してリスクオン再開。米ドル/円は115円に向けて反発する公算大(4月27日、西原宏一)

 まず保有していたフランス国債を売却。そして、ユーロ/円をショートに。

 ユーロ/円は一時、114.85円まで急落します。

 加えて、オプションマーケットではユーロ円の1カ月物のリスク・リバーサルが、マイナス6.7%まで急低下(※)。

(※編集部注:「リスク・リバーサル」とはざっくり言うと、ある一定の同一条件でオプションのコール(買う権利)とプット(売る権利)を同時に反対売買する取引のこと。理論的にはこのときのコールとプットの価格は同一になるが、市場参加者の相場観によって実際には同一にならない。このとき、その差の数値が市場参加者のリスク認識を示す指標として使われ、この指標も「リスク・リバーサル」と呼ばれている(以下のグラフ)。この数値がマイナスになっている場合、市場参加者のリスク認識が売り方向に優勢であることを示している)

ユーロ/円の1カ月物リスクリバーサル 日足(出所:Bloomberg)

 簡単にいってしまえば、多少コストを払っても、ユーロ/円の暴落に備えざるを得なかったというほど、オプション市場ではユーロ/円急落に対する警戒感が高まっていました。

■フランス大統領選はマクロン氏が当選 そして、注目のフランス大統領選はマクロン大統領の誕生という結果に。

 まさかの事態に備えヘッジしていたユーロ/円のショートはオプションも含め、価値が急速に下がりますので、オプションのカバーに加え、ユーロ/円の急速な買い戻しが進み急騰。短期間で、125円台まで急回復します。

ユーロ/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 日足)

 安値より約10円回復し、ユーロ/円の上昇が一服となったところで、ドイツのメルケル首相から後述のコメントが飛び出し、ユーロ/円の上値余地はさらに拡大することになります。

■唐突感のあるメルケル首相の「ユーロは安すぎる」発言 5月23日(火)の欧州時間に、メルケル首相が「ユーロは弱すぎる」とコメントし、ユーロ/円は一時急騰しました。

【参考記事】

●FRB高官の発言で米6月利上げが濃厚に! ユーロ/ドルは節目の1.13ドルを超えるか!?(5月22日、西原宏一&大橋ひろこ)

メルケル独首相:ユーロは「弱過ぎる」、ドイツ製品を割安にしている

ドイツの貿易黒字はユーロ安の結果だと、メルケル独首相が述べた。

「ユーロは弱過ぎる。これはECBの政策が理由だ。これによってドイツ製品が相対的に安くなっている」とメルケル首相がベルリンで貿易黒字について学生らに語った。

出所:Bloomberg

 メルケル首相は今年(2017年)2月にも同様のコメントをしています。

メルケル氏:ユーロ相場は自分の力の及ぶところでない-米政権に反論

メルケル首相はユーロ相場について、ドイツの貿易黒字の一因であるのは確かだが、それは欧州中央銀行(ECB)の金融政策決定においてユーロ圏19カ国の異なる経済状況に対応する必要性が理由だとの見解を示した。

ミュンヘン安全保障会議でドイツの経常黒字について質問を受けたメルケル首相は、「もしドイツ・マルクがまだ通用しているなら、今のユーロ相場とは異なる評価を受けていただろう」と述べ、「だが、独立した金融政策に伴うものであり、私は首相としてそれに対して影響力はゼロだ」と答えた。

ユーロ安がドイツに貿易上の不当な優位性を与えていると主張するトランプ政権の批判への反論としては、同首相の今回の発言はこれまでで最も踏み込んだものとなった。米国家通商会議(NTC)委員長のピーター・ナバロ氏は今月、ユーロの「甚だしい過小評価」でドイツが恩恵を受けていると指摘していた。

出所:Bloomberg

 メルケル首相は、ECB(欧州中央銀行)を批判しているというよりも、トランプ政権から貿易黒字に対する批判を繰り返されても、ECBの金融緩和が変わらなければどうしようもないということをいっているのでしょう(ひとつの手段としては内需拡大という手はありますが…)。

 ユーロ上昇の理由のひとつに、ドラギ総裁の後任がバイトマン独連銀総裁になる可能性があるためとの意見もありますが、これはほとんど影響を及ぼさない模様。

 なぜなら、ECB理事会は多数決であるため、金融緩和を求める南欧諸国が多数存在する限り、ドイツ人が総裁になったところでそれは変わらないということになるからです。

 そして、ユーロ/円上昇の背景として一番大きな要因として挙げられるのが、ECBの出口論が活発になっていること。

 出口に向かうためには、景気減速で苦しむ南欧諸国を切り捨てるかどうかがポイントになるため、今後のECBの動向に注目。

 個人的には、ユーロ/円の動向は、メルケル首相のコメントよりも…
メルケル発言よりも本邦勢の欧州投資が ユーロに追い風! 130円突破なら135円へ ブログ

メルケル発言よりも本邦勢の欧州投資が ユーロに追い風! 130円突破なら135円へ

■フランス大統領選が2017年前半の最大のリスクイベントに みなさん、こんにちは。

 2017年初頭は、フランス大統領選はそれほど注目を集めていませんでした。

 しかし、フランス大統領選が近づくにつれて、多くの機関投資家は、2017年前半の最大のリスクイベントをフランス大統領選に絞って警戒を高めるようになりました。

 その要因は、昨年(2016年)のBrexit(英国のEU離脱)決定。

 2016年6月は衝撃のBrexitを受け、英ポンド/円は暴落しました。

【参考記事】

●EU離脱ショックで英ポンド暴落! 米7月利下げ観測も浮上! ドル/円、次は95円へ(2016年6月24日、西原宏一)

