西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

ボリス・ジョンソン氏が英首相に就任。 英国の合意なきEU離脱懸念が高まる! ブログ

ボリス・ジョンソン氏が英首相に就任。 英国の合意なきEU離脱懸念が高まる!

■米ドル/円は109円も徐々に遠くなる… みなさん、こんにちは。

 本稿執筆時点では、来週(7月29日~)、31日(水)のFOMC(米連邦公開市場委員会)での0.50%の利下げ予想は20%程度に下がってきましたが、0.25%の利下げは100%織り込んでいる展開。

【参考記事】

●米国の為替介入に不安高まる…。ドル/円は110円が遠くなり、100円へ向けて下値拡大中(7月18日、西原宏一)

 加えて、来年(2020年)の夏ごろまでに、FF金利(※)は1.50~1.75%程度に引き下げられるのではないか?という米金利先物市場での思惑のもと、米ドル/円の上値は徐々に限定的に。

(※編集部注:「FF金利」とは、フェデラルファンド金利のことで、FFレートとも呼ばれる。米国の政策金利)

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 110.00円が極めて遠くなってきていましたが、今週(7月22日~)に入り、本邦輸出企業の米ドル/円での米ドル売り注文も108円台ミドルまで下げ始めており、109円台も徐々に遠くなってきました。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

 しかし、米ドル/円の下値もなかなか割り込めず、今週(7月22日~)の米ドル/円は108.00円を挟んで大きく動けない展開。

 米金利が低下傾向にあるにも関わらず、ドルインデックスも大きく値を下げてはおらず、今週(7月22日~)はむしろ反発しています。

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

■英ポンド/米ドル下落の要因は「ボリス・ジョンソン」 この要因には、英ポンド/米ドルの急落(=米ドル高)が挙げられます。

 今月(7月)の英ポンド/米ドルは、終始、軟調な展開が続き、7月17日(水)には、一時1.2382ドルまで急落しています。

英ポンド/米ドル 週足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 週足)

 これは、1月3日(木)のフラッシュクラッシュの安値である1.2441ドルを下回って、今年(2019年)の安値をつける展開に。

 FRB(米連邦準備制度理事会)の連続利下げの可能性が高まっているにも関わらず、英ポンド/米ドルが値を下げている要因は「ノーディールブレグジット(合意なき離脱)」懸念の高まり。

 そして、「合意なき離脱」の可能性を高めているのが、ボリス・ジョンソン氏です。

 7月23日(火)には…
米国の為替介入に不安高まる…。ドル/円は 110円が遠くなり、100円へ向けて下値拡大中 ブログ

米国の為替介入に不安高まる…。ドル/円は 110円が遠くなり、100円へ向けて下値拡大中

■米為替介入は現実的ではないが… みなさん、こんにちは。

 前回のコラムでも、米為替介入に関する記事を掲載させていただきました。

【参考記事】

●7月FOMCでの0.50%利下げ予測が再燃! ドル/円は目先104円台、中期的に100円へ(7月11日、西原宏一)

 個人的には、米ドルに対しては基本、弱気なスタンスを変えていませんが、為替介入に関しては現実的ではないというスタンス。

 為替介入に関しては、諸外国とのコンセンサスの統一が必要であり、現在、大幅な米ドル安を誘引する介入に関してコンセンサスが取れるとは思わないからです。

 しかし、先週(7月8日~)、そして今週(7月15日~)も、米国から為替介入の記事が立て続けに出ています。

【参考記事】

●トランプ大統領が米ドル安誘導に本腰!? リスクオン相場でもドル/円下落のワケは?(7月15日、西原宏一&大橋ひろこ)

■「なんでもあり」の米為替介入に不安高まる 先週(7月8日~)は、まず、「トランプ大統領が、米ドル押し下げの方策検討を指示」という内容の記事がマーケットの注目を集めました。

