今井雅人の「どうする? どうなる? 日本経済、世界経済」

円キャリートレード継続! 金利先高感が 強まった通貨を中心にクロス円チェック! ブログ

円キャリートレード継続! 金利先高感が 強まった通貨を中心にクロス円チェック!

■イエレン議長、最後(?)の議会証言はハト派 昨日、7月12日(水)に、注目されていたイエレンFRB(米連邦準備制度理事会)議長による半期に一度の議会証言が行われました。

 この、慣例となっている米上下両院におけるFRB議長の金融政策に関する証言ですが、イエレン議長にとって「おそらく最後になるだろう」ということもあってか、いつも以上に市場の注目が集まったといえます。

イエレンFRB議長の任期は2018年2月3日まで。最後の議会証言になりそうで、市場の注目度は高かったが… (C) Bloomberg/Getty Images

 議会証言に先立って、FRBが日本時間21時30分に公表した証言原稿には、「向こう数年にわたって政策金利の段階的な引き上げを継続する必要がある」との見方を示した一方、「インフレは目標を下回っており、最近は低下傾向」、「経済に対するインフレの反応が重要な不確実性」との見解が示されました。

 また、「金利は中立水準に達するまで大きく上昇する必要ない」と考えていることが判明したほか、「米財政政策も不確実性をもたらしている」と、全般的にハト派な内容となりました。

■タカ派な期待が裏目に… 米ドル/円はポジション調整 その後、日本時間23時から開始された米下院金融サービス委員会における証言では、「バランスシートの縮小を年内の比較的早期に開始する」ことが確認できたものの、具体的な計画はそれ以上、明らかになりませんでした。

【参考記事】

●米バランスシート縮小開始は9月が濃厚!? ユーロ中心の円キャリートレード戦略維持(7月6日、今井雅人)

 市場は、それまでに、かなりタカ派的な内容を期待していたこともあってか、米ドル売りで反応しました。

 特に、米ドル/円は議会証言の前日7月11日(火)に114.495円と、目先の重要なレジスタンスレベルとして意識されていた5月11日(木)の高値114.37円を上抜けて、買いに勢いがついていた後だっただけに、短期筋を中心としたポジション調整の売りに押されることとなりました。

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 米長期金利も、2.30%台まで低下しています。

米長期金利(米10年債利回り) 日足(出所:Bloomberg)

 7月11日(火)のNY市場に、ブレイナードFRB理事も「最近のインフレ軟化を踏まえて金利軌道を検証する必要がある」との見解を示していましたが、全般的に前のめりに傾いてしまっていた市場のセンチメントを「少々冷やす」きっかけになったのかもしれません。

 為替市場を見てみると、米長期金利の動向が…
米バランスシート縮小開始は9月が濃厚!? ユーロ中心の円キャリートレード戦略維持 ブログ

米バランスシート縮小開始は9月が濃厚!? ユーロ中心の円キャリートレード戦略維持

■6月FOMCではメンバーの意見が対立!? 日本時間の7月6日(木)3時に、注目されていたFOMC(米連邦公開市場委員会)議事要旨(6月13日~14日開催分)が公表されました。

 6月のFOMCでは、政策金利にあたるFF(フェデラル・ファンド)金利の誘導目標レンジを1.00~1.25%へ0.25%引き上げ、声明文と同時に「政策正常化の原則と計画」と名付けられた資料が公開されました。その資料の中では、「バランスシート正常化プログラム」の詳細が説明されています。

※FRB発表のデータより、ザイFX!編集部が作成

 FRB(米連邦準備制度理事会)は現在、満期が到来した保有する国債や政府機関債、MBS(不動産担保証券)をそのまま再投資していますが、この「バランスシート正常化プログラム」が開始されれば、月間100億ドルを皮切りに、3カ月ごとに100億ドルずつ増加させ、1年後には月間500億ドルを再投資額から減額することになります。

 市場では、そのプログラムの開始時期をめぐって、さまざまな思惑が台頭していましたが、それを確かめるべく、今回のFOMC議事要旨が注目されたわけです。

 その注目された議事要旨には、「いく人かは数カ月以内にプロセス開始を発表することを支持した」とある一方、「一部には、年内のより遅い時期まで決定を先送りすることで経済活動やインフレ見通しを精査するさらなる時間が生じると主張するメンバーもいた」と記されていたため、バランスシート縮小の開始時期をめぐって意見が分かれていたことが判明しました。

