西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

円高の流れはクロス円を中心に継続! ポンド/円は半値戻しに届かず140円割れへ ブログ

円高の流れはクロス円を中心に継続! ポンド/円は半値戻しに届かず140円割れへ

■米ドル/円はオプションが絡んだ攻防へ みなさん、こんにちは。

 前回のコラムでご紹介させていただいたように、米ドル/円は、2月16日(金)に105.50円台に到達して以来、調整局面入り。

 今年(2018年)に入ってからの円高のスピードが極めて速いので、これは仕方ないところ。

【参考記事】

●米ドル/円は一気に目標の105円台へ到達! いったん調整後、次のステージは100円へ(2月22日、西原宏一)

米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

 加えて、マーケットでは、米ドル/円の巨大なオプションが話題になっています。

 まず、107.00円

 マーケット参加者によれば、3月9日(金)までは、米ドル/円の107.00円のオプションが80億ドルあるとのこと。

一方、ダウンサイドですが、3月7日(水)まで105.50円に51億ドル残存しているとのこと。

米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

 マーケットはオプションだけで動くわけではありませんが、これだけ巨額なオプションの行使期限が控えていると、米ドル/円マーケットに少なからず影響を及ぼします。

 このオプションの影響を考慮すれば、当面、米ドル/円は105.50円~107.00円の±50pips、つまり105.00円~107.50円程度のレンジ圏内で推移する可能性が高まります。

米ドル/円 週足(出所:Bloomberg)

 これにより、方向性では取りにくいかもしれませんが、今年(2018年)に入って米ドル/円のボラティリティが上がっていることを考えると、このレンジ圏内(105.00円~107.50円程度)で何度も往復する可能性が高いといえます。考え方によっては、悪い相場ではありません。

 個人的には最終的にブレイクするのはダウンサイドだと思っているので、押し目でロングにせず、あくまでも米ドル/円のコアショートを維持しながら、セル・オン・ラリーの予定です。

【参考記事】

●米ドル/円は一気に目標の105円台へ到達! いったん調整後、次のステージは100円へ(2月22日、西原宏一)

 米ドル/円が105.55円に到達して以来…
米ドル/円は一気に目標の105円台へ到達! いったん調整後、次のステージは100円へ ブログ

米ドル/円は一気に目標の105円台へ到達! いったん調整後、次のステージは100円へ

■米ドル/円は目標の105円台に到達し、いったん調整に… みなさん、こんにちは

 今月(2月)、下げ足を速めていた米ドル/円相場ですが、先週(2月12日~)後半から下落が加速。

 節目である108.00円を割り込むと、昨年(2017年)の安値である107.32円もあっさり決壊。

 2月16日(金)には、一時105.55円に到達しています。

米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

 米ドル/円の105円台というのは、筆者も含め、多くの参加者の今年(2018年)のターゲットレベル。

【参考記事】

●2018年初頭に注目したいのはユーロ/円! 米中間選挙に向けて米ドル/円は105円へ(2017年12月21日、西原宏一)

●米ドル/円、株や米長期金利の上昇に追随できず…。111円割れなら107円台も視野!(1月11日、西原宏一)

 そのため、105円台では、ヘッジファンドを中心に利益確定の米ドル買い戻しが断続的にマーケットに投入され、下げ渋り。

 結果、2月16日(金)の105.55円をボトムに米ドル/円は反発。

米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

 振り返ってみれば、日経平均がボトムをつけたのが、2月14日(水)安値の2万950円。その2日後に、米ドル/円がボトムアウトした展開です。

 米ドル/円の日足では、デマーク・インディケーターの「9-13-9」(※)というサインが点灯しており、ひと相場の終焉を示唆。

(※デマーク・インディケーターで、setup=9 countdown=13 setup=9とサイクルが一巡すると、その相場の流れが終焉すると見る)

■オープン外債に絡む米ドル買いもマーケットに投入か 米ドル/円が節目の105円台でボトムをつけた展開でもあることから、このコラムで何度かご紹介させていただいた、オープン外債(為替をヘッジせず、オープンで投資する外債)に絡む米ドル買いもマーケットに投入されている模様。

【参考記事】

●ドル/円は118円への上昇過程! 注目は…!?NZドルを反落させたネガティブ材料とは?(2017年10月26日、西原宏一)

●ドル/円は110.00円の攻防が流れを決める! ドル安の流れと機関投資家の買い需要交錯(1月18日、西原宏一)

●VIX指数急騰で低ボラティリティ相場終焉! 株暴落でも底堅いドル/円も下値余地拡大(2月8日、西原宏一)

明治安田:オープン外債開始、円高進行で年度初-「我慢よかった」

明治安田生命保険は、モーゲージなどの米国の債券に為替リスクを回避せずに1月後半から投資を開始した。年明け以降の急速なドル安・円高を受けて、今年度初のオープン外債への資金投下になる。

運用企画部・運用企画グループの井上伸司氏は20日のインタビューで、今年度はオープン外債のチャンスがなく一切投資してなかったが「ようやくタイミングが来た」と話した。「1ドル=100円割れは想定していない。基本は緩やかな円安という見立て」としている。第3四半期まではあまりにボラティリティーがなさ過ぎたとして「どうしようかと思っていた。そこは我慢できてよかった」と振り返る。