 加えて、大手米銀のモルガン・スタンレーが、米国による為替介入の可能性についてのレポートを顧客向けに出したことが話題に。

 さらには、先週(7月8日~)末、ゴールドマン・サックスがこの論議に加わったことで、いよいよ騒がしくなってきました。

「何でもあり」不安高まる米為替介入-ワイルドカードとゴールドマン

トランプ米大統領が他国の為替慣行について繰り返し不満を表明する中で、「米国の為替政策が再び投資家の重要な関心事になった」とゴールドマン・サックス・インターナショナルのストラテジスト、マイケル・カーヒル氏は11日のリポートで指摘。貿易摩擦を背景に「何でもあり」という感覚が生まれており、米国がドル安誘導に動くリスクが高まりつつあると分析した。

出所:Bloomberg

 この記事では、同盟国の協力が得られるとは考えにくいとも指摘されているのですが、トランプ大統領が、中国人民元とユーロに対する米ドルのレベルに関しては、何度も不満を表明していることも確か。

 ゴールドマン・サックスが米為替介入の論議に加わったことで、米ドル/円の上値がじわりと重くなってきました。

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 加えて、今週(7月15日~)は、この論議に世界的な債券運用会社のPIMCOも参戦。

 今週(7月15日~)に入って…
7月FOMCでの0.50%利下げ予測が再燃! ドル/円は目先104円台、中期的に100円へ ブログ

7月FOMCでの0.50%利下げ予測が再燃! ドル/円は目先104円台、中期的に100円へ

■パウエル議長は7月FOMCでの利下げを示唆 みなさん、こんにちは。

 今週(7月8日~)、マーケットの注目を集めていたFRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長の議会証言。

 パウエル議長はまず、「労働市場は健全な一方、中国との貿易戦争などのリスクが存在する」と指摘。これは、今月(7月)のFOMC(米連邦公開市場委員会)で利下げに踏み切る可能性を示唆したことになります。

 加えて、「6月の米雇用統計の伸びが市場予想を上回ったことが金融当局の見方を変えたか?」との質門には「答えはノーだ!」と明確に返答。

7月FOMCで利下げに踏み切る可能性を示唆したパウエルFRB議長。6月の雇用統計は市場予想を上回ったが、これが金融当局の見方を変えたかとの質問に「ノー!」と回答 (C)Bloomberg/Getty Images News

 結果、今月(7月)のFOMCでの利下げ織り込み度が再び上昇。

 ブルームバーグによれば、0.25%の利下げの織り込み度は100%で変わらず。

 特筆すべきは、0.50%の利下げ織り込み度が24.5%まで急上昇していること(0.50%の利下げ織り込み度は、7月5日(金)の米雇用統計の結果を受けて、一時、ゼロ%まで急低下していました)。

 これは、米国株が史上最高値圏内で推移している局面で、0.50%もの利下げを予測しているマーケット参加者が増えていることを意味します。

■モルガン・スタンレーは、7月FOMCでの0.50%利下げを予測 そして、パウエル議長の議会証言を受けて、即座にモルガンスタンレーのエコノミストが弱気なコメントを発表。

米当局は7月に0.5ポイント利下げへ、モルガン・スタンレーが予想

モルガン・スタンレーは米連邦公開市場委員会(FOMC)が7月に0.5ポイントの利下げをすると予想している。

出所:Bloomberg

 米金利先物市場では0.50%の利下げ予測が高まっていますが、今回はモルガン・スタンレーも0.50%の利下げを予測したこともあり、米金利は低下。

米長期金利(10年物国債利回り) 1時間足(出所:Bloomberg)

 結果、米ドルは下落。

 本稿執筆時点で、米ドル/円は一時、107.86円へ、ユーロ/米ドルも反発していますが、ECB(欧州中央銀行)の緩和期待が根強くあり、上昇は緩慢。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

 結果、ユーロ/円が121円台後半に下落しました。

ユーロ/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 4時間足)

 米ドルに関しては、一部の…
G20サミット後のリスクオン相場は一時的! 次期ECB総裁にラガルド氏指名でユーロは? ブログ

G20サミット後のリスクオン相場は一時的! 次期ECB総裁にラガルド氏指名でユーロは?

