今井雅人の「どうする? どうなる? 日本経済、世界経済」

米ドル/円は100円も視野! 強硬姿勢の トランプ米大統領。暴走は止められない? ブログ

米ドル/円は100円も視野! 強硬姿勢の トランプ米大統領。暴走は止められない?

■トランプ米大統領の暴走は止められない!? いやはや、トランプ政権というのは、いろいろと物議を醸し出してくれます。

 3月6日(火)、トランプ米大統領の経済顧問トップである、コーン米国家経済会議(NEC)委員長が辞任を表明しました。

 辞任のきっかけになったのは、1日(木)にトランプ大統領が、鉄鋼とアルミニウムに、それぞれ25%と10%の輸入関税を課すと発表したことでした。

 コーン委員長は、この方針に大反対して、結果的に辞任することになったと言われています。

トランプ大統領が表明した輸入関税措置に大反対したコーン米国家経済会議(NEC)委員長が辞任。市場の信頼が厚かったコーン氏が辞任したことで、トランプ大統領の暴走を止めることが困難になってきたとの見方が広がっているようだ… (C)Bloomberg/Getty Images

 トランプ米大統領やその周辺からは、この関税は当初、例外なくすべての国が対象になると説明されました。

 「常識的な委員長である」と、市場からも信頼が厚かったコーン委員長が辞任したことで、トランプ米大統領の暴走を止めることが困難になってきたのではないかとの見方が、急速に広がってきています。

■保護主義への回帰が与えるダメージは大きい! こうした動きに対して、各国からは当然のように激しい批判が出ています。

 EU(欧州連合)は、早速、対応を協議し、28億ユーロ(約3700億円)相当の米国からの輸入品に25%の関税をかけるという対抗措置を準備しました。

 対象は、消費財、農産物、鉄鋼製品、自動二輪車、バーボンウイスキーなど多種多様に渡っています。

 米国が強硬な姿勢に出た場合、この対抗措置を発効するということです。

 ともかく、こんなことをすれば、「保護主義への回帰」ということで、世界の貿易が縮小し、世界経済に大きなダメージを与える可能性があることは言うまでもありません。

 トランプ米大統領は、本当に市場をかく乱してくれます。

■各国の株式市場がさらに崩れるきっかけにも 今後、株式相場、為替相場とも、この行方に大きく左右されることは、明らかです。

【参考記事】

●上値でのドル/円の買い持ちは即損切りを! 米国の貿易摩擦問題は改めて大問題に!?(3月7日、松田哲)

 3月7日(水)のNY市場では、サンダース米大統領報道官が、「日本時間9日(金)早朝にも大統領が関税計画にサインする」ほか、「カナダ、メキシコは例外となる可能性」を示唆してはいるものの、トランプ米大統領が例外なくこの関税を実施すると決断すれば、各国の株式市場は、さらに崩れていくことになるでしょう。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

日経平均 日足(出所:Bloomberg)

 そうなると、為替市場では円高、特に米ドル/円での…
ユーロ/円がここまで崩れた理由は何? 調整が終われば為替相場も下げ止まる ブログ

ユーロ/円がここまで崩れた理由は何? 調整が終われば為替相場も下げ止まる

■株式市場は依然として不安定な動き… 各国の株式市場は、依然として不安定な動きをしています。そこで、今年(2018年)に入ってからの動きをもう一度、振り返ってみます。

 世界の株式市場に大きな影響を与えたのは、米国の株式市場でした。代表的な指標であるNYダウは、昨年(2017年)からの上昇基調を継続して年初から上昇を続け、2万6000ドル台半ばに到達しました。

 その後、インフレ関連の指標が強かったことを要因とする米長期金利の上昇をきっかけとしてNYダウは急落し、2月9日(金)には2万3360ドルまで下落する展開となりました。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

 2月9日(金)を過ぎると徐々に回復してきましたが、足元ではまた少し、不安定になってきています。

■米利上げは確実。鍵は金融政策に関するメッセージ 米国の長期金利は、一時ほどの勢いはありませんが、それでも年初から見れば、かなり高い水準になっています。

 米国債10年物の利回りを見ると、年初は2.4%台から上昇し、一時は2.95%あたりまで上昇しました。

【参考記事】

●米長期金利が「30年レジスタンス」を突破! 日米株の乱高下に警戒! 米ドル/円は…!?(2月12日、西原宏一&大橋ひろこ)

 そこから少し緩んではいますが、それでも足元の水準は2.86%程度で、年初から比べれば、かなり高いということがわかります。

米長期金利(米10年債利回り) 日足(出所:Bloomberg)