今年に入り円高が加速して15日には1ドル=105円台を付け、米長期金利も上昇している。昨夏も110円を割り込む円高になったが、米長期金利はむしろ年度の最低水準に下がっていた。円高と米金利上昇を受けて1月後半にオープン外債を購入し始めた後も円高が進んだが、継続的に買い下がっており、1000億円台の投資予算があるという。105円を超えた円高は「われわれにはチャンス」と井上氏は話す。

米国の長期金利も、ヘッジ付き米国債券投資に「好ましい水準」に上昇してきたと井上氏はみている。米国の利上げで、コストに相当する日米短期金利差は拡大しヘッジ外債の積み増しを抑制してきた。年明けは金利上昇が長期金利にも波及し、米10年国債は21日には2.9%まで切り上がり投資妙味が出てきたという。

出所:Bloomberg

 大手生保が、オープン外債を増やすという報道はこのコラムでも何度かご紹介させていただいたとおり。

【参考記事】

●ドル/円は118円への上昇過程! 注目は…!?NZドルを反落させたネガティブ材料とは?(2017年10月26日、西原宏一)

 2月の円高局面では、数社からオープン外債に絡む米ドル買いがマーケットに投入されていると言われていましたが、米ドル/円が105円台で底堅くなったことから、今週(2月19日~)、上記のような生保からの米ドル買いが、かなり米ドル/円マーケットで散見されたと言われています。

米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

 米ドル/円が、節目の105円台で底堅くなったことに加え、大手生保からのオープン外債に絡む米ドル買い。

 結果、マーケットでは、米ドル/円が中期でもボトムアウトしたという意見も増えてきていますが、果たして、そうでしょうか?

 ここで、米ドル/円の推移を…
米ドル/円はターゲットの105円に急接近! 米長期金利上昇、株安継続なら100円も!? ブログ

米ドル/円はターゲットの105円に急接近! 米長期金利上昇、株安継続なら100円も!?

■30年レジスタンス突破で米長期金利の上昇が加速 みなさん、こんにちは。

 前回のコラムでご紹介させていただいた「株高と低ボラティリティ」相場が1月で終焉し、その巻き戻し相場が続いています。

【参考記事】

●VIX指数急騰で低ボラティリティ相場終焉! 株暴落でも底堅いドル/円も下値余地拡大(2月8日、西原宏一)

 象徴的なのは、米10年債利回りの急騰。

 以下は、米10年債利回りの月足チャートです。

米長期金利(10年物国債利回り)月足(出所:Bloomberg)

 過去30年、強烈に米10年債利回りの上値を抑えていたレジスタンスを先月(1月)ブレイク。

 本稿執筆時点の米10年債利回りは、一時2.925%と高騰しています。

米長期金利(10年物国債利回り)日足(出所:Bloomberg)

 かつて債券王と言われたビル・グロス氏(※)、現在の債券王と言われているジェフリー・ガンドラック氏(※)。その両人とも、今年(2018年)年初から債券バブルへの警鐘を鳴らしていましたが、それが現実化した形です。

(※編集部注:「ビル・グロス氏」は、米国の債券運用会社「パシフィック・インベストメント・マネジメント・ カンパニー(PIMCO)の共同創業者で、世界的に有名なファンドマネージャー)

(※編集部注:「ジェフリー・ガンドラック氏」は、米国の資産運用会社「ダブルライン・キャピタル」の共同創業者。世界的に有名なファンドマネージャーで「債券王」の異名を持つビル・グロス氏に代わり、「新債券王」として市場の注目を集めている)

【参考記事】

●米長期金利が「30年レジスタンス」を突破! 日米株の乱高下に警戒! 米ドル/円は…!?(2月12日、西原宏一&大橋ひろ子)

●VIX指数急騰で低ボラティリティ相場終焉! 株暴落でも底堅いドル/円も下値余地拡大(2月8日、西原宏一)

●ムニューシン財務長官のドル安歓迎発言はやっぱり本音? ドル/円は105円目指す過程(2月1日、西原宏一)

●米ドル/円、株や米長期金利の上昇に追随できず…。111円割れなら107円台も視野!(1月11日、西原宏一)

 米10年債利回りが2.80%に到達すると、米国株が調整に入る可能性が高いというのがマーケットのコンセンサスとなっていたのですが、米10年債利回りが2.92%と高騰し、米国債の急落が現実化すると同時に米国株の調整もスタートしています。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

■債券バブル終焉で株の調整開始 債券バブルの終焉とともに、株の調整もスタート。

 デマーク(※)のテクニカル分析に従えば、先週(2月5日~)末のNYダウの日足は、数日で大きく値を下げる可能性をデマーク・インディケーターが示唆。

(※編集部注:「デマーク」とはTDシーケンシャルなどのテクニカル指標を開発したトーマス・R・デマーク氏のこと)

 加えて、エリオットウェーブによれば、NYダウの月足も第5波を終了し、調整相場入りを示唆しています。

NYダウ 月足(出所:Bloomberg)

 さらに付け加えると、日経平均の月足も第5波を完了しています。

日経平均 月足(出所:Bloomberg)

 結果、年末年始の高騰で、エリオット的にはどちらも最終波を形成し終わって調整色の濃い相場展開。

 そこに、米金利が急騰したために、先週(2月5日~)からNYダウ、日経平均とも大きく値を下げています。

 特に、円高も並走している相場環境の中、日経平均の下落が際立っており、3週間で約3000円も急落。

 200日移動平均線が位置している2万1044円レベルで、いったん下げ渋っていますが、仮に米金利が続伸するようであれば日経平均の調整幅も大きくなるため、要注意です。

