西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

英総選挙に注目! 保守党の単独過半数は? 英ポンドは1.35ドル、1.40ドルへ続伸なるか ブログ

英総選挙に注目! 保守党の単独過半数は? 英ポンドは1.35ドル、1.40ドルへ続伸なるか

■英総選挙、YouGovの調査結果は保守党優勢だが… みなさん、こんにちは。

 11月27日(水)の調査会社YouGovのMRP方式(YouGovのMRPについては、11月28日のコラムを参照)による分析結果が、保守党359議席と大幅に優勢だったため、マーケットはそれを織り込む形に。英ポンド/米ドルは、節目の1.3000ドルをブレイクして続伸しました。

【参考記事】

●米ドル/円は8円程度の狭いレンジで越年へ。保守党、過半数獲得の見通しでポンド上昇(11月28日、西原宏一)

 そしてマーケットでは、12月11日(水)の日本時間7時に、YouGovのMRP方式の最新分析結果が発表されるとの報道で、英ポンド/米ドルはさらに買い進められ、一時1.3215ドルまで急騰しました。

 しかし、12月11日(水)早朝のYouGovの発表では、保守党の議席が339と前回よりも20議席少ない結果に。

 確かに、これは実質的な過半数である320議席を19議席上回っていることになります。

 しかし、マジョリティー(※)は大幅に減って28議席に。

(※マジョリティーとは、与野党の議席の差(保守党-残りの議席)のことで、今回の結果では(保守党の議席=339)-(残りの議席=311)=28議席となります。ただ英議会のマジョリティーには、もうひとつワーキングマジョリティーという考え方があります。これは、当選しても当院しないシン・フェイン党の議員、慣例により投票しない議長、副議長などを除いた議席のことで、実質的な投票数は640を下回るので、通常、320議席あれば、ワーキングマジョリティーを確保できるといいます。)

 前回の、YouGovのMRP方式による分析結果でのマジョリティーは68議席でしたので、大幅に減ったことになります。

 YouGovのMRP方式による最新の分析結果が正しければ、選挙情勢が最終盤で厳しさを増したことを意味し、労働党の追い上げが続けば、保守党が過半数に届かない可能性も否定できない情勢に。

 これは、12月11日(水)日本時間早朝のYouGovの調査結果が発表されるまではマーケットのメインシナリオではなかったので、マーケットの不透明感が高まったことは確かです。

 ただ、英国の世論調査の結果は、あまり当てにならないことが多いため、英総選挙に向けても、あまりシナリオを固定せずに望みたいところ。

 本稿執筆時点(12月11日)では…
12月は2020年を先取りする米ドル安進行!? 英総選挙に向けて英ポンドは1.33ドル台へ ブログ

12月は2020年を先取りする米ドル安進行!? 英総選挙に向けて英ポンドは1.33ドル台へ

■2020年を先取り!? 主要通貨に対してドル全面安 みなさん、こんにちは。

 サンクスギビングデー(感謝祭)が終わり、欧米勢にとっては、実質的に新年入りともいえる時期に突入。

 来年(2020年)は、総じて米ドル安を予測している米国の大手銀行が目立ちます。

 11月21日(木)のコラムでも触れましたが、たとえばモルガン・スタンレーは、英ポンド/米ドル、NZドル/米ドル、ユーロ/米ドルの上昇を予測。つまり、主要通貨に対し、すべて米ドル安を予測しています。

【参考記事】

●トランプ大統領が吠えて徐々に米ドル安へ… 2020年は総じて米ドル安との見方も!(11月21日、西原宏一)

 その予測のとおり、今月(12月)、実質的に新年入りしている欧米市場では米ドル安が進行。英ポンド/米ドル、NZドル/米ドルで米ドル安が進みました。

英ポンド/米ドル 日足(出所:TradingView)

NZドル/米ドル 日足(出所:TradingView)

 以下は、12月に入ってから本稿執筆時点までの、対米ドルでの主要通貨の騰落率。主要通貨に対して、米ドルは全面安になっています。

(出所:Bloombergのデータを基にザイFX!編集部が作成)

 米ドルの下落率が一番大きいのはNZドル、次が英ポンドとなっています。

 こちらは、過去のコラムでご紹介した通貨ペアであり、どちらも12月に入って急騰しています。

【参考記事】

●12月の英総選挙は事実上の再国民投票!? 合意ある離脱なら英ポンドは1.40ドル台へ(10月31日、西原宏一)