 米国では3月20日(火)~21日(水)にFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催されますが、ここでは、政策金利を0.25%引き上げることが確実視されています。

米政策金利の推移※FRBのデータを基にザイFX!が作成

 このときに、金融政策についてどういうメッセージが出されるのかが、大きな鍵になってくると思っています。

■今は強気相場のあとの避けられない調整局面 日本の株式市場の方ですが、こちらも基本的には、米国の株式の動きに連動する形となっているのがわかります。

 日経平均を見ると、1月に2万4000円台まで上昇しましたが、その後は急落し、一時2万1000円を割り込む局面もありました。そして、その後、やや回復しましたが、足元は2万1000円台にとどまっています。

日経平均 日足(出所:Bloomberg)

 株式市場がこうした動きをしている背景は、やはり、昨年(2017年)の強気相場の影響だと考えています。

 強気相場が続くと、どうしてもそのあとに調整局面が起きるというのは避けられないことで、今はそういう段階にあるということだと思います。

 そういう点で為替市場を見てみると、今年(2018年)に入ってからの…
トランプ政権がまた米ドル安を容認した!? ドル/円は106円台~108円台へレンジ入りか ブログ

トランプ政権がまた米ドル安を容認した!? ドル/円は106円台~108円台へレンジ入りか

■大混乱はいったん、落ち着いたけど… 米国の長期金利の上昇に端を発した金融市場の大混乱は、いったん、落ち着きを見せています。

米長期金利(米10年債利回り) 日足(出所:Bloomberg)

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

VIX指数(恐怖指数) 日足(出所:Bloomberg)

 ただ、そこから大幅に回復する気配はあまり見られない状態にあります。

 その背景にあるのは、やはり、世界中が超金融緩和政策からの脱出を順番に展開していく時期にきているという認識が、市場に広がっているからではないかと思います。

 そういう意味においては、まだまだ、市場から不安感が払しょくされることはないだろうと推測できます。

■また米ドル安誘導!? 円安へ向かうムード低下 そんな中で、いくつかのニュースも出てきています。

 まず、米国です。

 トランプ政権は、2月21日(水)に大統領経済報告を発表しました。その中に、「貿易収支の不均衡を是正する1つの重要な手法は為替相場の調整」という記述があります。

 ダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)のときに、ムニューシン米財務長官が同じような発言をしたことで円高が加速し、その後、発言の釈明に追われるということがありました。

【参考記事】

●ファンド勢は米ドル安政策への転換を察知していた!? 今後は神経質な動きに警戒を!(1月25日、今井雅人)

●ムニューシン財務長官のドル安歓迎発言はやっぱり本音? ドル/円は105円目指す過程(2月1日、西原宏一)

1月24日(水)にムニューシン米財務長官が米ドル安容認と受け取れる発言をしたため、為替相場は米ドル安・円高の展開となり、米ドル/円が110円を割り込んだ経緯があったが… (C)Bloomberg/Getty Images

 それが大統領経済報告に書き込まれたということで、今後、またトランプ政権の要人から同様の発言があるのではないかという見方が広がったと思います。

 そういう意味において、混乱が終わったので、これからまた円安へ向かう、というムードが低下してしまっています。

世界の通貨VS円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 4時間足)

 2つ目は、EU(欧州連合)です。1月25日(木)に開催された…
ドル/円と金利の逆相関は解消されない! 円高と米ドル安を加速させる要因とは? ブログ

ドル/円と金利の逆相関は解消されない! 円高と米ドル安を加速させる要因とは?

■ここ最近はアジア時間で円高が加速 良好な米国の雇用統計で、米長期金利が上昇して、株価が急落するという展開になってから、市場が完全にリスクオフの流れになってしまっています。

 特に、中国が、本日(2月15日)から春節(旧正月)の休暇に入っていますが、それまでにポジションを整理したいという動きが、ここ数日、加速していました。

 ここ数日間は、欧米時間よりアジア時間で円高が加速していることが、そのことを示唆しています。

米ドル/円 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)

■米長期金利は2.9%まで上昇したけど… 長く続いてきた米国の長期金利と米ドル/円の正の相関関係が崩れてしまっていることは、前回のコラムで紹介しました。

【参考記事】

●市場の混乱は一時的と考えるのはなぜ? 108円台が底堅いドル/円の下げは一服か(2月8日、今井雅人)

 ここ最近の動きを見ても、米国の長期金利はさらに上昇して、10年物国債で2.9%を上回る水準となってきていますが、それでも、為替は円高に向かっています。

【参考記事】

●米長期金利が「30年レジスタンス」を突破! 日米株の乱高下に警戒! 米ドル/円は…!?(2月12日、西原宏一&大橋ひろこ)