日経平均 日足(出所:Bloomberg)

 日経平均が続落する中、並走して…
VIX指数急騰で低ボラティリティ相場終焉! 株暴落でも底堅いドル/円も下値余地拡大 ブログ

VIX指数急騰で低ボラティリティ相場終焉! 株暴落でも底堅いドル/円も下値余地拡大

■膠着相場という低ボラティリティの大相場の終焉 みなさん、こんにちは。

 昨年(2017年)後半の低ボラティリティ相場において、為替相場は膠着。

【参考記事】

●2018年初頭に注目したいのはユーロ/円! 米中間選挙に向けて米ドル/円は105円へ(2017年12月21日、西原宏一)

 特に米ドル/円相場は、常時112円~114円で推移しており、方向性を取りにいくトレーダーにとっては、難しい相場展開となっていました。

米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

 一方、このコラムでもご紹介させていただいたように、オプションを使えるマーケット参加者にとっては、低ボラティリティ、つまり「動かない相場」という大相場が到来して活況を呈していました。

【参考記事】

●ドル/円は110.00円の攻防が流れを決める! ドル安の流れと機関投資家の買い需要交錯(1月18日、西原宏一)

 相場が動かなければ、膠着相場に賭ける、具体的にはオプションをショートにして収益を上げるという、大相場が到来していたわけです。

 流れとしては、低金利、株は、じり高のゴルディロックス(※)状態。

(※編集部注:ゴルディロックスとは、過熱もしすぎず、低迷もしていない状態のこと)

 このマーケット環境においては、低ボラティリティに賭ける、つまり、VIX指数(恐怖指数)をショートにするという取引が人気を呼んでいました。

 それが、いきなりVIX指数が急騰したため、カバーしきれず、マーケットは大きな痛手を負っています。

VIX指数 週足(出所:Bloomberg)

ベロシティシェアーズ・デイリー・インバースVIX短期ETN 週足(出所:Bloomberg)

プロシェアーズ・ショートトVIX短期先物ETF 週足(出所:Bloomberg)

 ヘッジファンドも、低ボラティリティに賭けて、大きな損失を被ったところが多数。

米株市場の時価総額から約1兆2500億ドル(約136兆7000億円)相当を消失させた相場急落で、株価上昇とボラティリティーの落ち着きが続く方向に賭ける投資を行っていたヘッジファンドが、最も手ひどい打撃を受けた。

事情に詳しい関係者の1人によれば、投資運用会社マン・グループが運営する旗艦ファンドは、市場のトレンドが突然反転したことで、5日に運用資産の価値が目減りした。株式オプションを取引するヘッジファンド運用会社オプション・ソリューションズも一夜にして保有資産の売却を余儀なくされ、資産価値の65%を一時失った。

トゥルー・パートナー・アドバイザーのトビアス・ヘックスター共同最高投資責任者(CIO)は米国時間6日の取引開始前の段階で、一般論として「ボラティリティーに対してポジションをショートにしていたトレーダーは、吐き出すしかなかった。それがまだ終わっていないというのが、われわれの観測だ」と語った。

オプション取引所CBOEのボラティリティー指数(VIX)が5日に過去最大の上昇となったことで、ボラティリティーの低い状態が続く方向に賭ける金融商品に積極的に資金を投じてきた投資家が痛手を被った。2日発表された1月の米雇用統計における平均時給の大幅な伸びがインフレ加速を示唆し、債券利回りの上昇と株価の急落を招いた。

ヘックスター氏が運用に携わるレラティブバリュー・ボラティリティーヘッジファンドは6日までの2営業日で、運用資産の価値が14%急増した。割安と考えるボラティリティー株式指数オプションを買い、割高と思われる同種のオプションを売るこのファンドは、米国と韓国、台湾、日本の指数間の変動で利益を得た。

出所:Bloomberg

 今回の株安は、米金利が急騰したことがきっかけとなっていますが、前述のように、低ボラティリティに賭ける取引、つまりVIX指数をショートにする戦略も活発に取引されていたことから、「株価の下落とVIX指数の急反発」どちらにも踏まれることになり、多くのマーケット参加者が痛手を負っています。

■VIX指数急反発をチャートでチェックすると… では、今回のVIX指数の急反発が、どの程度のものであったのかをチャートでチェックしてみます。以下は、VIX指数の週足チャートです。

VIX指数 週足(出所:Bloomberg)

 2008年10月のリーマンショック時のVIX指数が89.53。

 次のVIX指数の高騰は、2015年8月のチャイナショック時の53.29。

 そして、今回の「米国債急落ショック?」は50.30まで急騰。

 これだけを見ると、チャイナショック時の展開に似ているという結果になりますが、この結論に導けるのは、マーケットが落ち着いた局面になります。

 現在のマーケット環境は、

(1)今週の「FX&コモディティ(商品) 今週の作戦会議」でご紹介させていただいたように、米金利の上昇が止まらない可能性が高い

(2)株高と低ボラティリティに賭けた取引がまだ多く残存しており、米国株、日本株ともに上値の重い展開

【参考記事】

●NYダウは665ドル安! 日経平均も大幅安!それでも米ドル/円が下げなかったワケは?(2月5日、西原宏一&大橋ひろこ)