■賃金上昇なら米当局はタカ派シナリオ維持へ ただ、市場の声を聞いてみると、イエレンFRB議長も定例記者会見で、開始時期について「比較的早い時期に」と表明していることから、「恐らく9月のFOMCで開始時期を決定するのではないか」とのコンセンサスに変化はなさそうです。

イエレン議長は6月FOMC後の定例記者会見で、バランスシート正常化プログラムを比較的早い時期に実施すると表明。市場では9月に開始時期が決定されるとの見方が濃厚 (C) Bloomberg

 また、議事要旨には「失業率が低すぎる水準まで低下し続けると、米国経済のオーバーヒートを招き、金融の安定化を脅かしかねない」との見解もありました。

 軟調な数字が続くインフレ指標に対しても、「大半のメンバーが特殊要因と判断している」こともわかりました。全体的にはタカ派的な内容であったといえます。

 7月7日(金)に、6月米雇用統計の発表を迎えることになりますが、やはり、賃金の上昇などが確実となってくるのであれば、米当局のシナリオが崩れることはないでしょう。

 しかしながら、米長期金利は上昇基調となってはいるものの、何かあればすぐに低下するといった不安定な動きが続いており、今後も注意しなければなりません。

米長期金利(米10年債利回り) 日足(出所:Bloomberg)

【参考記事】

●ドル高にならないのは長期金利が原因! 利上げでも米国債が買われる理由は?(6月22日、今井雅人)

●株式よりも金利の動きが今後もカギに? 米国債利回り上昇なら米ドル/円も続伸!(7月3日、西原宏一&大橋ひろこ)

 為替市場では、米ドル/円が米独立記念日の前日となる…
米バランスシート縮小開始は9月が濃厚!? ユーロ中心の円キャリートレード戦略維持 ブログ

米バランスシート縮小開始は9月が濃厚!? ユーロ中心の円キャリートレード戦略維持

■6月FOMCではメンバーの意見が対立!? 日本時間の7月6日(木)3時に、注目されていたFOMC(米連邦公開市場委員会)議事要旨(6月13日~14日開催分)が公表されました。

 6月のFOMCでは、政策金利にあたるFF(フェデラル・ファンド)金利の誘導目標レンジを1.00~1.25%へ0.25%引き上げ、声明文と同時に「政策正常化の原則と計画」と名付けられた資料が公開されました。その資料の中では、「バランスシート正常化プログラム」の詳細が説明されています。

※FRB発表のデータより、ザイFX!編集部が作成

 FRB(米連邦準備制度理事会)は現在、満期が到来した保有する国債や政府機関債、MBS(不動産担保証券)をそのまま再投資していますが、この「バランスシート正常化プログラム」が開始されれば、月間100億ドルを皮切りに、3カ月ごとに100億ドルずつ増加させ、1年後には月間500億ドルを再投資額から減額することになります。

 市場では、そのプログラムの開始時期をめぐって、さまざまな思惑が台頭していましたが、それを確かめるべく、今回のFOMC議事要旨が注目されたわけです。

 その注目された議事要旨には、「いく人かは数カ月以内にプロセス開始を発表することを支持した」とある一方、「一部には、年内のより遅い時期まで決定を先送りすることで経済活動やインフレ見通しを精査するさらなる時間が生じると主張するメンバーもいた」と記されていたため、バランスシート縮小の開始時期をめぐって意見が分かれていたことが判明しました。

■賃金上昇なら米当局はタカ派シナリオ維持へ ただ、市場の声を聞いてみると、イエレンFRB議長も定例記者会見で、開始時期について「比較的早い時期に」と表明していることから、「恐らく9月のFOMCで開始時期を決定するのではないか」とのコンセンサスに変化はなさそうです。

イエレン議長は6月FOMC後の定例記者会見で、バランスシート正常化プログラムを比較的早い時期に実施すると表明。市場では9月に開始時期が決定されるとの見方が濃厚 (C) Bloomberg

