今井雅人の「どうする? どうなる? 日本経済、世界経済」

6月8日、英欧米の重大イベントの行方は? ECB慎重姿勢でユーロ上昇の可能性低いか ブログ

6月8日、英欧米の重大イベントの行方は? ECB慎重姿勢でユーロ上昇の可能性低いか

■ビッグイベントを前に米ドル安や円高が進行 この1週間は、まず、6月2日(金)に発表された米国の5月雇用統計の結果が、予想を大きく下回ったことを受けて、米ドル全面安の展開となりました。

米ドルVS世界の通貨 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 4時間足)

 その後、今週(6月5日~)に入ると、中東6カ国がカタールとの国交を断絶すると発表したことを受けて、カタールが海外から資産を引き揚げるのではないかという憶測のもと、マクロ系のヘッジファンドなどが一斉に円買いをしたために、円高が進行するという局面もありました。

世界の通貨VS円 1時間足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 1時間足)

 また、本日6月8日(木)に、市場が非常に注目しているイベントがあるので、その前にリスクを減らしておきたいという意図も働いたようです。

【参考記事】

●今こそ米ドル/円押し目買いの好機!? 今晩の雇用統計が悪くてもさほど売られないかも(6月2日、陳満咲杜)

●英国・欧州・米国のビッグイベント集中! 6月8日は何が起こるかわからない……!?(6月5日、西原宏一&大橋ひろこ)

●米ドル/円は売りシグナル!英国総選挙など材料満載の6月8日は予想外の結果に注意(6月7日、松田哲)

 本日は3つの大きなイベントがあり、市場関係者が注目していますが、直前にいろいろな情報が出てきているので、結局は、それほどの波乱要因にはならないような気がしています。

■ECBは引き締めに慎重な姿勢へ、ユーロ上昇の可能性低下 まず、ECB(欧州中央銀行)の定例理事会ですが、7日(水)にブルームバーグがユーロ圏当局者の話として、ECBが政策決定後に発表する最新の経済予測で「2019年までのインフレ率を下方修正する準備をしている」と報じました。

 それが正しいかどうかはともかくとして、市場の一部で憶測が高まっている、テーパリング(※)などの金融引き締め策への転換には、慎重な姿勢をみせるのでないかと考えられます。

(※編集部注:「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)

 もちろん、私の予想と反するような動きがあれば、ユーロは上昇すると思いますが、その可能性は低くなったと考えておきたいと思います。

ユーロ/米ドル 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)

【参考記事】

●しっくりこないユーロ高…原因はどこに? 注目イベント重なる来週は大荒れに警戒!(6月1日、今井雅人)

●重要イベント目白押し! 期待先行で上昇のユーロ/米ドルはイベント通過後に売り狙い(6月6日、バカラ村)

 次に英国の総選挙ですが、大手調査会社の直前の…
しっくりこないユーロ高…原因はどこに? 注目イベント重なる来週は大荒れに警戒! ブログ

しっくりこないユーロ高…原因はどこに? 注目イベント重なる来週は大荒れに警戒!

■ギリシャ債務問題、今回も「何とかなる」? 先週(5月22日~)から今週(5月29日~)にかけては、大きなトレンドが出るようなことが起きず、レンジ内での動きが続いています。

 ギリシャの債務問題がこじれるかもしれないという報道を受けて、ユーロが一時売られる展開もありました。

 しかし、これまでも途中はもめたとしても、最後は何とかまとまるということが繰り返されてきているので、今回も「何とかなるだろう」と市場はすぐに冷静さを取り戻し、ユーロは短期間の間に買い戻される展開となっています。

ユーロ/米ドル 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 1時間足)

■しっくりこないユーロ高…いずれ崩れる可能性も…? 個人的に言えば、ここまでユーロが強いことが、どうもしっくりきません。これといった明確な理由がないからです。

 ポジション動向を見ても、大きくショートになっているわけでもありません。それ以外にもユーロを買う材料がありません。

【関連記事】

●メルケル発言は、ユーロ高容認ではない! 米大統領弾劾は難しいし、いずれドル高へ(5月25日、今井雅人)