 この2点から、まだ日米の株価とも、ボラティリティの高い不安定な状態が続く可能性が高く、VIX指数も下げ止まる公算が高いのではないかと想定しています。

 補足ですが、お伝えしてきた通り、昨年(2017年)来の低ボラティリティに賭ける取引を急増させ、今月(2月)のボラティリティ急騰で痛手を負っている参加者が多いのですが、ここへきてVIX指数をショートにする商品自体を疑問視する声が挙がっています。

 日経新聞に、豊島逸夫氏がコラムでコメントをされているので、ご紹介しておきます。

「長期では価値がゼロ」 VIX商品のリスク開示

今回の相場大変動の「主犯のひとり」扱いされている、米株相場の予測変動指数であるVIX指数。これに連動するETN(上場投資証券)について、驚くべきリスク開示が目論見書(プロスぺクタス)に書かれていた。

組成・発行したスイス大手銀行が作成したプロスぺクタスの197ページに「このETNの長期期待価値はゼロである。もし、このETNを長期に保有すれば、投資額の全て、あるいはかなりの部分を失う可能性がある」とのくだりがあるのだ。

このリスク開示文言を果たして購入者が読んでいたのか。商品マーケティングのプロセスで、このリスクが説明されていたのか。市場の一部からは疑問視する声もあがっている。

米CNBCも報道したので、銀行側のスポークスマンは「プロスぺクタスで、本商品は短期投資向けに組成されたことが明確に語られ、プロの投資家のみに販売された。本商品はバイ・アンド・ホールド(買い持ち)の長期保有のための債券ではないことが明示されており、日計りに使われることを前提として組成された」と反論している。

こうしたなか、「規制当局は、プロスぺクタスのこのような文言をなぜ認めたのか」との批判もあがっている。

一方、プロの投資家であれば「このようなデリバティブ(金融派生商品)のリスクは当然承知しているはず」との意見も根強い。

そもそも、このETNの価値がなぜ長期的にゼロになるのか。それは、信託報酬に相当する額の分だけ、ETNの基準価値が徐々に減ってゆく仕組みになっているからだ。

「VIXが過去最低水準」などと連日のように報道されたころは、このようなリスクが問題視されることはなかった。VIXをショートする、すなわち、市場の低ボラティリティーに賭ける投資も、人気が急上昇した。

出所:日経新聞

 相場が動かなくなると、為替市場では、オプションを売って収益を上げるということは、メルマガ 「FXトレード戦略指令!」 でご紹介させていただきましたが、VIX指数をショートにするのも基本は同じ。

 低ボラティリティに賭けているわけなので、ボラティリティが高騰するとあっさり即死してしまうのです。

 日米の株が急落する中で、米ドル/円も108円台まで…
ムニューシン財務長官のドル安歓迎発言は やっぱり本音? ドル/円は105円目指す過程 ブログ

ムニューシン財務長官のドル安歓迎発言は やっぱり本音? ドル/円は105円目指す過程

■日本・米国ともに株式は調整模様に… みなさん、こんにちは。

 昨年(2017年)末から、ほとんど調整なく続伸してきたNYダウですが、1月後半になって失速…。

 1月30日(火)のNYダウは、362ドルも値を下げ、徐々に調整色が濃くなっています。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

 アップル社が製造・販売しているiPhoneXの減産報道が、センチメントを悪化させるきっかけとなっているようです。

 呼応して、日経平均も年初の急伸相場とは打って変わり、ジリ安の展開で、1月31日(水)には、今年(2018年)のスタート地点である2万3000円レベルまで値を崩しています。

日経平均 日足(出所:Bloomberg)

 日本、米国とも、株に調整色が見えてきた要因の1つは、米金利の上昇。以下は、米10年債利回りの月足チャートです。

米長期金利(10年物国債利回り) 月足(出所:Bloomberg)

 米10年債利回りは、2007年6月の5.3228%から大きく値を落とします。その後、2012年から下げ渋り、反発。

 そして、先月(1月)、2007年6月から上値を抑えていたレジスタンスを突破すると、2月1日(木)には、一時2.7331%まで上昇しています。

■「米金利の上昇・株高・米ドル安」は、しっくりこない… この米国債の動きは、年初から多くの著名債券トレーダーが警告していました。

 まず、1月11日(木)のコラムでご紹介させていただいたように、債券王として有名なビル・グロス氏(※)。

(※編集部注:「ビル・グロス氏」は、「債券王」の異名を持つ世界的に有名なファンドマネージャー)

【参考記事】

●米ドル/円、株や米長期金利の上昇に追随できず…。111円割れなら107円台も視野!(1月11日、西原宏一)

 そして、今週(1月29日~)もう一人、個人的に注目したのが、ジェフリー・ガンドラック氏のコメント。

「ガンドラック氏の警告」

富豪の債券投資家、ジェフリー・ガンドラック氏は、金利上昇とドル安という「危険なカクテル」について投資家は判断を誤るべきではないと警告した。

ダブルライン・キャピタルの最高投資責任者(CIO)である同氏は29日、「そこら中にセンチメントの熱狂が見られる」とツイート。「心してリスクを管理せよ」とトレーダーらにアドバイスした。