米長期金利(米10年債利回り) 日足(出所:Bloomberg)

世界の通貨VS円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)

 つまり、米国の長期金利と米ドル相場は、逆相関の関係に変ってしまった状態が続いているということです。

米長期金利(右軸)と米ドル/円(左軸) 週足(2017年~)(出所:Bloomberg)

 リスクオフ相場で重要なことは、ポジションがどう傾いて…
市場の混乱は一時的と考えるのはなぜ? 108円台が底堅いドル/円の下げは一服か ブログ

市場の混乱は一時的と考えるのはなぜ? 108円台が底堅いドル/円の下げは一服か

■株式市場が大混乱! 為替はリスクオフの円高に 株式市場は、米国を中心に大混乱に陥りました。

 きっかけは、2月2日(金)の、米国の1月雇用統計でした。非農業部門就業者数は前月比20.0万人増と、予想の18.0万人増より若干、上回る結果でした。また、失業率も4.1%と予想どおりでした。

 ただ、平均時給が前年同月比で2.9%の増加と、約9年ぶりの高水準となったことで、インフレ懸念が急速に高まり、米国の10年物国債利回りは2月5日(月)に一時2.8831%と、2014年1月以来、約4年ぶりの水準まで上昇しました。

米長期金利(米10年債利回り) 月足(出所:Bloomberg)

 この米長期金利の上昇を受けて、米国株が急落し、その影響を受けて日経平均も急落する展開となりました。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

日経平均 日足(出所:Bloomberg)

 為替市場は、株式市場ほどの動きにはなっていませんが、それでも、リスクオフとなって円高に向かいました。

【参考記事】

●NYダウは665ドル安! 日経平均も大幅安! それでも米ドル/円が下げなかったワケは?(2月5日、西原宏一&大橋ひろこ)

世界の通貨VS円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 4時間足)

■混乱は一時的。時間が経てば落ち着くと予想 米国の株式市場は、ここ数年、非常に堅調で史上最高値を更新し続けており、VIX指数(恐怖指数)なども非常に低位で安定していましたが、その反動でボラティリティが急上昇しています。

【参考記事】

●VIX指数急騰で低ボラティリティ相場終焉! 株暴落でも底堅いドル/円も下値余地拡大(2月8日、西原宏一)

VIX指数 週足(出所:Bloomberg)

 米国の株式市場は、予想PER(株価収益率)で見ても、やや割高になってきているという指摘が以前からされていたので、このような激しい動きになったのだと思います。

 しかし、米国経済は基本的に非常に好調であり、企業業績も堅調であることを考えると、今回の混乱は一時的なものであり、時間が経過すれば落ち着くと考えています。

 ただ、それでもしばらくは、不安定な動きをする可能性があるので、円相場も同様に、方向感なく不安定な動きをする可能性が十分あると考えています。

【参考記事】

●NYダウ、史上最大の暴落にVIX指数の影。ビットコインも真っ青。2日で96%下落って!?

 米ドル/円に目を向けてみると、ここのところ、108円台が…
米ドル安はやり過ぎだった!? 米ドル/円の 108円台が当面の底だと考える理由は…? ブログ

米ドル安はやり過ぎだった!? 米ドル/円の 108円台が当面の底だと考える理由は…?

■米利上げペースは想定以上に速まるかも 昨日、1月31日(水)に、FOMC(米連邦公開市場委員会)の結果が公表されました。

 声明文の中で、特に注目されるのは、以下の部分です。

「委員会は、金融政策スタンスの更なる漸進的な調整により、経済活動が緩やかなペースで拡大し、労働市場は力強い状況が続くと見込んでいる。前年比ベースでのインフレ率は今年上昇し、中期的には委員会の目標である2%程度で安定すると見込まれる」

 この中で、今年(2018年)は、インフレ率が高まっていくと予想している、という点が重要です。

 前回までの声明文では、「前年比ベースでのインフレ率は2%をいく分下回ったままで推移」となっていました。

 米国では政策金利の引き上げペースが、市場の予想以上に速まる可能性が出てきました。

※FRBのデータを基にザイFX!が作成

■引き締め期待高まるユーロ圏。議論は3月以降!? 一方、他の国においても、金融引き締め期待が高まってきています。

 ECB(欧州中央銀行)のプラート専務理事は、「インフレが景気刺激策なしに、目標に向かうと確信した際に、資産買い入れを終了する」との見解を示しました。

 また、同理事は、資産買い入れ終了を段階的に行うか一度に実施するか、ECBはまだ決定していないと指摘。「一度の終了も可能で、段階的な終了もできる。これは依然として理事会での討議が必要な事項のひとつだと思う」と述べています。