■G20サミット後、表面的にはリスクオンに みなさん、こんにちは。

 注目の米中首脳会談は、終了。

 結果は…

(1) 貿易戦争で米中休戦を宣言

(2) トランプ米大統領が3000億ドル(約32兆3600億円)相当の中国製品への追加関税発動を先送り

(3) 両国は交渉再開で合意

 さらにトランプ大統領は、ファーウェイに対する禁輸措置を緩和し、米企業に、同社への製品売却の再開を認めるとコメント。ただ、「国家安全保障上の重大な問題がない機器についてだ」と付け加えています。

G20サミットでの米中首脳会談を受けて貿易戦争は休戦。G20サミット後、マーケットは表面的にはリスクオンの動きに (C)Visual China Group/Getty Images

 結果としては、ある程度、マーケットのコンセンサスどおりではあります。

 G20サミット後のマーケットの反応ですが、まずリスクオフを警戒して、さまざまなヘッジをかけていたポジションの巻き戻しが起きています。

 表面的にはリスクオンの動きとなり、「株高・債券安(金利高)・円安・ビットコイン安」。

 ただ、その影響も長続きしません(今週公開した「FX&コモディティ(商品) 今週の作戦会議」を参照)。

【参考記事】

●米中休戦と米朝会談はサプライズだったが、リスクオンは長くない。米ドル/円は戻り売り(7月1日、西原宏一&大橋ひろこ)

■米長期金利に合わせて、米ドル/円は振れる展開 米10年債利回りは、一時2.04%まで急反発。

 その後はじり安の展開となり、あっさり2.00%を割り込んで、一時1.93%台まで下落。

米長期金利(10年物国債利回り) 1時間足(出所:Bloomberg)

 米金利の影響で、米ドル/円は一時108.53円まで反発するも、7月3日(水)には、あっさり107.53円まで下落。

 米中首脳会談前(6月28日)の米ドル/円は、107.85円で引けていましたので、今週(7月1日~)は窓開けで始まっていたのですが、あっという間に窓を埋めて反落する展開に。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

 一方、米金利の低下を受け、米国株だけは堅調。

 7月3日(水)のS&P500は、前日比プラス0.8%ほど上昇して、3日連続で終値ベースの最高値を更新。NYダウも上昇し、2万7000ドル目前の2万6966ドルでクローズしました。

S&P500 日足(出所:Bloomberg)

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

 米国株の上昇は、FRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ予測のみならず、世界的な緩和期待も要因となっています。

 今週(7月1日~)は…
米中首脳会談後、米ドル/円は下落再開へ。 依然として、100円に向けた下落過程にあり ブログ

米中首脳会談後、米ドル/円は下落再開へ。 依然として、100円に向けた下落過程にあり

■FRBの年3回利下げ予測には違和感 みなさん、こんにちは。

 先週(6月17日~)のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、利下げへの道筋がより明確になったことを背景に、米ドル/円は続落。

 ブルームバーグによると、次回のFOMC(7月30日~31日)での0.25%の利下げの織り込み度は100%。0.50%の利下げ織り込み度は、一時38%まで上昇していました。

 前回のコラムでも触れましたが、米国の景気が良好で、米国株が史上最高値圏近くで推移している環境であるにも関わらず、(予防的措置として?)来月(7月)の0.25%の利下げ、年末までに3回もの利下げが行われると予測することに、個人的には違和感を持ったままです。

【参考記事】

●7月FOMCの利下げ織り込み度は100%。米国債利回り低下でドル/円は下落継続!(6月20日、西原宏一)

■米ドル/円は107円割れで下げ止まる ただ、そうした予測は根強く、米国株は続伸。

 米国株はおしなべて、史上最高値近辺まで急伸しました。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

 一方、米金利の低下で米ドル/円も続落。

 米ドル/円は久しぶりに107.00円を割り込み、一時106.78円まで下落。

 ただ、米ドル/円の107.00円レベルは(1月3日のフラッシュ・クラッシュによる瞬間的な104.87円までの急落を除くと)、今年(2019年)のほぼ安値圏となります。

米ドル/円 週足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 週足)

 そのため、この107.00円がテクニカル的に非常に重要なサポートとなります。

 その重要なサポートレベルである107.00円レベルでは、本邦機関投資家の米ドル買いが断続的に持ち込まれたこともあり、米ドル/円は下げ止まり。

 加えて、マーケット参加者の懸念を代弁するかのようにセントルイス連銀のブラード総裁が、「FRBが7月に利下げする確率が高まったとするも、0.50%は行き過ぎだ」と指摘。