同氏は今月、S&P500種株価指数が2018年通年で下落するとの予想を示した。仮想通貨や、短期的な利益を狙う新興市場での取引についても警鐘を鳴らした。

出所:Bloomberg

 ガンドラック氏が指摘するように、個人的にも今回の「米金利の上昇・株高・米ドル安」が共存しているところが、しっくりこないところ。

 仮に、このまま米金利が続伸すると、株の調整を誘引するのではないかと想定しています。

 そして、米金利の上昇にも連動しない米ドルの下落は、やはり先週、1月24日(水)のムニューシン米財務長官の「米ドル安歓迎コメント」が効いているのではないかと想定しています。

【参考記事】

●ヘッジファンドの狙いは「日銀トレード」!? ドル/円は戻り売り継続で107円台前半へ…(1月29日、西原宏一&大橋ひろこ)

 トランプ大統領が…
米通商問題が争点となり米ドル安が進む。 ドル/円は110円が決壊! 次は105円へ…!? ブログ

米通商問題が争点となり米ドル安が進む。 ドル/円は110円が決壊! 次は105円へ…!?

■米通商問題が早くも争点に! 米ドル/円は110円が決壊! みなさん、こんにちは。

 今年(2018年)に入ってからの米ドル/円相場は、極めて特異な動きをしています。

 これまでと相違し、日経平均の暴騰にも、米10年債利回りの急騰にも連動せず、上値が極めて重い展開が続いています。

【参考記事】

●米ドル/円、株や米長期金利の上昇に追随できず…。111円割れなら107円台も視野!(1月11日、西原宏一)

●日銀会合で黒田総裁は「出口」をどう語る?何をしても上がらないドル/円は売り継続で(1月22日、西原宏一&大橋ひろこ)

米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

 この上値の重い米ドル/円の背景には、「米国の通商問題が横たわっているのではないか?」とこのコラムでも懸念していたのですが、今週(1月22日~)は、その通商問題がマーケットの前面に出て、貿易戦争に発展しそうな勢い。

【参考記事】

●2018年初頭に注目したいのはユーロ/円! 米中間選挙に向けて米ドル/円は105円へ(2017年12月21日、西原宏一)

 きっかけは、トランプ大統領によるセーフガードの発動。

米政権、洗濯機と太陽パネルのセーフガード発動 アジア・欧州で反発高まる

トランプ米大統領は23日、洗濯機と太陽光パネルに輸入関税をかける大統領令に署名した。

米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は前日の声明で、トランプ大統領が家庭用大型洗濯機のほか、太陽電池および太陽電池モジュールに対し、輸入を制限するための関税を課すことを承認したと明らかにしていた。米通商法201条に基づく緊急輸入制限(セーフガード)発動はトランプ政権で初めてとなる。

こうした措置に対し中国と韓国などから批判が相次いでいるが、トランプ大統領はこれにより通商戦争が引き起こされるわけではないとし、「雇用が回復し、われわれは自分たちの製品を自ら製造することになる。こうしたことは長らくなかった」と述べた。

出所:ロイター

 トランプ大統領は、就任当初から通商政策には強硬的な姿勢を見せており、これが保護主義的だと言われています。

 大統領就任直後には、TPP(環太平洋連携協定)撤退に加え、NAFTA(北米自由貿易協定)からも手を引く考えを示唆。

 しかし、大統領就任1年目の彼は、オバマケアの撤廃と税制改革に注力しており、2017年の彼の政策にはマーケットが懸念していたほど保護主義的な通商政策はみられませんでした。

 そして、今年2018年は米連邦議会の中間選挙を控えています。

 その影響なのか、2018年初頭からトランプ大統領は通商問題の解決に向け、早くも動き出した模様。

■モルガン・スタンレーも米通商リスクに警鐘 この動きを察知したのか? 米大手モルガン・スタンレーも米通商リスクに警鐘を鳴らしています。

 1月22日(月)、米大手のモルガン・スタンレーが「米通商問題」に対して興味深いレポートを出しているので、紹介させていただきます。

モルガン・スタンレー、米通商リスクに警鐘鳴らす-ヘッジ呼び掛け

モルガン・スタンレーのストラテジストは、米国市場における通商リスクはもはや仮定の問題ではなく、投資家は十分に注意を払うべきだと指摘した。

2016年の米大統領選中のトランプ氏の発言が通商政策に対する国民の想像を膨らませたと見られるが、トランプ政権の1年目はこうした発言よりも実際の行動は少なかった。

一方、中国との一触即発状態の紛争や現在行われている北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉など、通商政策の多くで判断の期限が迫りつつあり、こうした問題がマーケットに一層大きく影響し始める可能性がある。保護貿易の兆候を示唆する最新の動きでは、米国が22日に太陽光パネルの輸入品に関税を課す決定を下した。

マイケル・ジーザス氏らモルガン・スタンレーのストラテジストは22日のリポートで、「NAFTA再交渉を進める一方、関税など保護主義的措置を規定した米国法に基づく勧告に対して米政権は行動を起こすのか、あるいは行動を起こさないのか、当面の期限が迫っている」と指摘。「これはNAFTA再交渉やより広範な保護主義的措置で一層厳しい姿勢を取るという懸念をあおる恐れがある」と述べた。

同ストラテジストらは、現状維持か一時的な通商紛争、強硬な保護主義的措置の3つの通商シナリオを想定。一時的な紛争は市場で短期的にリスク回避の動きを呼び起こす一方、輸入抑制へ全力を挙げるようなら影響が長引く可能性があるとみる。