 Brexitを懸念し始めた2015年を起点とすれば、英ポンド/円は一時、70円以上も急落しています。

英ポンド/円 月足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/円 月足)

 この英ポンド/円大暴落の連想が働き、多くの投資家はフランス大統領選を控えてリスクオフに備えざるを得なくなります。

【参考記事】

●仏大統領選を無事通過してリスクオン再開。米ドル/円は115円に向けて反発する公算大(4月27日、西原宏一)

 まず保有していたフランス国債を売却。そして、ユーロ/円をショートに。

 ユーロ/円は一時、114.85円まで急落します。

 加えて、オプションマーケットではユーロ円の1カ月物のリスク・リバーサルが、マイナス6.7%まで急低下(※)。

(※編集部注:「リスク・リバーサル」とはざっくり言うと、ある一定の同一条件でオプションのコール(買う権利)とプット(売る権利)を同時に反対売買する取引のこと。理論的にはこのときのコールとプットの価格は同一になるが、市場参加者の相場観によって実際には同一にならない。このとき、その差の数値が市場参加者のリスク認識を示す指標として使われ、この指標も「リスク・リバーサル」と呼ばれている(以下のグラフ)。この数値がマイナスになっている場合、市場参加者のリスク認識が売り方向に優勢であることを示している)

ユーロ/円の1カ月物リスクリバーサル 日足(出所:Bloomberg)

 簡単にいってしまえば、多少コストを払っても、ユーロ/円の暴落に備えざるを得なかったというほど、オプション市場ではユーロ/円急落に対する警戒感が高まっていました。

■フランス大統領選はマクロン氏が当選 そして、注目のフランス大統領選はマクロン大統領の誕生という結果に。

 まさかの事態に備えヘッジしていたユーロ/円のショートはオプションも含め、価値が急速に下がりますので、オプションのカバーに加え、ユーロ/円の急速な買い戻しが進み急騰。短期間で、125円台まで急回復します。

ユーロ/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 日足)

 安値より約10円回復し、ユーロ/円の上昇が一服となったところで、ドイツのメルケル首相から後述のコメントが飛び出し、ユーロ/円の上値余地はさらに拡大することになります。

■唐突感のあるメルケル首相の「ユーロは安すぎる」発言 5月23日(火)の欧州時間に、メルケル首相が「ユーロは弱すぎる」とコメントし、ユーロ/円は一時急騰しました。

【参考記事】

●FRB高官の発言で米6月利上げが濃厚に! ユーロ/ドルは節目の1.13ドルを超えるか!?(5月22日、西原宏一&大橋ひろこ)

メルケル独首相:ユーロは「弱過ぎる」、ドイツ製品を割安にしている

ドイツの貿易黒字はユーロ安の結果だと、メルケル独首相が述べた。

「ユーロは弱過ぎる。これはECBの政策が理由だ。これによってドイツ製品が相対的に安くなっている」とメルケル首相がベルリンで貿易黒字について学生らに語った。

出所:Bloomberg

 メルケル首相は今年(2017年)2月にも同様のコメントをしています。

メルケル氏:ユーロ相場は自分の力の及ぶところでない-米政権に反論

メルケル首相はユーロ相場について、ドイツの貿易黒字の一因であるのは確かだが、それは欧州中央銀行(ECB)の金融政策決定においてユーロ圏19カ国の異なる経済状況に対応する必要性が理由だとの見解を示した。

ミュンヘン安全保障会議でドイツの経常黒字について質問を受けたメルケル首相は、「もしドイツ・マルクがまだ通用しているなら、今のユーロ相場とは異なる評価を受けていただろう」と述べ、「だが、独立した金融政策に伴うものであり、私は首相としてそれに対して影響力はゼロだ」と答えた。

ユーロ安がドイツに貿易上の不当な優位性を与えていると主張するトランプ政権の批判への反論としては、同首相の今回の発言はこれまでで最も踏み込んだものとなった。米国家通商会議(NTC)委員長のピーター・ナバロ氏は今月、ユーロの「甚だしい過小評価」でドイツが恩恵を受けていると指摘していた。

出所:Bloomberg

 メルケル首相は、ECB(欧州中央銀行)を批判しているというよりも、トランプ政権から貿易黒字に対する批判を繰り返されても、ECBの金融緩和が変わらなければどうしようもないということをいっているのでしょう(ひとつの手段としては内需拡大という手はありますが…)。

 ユーロ上昇の理由のひとつに、ドラギ総裁の後任がバイトマン独連銀総裁になる可能性があるためとの意見もありますが、これはほとんど影響を及ぼさない模様。

 なぜなら、ECB理事会は多数決であるため、金融緩和を求める南欧諸国が多数存在する限り、ドイツ人が総裁になったところでそれは変わらないということになるからです。

 そして、ユーロ/円上昇の背景として一番大きな要因として挙げられるのが、ECBの出口論が活発になっていること。

 出口に向かうためには、景気減速で苦しむ南欧諸国を切り捨てるかどうかがポイントになるため、今後のECBの動向に注目。

 個人的には、ユーロ/円の動向は、メルケル首相のコメントよりも…