 あえて言えば、米国の長期金利が低迷しているので、それによる米ドル安圧力がかかっているため、ユーロ/米ドルが上昇しているということはあるかもしれません。

米長期金利(米10年債利回り) 日足(出所:Bloomberg)

 しかし、米国も利上げが近いと言われている中で、ここまでユーロが米ドルに対して強いのはどうも理解ができません。


 今は確かに買いが強いですが、いずれ何かのきっかけで崩れる可能性もあると考えています。

■FOMC占う雇用統計に注目、悪くなければ米ドル高へ! さて、現在はあまり材料がない状況が続いています。


 今週(5月29日~)の注目と言えば、週末の6月3日(金)に予定されている米国の雇用統計ぐらいでしょう。

 市場予想は、失業率が前月と同じ4.4%、非農業部門就業者数は前月比18万人程度の増加という予想です。

米失業率の推移(出所:Bloomberg)

 6月13日(火)~14日(水)のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、利上げが実施されるかどうかを占うにあたって重要な指標ですので、要注目です。

【関連記事】

●6月FOMC利上げでも米ドル高は限定的? では、ドル/円上昇のカギを握るものとは…!?(5月29日、西原宏一&大橋ひろこ)

 雇用統計が予想どおり、あるいは予想以上の結果となったら、6月14日(水)の利上げが、ほぼ確実になると考えています。そうなれば、米ドルは上昇するでしょう。

 その他、来週(6月5日~)になると偶然ではありますが…
しっくりこないユーロ高…原因はどこに? 注目イベント重なる来週は大荒れに警戒! ブログ

しっくりこないユーロ高…原因はどこに? 注目イベント重なる来週は大荒れに警戒!

■ギリシャ債務問題、今回も「何とかなる」? 先週(5月22日~)から今週(5月29日~)にかけては、大きなトレンドが出るようなことが起きず、レンジ内での動きが続いています。

 ギリシャの債務問題がこじれるかもしれないという報道を受けて、ユーロが一時売られる展開もありました。

 しかし、これまでも途中はもめたとしても、最後は何とかまとまるということが繰り返されてきているので、今回も「何とかなるだろう」と市場はすぐに冷静さを取り戻し、ユーロは短期間の間に買い戻される展開となっています。

ユーロ/米ドル 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 1時間足)

■しっくりこないユーロ高…いずれ崩れる可能性も…? 個人的に言えば、ここまでユーロが強いことが、どうもしっくりきません。これといった明確な理由がないからです。

 ポジション動向を見ても、大きくショートになっているわけでもありません。それ以外にもユーロを買う材料がありません。

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●メルケル発言は、ユーロ高容認ではない! 米大統領弾劾は難しいし、いずれドル高へ(5月25日、今井雅人)

 あえて言えば、米国の長期金利が低迷しているので、それによる米ドル安圧力がかかっているため、ユーロ/米ドルが上昇しているということはあるかもしれません。

米長期金利(米10年債利回り) 日足(出所:Bloomberg)

 しかし、米国も利上げが近いと言われている中で、ここまでユーロが米ドルに対して強いのはどうも理解ができません。


 今は確かに買いが強いですが、いずれ何かのきっかけで崩れる可能性もあると考えています。

■FOMC占う雇用統計に注目、悪くなければ米ドル高へ! さて、現在はあまり材料がない状況が続いています。


 今週(5月29日~)の注目と言えば、週末の6月3日(金)に予定されている米国の雇用統計ぐらいでしょう。

 市場予想は、失業率が前月と同じ4.4%、非農業部門就業者数は前月比18万人程度の増加という予想です。

米失業率の推移(出所:Bloomberg)