 また、議事要旨には「失業率が低すぎる水準まで低下し続けると、米国経済のオーバーヒートを招き、金融の安定化を脅かしかねない」との見解もありました。

 軟調な数字が続くインフレ指標に対しても、「大半のメンバーが特殊要因と判断している」こともわかりました。全体的にはタカ派的な内容であったといえます。

 7月7日(金)に、6月米雇用統計の発表を迎えることになりますが、やはり、賃金の上昇などが確実となってくるのであれば、米当局のシナリオが崩れることはないでしょう。

 しかしながら、米長期金利は上昇基調となってはいるものの、何かあればすぐに低下するといった不安定な動きが続いており、今後も注意しなければなりません。

米長期金利(米10年債利回り) 日足(出所:Bloomberg)

【参考記事】

●ドル高にならないのは長期金利が原因! 利上げでも米国債が買われる理由は?(6月22日、今井雅人)

●株式よりも金利の動きが今後もカギに? 米国債利回り上昇なら米ドル/円も続伸!(7月3日、西原宏一&大橋ひろこ)

 為替市場では、米ドル/円が米独立記念日の前日となる…
機関投資家が円キャリートレードで勝負!? 急速な円安。注意しつつ流れに乗りたい ブログ

機関投資家が円キャリートレードで勝負!? 急速な円安。注意しつつ流れに乗りたい

■米国への諦め… 米ドル上昇に期待できない 今年(2017年)は、ヘッジファンドなどの機関投資家の運用成績が不調のようで、連日、「解約続出」や「リストラ」などといったニュースを目にします。

 そんな状況の中、彼らも利益を上げるチャンスがないか、ずっと模索を続けてきました。そして今、1つの手法に傾いているようです。それは「円キャリートレード」(※)です。


(※編集部注:「円キャリートレード」とは、一般的に金利が非常に低い円で資金を調達し、それを相対的に金利の高い外貨に替えて運用する手法のことをいう)

 その背景には、米国への諦めがあります。米国は今年(2017年)に入って2度の利上げを実施しました。しかし、長期金利が上昇していかないのは、以前のコラムで紹介したとおりです。

【参考記事】

●ドル高にならないのは長期金利が原因! 利上げでも米国債が買われる理由は?(6月22日、今井雅人)

●タカ派印象のFOMCなのに…ドル高ならず! 金利頼みの米ドル/円は、動きにくくなるか(6月15日、今井雅人)

米長期金利(米10年債利回り) 日足(出所:Bloomberg)

 そんな状況なので、米ドルの上昇にもあまり期待できなくなってきました。

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

■米国以外の先進国で引き締め期待が高まる その一方で、米国以外の国で金融政策に動きが出てきています。

 まずはカナダです。BOC(カナダ銀行[カナダの中央銀行])のウィルキンス上級副総裁は6月12日(月)に、「国内経済が成長を続ける中で、政策金利を過去最低水準で維持するかどうかについて検討する」と発言しました。

 つまり、景気が良くなってきたので、少し金利を上げていったほうがいいかもしれないという認識を示したわけです。

加ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:加ドル/円 4時間足)

 また、ECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁は6月27日(火)、「ユーロ圏経済のリフレーションで金融姿勢を引き締めずに非従来型の措置を引き揚げる余地が生じている」と発言しました。

 これによって、欧州各国の長期金利が急上昇しています。

独長期金利(独10年債利回り) 1時間足(出所:Bloomberg)

 そして、6月28日(水)には英国でも、BOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])のカーニー総裁から、金融緩和策の縮小に向けた発言がありました。

【参考記事】

●経済不振なのに利上げ!? それは短期的には通貨の買い材料だが、中期的には売り材料(6月27日、バカラ村)

●2017年内は英利上げなしと思った方がよい。英国発のブラックスワンを再度警戒!(6月23日、陳満咲杜)

英ポンド/米ドル 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 1時間足)

 米国だけでなく、その他の先進国からも金融引き締め政策への転換を意識させる発言が出てきているということです。


 その一方、日本だけは…
機関投資家が円キャリートレードで勝負!? 急速な円安。注意しつつ流れに乗りたい ブログ

機関投資家が円キャリートレードで勝負!? 急速な円安。注意しつつ流れに乗りたい

■米国への諦め… 米ドル上昇に期待できない 今年(2017年)は、ヘッジファンドなどの機関投資家の運用成績が不調のようで、連日、「解約続出」や「リストラ」などといったニュースを目にします。