 現在、ECBは段階的に資産購入金額を減らしており、9月までは量的緩和に基づく買い入れを続ける方針を示しています。

 しかし、状況によっては、それが前倒しされる可能性もあるということです。また、9月以降をどうするかという点についても、注目が集まっています。

 こうした、ECBの引き締めペースが速まるのではないかという見方が、ユーロ相場を上昇させています。

ユーロ/米ドル 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)

 おそらく、3月に最新の経済見通しが出てきたあと、これらのことが議論されるのではないでしょうか。

■日銀に政策転換の様子はまったくない! そして、日本です。

 日銀が超長期の国債の入札を少し減額したということで、「政策転換か」と市場が大騒ぎして円高になったり、ダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)で黒田日銀総裁が、中期的インフレ率の高まりから、「いよいよ物価上昇率2%の達成時期が迫ってきている」という趣旨の発言をしたことを受け、円高に反応したりする場面もありました。

【参考記事】

●ヘッジファンドの狙いは「日銀トレード」!? ドル/円は戻り売り継続で107円台前半へ…(1月29日、西原宏一&大橋ひろこ)

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 しかし、先日の黒田日銀総裁の予算委員会での答弁を聞いていると、政策転換した様子はまったくなく、むしろ、今後も金融緩和を継続していくという姿勢を鮮明にしていました。

【参考記事】

●日本勢は日銀のテーパリングはまだ先と思っているのになぜ、円は買われるのか?(1月30日、バカラ村)

 ここ数週間、米ドル全面安の展開が続いています。正直言って…
ファンド勢は米ドル安政策への転換を察知 していた!? 今後は神経質な動きに警戒を! ブログ

ファンド勢は米ドル安政策への転換を察知 していた!? 今後は神経質な動きに警戒を!

■米ドルが全面安。目先の懸念材料はなくなったのに… 今週(1月22日~)は、再び米ドルが全面安となっています。

 1月20日(土)から、米政府機関の一部が閉鎖されることになりましたが、22日(月)に米共和党が一歩譲歩したことで成立した米暫定予算案を受けて、ようやく目先の懸念材料がなくなることになりました。

 しかし、市場の米ドル買いでの反応は一時的に終わり、その後は、再び米ドル売りを加速させています。

米ドルVS世界の通貨 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 4時間足)

■トランプ政権が通商問題で強固な姿勢に!? 前回のコラムでもお伝えしているように、今年(2018年)に入ってからというもの、ファンド勢がユーロ/米ドルを中心に、米ドルの売り仕掛けを行ってきています。

【参考記事】

●米ドル/円のさらなる下落は考えにくい! ここからは緩やかな円安に戻っていくか(1月18日、今井雅人)

 ECB(欧州中央銀行)による早期のガイダンス再検討への期待や、メルケル独政権の連立協議の進展など、ユーロ買いにつながる材料も、ユーロ/米ドルの上昇を後押ししています。

ユーロ/米ドル 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)

 また、米ドル/円については、日銀が超長期債を対象にした国債買取りオペを少額、減額させたことをきっかけにした「テーパリング(※)」期待が売りを後押ししました。

(※編集部注:「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 そして、その動きも一巡したかに思われた1月22日(月)、米政府は洗濯機と太陽光パネルにセーフガード(緊急輸入制限)を発動するという措置に出ました。これは、明らかに中国へ圧力をかける動きです。

 市場に、「トランプ政権は通商問題で強固な姿勢を取り始めた」との憶測が台頭したことは否めません。

【参考記事】

●米通商問題が争点となり米ドル安が進む。ドル/円は110円が決壊! 次は105円へ…!?(1月25日、西原宏一)

■ムニューシン発言で米ドル安が加速! そんななか、1月24日(水)の欧州時間に、世界経済フォーラム年次総会、いわゆる「ダボス会議」に出席しているムニューシン米財務長官から、「米ドルはもっとも市場で流動性を備え持っている。短期的な米ドルの水準には全く懸念していない。米ドル安は貿易やさまざまな機会にとって良いことだ」との発言が飛び込んできました。

 「これまでずっと言及してきているとおり」という前置きを添えてはいましたが、市場は一気に米ドルを売り浴びせる反応。米ドル/円は109.50円に設定されていた、まとまったストップロスの売りを巻き込む形で下げ足を速め、一時109.00円を割り込む水準まで売り込まれました。

米ドル/円 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)