●米ドル/円は2段構えのバリアが上値阻む! 狭いレンジで推移後、108.50円割れか?(11月14日、西原宏一)

■12月に入って米ドル安が進んでいる理由とは? 米ドルは、対円でも下落しています。

 米ドル/円の109.50円のバリア・オプションはブレイクされましたが、次の110.00円のバリア・オプションは崩せず、米ドル/円は108円台ミドルまで反落。

米ドル/円 日足(出所:TradingView)

 値幅は最小なれど、今月(12月)に入り、対円でも米ドルは値を下げています。

 この米ドル安の要因のひとつは、トランプ大統領のツイート。

 今月(12月)2日(月)に、トランプ大統領は、ブラジルとアルゼンチンからの鉄鋼輸入に関税を復活させると発表しました。

 「ブラジルとアルゼンチンは、自国通貨の大幅な切り下げを行ってきた。これは米国の農民にとって不利だ」とツイート。

 加えて、「FRB(米連邦準備制度理事会)は金利を引き下げ、金融政策を緩和し、各国が自国通貨切り下げによって米ドルの強さを利用することができないようにするべきだ」とコメントしています。

 トランプ大統領のツイートの効果もあったのか、今月(12月)の為替相場は総じて米ドル安へ。英ポンド/米ドルは1.31ドル台、NZドル/米ドルは0.65ドル台と大きく値を上げていて、米ドル安が進んでいます。

 前回のコラムで…
米ドル/円は8円程度の狭いレンジで越年へ。 保守党、過半数獲得の見通しでポンド上昇 ブログ

米ドル/円は8円程度の狭いレンジで越年へ。 保守党、過半数獲得の見通しでポンド上昇

■今年の米ドル/円は狭いレンジで越年へ… 先週のコラムでは、モルガン・スタンレーの2020年の注目通貨ペアが英ポンド/米ドルやNZドル/米ドルのロングということをご紹介させていただきました。

【参考記事】

●トランプ大統領が吠えて徐々に米ドル安へ… 2020年は総じて米ドル安との見方も!(11月21日、西原宏一)

 では、そこで取り上げられなかった通貨ペアである米ドル/円は来年(2020年)どうなるのか?

 まず、今年(2019年)の米ドル/円を振り返ってみます。

 2019年の米ドル/円は、多くの円安予想とは裏腹に、1月3日(木)のフラッシュ・クラッシュにより、104.87円への暴落からスタート。

【参考記事】

●フラッシュ・クラッシュで米ドル/円が暴落! 株の下落を伴えば、100円割れの可能性も!?(1月7日、西原宏一&大橋ひろこ)

 その後、本邦機関投資家の円売り需要に支えられ、4月に112.40円台まで戻すも、5月のゴールデンウイーク明けの米中貿易戦争の緊張から、再び104.46円まで下落。

 今年(2019年)後半にかけて持ち直し、本稿執筆時点では109円台ミドルで推移しています。結局、8円にも満たない狭いレンジで今年(2019年)を終えそうです。

米ドル/円 日足(出所:TradingView)

■ファンディング通貨としての地位を失った円 理由はいくつか挙げられますが、ファンディング通貨の筆頭に挙げられていた円が、その地位を失ったことが大きいのではないかとの見方が増えています。

 リーマンショック以前から、低金利といえば「日本円」。

 そのため、ファンディング通貨として円が広範に使われており、安く調達してきた円を売り、他通貨に換えて投資に回すという手法が使われていました。

 いわゆる「円キャリートレード」です。

 そのため、リスクオフ局面になると、一気に円の買い戻しが起きて、米ドル/円、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)などが急落するという傾向がありました。

 ところが、今年(2019年)、1月3日(木)のフラッシュ・クラッシュ時は、投機筋がシナリオどおりに円買いをするも、肝心の円キャリートレードによる買い戻しは起きませんでした。

 そのため、一度、円高に振れた後は、じわじわと投機筋の円の売り戻しが起き、結局、元のレベル戻るという傾向が見られました。

米ドル/円 日足(出所:TradingView)

 これは、円に関して重要な変化です。

 ゴルディロックス(居心地がいい状態)時の円は、円キャリートレードにより、他通貨に対して緩やかに円安に推移します。そしてリスクオフ局面、つまり株が急落する局面では、一気に円の買い戻しが起き、円が急騰します。

 しかし、仮に円がキャリートレードにあまり使われないのであれば、リスクオフ局面での円買いも起きません。

 この流れが続くのであれば、テーマを失って方向性を失った米ドル/円は、来年(2020年)も大きな動きは期待できないのかもしれません。

■新たにファンディング通貨になったのは…!? では、円の代わりに何がキャリートレードに使われているのでしょうか?