 そんな状況の中、彼らも利益を上げるチャンスがないか、ずっと模索を続けてきました。そして今、1つの手法に傾いているようです。それは「円キャリートレード」(※)です。


(※編集部注:「円キャリートレード」とは、一般的に金利が非常に低い円で資金を調達し、それを相対的に金利の高い外貨に替えて運用する手法のことをいう)

 その背景には、米国への諦めがあります。米国は今年(2017年)に入って2度の利上げを実施しました。しかし、長期金利が上昇していかないのは、以前のコラムで紹介したとおりです。

【参考記事】

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米長期金利(米10年債利回り) 日足(出所:Bloomberg)

 そんな状況なので、米ドルの上昇にもあまり期待できなくなってきました。

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

■米国以外の先進国で引き締め期待が高まる その一方で、米国以外の国で金融政策に動きが出てきています。

 まずはカナダです。BOC(カナダ銀行[カナダの中央銀行])のウィルキンス上級副総裁は6月12日(月)に、「国内経済が成長を続ける中で、政策金利を過去最低水準で維持するかどうかについて検討する」と発言しました。

 つまり、景気が良くなってきたので、少し金利を上げていったほうがいいかもしれないという認識を示したわけです。

加ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:加ドル/円 4時間足)

 また、ECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁は6月27日(火)、「ユーロ圏経済のリフレーションで金融姿勢を引き締めずに非従来型の措置を引き揚げる余地が生じている」と発言しました。

 これによって、欧州各国の長期金利が急上昇しています。

独長期金利(独10年債利回り) 1時間足(出所:Bloomberg)

 そして、6月28日(水)には英国でも、BOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])のカーニー総裁から、金融緩和策の縮小に向けた発言がありました。

【参考記事】

●経済不振なのに利上げ!? それは短期的には通貨の買い材料だが、中期的には売り材料(6月27日、バカラ村)

●2017年内は英利上げなしと思った方がよい。英国発のブラックスワンを再度警戒!(6月23日、陳満咲杜)

英ポンド/米ドル 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 1時間足)

 米国だけでなく、その他の先進国からも金融引き締め政策への転換を意識させる発言が出てきているということです。


 その一方、日本だけは…
ドル高にならないのは長期金利が原因! 利上げでも米国債が買われる理由は? ブログ

ドル高にならないのは長期金利が原因! 利上げでも米国債が買われる理由は?

■米ドル高が進まないのはなぜ? 米国では、6月14日(水)のFOMC(米連邦公開市場委員会)で予定どおり利上げが実施され、その後の見通しがわりと強気だったので、米ドルが少し上昇する展開が数日続きました。

米ドルVS世界の通貨 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 4時間足)

 しかし、その後の状況があまり良くありません。私も、米ドルのロングポジション保有をいったん全部やめて、様子を見ることにしました。

【参考記事】

●タカ派印象のFOMCなのに…ドル高ならず! 金利頼みの米ドル/円は、動きにくくなるか(6月15日、今井雅人)

 その1番の理由は米国の長期金利です。本日、6月22日(木)現在、米国の10年物国債の利回りは2.15%程度で推移しています。

 今年(2017年)に入ってからの、米国の10年物国債の利回りの推移を見てみると、2.45%近辺で始まり、3月中旬にはいったん2.6%を超える水準まで上昇しました。

 しかし、そこをピークに長期金利は低下傾向に入りました。5月の頭には、いったん2.4%程度まで回復する局面もありました。しかし、その後はだらだらと、ほぼ一方的に下がり続け、現在は年初来の最低水準にまで低下してきています。

米長期金利(米10年債利回り) 日足(出所:Bloomberg)

 今年(2017年)は3月と6月に政策金利を2度上げたため、短期金利は上昇傾向になるにもかかわらず、長期金利は低下していくという、非常に不思議な構図になっています。