こうしたリスクを回避する手段として、為替と株式に関するモルガン・スタンレーの助言は以下の通り:

●ヘッジとして韓国ウォンに対し円をロング(買い持ち)する

●年内はメキシコ・ペソとカナダ・ドルのコアショート(売り持ち)を維持

ジーザス氏は「関税措置の発動決定は近年の米国史で例がないわけではないものの、米国の従来の自由貿易スタンスが大きく転換したことはない」と説明。「ただ、現行の自由貿易政策を米国は堅持するのかどうかについて投資家の見方が関税措置によって揺らぐ恐れがあることを、われわれは認識しておかなければならない」と記した。

出所:Bloomberg

 個人的にも、今年(2018年)は米国の通商問題が焦点になると考え、その時期は、中間選挙に向けて年後半かと想定していましたが、このモルガン・スタンレーのレポートにもあるように、年初から「通商問題」がマーケットの焦点となり、米ドル/円は上値の重い展開を続けています。

米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

 また、NAFTA(北米自由貿易協定)では、おもにメキシコがターゲットとなりそうですが、カナダも米国をWTO(世界貿易機関)に提訴しており、保護主義が進む可能性が出てきています。

 そして、トランプ大統領は、就任前には日本に対しても貿易不均衡を主張していたので、ヘッジとしての円ロングが必要な時期に入ったのかもしれません。

 こうした動きの中、1月24日(水)にはムニューシン米財務長官の…
ドル/円は110.00円の攻防が流れを決める! ドル安の流れと機関投資家の買い需要交錯 ブログ

ドル/円は110.00円の攻防が流れを決める! ドル安の流れと機関投資家の買い需要交錯

■徐々にテクニカル分析も効き始めたビットコイン みなさん、こんにちは。

 先週(1月8日~)から今週(1月15日~)にかけて、多くのメディアが連日、仮想通貨を取り上げていました。

 もっとも多かったのが、1月17日(水)の仮想通貨全体の暴落を取り上げたものになるのですが…。

 たしかに、ビットコイン/円は、年初の200万円レベルと比較すると暴落と言えますが、昨年(2017年)1月に10万円だったビットコインが105万円になったからといって暴落という表現を使うのは、いまひとつ釈然としません。

ビットコイン/円 週足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ビットコイン/円 週足)

 個人的に興味を持ったのが、仮想通貨の流動性。

 たとえば、ビットコイン/円・日足のシーケンシャルでは、セットアップカウントダウンをていねいにカウントして反落という、デマーク(※)の教科書どおりの動きとなっています。

(※編集部注:「デマーク」とはTDシーケンシャルなどのテクニカル指標を開発したトーマス・R・デマーク氏のこと)

 アルトコイン(ビットコイン以外の仮想通貨)は別として、ビットコインは徐々にテクニカル分析も効き始めています。

 これは、参加者が増えて流動性を増しているということになります。仮想通貨の需要は、これからも高まるのではないでしょうか?

■米ドルは上値の重い展開、米ドル/円は110円割れに迫る 為替市場に話題を戻すと、米ドルは、引き続き、上値の重い展開。

 米ドル円は111.00円を割り込み、一時110.00円という大台を割り込む寸前まで急落しました。

米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

 米ドル安は対円のみならず、対ユーロや対英ポンドでも米ドル安が進行。

 以下は、ユーロ/米ドルの日足チャートです。

 ユーロ/米ドルは、昨年(2017年)9月8日に1.2092ドルの高値に到達。

 その後、調整局面入りし、4カ月が経過しました。

 充分な調整を経た後、先週、1月11日(木)のECB(欧州中央銀行)議事要旨がタカ派トーンだったことをきっかけに、節目の1.2092ドルをブレイクし、対ユーロでも再び米ドル安が進行。

【参考記事】

●ECB議事録と独連立暫定合意でユーロ上昇! ドル売り継続も、IMMのユーロロングに注意(1月15日、西原宏一&大橋ひろこ)

ユーロ/米ドル 日足(出所:Bloomberg)

 加えて、英ポンドや豪ドルでも米ドル安が進みつつあります。

英ポンド/米ドル 日足(出所:Bloomberg)

豪ドル/米ドル 日足(出所:Bloomberg)

 総体的な米ドル下落の背景には、オプション市場の動きも反映されています。

 1月15日(月)のオプション市場では、ユーロ/米ドルや米ドル/円のみならず、英ポンド/米ドルや豪ドル/米ドルでも米ドルのプット高(※)が急速に進行。

(編集部注:「プット」は売る権利のことで、「コール」が買う権利のこと)

 前回のコラムで紹介させていただきましたが、米国債利回り上昇が米ドル/円の上昇を誘引せず、相関性が断ち切れて米ドル/円はじり安の展開。

【参考記事】

●米ドル/円、株や米長期金利の上昇に追随できず…。111円割れなら107円台も視野!(1月11日、西原宏一)

 他通貨でもその傾向が鮮明になりつつあり、オプションマーケットでも、米ドルのプット購入が目立ちはじめ、それが米ドルの下落をさらに誘引しました。

 前述の米国債利回りに続き、米ドル/円と…
米ドル/円、株や米長期金利の上昇に追随 できず…。111円割れなら107円台も視野! ブログ

米ドル/円、株や米長期金利の上昇に追随 できず…。111円割れなら107円台も視野!