 6月13日(火)~14日(水)のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、利上げが実施されるかどうかを占うにあたって重要な指標ですので、要注目です。

【関連記事】

●6月FOMC利上げでも米ドル高は限定的? では、ドル/円上昇のカギを握るものとは…!?(5月29日、西原宏一&大橋ひろこ)

 雇用統計が予想どおり、あるいは予想以上の結果となったら、6月14日(水)の利上げが、ほぼ確実になると考えています。そうなれば、米ドルは上昇するでしょう。

 その他、来週(6月5日~)になると偶然ではありますが…
メルケル発言は、ユーロ高容認ではない! 米大統領弾劾は難しいし、いずれドル高へ ブログ

メルケル発言は、ユーロ高容認ではない! 米大統領弾劾は難しいし、いずれドル高へ

■FOMC議事録をあまり弱気に受け取る必要はない 今週(5月22日~)はまず、米国の金融政策から見ていきたいと思います。

 FRB(米連邦準備制度理事会)が5月24日(水)に公表した5月のFOMC(米連邦公開市場委員会)会合議事録に、「大部分の参加者は、経済に関して入手する情報が予想とおおむね一致した場合は、政策緩和の解除をさらに一歩進めるのが近く適切になると判断した」とあります。

 また、4兆500億ドル規模の当局のバランスシートを緩やかに縮小させる計画を支持しています。

 これだけを見れば、いよいよ利上げかという感じを受けるのですが、一方で投票権を持つ複数のメンバーから、「最近見られる経済活動の減速が一過性のものだという証拠を待つのが賢明である」という慎重な意見があったことも示されています。

【参考記事】

●FRB高官の発言で米6月利上げが濃厚に! ユーロ/ドルは節目の1.13ドルを超えるか!?(5月22日、西原宏一&大橋ひろこ)

 6月利上げに向けて、ムードが高まっていたので、後者の慎重な意見のくだりに敏感に反応し、米長期金利も低下、米ドルもやや売られることになりました。

米長期金利(米10年債利回り) 15分足(出所:Bloomberg)

米ドルVS世界の通貨 15分足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 15分足)

 市場が示す6月利上げ確率も、83.1%から78.5%に低下しています。確かに、期待していたようにイケイケの雰囲気ではなかったものの、利上げだけではなく、量的な金融引き締めにまで言及しているわけですから、私はそんなに弱気にとる必要はないと思っています。

■北朝鮮問題は長期化へ、市場への影響は当面ないのでは? 次に、金融市場を取り巻くその他の状況について、1つずつ整理していきたいと思います。

 北朝鮮の状況ですが、5月19日(金)、マティス米国防長官が北朝鮮問題に関し、「軍事的に解決しようとすれば、信じがたい規模の悲惨な事態をもたらす」と発言しました。

 つまり、北朝鮮への軍事行動は、よほどのことがなければやらないということです。

【参考記事】

●米軍の北朝鮮攻撃はあるのか? ないのか? 元航空自衛隊空将が語る攻撃の前兆とは?(4月18日、織田邦男)

 従って、この問題が長期化することは間違いないですが、市場への影響は当面ないと考えておけばいいのではないかと思っています。

 次は、ECB(欧州中央銀行)の金融政策について…
メルケル発言は、ユーロ高容認ではない! 米大統領弾劾は難しいし、いずれドル高へ ブログ

メルケル発言は、ユーロ高容認ではない! 米大統領弾劾は難しいし、いずれドル高へ

■FOMC議事録をあまり弱気に受け取る必要はない 今週(5月22日~)はまず、米国の金融政策から見ていきたいと思います。

 FRB(米連邦準備制度理事会)が5月24日(水)に公表した5月のFOMC(米連邦公開市場委員会)会合議事録に、「大部分の参加者は、経済に関して入手する情報が予想とおおむね一致した場合は、政策緩和の解除をさらに一歩進めるのが近く適切になると判断した」とあります。