 ファンディング通貨としての地位を円から奪ったのが、ユーロ。

 欧州の景気悪化により、歴史的な低金利にあるユーロが調達通貨として使われることが多くなっているようです。

 そのため、今年(2019年)のユーロ/米ドルは、大きな反発もなく、緩やかなユーロ安を演じてきました。

ユーロ/米ドル 日足(出所:TradingView)

 これの意味するところは、仮に株の暴落があれば、ユーロの急速な買い戻しが起き、ユーロ/米ドルが急騰することになります。

 逆に、今月(11月)のようにグローバルに株が堅調に推移すれば、ユーロ/米ドルは決して急落はしませんが、緩やかに下落することになります。

 しかし、来年(2020年)、欧州経済は回復して、こうしたユーロのキャリートレードは沈静化。2020年のユーロ/米ドルは、反発するというのが大手米銀の見方のようです。

ユーロ/米ドル 日足(出所:TradingView)

 ただ、年末年始は…
トランプ大統領が吠えても米ドル安は遠い? でも、2020年は総じて米ドル安との見方も! ブログ

トランプ大統領が吠えても米ドル安は遠い? でも、2020年は総じて米ドル安との見方も!

■2020年初頭に注目したい通貨と戦略は? 早いもので、今年(2019年)も残すところ、あと1カ月半となりました。

 この時期になると、多くの金融機関が来年(2020年)の相場予測を発表することになります。

 個人的にも注目しているモルガン・スタンレーも、2020年の相場予測を早々とリリース。

 要約すると、2020年の米国の株式は他の国の資産に対し、アンダーパフォームするほか米ドルが下落するとのこと。

米資産、株・債券・通貨が2020年にアンダーパフォームへ-モルガンS

2020年は米国の株式と社債が他の国・地域の資産に対しアンダーパフォームするほか米ドルが下落すると、モルガン・スタンレーが予測した。

出所:Bloomberg

 マーケット関係者によれば、モルガン・スタンレーが重要顧客向けに配布している2020年のトップ10トレードにおいて、主要通貨では英ポンド/米ドルのロングが3位に位置しているようです。

 そのターゲットは、1.4000ドル。

英ポンド/米ドル 週足(出所:TradingView)

 そして、先週のコラムで取り上げたNZドルのロングも7位ランクインしている模様。ターゲットはあまり高くなく、0.6900ドル。

【参考記事】

●米ドル/円は2段構えのバリアが上値阻む! 狭いレンジで推移後、108.50円割れか?(11月14日、西原宏一)

NZドル/米ドル 週足(出所:TradingView)

 こうした年間の相場予測は、年間を通して参考にするというよりも、年末年始のスタートダッシュに参考にするのが精度が高いと思っているので、年末年始の為替相場は、このコラムでご紹介してきたように、英ポンド/米ドルとNZドルのロングが狙い目でしょうか?

【参考記事】

●米ドル/円は2段構えのバリアが上値阻む! 狭いレンジで推移後、108.50円割れか?(11月14日、西原宏一)

●12月の英総選挙は事実上の再国民投票!? 合意ある離脱なら英ポンドは1.40ドル台へ(10月31日、西原宏一)

 一方、今週(11月18日~)注目されたのが…
米ドル/円は2段構えのバリアが上値阻む! 狭いレンジで推移後、108.50円割れか? ブログ

米ドル/円は2段構えのバリアが上値阻む! 狭いレンジで推移後、108.50円割れか?