 このブラード総裁のコメントをきっかけに米金利先物市場での来月(7月)の0.50%の利下げ織り込み度は、38%から一気に20%に急低下。これにより、米ドル/円は107円台ミドルを回復しました。

 一方、ムニューシン米財務長官は、米中の合意まで約90%のところまできていたと強調。さらにロス商務長官も、通商協議の再開に期待を示した模様。

米中の合意まで約90%のところまできていたと、ムニューシン米財務長官は強調。G20サミットでの米中首脳会談の行方は… (C)Bloomberg/Getty Images

 こうした米高官からの一連のコメントにより、米ドル/円は108円台を回復。本邦執筆時点では、一時108.12円まで反発しています。

米ドル/円 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)

 一方、トランプ大統領はG20サミットでの…
7月FOMCの利下げ織り込み度は100%。 米国債利回り低下でドル/円は下落継続! ブログ

7月FOMCの利下げ織り込み度は100%。 米国債利回り低下でドル/円は下落継続!

■7月FOMCでの利下げへの道筋がより明確に みなさん、こんにちは。

 日本時間6月20日(木)未明に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)は、マーケットのコンセンサスどおり、政策金利は据え置き。

(出所:Bloombergのデータを基にザイFX!編集部が作成)

 そして声明文では、「辛抱強い(Patient)」という文言は削除され、「適切(Appropriate)に行動する」と明記されました。つまり、次回のFOMCでの利下げへの道筋が、より明確に。

 米金利先物市場では、次回のFOMC(7月30日~31日)の利下げ織り込み度は100%に。

 米国債利回りは、短期物を中心に大幅に低下しました。

米2年物国債利回り 日足(出所:Bloomberg)

 呼応して、米国株は3日続伸。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

 米ドルは、全面安。

 過去数日、米ドル/円のサポートとして機能していた108.00円の巨大なオプションが6月18日(火)に消滅したことも加わり、米ドル/円は108.00円をブレイク。本稿執筆時点では、一時107.55円まで下落しています。

米ドル/円 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)

 今現在、米国の景気は急激に失速して…
香港のデモ拡大が新たな不安要素に! 米ドル/円は104円台に向けての下落過程 ブログ

香港のデモ拡大が新たな不安要素に! 米ドル/円は104円台に向けての下落過程

■トランプ大統領がメキシコへの関税を取りやめると発言 みなさん、こんにちは。

 先週(6月3日~)マーケットの焦点となっていた「米国によるメキシコへの関税」というトピックですが、先週末、突然、トランプ大統領が関税取りやめを決定しました。

【参考記事】

●6月に米利下げなら大きなサプライズ! 米ドル/円は109円台乗せで売っていいかも(6月10日、西原宏一&大橋ひろこ)

突然、トランプ大統領がメキシコへの関税を取りやめると発言。メキシコが国境管理に力を入れるとの合意を得た模様 (C)Mark Wilson/Getty Images

 トランプ大統領の強烈なスタンスが功を奏して、メキシコが国境管理に力を入れるとの合意を得た模様(民主党はトランプ大統領の強引なやり方を痛烈に批判していますが…)。

 これにより、マーケットのセンチメントが改善して、いったん「株高・円安」となりました。

■香港のデモ拡大が新たな不安要素に しかし、マーケットでは新たな不安定要素が飛び出し、再び、株が軟調に。

 それは、「香港のデモ拡大」。

 香港では、中国本土への容疑者引き渡しを可能にする条例改正案に反対するデモが拡大しています。

 キャリー・ラム行政長官は秩序を取り戻すように訴えていますが、改正案の撤回は拒否。

 当局によれば、これまでに72人の負傷者が確認されています。

 トランプ大統領は、中国政府と香港当局が「なんとか解決できるだろう」とコメント。ネットでは、iPhoneXsで撮影するとデモの様子が映るが、HuaweiP30Proで撮影するとデモが映らないという揶揄された画像が流れています。