■雇用環境が改善しても上がらない物価 では、ここまで長期金利が上昇していかないのは、なぜなのでしょうか? 私は、2つのことが原因になっていると思っています。

 まず1点目は、米国の物価が思ったように上昇していかないことです。

※米労働省のデータをもとにザイFX!編集部が作成

 米国の雇用環境はリーマンショック以来、改善し続けてきて、直近の失業率は4.3%まで低下してきています。

 この水準はかつて、超低金利政策が行われる以前の、米国が健全な経済環境にあったときの水準です。

 その当時は、政策金利も4~5%程度はあった時代です。通常、雇用環境が改善してくれば賃金に上昇圧力がかかり、物価も上昇傾向に入るのが一般的です。

 しかし、現在の米国は、どうもそういう傾向になっていきません。理由ははっきりしないのですが、それが現実です。

 2点目は、世界中でだぶついている資金が、米国の…
ドル高にならないのは長期金利が原因! 利上げでも米国債が買われる理由は? ブログ

ドル高にならないのは長期金利が原因! 利上げでも米国債が買われる理由は?

■米ドル高が進まないのはなぜ? 米国では、6月14日(水)のFOMC(米連邦公開市場委員会)で予定どおり利上げが実施され、その後の見通しがわりと強気だったので、米ドルが少し上昇する展開が数日続きました。

米ドルVS世界の通貨 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 4時間足)

 しかし、その後の状況があまり良くありません。私も、米ドルのロングポジション保有をいったん全部やめて、様子を見ることにしました。

【参考記事】

●タカ派印象のFOMCなのに…ドル高ならず! 金利頼みの米ドル/円は、動きにくくなるか(6月15日、今井雅人)

 その1番の理由は米国の長期金利です。本日、6月22日(木)現在、米国の10年物国債の利回りは2.15%程度で推移しています。

 今年(2017年)に入ってからの、米国の10年物国債の利回りの推移を見てみると、2.45%近辺で始まり、3月中旬にはいったん2.6%を超える水準まで上昇しました。

 しかし、そこをピークに長期金利は低下傾向に入りました。5月の頭には、いったん2.4%程度まで回復する局面もありました。しかし、その後はだらだらと、ほぼ一方的に下がり続け、現在は年初来の最低水準にまで低下してきています。

米長期金利(米10年債利回り) 日足(出所:Bloomberg)

 今年(2017年)は3月と6月に政策金利を2度上げたため、短期金利は上昇傾向になるにもかかわらず、長期金利は低下していくという、非常に不思議な構図になっています。

■雇用環境が改善しても上がらない物価 では、ここまで長期金利が上昇していかないのは、なぜなのでしょうか? 私は、2つのことが原因になっていると思っています。

 まず1点目は、米国の物価が思ったように上昇していかないことです。

※米労働省のデータをもとにザイFX!編集部が作成

 米国の雇用環境はリーマンショック以来、改善し続けてきて、直近の失業率は4.3%まで低下してきています。

 この水準はかつて、超低金利政策が行われる以前の、米国が健全な経済環境にあったときの水準です。

 その当時は、政策金利も4~5%程度はあった時代です。通常、雇用環境が改善してくれば賃金に上昇圧力がかかり、物価も上昇傾向に入るのが一般的です。

 しかし、現在の米国は、どうもそういう傾向になっていきません。理由ははっきりしないのですが、それが現実です。

 2点目は、世界中でだぶついている資金が、米国の…
タカ派印象のFOMCなのに…ドル高ならず! 金利頼みの米ドル/円は、動きにくくなるか ブログ

タカ派印象のFOMCなのに…ドル高ならず! 金利頼みの米ドル/円は、動きにくくなるか

■市場参加者の意表をついた米経済指標 6月8日(木)の3大イベントが終わり、今週(6月12日~)は米国のFOMC(米連邦公開市場委員会)に注目が集まっていました。

【参考記事】

●6月8日、英欧米の重大イベントの行方は? ECB慎重姿勢でユーロ上昇の可能性低いか(6月8日、今井雅人)

 しかし、その前に市場を驚かすような結果が発表されました。

 14日(水)に発表された、5月の米消費者物価指数が、前月比でマイナス0.1%になってしまいました。食料品とエネルギーを除く数字のコア指数も前月比+0.1%と、予想値の+0.2%を下回る結果となりました。

米消費者物価指数・コアの推移(対前月比)(詳しくはこちら → 経済指標/金利: 米国主要経済指標の推移)