 明けましておめでとうございます。

 本年もよろしくお願いします。

■年初から日経平均急騰し、リスクオンでスタートしたが… 2018年は年初から日経平均が急騰。

日経平均 日足(出所:Bloomberg)

 金融マーケットは、リスクオンのセンチメントで始まりました。

【参考記事】

●日本株を持たざるリスクを投資家が意識? 株価反落局面ではユーロ/円を拾いたい!(1月8日、西原宏一&大橋ひろこ)

 しかし、今週(1月8日~)に入ってその雰囲気を一変させるような報道が立て続けに出され、日経平均と米ドル/円は反落へ。

■日銀のテーパリング観測をきっかけに、米金利が急騰 まず、株価の急騰を冷やしたのが、日銀のテーパリング(※)観測。

(※編集部注:「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)

日銀は午前の金融調節で超長期ゾーンの国債買い入れオペを減額

残存10年超25年以下のゾーンでは約1年ぶり

オペ減額を受けて超長期債利回りが上昇、新発20年債利回り

は0.585%と昨年12月6日以来の高水準

出所:Bloomberg

 この報道を受けての東京市場のマーケット参加者は、あまり反応せず。

 日銀は、もともとステルステーパリングをやっているため、マーケットにはそれほど大きな影響はないだろうというのが東京市場の参加者のコンセンサスでした。

■ビル・グロス氏が債券の弱気相場を宣言 しかし、1月10日(水)のNY市場に入り、日銀のテーパリング観測が米国債利回りを押し上げたことでマーケットセンチメントは一変します。

 NY市場では、米10年国債利回りが2.50%を超えて急騰。

米長期金利(米10年物国債利回り)(出所:Bloomberg)

 日銀のテーパリング観測がきっかけになっていますが、ビル・グロス氏のコメントが債券市場に大きな影響を与えたと言われています。

(※編集部注:「ビル・グロス氏」は、「債券王」の異名を持つ世界的に有名なファンドマネージャー)

債券トレーダーはシートベルト装着、グロース氏が債券の弱気相場宣言

9日の債券市場では10年物米国債利回りが上昇し、9カ月余りで最高に達した。ジャナス・ヘンダーソン・グループの運用者ビル・グロース氏は債券の弱気相場入りを宣言した。

10年物米国債利回りは一時6ベーシスポイント(bp)上昇の2.54%と、昨年3月以来の高水準を付け、利回り曲線はスティープ化した。

米、英、日本、ドイツが大量の国債発行を控えているところへ、日本銀行が思いがけず超長期ゾーンの買い入れオペを減額したことが追い打ちをかけた格好だ。

出所:Bloomberg

 加えて、中国の米国債投資の報道が決め手となり、米10年国債利回りは2.59%と、昨年(2017年)3月以来の高水準に高騰。

中国:米国債投資に当局者が消極姿勢、買い削減や停止を勧告-関係者

中国の外貨準備を見直す当局者らが米国債の購入を減らすか停止することを勧告したと、事情に詳しい関係者が述べた。

中国は3兆1000億ドル(約345兆円)と世界最大の外貨準備について定期的に運用方針を見直す。この担当者の勧告が採用されたかどうかは明らかでない。

同問題について公に発言する権限がないとして匿名を条件に語った関係者によると、中国当局者らは米国債が他の資産との比較で魅力が低くなったとみているほか、米国との貿易摩擦が米国債購入を減額したり停止したりする理由になるかもしれないと考えている。国家外為管理局(SAFE)にファクスでコメントを求めたが応答はない。

関係者は貿易摩擦がなぜ米国債購入減につながるかを説明しなかった。関係者によると、見直しで議論される投資戦略は日々の売買に関するものではない。当局者は中国が米国債の発行見通しなどの要素と両国間の貿易摩擦を含む政治的展開を注視して、米国債保有を減らすかどうかを決めることを勧告したという。

出所:Bloomberg

(※1月11日(木)12時45分ごろ、中国国家統計局が公式ウェブサイトに、上記の米国債購入に関するメディアの報道は「間違った情報源」を引用したか、「偽ニュースの可能性がある」と声明を発表したと報じられました。ただし、こちらについては完全否定はしていませんし、メディア関係者からも「主流ではないがそういった声が少なからずあったかもしれない」との見方も聞かれています)

 前述のビル・グロス氏は、最近の形跡から中国が米国債を処分しつつあることが明らかだともコメントしています。

 この展開の中でマーケット参加者が驚いたのが…
2018年初頭に注目したいのはユーロ/円! 米中間選挙に向けて米ドル/円は105円へ ブログ

2018年初頭に注目したいのはユーロ/円! 米中間選挙に向けて米ドル/円は105円へ

■今年は米利上げ進むも、米ドルの上値は重く… 2016年後半の金融市場はトランポノミクス(※)を背景に活況を呈していました。

(※編集部注:「トランポノミクス」とは、ドナルド・トランプ氏とエコノミクス(経済学)を合わせた造語で、トランプ氏が掲げる経済政策のこと)

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【参考記事】

●トランポノミクスが「株高・円安」を促進!? ドル/円は押し目買い継続、次は109円へ!(2016年11月14日、西原宏一&大橋ひろこ)