【参考記事】

●加熱する米中貿易戦争でリスクオフ継続! 「株安・円高」相場で米ドル/円は105円へ(5月23日、西原宏一)

 中国本土への容疑者引き渡しが可能という「逃亡犯条例」改正案に関しては、多くの香港の人にとって受け入れがたいものと思われ、大規模抗議運動が簡単に沈静化するとは思えません。情勢は極めて不透明です。

 投資資金というのは、こうした不透明な状況を嫌うので、香港のデモの拡大は新たな「株安、円高」要因となり、米ドル/円の上値を抑える要因に。

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 今週(6月10日~)前半は、メキシコの問題が…
米利下げ、年内2回は織り込み済みか! 米ドル/円は107.75円を抜けると104円台へ ブログ

米利下げ、年内2回は織り込み済みか! 米ドル/円は107.75円を抜けると104円台へ

■トランプの関税発言で、メキシコペソは下落 みなさん、こんにちは。

 先週(5月27日~)、以下のトランプ大統領のコメントにより、メキシコペソ、米ドル/円、そして、米国株とも下落。

「6月10日からメキシコからの全製品に5%関税」-トランプ大統領

【参考記事】

●米ドル/円を買う理由はない!? 107.75円を抜けると104円台も視野に…(6月3日、西原宏一&大橋ひろこ)

メキシコペソ/円 日足(出所:Bloomberg)

 トランプ大統領は5月31日(金)早朝、メキシコからの輸入品に関税を課し、関税率は当初の5%から最高25%まで引き上げる可能性があると表明しています。

 これは、メキシコが米国への不法移民流入を止めるまで続けると表明。

 米国の西海岸にいる友人によれば、民主党寄りの米3大メディアはあまり報道していませんが、メキシコから米国への不法移民の流入がすごい勢いで増えてきている模様。

 壁の建設もうまく進んでいないたため、トランプ大統領はメキシコに協力を要請する形になったようです(協力を求めるというより、メキシコが不法移民を放置するなという意味ですが…)。

■メキシコへの関税報道で、市場はプチパニックに さらに、トランプ大統領はメキシコと中国からの輸入品に対する関税引き上げの正当性を主張。

 負担を避けるために「企業は米国に移ってくる」とし、「関税とは実に美しい言葉だ」とコメント。

 マーケット参加者の注目が「米中貿易戦争」に集まっているところに、突然の「メキシコへの関税」という報道に、マーケットは、ちょっとしたパニックとなり、急速に株安が進みました。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

 この急速な株安は、「円高」要因。

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 一方、FRB(米連邦準備制度理事会)の…
米国債の逆イールドはリセッションを警告! 米ドル/円は中期的に100円目指す展開も ブログ

米国債の逆イールドはリセッションを警告! 米ドル/円は中期的に100円目指す展開も

■米中貿易協議はさらに混迷深まる みなさん、こんにちは。

 今週(5月27日~)に入って米中貿易協議の混迷は、さらに深まっています。

【参考記事】

●加熱する米中貿易戦争でリスクオフ継続! 「株安・円高」相場で米ドル/円は105円へ(5月23日、西原宏一)

 まず、来日していた米トランプ大統領は、強硬な姿勢を崩しておらず、以下のようにコメント。

 「米国は貿易問題で中国と合意する準備は、まだない」

 「中国は恐らく、再交渉を目指さずに貿易協定を結んでおけばよかったと考えていると思う」

 さらに、「中国製品に対する米国の関税を極めて大幅に引き上げることは、非常に簡単だ。そして、それを負担するのは中国だ」と改めて主張しています。

 これに対して、中国も反論。

 一部報道によれば、中国は「レアアースの対米輸出を制限することを真剣に検討している」とし、マーケットを神経質にしています。

 一方、英国では、欧州議会選挙で、ナイジェル・ファラージ氏が率いる「ブレグジット党」が圧勝。

 英国2大政党は、過去、経験したことのない深刻な敗北を喫する結果に。

 「ブレグジット党」は「合意なき離脱」を望んでいることもあり、英ポンドは反落しました。

英ポンド/米ドル 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 4時間足)