 また、4兆500億ドル規模の当局のバランスシートを緩やかに縮小させる計画を支持しています。

 これだけを見れば、いよいよ利上げかという感じを受けるのですが、一方で投票権を持つ複数のメンバーから、「最近見られる経済活動の減速が一過性のものだという証拠を待つのが賢明である」という慎重な意見があったことも示されています。

【参考記事】

●FRB高官の発言で米6月利上げが濃厚に! ユーロ/ドルは節目の1.13ドルを超えるか!?(5月22日、西原宏一&大橋ひろこ)

 6月利上げに向けて、ムードが高まっていたので、後者の慎重な意見のくだりに敏感に反応し、米長期金利も低下、米ドルもやや売られることになりました。

米長期金利(米10年債利回り) 15分足(出所:Bloomberg)

米ドルVS世界の通貨 15分足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 15分足)

 市場が示す6月利上げ確率も、83.1%から78.5%に低下しています。確かに、期待していたようにイケイケの雰囲気ではなかったものの、利上げだけではなく、量的な金融引き締めにまで言及しているわけですから、私はそんなに弱気にとる必要はないと思っています。

■北朝鮮問題は長期化へ、市場への影響は当面ないのでは? 次に、金融市場を取り巻くその他の状況について、1つずつ整理していきたいと思います。

 北朝鮮の状況ですが、5月19日(金)、マティス米国防長官が北朝鮮問題に関し、「軍事的に解決しようとすれば、信じがたい規模の悲惨な事態をもたらす」と発言しました。

 つまり、北朝鮮への軍事行動は、余程のことがなければやらないということです。

【参考記事】

●米軍の北朝鮮攻撃はあるのか? ないのか? 元航空自衛隊空将が語る攻撃の前兆とは?(4月18日、織田邦男)

 従って、この問題が長期化することは間違いないですが、市場への影響は当面ないと考えておけばいいのではないかと思っています。

 次は、ECB(欧州中央銀行)の金融政策について…
トランプリスク再燃で米ドル/円に投げ売り! 混乱の時こそドルの買い場と考えるワケは? ブログ

トランプリスク再燃で米ドル/円に投げ売り! 混乱の時こそドルの買い場と考えるワケは?

■入り方を間違うと痛い目に…。難しい相場展開 先週(5月8日~)は、恐怖指数と呼ばれるVIX指数が1993年以来という、実に24年ぶりの低水準になったことが市場の話題となっていたのですが、前回のコラムでは、それと同時に「トランプ政権」への不安材料が残っていることもお伝えしたと思います。

【参考記事】

●なぜ、VIX指数は24年ぶりの低水準に!?円売りに慎重にならざるを得ない理由とは?(5月11日、今井雅人)

 今の状態は、「普通に経済状況だけを考えれば、米ドル高・株高という動きになる環境にある」が、「トランプ政権が何をやらかすかわからない」というリスクが常に存在していると指摘しました。

 前回のコラムでお伝えしたとおり、相場は、「安定すると米ドル高・円安・株高傾向になるのですが、それがある程度進むと、何か事件が起きたりして相場が混乱し、逆流します。そして、それが落ち着くと、また元の軌道に戻ります」といった動きを繰り返しており、入り方を間違うと痛い目に合ってしまいます。

 非常に難しい相場展開が続いています。

■メモの存在が報じられ、「トランプリスク」再燃 私は先週まで、「また何かが起きてもおかしくない」という不安感から、円売りには慎重な姿勢で臨んでいましたが、やはり、市場もそういった不安を少しずつ感じていたような展開となりました。

 そして、昨日5月17日(水)は、ついに、その「トランプリスク」が再燃。NY市場では、一気にリスクオフの動きとなってしまいました。

 アジア時間の朝方から、トランプ米大統領が先日解任したばかりのコミー前FBI(連邦捜査局)長官に対し、辞任したフリン前大統領補佐官への捜査を打ち切るように要請したとするメモの存在が、NYタイムズで報じられたことがわかると、米ドル/円は売りが強まることとなりました。