 米税制改革への期待感もあり、株価は上昇。

 為替市場では、2017年のFRB(米連邦準備制度理事会)の連続利上げの期待感もあり、米ドル/円は2カ月弱で約17円も暴騰しました。

米ドル/円 週足(出所:Bloomberg)

 ユーロ/米ドルも一時、1.0341ドルまで急落。

ユーロ/米ドル 週足(出所:Bloomberg)

 この昨年(2016年)年末の流れを受け、多くの金融機関の2017年の予測も強気なコメントが目立ちました。

・ 米企業の収益大幅向上期待で、米株続伸。

・ FRBの連続利上げにより、米長期金利上昇。

・ 米長期金利が底堅く推移するため、米ドル続伸。

 ユーロ/米ドルは、パリティ(=1.000ドル)を割り込み、米ドル/円は125円へ続伸というのがマーケットのコンセンサスとなっていました。

■FRBは3回利上げも、米国債利回りは上がらず しかし、2017年も押し迫った現在の金融市場は、予測とは違った側面を見せています。

 まず、予測以上に値を上げたのが米国株。

 2017年年初は1万9872ドルからスタートしたNYダウは、本稿執筆時点で2万4726ドルと約20%も上昇。

NYダウ 週足(出所:Bloomberg)

 この背景にはマーケットの思惑と相違し、米10年債利回りが上昇しなかったことが挙げられます。

 今年(2017年)、FRBはマーケットの予想通り、3回の利上げを実施しています。

(出所:BloombergのデータよりザイFX!編集部が作成)

 しかし、米10年債利回りは年初2.443%でスタートしたものの、本稿執筆時点では2.486%とほとんど変わらず。

米長期金利(米10年国債利回り)(出所:Bloomberg)

 この米10年債利回りの低迷が、今年(2017年)の米ドル全般の上値を重くしている要因のひとつ。以下は、ドルインデックスの月足チャートです。

ドルインデックス 月足(出所:Bloomberg)

 年初のレベルを高値にドルインデックスは急落しています。

 ドルインデックスの主要な構成要素はユーロですので、ここで今年(2017年)のユーロ/米ドルの動きを確認してみます。

ユーロ/米ドル 週足 年初の1.0341ドルを安値に、今年(2017年)のユーロ/米ドルは続伸。

 1.2092ドルの高値に到達するまでは、大きな調整もなく急騰しています。

 フランス大統領選を筆頭に今年(2017年)の欧州を取り巻く環境は、あまり芳しいものではないとの予測が多かったわけですが、そうした思惑とは裏腹に、ECB(欧州中央銀行)のテーパリング(※)予測を背景として今年(2017年)のユーロ/米ドルは急騰しました。

(※編集部注:「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)

 日銀は、現在も大胆な金融緩和を続けているわけですが、前述の米10年債利回りの低迷は米ドル/円の上値をおさえることとなり、今年(2017年)の米ドル/円は、結局上値が重く、大きな値幅を伴わずに相場を終えようとしています。

米ドル/円 週足(出所:Bloomberg)

 今年(2017年)のユーロ/米ドルを筆頭とした、米ドル軟調な動きが2018年も続くのかどうか検証してみます。

 まず、米ドル/円が膠着相場を演じる中、注目通貨を…
FOMCは予想どおりでセル・ザ・ファクト! 米上院補欠選挙で共和党敗北。影響は? ブログ

FOMCは予想どおりでセル・ザ・ファクト! 米上院補欠選挙で共和党敗北。影響は?

■FOMCでは利上げ決定も、米ドル/円は下落 みなさん、こんにちは。

 日本時間12月14日(水)未明、今月(12月)最大のイベントであるFOMC(米連邦公開市場委員会)が終了しました。

 FOMCの結果ですが、コンセンサスどおり、0.25%の利上げが決定されました。来年2018年の3回の利上げ予想も維持されています。

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 コンセンサスどおりの結果を受けて、米長期金利は低下。

米長期金利(10年物国債利回り) 4時間足(出所:Bloomberg)

 結果、セル・ザ・ファクトの米ドル売りに(過去のコラムを参照)。

【参考記事】

●過去2年の12月FOMCはセル・ザ・ファクトで相場の転換点に! 今回はどうなる…!?(12月11日、西原宏一&大橋ひろこ)

米ドル/円 4時間足(出所:Bloomberg)

 米ドル/円は112円台へ反落、ユーロ/米ドルも1.18ドルを回復。

ユーロ/米ドル 4時間足(出所:Bloomberg)

■利上げ後のセル・ザ・ファクトはよくある傾向 既報のように、FRB(米連邦準備制度理事会)による利上げに向けて米ドル/円が上昇し、利上げが終わると下落する。つまり、セル・ザ・ファクトはよくある傾向。

 過去4回の利上げのうち、3回は利上げ後、米ドル/円は下落。

 過去3回、米ドル/円が反落した局面での1カ月の下落幅をチェックすると、2015年12月と2016年12月が下落率3.2%台、2017年3月が3.9%台。

 結果、平均3.5%ほどとなります。

米ドル/円 週足(出所:Bloomberg)

 今回のFOMC直前の米ドル/円は、113.50円レベルで推移していたため、過去3回の下落幅の平均値をあてはめると、109.50円レベルまで反落する可能性も。

 今週(12月11日~)のマーケットのもうひとつの話題は…