■NYダウの史上最高値更新で、米ドル/円は攻めたが… みなさん、こんにちは。

 今月(11月)に入ってからの米ドル/円は、底堅い展開が続いており、何度か109.50円を攻める展開。

米ドル/円 日足(出所:TradingView)

 米ドル/円が底堅い要因は、まず、米中貿易協議の部分合意期待。

 そして、もっとも影響を及ぼしているのが、NYダウが史上最高値更新を続けるなど、好調な米国株。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

 その米国株が堅調な理由としては、「隠れQEでバブルへGO!」という解説が目立ちます。

【参考記事】

●米ドル/円は109.50円と110円に2段構えのバリア!? 抜けないなら手前で戻り売りか(11月11日、西原宏一&大橋ひろこ)

 FRB(米連邦準備制度理事会)は、10月中旬以降に月600億ドルの短期国債の購入を開始し、これを少なくとも2020年の第2四半期まで継続すると発表しました。

 結果、FRBのバランスシートは拡大。

 ただ、パウエルFRB議長は、これは「量的緩和ではない」とコメント。

 しかし、市場に流動性を供給していることは確かなので、マーケットではこれを、「隠れQE(量的緩和策)」と呼んでいます。

 この「隠れQE」がバブルを延命する形で、米国株は急騰しないまでも、静かに最高値を更新。

 そして、米国株の上昇がリスクオンとみなされ、マーケットは米ドル/円を109円台ミドルまで押し上げます。

米ドル/円 日足(出所:TradingView)

 しかし、「隠れQE」は米ドル安要因でもあるため、株上昇による米ドル/円の上昇も限定的です。

■2段構えのバリアオプションが、米ドル/円の上昇を阻む さらに、米ドル/円の上値を抑えているのが、バリアオプション。

 マーケット関係者によれば、米ドル/円の109.50円と110.00円には、まとまったバリアオプションが設定されているとのこと。

【参考記事】

●米ドル/円は109.50円と110円に2段構えのバリア!? 抜けないなら手前で戻り売りか(11月11日、西原宏一&大橋ひろこ)

 そのため、米ドル/円は、どうしても109.50円のバリアオプションが超えられず、高値は109.49円止まり。

米ドル/円 日足(出所:TradingView)

 そして、11月13日(水)のNY市場では、ウォールストリート・ジャーナルの「米中、農産物の購入巡り協議が難航」との報道で、一時、米ドル/円は108.66円まで下落しました。

米中、農産物の購入巡り協議が難航-WSJ

米国と中国の通商協議は、農産物の購入を巡り困難な状況に直面していると、米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が事情に詳しい複数の関係者の話として報じた。

出所:Bloomberg

 米ドル/円を108円台ミドルでサポートしているのが、本邦機関投資家の米ドル買い注文だと言われています。

 結果、米ドル/円は108.50円と109.50円のレンジの中でスタック。

 繰り返しますが、「隠れQE」は米国株の延命を誘引しますが、米ドル安要因でもあります。そして、109.50円と110.00円のバリアオプションに阻まれ、米ドル/円の上値は限定的です。そうなると、狭いレンジでの往来の後、ブレイクするのは108.50円ではないでしょうか?

米ドル/円 日足(出所:TradingView)

 一方、今週(11月11日~)…
州知事選敗北がトランプ大統領の痛手に。 NYダウ史上最高値更新もドル/円は重い ブログ

州知事選敗北がトランプ大統領の痛手に。 NYダウ史上最高値更新もドル/円は重い

■州知事選敗北がトランプ大統領の痛手に みなさん、こんにちは。

 今月(11月)に入り、米国と英国では新たな選挙の戦いが始まっています。

 まず、米国での州選挙。

 米国では、主要な州で11月5日(火)、知事選や議会選が行われました。

 結果は、野党・民主党が相次いで勝利。

 今回の地方選は、来年(2020年)の大統領選挙に向けて重要なものと位置づけられており、今回の結果は、トランプ大統領にとって痛手となったとの見方が増えています。

 特に注目されたのが、ケンタッキー州知事選。

 ケンタッキー州は保守色が強く、レッドステート(共和党の地盤)。

 共和党現職のマット・ベビン知事はトランプ支持を鮮明にしており、トランプ大統領は投票前日の夜、ベビン氏の応援に駆けつけています。

 そして、次のように主張。

 「ベビン氏は再選しなければならない。そうでなければ、『トランプが史上最大の敗北』と評されることになる。私をそんな目に遭わせないでほしい」

共和党の現職、マット・べビン知事の応援に駆け付けたトランプ大統領だったが、結果は敗北。米3大メディアは「敗北」を大きく報じることに… (C) Chip Somodevilla/Getty Images News