■トランプ大統領弾劾の可能性浮上で、リスクオフに… NY時間に入ると、米長期金利が急激な低下となったほか、NYダウや日経平均先物も急落。

米長期金利(米10年債利回り)(出所:Bloomberg)

NYダウ 1時間足(出所:Bloomberg)

日経平均先物 1時間足(出所:Bloomberg)

 米ドル/円は、投げ売りが断続的に持ち込まれ、一時110.795円まで売り込まれました。

 市場参加者から話を聞いてみると、「トランプ米大統領の弾劾の可能性もある」といった認識が高まったことで、リスクオフの動きを助長してしまったようです。

 そして、本日のアジア時間に入って、米ドル/円は再びストップロスを誘発。一気に110.538円という安値まで売られてしまいました。まさに、セリングクライマックス(※)的な動きとなっています。

(編集部注:「セリングクライマックス」とは、下落相場の最終局面に起こる暴落のこと。これが起こると一般的に、その後、相場は反転すると言われている)

米ドル/円 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)

 では、この状況で、どう相場に臨んでいけば…
なぜ、VIX指数は24年ぶりの低水準に!? 円売りに慎重にならざるを得ない理由とは? ブログ

なぜ、VIX指数は24年ぶりの低水準に!? 円売りに慎重にならざるを得ない理由とは?

■VIX(恐怖)指数が24年ぶりの低水準に! その要因は? 前回のコラム以降、結局のところ、米国、日本ともに株価は堅調に推移し、為替相場も円安方向に動いてきています。

【参考記事】

●「お化け」騒ぎの後、市場で何が起きた? 「化ける」可能性があるのはユーロ/円!(5月2日、今井雅人)

 その原因となっていることとして、市場環境が非常に安定していることが挙げられています。

 それを端的に表しているのが、恐怖指数と呼ばれるVIX指数の動きです。

 VIX指数は、1993年以来という、実に24年ぶりの低水準になっています。5月9日(火)には、一時9.56という水準まで低下しました。

VIX指数 日足(出所:Bloomberg)

 それだけVIX指数が低下してきている直接的な要因は、北朝鮮での武力衝突の危険性が遠のいてきていること、そして、仏大統領選挙で、親EU(欧州連合)派のマクロン氏が勝利したことなどが挙げられています。

■VIX指数低下の背景には、経済状況の安定がある しかし、北朝鮮の状況は小康状態に入っただけで、問題が解決されたわけではありません。

 実際、5月9日(火)のNY市場では、「北朝鮮6回目の核実験を実施へ」とのヘッドラインが流れて、一時的にせよ、市場はリスクオフの動きとなりました。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

 マクロン氏が勝利したことに関しても、これまでもその程度のイベントリスクは数限りなくあったはずです。

 そうしたことだけでは、VIX指数が24年ぶりの低水準になっているということに対して、説明がつきません。

 おそらくそこには、2007年のサブプライムショック(※)から10年が経過し、先進国の失業率などが正常値に戻ってきていることに代表されるように、経済状況が安定してきたということが、大きな背景としてあるのでしょう。

(※編集部注:「サブプライムショック」とは、2007年~2009年にかけて起こった米国の住宅バブル崩壊に端を発する世界的な金融危機のこと。リーマンショックなども、この流れのなかで起こった)

■不安材料…それはズバリ、トランプ政権! ただ、それでも不安材料は残ります。

 それは、言うまでもなくトランプ政権です。

言うまでもなくトランプ政権は、不安材料の1つ…。低金利政策の継続や米ドル安を望むトランプ大統領と6月利上げの可能性が高まっているFOMC。政府と中央銀行の間で政策の方向性がズレている…!? (C)Mark Wilson/Getty Images