■米国債のイールドカーブ逆転でリセッションを警告 米中貿易戦争のみならず、英国も不安定な状況に陥っている中、リセッションを警戒するサインが話題に。

 まず、資金は安全資産である米国債に流れ、米10年国債利回りは一時、2.21%を割り込む展開となりました。

 現在の米国のFF金利(※)は、2.25-2.50%。FF金利先物の動向によると、FOMC(米連邦公開市場委員会)が来年(2020年)末までに3回の利下げを行う可能性をマーケットは完全に織り込んでいます。

(※編集部注:「FF金利」とは、フェデラルファンド金利のことで、FFレートとも呼ばれる。米国の政策金利)

(出所:Bloomberg)

 さらには、米国債のイールドカーブの逆転。

 米中通商協議に関する懸念の高まりを背景に、3カ月物と10年債利回りの金利差が逆転。その利回り差は13bpと2007年以来の大きさに拡大しました。

米3カ月&10年国債利回り 日足(出所:Bloomberg)

 これは、歴史的にリセッションが差し迫っていることを示唆する水準と言われています。

 米国債のイールドカーブが逆転する中…
加熱する米中貿易戦争でリスクオフ継続! 「株安・円高」相場で米ドル/円は105円へ ブログ

加熱する米中貿易戦争でリスクオフ継続! 「株安・円高」相場で米ドル/円は105円へ

■グーグルがファーウェイとのビジネスを一部停止 みなさん、こんにちは。

 日本時間5月6日(月)未明に配信されたトランプ大統領のツイートをきっかけに、混迷を深める米中貿易戦争は、今週(5月20日~)もさらに加速。

【参考記事】

●米国からの圧力で急減速する中国経済! 利下げ予測もある豪ドル/円は70円へ…!?(5月16日、西原宏一)

●米中貿易戦争がある限り、リスクオンには戻らず!? 米ドル/円、豪ドル/円は戻り売りか(5月20日、西原宏一&大橋ひろこ)

 米国からの圧力は、中国の通信機器大手にまで及びます。

米グーグル、ファーウェイとの一部ビジネス停止=関係筋

米アルファベット傘下グーグルは、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)へのソフトの提供など一部ビジネスを停止した。関係筋が19日にロイターに明らかにした。

米政府がファーウェイへの事実上の輸出規制を決めたことを受けた。

これにより、ファーウェイはグーグルが開発する基本ソフト(OS)「アンドロイド」のアップデートができなくなり、同社の中国国外のスマートフォン事業に打撃が及ぶ恐れがある。

出所:ロイター

 報道によれば、ファーウェイを事実上、貿易のブラックリストに加えた米大統領令を受けて、グーグルが同社に対して自社サービスや技術サポートの提供及び協力の停止を検討しているとのこと。

 つまり、ファーウェイはオープンソース版のAndroidしか使用できないことを意味し、グーグルが提供しているOSのアップデートや「Google play store」、「Gmail」、「You tube」といったグーグル製アプリが利用できなくなる可能性が高まることに。

 これは、ファーウェイにとっては、かなり深刻な問題。

 ファーウェイは「P30 Pro」といった端末の人気が高まっているようですが(個人的にはマックユーザーなので詳細は知りませんが…)、グーグルが提供しているサービスを使えないとなると、売れ行きは激減することになります。

「P30 Pro」を紹介するファーウェイの公式サイト ただ、ファーウェイはスマホOSも独自で開発しているというウワサもあり、その影響度に対する意見は分かれています。

■加熱する米中貿易戦争で、リスクオフ相場も継続か 5月21日(火)の一部報道によれば、「アメリカ商務省は、中国の通信機器大手ファーウェイに対する事実上の輸出禁止の措置をめぐり、一部の取引を90日間は容認する」としています。

 これにより、短期筋による株の買い戻しも見られましたが、一連の報道がファーウェイにとって痛手であることは変わりません。そして、トランプ大統領の中国への強硬な姿勢も変わりません。

 結果、米中貿易戦争は継続。リスクオフ相場継続で、「株安・円高」も継続すると想定しています。

米ドル/円 週足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 週足)

 「株安・円高」相場の中…