 米3大メディアは、トランプ大統領の功績についての報道はあまりしませんが、失敗に関しては、大きく取り上げる傾向があると言われています。

 そのため、トランプ大統領は、「史上最大の敗北と評される」とメディアを牽制したようです。

 そして実際、多くのメディアは、ケンタッキー州での結果について、下記のように、「トランプ大統領の敗北」といったニュアンスで報道しています。

 「今回の地方選は(中略)ドナルド・トランプ大統領(共和党)にとって、痛手となったとの見方が出ている」-BBC

 「ベビン氏の強硬姿勢はトランプ氏と重なる部分が大きいだけに、同氏の勝敗は来年の大統領選の行方を占う指標になるとみられていた」-CNN

 こうした報道は、少しディスカウントして捉える必要はありますが、ケンタッキー州の知事選では、トランプ大統領が応援演説も行っています。

 トランプ氏の大統領選挙対策責任者、ブラッド・パースカル氏は、トランプ大統領の応援によってベビン氏の得票率が大きく上昇したと主張していますが、結果は敗北。

 再選を目指すトランプ大統領にとって、プラスではないでしょう。

■NYダウは史上最高値更新だが、ドル/円の上値は重い そして、米議会下院は現在、トランプ大統領の弾劾調査を行っています。

 そうした不安定な政治情勢の中、NYダウは最高値を更新。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

 日経平均は、久しぶりに2万3000円台を回復しています。

日経平均 日足(出所:Bloomberg)

 米中貿易協議の部分合意に向け、一部関税の撤回を前向きに検討しているとの報道がリスクオンの相場環境を作り出しているのでしょうが、もともとトランプ大統領は、9月頃までは中国との「部分合意」を望まないとコメントしていました。

 そのため、こうした部分合意という結論は、トランプ大統領がもともと望んでいるものでもなく、いつ決裂するか不透明な要素をはらんでいます。

 そのため、現在、高値圏で推移している米国株も、その上昇スピードは緩慢。

【参考記事】

●NYダウ史上最高値に迫るもバブル懸念…。もしバーストすれば、ドル/円105円割れへ(11月4日、西原宏一&大橋ひろこ)

 そして、注目すべきは、米ドル/円の上値が重いこと。

 日経平均については2万3000円台を回復、米10年国債利回りも1.8%台まで上昇しています。

米長期金利 日足(10年物国債利回り)(出所:Bloomberg)

 加えて、米中貿易協議を巡る部分合意の報道。

 これらはすべて、米ドル/円にとってポジティブな材料なのですが、米ドル/円の高値は109.29円と上げ渋り。

 米ドル/円にとってこれだけポジティブな要因が揃っているにも関わらず、上値が重い展開であるため、逆に米ドル/円にとってネガティブな報道が流れると、っさり値を崩すのではないかと想定しています。

米ドル/円 日足(出所:Trading View)

 次は…
12月の英総選挙は事実上の再国民投票!? 合意ある離脱なら英ポンドは1.40ドル台へ ブログ

12月の英総選挙は事実上の再国民投票!? 合意ある離脱なら英ポンドは1.40ドル台へ

■12月12日に英国総選挙を実施へ みなさん、こんにちは。

 10月29日(火)、ボリス・ジョンソン首相は「EU離脱を実現する方法はただひとつ、議会を刷新し、国民に選択肢を与えることだ」とし、12月に総選挙を行う法案を提出。

 そして英下院は、ジョンソン首相が提出した12月12日(木)に総選挙を実施する法案を賛成438、反対20の賛成多数で可決しました。

【参考記事】

●【ブレグジット】12月12日に英総選挙。2020年1月の離脱がメインシナリオに

12月に総選挙を行う法案を提出したボリス・ジョンソン首相。英下院は賛成多数で可決し、12月12日に総選挙が行われることに (C)Justin Sullivan/Getty Images

 前例のない政治的混乱の中で、過去4年半で3回目となる総選挙。

 この状況で行われる総選挙は、ブレグジットを有権者に問う事実上の「再国民投票」という位置付けと見られ、速やかな離脱、あるいはEU(欧州連合)残留を掲げる政党のどちらを支持するかを、有権者が選択できる最後のチャンスになるとのコメントが多数。