 トランプ米大統領は、大規模な景気刺激策と貿易赤字の縮小を同時に掲げながら、低金利政策の継続と米ドル安を望んでいます。

 しかし、FOMC(米連邦公開市場委員会)は、2017年6月に追加利上げをする可能性が非常に高まっています。市場でも、ほぼ8割以上が6月の利上げを織り込んできています。

 利上げをすれば、米ドル高になりやすいのは言うまでもありません。つまり、米国では政府と中央銀行の間でズレが生じているということになります。

米ドルVS世界の通貨 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 日足)

 そこで、今の状況を改めて…
「お化け」騒ぎの後、市場で何が起きた? 「化ける」可能性があるのはユーロ/円! ブログ

「お化け」騒ぎの後、市場で何が起きた? 「化ける」可能性があるのはユーロ/円!

■「お化けが出る!」と大騒ぎ! 冷静になってみると… 「お化けが出る!」と世の中が大騒ぎになったものの、いつまで経っても「お化け」が出てこないので、騒動からみんなが冷静に戻る、という現象が金融市場でも起きています。

 そのことを如実に表しているデータが今、市場で話題になっています。

 それは、先週末公表された4月25日(木)時点でのCBOT(シカゴ商品取引所)における米国10年債先物のポジション動向です。

 北朝鮮問題やフランスの大統領選挙、G20(20カ国・地域財務大臣・中央銀行総裁会議)などリスク要因がいくつも出てきていたことに対して、ヘッジファンドを中心とする投資家は、激しく米国債の先物を買い戻しました。

 それまで、米国の金利が上昇していくとの観測から、大きく売り越しとなっていたポジションの買い戻しです。

 前週4月18日(木)の4万1300枚のネットショートから、一気に21万4642枚のネットロングに急増。チャートなどを眺めてみても、短期間でのあまりに激しい動きであることが、視覚的にもよくわかります。

CBOT(シカゴ商品取引所)米国10年債先物のポジション動向(出所:Bloomberg)

■なかなか出ないお化け。おののいた人が、巻き返しに奔走 ここまで激しくポジションが動いていたのは、驚きでした。みんな「お化けが出るかもしれない」と恐怖におののいてしまったことで、こういう動きになったのでしょう。

 私自身も、それに一時的に賭けてしまいました。

 しかし、お化けは、なかなか出ません。

 中国もロシアも裏で動いているようなので、北朝鮮への武力攻撃のような最悪のシナリオは、当面、回避できる状況になってきています。

 お化けが、当面、出ないということになると、それにおののいていた人は、また逆の行動に出ます。今、起きている巻き返しというのは、そういうことなのでしょう。

■市場を注視しながら、クロス円の買い方向で見る もうかなり進んでしまったのですが、全体的な円安の動きは、まだ続く感じになってしまいました。

世界の通貨VS円 4時間足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 4時間足)

 こうなってくると、どこまで円安が伸びるのかはわかりません。また、ここまで進んでしまったところで、新たに円売りをするのは、少々怖い感じがします。

 市場の状況を注意深く見ながら、また、タイトストップを意識しつつではありますが、短期的には、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の買い方向で見ておきたいと思います。

 では、クロス円の中でどの通貨ペアを選ぶ…
誕生から100日を迎える米トランプ政権。 税制改正案発表にも市場の反応は鈍い ブログ

誕生から100日を迎える米トランプ政権。 税制改正案発表にも市場の反応は鈍い

■北朝鮮の問題は、当面、こう着状態が続くか いくつかの不安材料が、さらに円高を進める可能性がありましたが、結局、すべての不安材料が大事には至っていません。

 米国と北朝鮮の間での緊張の高まりから、市場が不安定になっていましたが、北朝鮮は今のところ、核実験などを見送っています。

 どうやら、中国が石油(重油)を北朝鮮に供給しないことをほのめかして自制を促しているようです。とりあえず、いったんは難を逃れたという状況ですが、今後とも注意が必要です。