 また、同時に発表された5月の米小売売上高は前月比マイナス0.3%と、事前予想値を大きく下回りました。

米小売売上高の推移(対前月比)(詳しくはこちら → 経済指標/金利: 米国主要経済指標の推移)

 こうした弱い経済指標を受け、米国の長期金利が急低下し、10年物国債の利回りは2.1%前半と、今年(2017年)に入って、もっとも低い水準まで低下しました。

米長期金利(米10年債利回り) 日足(出所:Bloomberg)

 それを受けて、為替市場では米ドル全面安となり、米/ドル円も一時、108円台まで米ドル安・円高が進行しました。

米ドル/円 30分足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 30分足)

 FOMCの結果をじっと待っていた市場関係者は完全に意表をつかれ、一気に相場が崩れてしまいました。

■FOMC、本当だったら米ドル高イベントだったのに… その後、数時間して、FOMCの結果が発表されました。

 予想どおり、政策金利を0.25%引き上げ、FF(フェデラル・ファンド)金利の誘導目標を、1.00%~1.25%としました。

 それと同時に「政策正常化の原則と計画」、つまり、バランスシートの縮小プランを発表しました。

 また、イエレンFRB(米連邦準備制度理事会)議長は定例記者会見で、消費者物価指数がマイナスになったことに対して、一時的なものであるとの見解を示し、全体的にはタカ派のイメージが残る結果となりました。

【参考記事】

●インフレ鈍化でFOMCは先行きに慎重か。利上げに向け、ドル/円上昇なら売りを狙う(6月13日、バカラ村)

●過去2回の米利上げ後は米ドル安に…。でも今回は違うとみる! それはなぜか?(6月9日、陳満咲杜)

 本来であれば、こうした結果を受けて、米ドルが上昇するはずでしたが、やはりその前の経済指標のショックが大きすぎて、市場はうまく回復せず、米長期金利も低迷したままで終わってしまいました。

米ドル/円 15分足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 15分足)

米長期金利(米10年債利回り) 15分足(出所:Bloomberg)

 私自身も、FOMCをきっかけに米ドル高になると予想していただけに、この経済指標の結果にはかなり落胆しました。おそらく、多くの市場関係者が同じ思いでいるのではないでしょうか。

 さて、こうした状況を受けて、市場はますます混沌と…
タカ派印象のFOMCなのに…ドル高ならず! 金利頼みの米ドル/円は、動きにくくなるか ブログ

タカ派印象のFOMCなのに…ドル高ならず! 金利頼みの米ドル/円は、動きにくくなるか

■市場参加者の意表をついた米経済指標 6月8日(木)の3大イベントが終わり、今週(6月12日~)は米国のFOMC(米連邦公開市場委員会)に注目が集まっていました。

【参考記事】

●6月8日、英欧米の重大イベントの行方は? ECB慎重姿勢でユーロ上昇の可能性低いか(6月8日、今井雅人)

 しかし、その前に市場を驚かすような結果が発表されました。

 14日(水)に発表された、5月の米消費者物価指数が、前月比でマイナス0.1%になってしまいました。食料品とエネルギーを除く数字のコア指数も前月比+0.1%と、予想値の+0.2%を下回る結果となりました。

米消費者物価指数・コアの推移(対前月比)(詳しくはこちら → 経済指標/金利: 米国主要経済指標の推移)

 また、同時に発表された5月の米小売売上高は前月比マイナス0.3%と、事前予想値を大きく下回りました。

米小売売上高の推移(対前月比)(詳しくはこちら → 経済指標/金利: 米国主要経済指標の推移)

 こうした弱い経済指標を受け、米国の長期金利が急低下し、10年物国債の利回りは2.1%前半と、今年(2017年)に入って、もっとも低い水準まで低下しました。

米長期金利(米10年債利回り) 日足(出所:Bloomberg)

 それを受けて、為替市場では米ドル全面安となり、米/ドル円も一時、108円台まで米ドル安・円高が進行しました。

米ドル/円 30分足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 30分足)