■総選挙実施で、合意なき離脱の可能性がほぼ消滅 もともと、この総選挙は、フランスが3度目の延期を3カ月確保するのに要求した条件だっと言われていますので、その条件が整ったということになります。

 結果として、ボリス・ジョンソン首相は「合意なき離脱」を回避したリーダーとも言え、彼の手腕に対する評価は上々。

 口では「合意なき離脱」も辞さずと言っていたのですが、結果的には合意なき離脱を回避した彼の政治手腕は、かなり巧妙です。

【参考記事】

●合意なきEU離脱と英ポンド暴落懸念は、ほぼ消滅か。ブレグジットは新局面へ…(10月24日、西原宏一)

 総選挙の実施ということは、合意なき離脱の可能性がほぼ消滅したことを意味します。

 つまり、合意なき離脱による英ポンド/米ドルの暴落リスクもなくなったわけですので、本校執筆時点の英ポンド/米ドルは1.2900ドルレベルで堅調に推移しています。

英ポンド/米ドル 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 1時間足)

 現在、ボリス・ジョンソン首相は…
合意なきEU離脱と英ポンド暴落懸念は、 ほぼ消滅か。ブレグジットは新局面へ… ブログ

合意なきEU離脱と英ポンド暴落懸念は、 ほぼ消滅か。ブレグジットは新局面へ…

■英国とEUによる離脱合意が成立したが… みなさん、こんにちは。

 10月17日(木)、ついにユンケル欧州委員長が「英国とEU(欧州連合)で離脱合意が成立した」と発表。

 振り返ってみれば、10月31日(木)にブレグジットを実現すると主張していたボリス・ジョンソン首相(以下、ジョンソン首相)ですが、戦時内閣(ウォーキャビネット)を組閣してから連敗続き。

【参考記事】

●英ポンド大混乱か。合意なき離脱の高まりがEU離脱取り止めの可能性を高める!?(8月22日、西原宏一)

戦時内閣(ウォーキャビネット)を組閣してから連敗続きのジョンソン首相(左)だが、EUとの間で離脱合意を成立させた。写真は首相就任時、首相官邸に到着したときのもの (C)WPA Pool/Getty Images News

 ジョンソン首相も、政治的に徐々に追い詰められている状況でした。

 ただ、ロンドンの友人は、「ボリスは交渉上手だから、まだ何が起きるかわからない」と言っていました。

 その言葉どおり、大方の予想を覆して、ジョンソン首相が「英国とEUで離脱合意を成立させた」ことにマーケットは騒然。

 英ポンド/米ドルは、一気に1.29ドル台後半まで急騰しました。

英ポンド/米ドル 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 4時間足)

■英国議会は難航し、10月末のEU離脱はほぼ不可能に ただ、その後、英国議会において事態は難航します。

 注目を集めていた英議会ですが、新たなEU離脱案の採決は先送りという結果に。

 EU離脱に必要な関連法が成立するまで採決を留保するよう求める超党派議員の修正動議(レトウィン案)(※)が可決されたためです。

(※レトウィン案とは、サー・オリヴァー・レトウィン議員が提出した修正案のことで、「離脱協定法案(WAB)」が可決するまで、下院による離脱協定案承認を棚上げするという内容。これに対し、ジョンソン首相は今週(10月21日~)にも、その「関連法案」を提出し、議決することで、あくまでも10月31日のEU離脱を目指している)

 そして、日本時間10月23日(水)未明、英下院はEU離脱協定法案を第2読会(※)で可決。

(※編集部注:英国では議案の審議を慎重にするために読会制が設けられている。第1読会で議案の上程と趣旨説明、第2読会で総括審議が行われ、さらに委員会で詳細に審議を行ったうえで、第3読会で最終的な採決が実施されることになっている)

 これにより、英ポンド/米ドルは、一時1.30ドル台まで急騰。

 しかし、英議会下院は離脱関連法案を早期に成立させるために提出した「短期日程」を否決。これにより、10月末のブレグジットは、ほぼ不可能に。

 英ポンド/米ドルは一気に反転し、一時1.2841ドルまで急落しました。

英ポンド/米ドル 1時間足(出所:Bloomberg)