 当面は、こう着状態が継続するでしょう。

■ちょっと警戒し過ぎたか? 市場はリスクオンの株高・円安に トランプ米大統領が、「米ドルは、強過ぎる」と発言して、米ドル安圧力がかかりましたが、その後、ムニューシン米財務長官が、「長期的には強い米ドルが望ましい」と発言したことや、G20(20カ国・地域財務大臣・中央銀行総裁会議)で、為替相場について特段、変わった議論はありませんでした。そのため、その後は、米ドル安圧力が和らいでいます。

 仏大統領選挙も、マクロン氏が5月7日(日)の決選投票で勝利する公算が非常に高くなったことで、EU(欧州連合)離脱リスクが遠のきました。その結果、市場は、リスクオンとなり、ユーロ買いだけでなく、株価も上昇、円安も進行しています。

 ちょっと警戒し過ぎてしまいました。

 ただ、北朝鮮の問題も何も解決していませんし、トランプ米大統領が、短期的に米ドルが強過ぎることに不満を持っているのは事実なので、この問題は、いずれまた再燃するでしょう。

【参考記事】

●米ドルの反転・上昇が難しい理由は何か? 1ドル=105円台もあり得るとの見方を維持(4月20日、今井雅人)

ユーロ/米ドル 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 4時間足)

世界の通貨VS円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 4時間足)

 ところで、4月26日(水)、トランプ政権は…
米ドルの反転・上昇が難しい理由は何か? 1ドル=105円台もあり得るとの見方を維持 ブログ

米ドルの反転・上昇が難しい理由は何か? 1ドル=105円台もあり得るとの見方を維持

■米ドル/円の動きが鈍い原因は? 米ドル/円は、すっかり動きが鈍くなってきています。

米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

 新しい材料がなくなってしまったことやある程度、米ドル/円のロングポジションが整理されてきたことなどが、動きが鈍くなってきた原因であると考えられています。

 その上で、今後どうなっていくかを、今回は少し考えてみたいと思います。

■米ドルが上昇したのは、経済対策への期待感が原因 まず、2016年からの流れを振り返って考えてみましょう。

 2016年11月、トランプ氏が米国の大統領選挙で勝利した際、一気に米ドル高が進みました。その原因は、トランプ大統領が掲げるさまざまな経済対策に対して、期待感が高まっていたことにあります。

米ドル/円 週足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 週足)

 具体的に言えば、まず、大規模な財政出動による道路などのインフラ整備、それと大幅な減税です。特に、時限的措置として、海外にある内部留保金を米国内に還元することに対する減税措置が挙げられます。

 米ドル高の原因は、こうした政策に対する期待でした。

【参考記事】

●トランプ大統領誕生で暴落後に株高・円安へ!だが、トレンドを作ると考えるのは早計!?(2016年11月10日、今井雅人)

●トランプ相場で「米国買い」状態だがすべて憶測による値動き。崩れる局面あるかも…(2016年11月17日、今井雅人)

■トランプ政権の経済対策への期待感は、剥げ落ちている しかし、現在ではイスラム教圏の国からの入国制限の失敗、オバマケア廃止の失敗などからトランプ政権に対する信頼感が急速に低下し、経済対策についても、実現性を危ぶむ声が挙がってきているということです。

【参考記事】

●トランプ政権への不安がドル/円の重し!?たとえ戻りがあっても、頭は重くなりそう(3月23日、今井雅人)

●利上げでも米ドル安の衝撃。自慢はするがトランプ政権は結局、何も前に進んでいない(3月30日、今井雅人)

 実際問題、ムニューシン米財務長官は、最近、税制改正などの一連の経済対策が、かなり遅れる可能性があると言及しています。

 もはや、トランプ政権の経済対策に対する期待感は、剥げ落ちてしまっているということを忘れてはいけません。そうであるとすれば、再び米ドルが上昇し始めるには、別の理由が必要になってくるということです。

 現在も、ここから反転して米ドル高に…