 FOMCの結果をじっと待っていた市場関係者は完全に意表をつかれ、一気に相場が崩れてしまいました。

■FOMC、本当だったら米ドル高イベントだったのに… その後、数時間して、FOMCの結果が発表されました。

 予想どおり、政策金利を0.25%引き上げ、FF(フェデラル・ファンド)金利の誘導目標を、1.00%~1.25%としました。

 それと同時に「政策正常化の原則と計画」、つまり、バランスシートの縮小プランを発表しました。

 また、イエレンFRB(米連邦準備制度理事会)議長は定例記者会見で、消費者物価指数がマイナスになったことに対して、一時的なものであるとの見解を示し、全体的にはタカ派のイメージが残る結果となりました。

【参考記事】

●インフレ鈍化でFOMCは先行きに慎重か。利上げに向け、ドル/円上昇なら売りを狙う(6月13日、バカラ村)

●過去2回の米利上げ後は米ドル安に…。でも今回は違うとみる! それはなぜか?(6月9日、陳満咲杜)

 本来であれば、こうした結果を受けて、米ドルが上昇するはずでしたが、やはりその前の経済指標のショックが大きすぎて、市場はうまく回復せず、米長期金利も低迷したままで終わってしまいました。

米ドル/円 15分足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 15分足)

米長期金利(米10年債利回り) 15分足(出所:Bloomberg)

 私自身も、FOMCをきっかけに米ドル高になると予想していただけに、この経済指標の結果にはかなり落胆しました。おそらく、多くの市場関係者が同じ思いでいるのではないでしょうか。

 さて、こうした状況を受けて、市場はますます混沌と…
6月8日、英欧米の重大イベントの行方は? ECB慎重姿勢でユーロ上昇の可能性低いか ブログ

6月8日、英欧米の重大イベントの行方は? ECB慎重姿勢でユーロ上昇の可能性低いか

■ビッグイベントを前に米ドル安や円高が進行 この1週間は、まず、6月2日(金)に発表された米国の5月雇用統計の結果が、予想を大きく下回ったことを受けて、米ドル全面安の展開となりました。

米ドルVS世界の通貨 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 4時間足)

 その後、今週(6月5日~)に入ると、中東6カ国がカタールとの国交を断絶すると発表したことを受けて、カタールが海外から資産を引き揚げるのではないかという憶測のもと、マクロ系のヘッジファンドなどが一斉に円買いをしたために、円高が進行するという局面もありました。

世界の通貨VS円 1時間足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 1時間足)

 また、本日6月8日(木)に、市場が非常に注目しているイベントがあるので、その前にリスクを減らしておきたいという意図も働いたようです。

【参考記事】

●今こそ米ドル/円押し目買いの好機!? 今晩の雇用統計が悪くてもさほど売られないかも(6月2日、陳満咲杜)

●英国・欧州・米国のビッグイベント集中! 6月8日は何が起こるかわからない……!?(6月5日、西原宏一&大橋ひろこ)

●米ドル/円は売りシグナル!英国総選挙など材料満載の6月8日は予想外の結果に注意(6月7日、松田哲)

 本日は3つの大きなイベントがあり、市場関係者が注目していますが、直前にいろいろな情報が出てきているので、結局は、それほどの波乱要因にはならないような気がしています。

■ECBは引き締めに慎重な姿勢へ、ユーロ上昇の可能性低下 まず、ECB(欧州中央銀行)の定例理事会ですが、7日(水)にブルームバーグがユーロ圏当局者の話として、ECBが政策決定後に発表する最新の経済予測で「2019年までのインフレ率を下方修正する準備をしている」と報じました。

 それが正しいかどうかはともかくとして、市場の一部で憶測が高まっている、テーパリング(※)などの金融引き締め策への転換には、慎重な姿勢をみせるのでないかと考えられます。

(※編集部注:「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)

 もちろん、私の予想と反するような動きがあれば、ユーロは上昇すると思いますが、その可能性は低くなったと考えておきたいと思います。

ユーロ/米ドル 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)

【参考記事】

●しっくりこないユーロ高…原因はどこに? 注目イベント重なる来週は大荒れに警戒!(6月1日、今井雅人)

●重要イベント目白押し! 期待先行で上昇のユーロ/米ドルはイベント通過後に売り狙い(6月6日、バカラ村)

 次に英国の総選挙ですが、大手調査会社の直前の…