 今回の英ポンドの急騰は…
大きなヤマ場を迎えるブレグジット問題! 「合意あるEU離脱」期待で英ポンド上昇 ブログ

大きなヤマ場を迎えるブレグジット問題! 「合意あるEU離脱」期待で英ポンド上昇

■突然、「合意あるEU離脱」の可能性が高まる みなさん、こんにちは。

 10月初旬までは、英国政府とEU(欧州連合)との交渉に進展が見られない状況が続いていました。

 そのため、「合意なき離脱」の可能性がじわじわと高まることに。

 なぜなら、ボリス・ジョンソン首相が、就任時の講演で「10月末の離脱に『たられば』は必要ない」と明言していましたので、EUとの交渉に進展がなければ、マーケットでは「合意なき離脱」に対する警戒感が高まるわけです。

【参考記事】

●ボリス・ジョンソン氏が英首相に就任。英国の合意なきEU離脱懸念が高まる!(7月25日、西原宏一)

●ボリス・ジョンソン英首相の「合意なき離脱」発言続く…。ポンド/円は中期的に120円へ(8月1日、西原宏一)

英与党・保守党の党首選に勝利したボリス・ジョンソン氏(55)が24日、メイ氏の後任の首相に就任した。ジョンソン氏は就任後の演説で、最大の懸案である欧州連合(EU)からの離脱について、10月末の離脱に「たられば」は必要ないと明言。またEUが交渉を拒否すれば「合意なき離脱」に向かうと警告した。

出所:ロイター

 ところが、今月(10月)10日(木)にジョンソン首相と、アイルランドのバラッカー首相が秘密会談を行った後、EU離脱合意への道筋が見えたとのコメントを発表したことから事態は一変。

英・アイルランド首脳会談、離脱合意へ「道筋」見えると一致

英国と欧州連合(EU)は、離脱条件の合意に向けて一歩近づいた。英国とアイルランドの首脳会談は前向きで、合意に向けた「道筋」を見いだしたと強調した。

出所:Bloomberg

 この後、合意に関する報道が立て続けに出ます。

 例えば、以下の英テレグラフ紙の記事。

英EU離脱で「土壇場の妥協」に英紙が言及

英国と欧州連合(EU)との離脱協議の「土壇場の妥協」と、EU臨時首脳会議開催の可能性に英紙テレグラフが言及した。

出所:Bloomberg

 そして、10月16日(水)には、英フィナンシャル・タイムズ紙が「英DUP(民主統一党)が、ジョンソン英首相の税関手続き案を非公式に受け入れ」と報じました。

 こうした報道を受けて…
米中閣僚級貿易協議の行方に注目! もし決裂なら、リスクオフ相場到来か? ブログ

米中閣僚級貿易協議の行方に注目! もし決裂なら、リスクオフ相場到来か?

■米中閣僚級貿易協議に注目が集まる みなさん、こんにちは。

 マーケットの注目が集まっている米中閣僚級貿易協議が、10月10日(木)から開催されます。

 ビッグイベントを控え、10月8日(火)のNY市場では、米国株が大きく下落。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

 株の下落要因は、まず、トランプ政権が、「中国・新疆ウイグル自治区でのイスラム教徒の身柄拘束に関係する中国当局者への査証(ビザ)発給を制限」すると発表したこと。

 ポンペオ米国務長官は、「弾圧を直ちにやめ、拘束した人々を開放するよう中国に求める」とし、中国への圧力を強化した形。

 加えて、米商務省が、中国の監視カメラ大手など28の団体や企業に禁輸措置をとったこともマーケット参加者のセンチメントを悪化させる要因となっています。

 米中閣僚級貿易協議を控え、両国間の緊張が高まることに神経を尖らせていたマーケットは、この一連の報道に呼応する形で、米国株が値を崩す展開。

 10月8日(火)のNYダウは、FRB(米連邦準備制度理事会)が資産購入再拡大という、株にとってポジティブな報道もあったため、下げ幅は限定的になりましたが、前営業日比313ドル安の2万6164ドルでクローズしています。

 結果、株安でリスクオフとなり、円とスイスフランは堅調推移。

米ドル/円 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)

米ドル/スイスフラン 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/スイスフラン 1時間足)

 ここで…