 また、ユーロ/米ドルは、一気に1.2415ドルまで急騰する反応となりました。

【参考記事】

●ユーロ/米ドルはまだまだ上昇!?ターゲットは短期的には1.265ドル、ゆくゆくは1.31ドル台!?(1月17日、松田哲)

ユーロ/米ドル 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 1時間足)

 これまで当コラムで何度もお伝えしているとおり、この間も…
米ドル/円のさらなる下落は考えにくい! ここからは緩やかな円安に戻っていくか ブログ

米ドル/円のさらなる下落は考えにくい! ここからは緩やかな円安に戻っていくか

■ユーロの影響が大きかった1週間 ここ1週間は、ユーロ相場が市場全体に大きな影響を与えた週となりました。

 まず、1月11日(木)に公表された、昨年(2017年)12月14日(木)に開催されたECB(欧州中央銀行)理事会の議事録に、「金融政策や政策方針のさまざまな次元に関わる文章(ガイダンス)について、2018年初めに再検討を加える可能性がある」という指摘があったことが明らかになりました。

 これを受けて、金融市場では、金融政策引き締めへの早期転換の可能性が高まったとの見方が広がり、ユーロの上昇が始まりました。

 その後、12日(金)に「ドイツの社会民主党(SPD)がメルケル独首相と連立協議開始で暫定合意した」との報道を受けて、さらにユーロは上昇。

【参考記事】

●ECB議事録と独連立暫定合意でユーロ上昇! ドル売り継続も、IMMのユーロロングに注意(1月15日、西原宏一&大橋ひろこ)

ユーロVS世界の通貨 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロVS世界の通貨 4時間足)

 ユーロ/米ドルは、1.19ドル台前半から1.23ドル台前半まで、400pipsほど急騰しました。17日(水)のアジア時間では、一時1.23233ドルまで値を上げています。

【参考記事】

●ユーロ/米ドルはまだまだ上昇!?ターゲットは短期的には1.265ドル、ゆくゆくは1.31ドル台!(1月17日、松田哲)

●ユーロ/米ドルに1.26ドルまでの上昇余地! 米ドル/円は季節的に上値が重い時期!?(1月16日、バカラ村)

ユーロ/米ドル 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 4時間足)

■ECB、1月は政策ガイダンスの変更を実施せず!? その後は、ECBのコンスタンシオ副総裁をはじめとする、当局者からの相次ぐユーロ高けん制発言を受けて、ユーロは反落しています。

 副総裁は新聞社のインタビューで、最近のユーロ高について問われ、「ファンダメンタルズの動向を反映しない急激な動きについては懸念している」と答えました。また、「ファンダメンタルズを見るとインフレ率は2017年12月に若干低下した。拙速な行動で成長の息の根を止めてはならない」とも発言しています。

ユーロ/米ドル 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 1時間足)

 ECBは、1月25日(木)の定例理事会において金融政策を決めますが、副総裁の発言を見る限り、その場では政策ガイダンス変更の可能性がほぼないことを示唆しているとの見方が広がり、ユーロは急落しました。

 ユーロ/米ドル急騰の動きにつられて、米ドル/円でも…
米金利上昇でも米ドル安になった理由は? 出鼻をくじかれ、しばらく後遺症が残る!? ブログ

米金利上昇でも米ドル安になった理由は? 出鼻をくじかれ、しばらく後遺症が残る!?

■急激な円高! 日銀がテーパリング!? 年初からジリジリと円安に向かっていたのですが、ここ2日間ほど、いくつかの要因で急激な円高が進みました。

世界の通貨VS円 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 1時間足)

 円高の要因のまず1つ目は、日銀のオペレーションです。

 日銀は1月9日(火)の午前10時10分に、国債買い入れオペを通告しました。対象は「残存10年超25年以下(買入予定額1900億円)」、「残存25年超(同800億円)」、「物価連動債(同250億円)」となりました。

 超長期国債の買い入れ額を「残存10年超25年以下」、「残存25年超」で、それぞれ100億円、前回から減額させました。

 この減額を見て、日本人は「特に大した意味はない」と冷静に受け止めていましたが、海外の市場参加者は、「テーパリング(※)開始のサインではないか」とか、「ステルステーパリングではないか」と大騒ぎし、一気に円買いをしてきました。

(※編集部注:「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)

世界の通貨VS円 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 1時間足)

 年初から円売りを積み上げていたので、その投げということだったと思います。

■米金利が上昇したのに米ドル安になったワケは? 2つ目は、中国に関する報道です。

 翌10日(水)の海外市場で、米国の大手通信社ブルームバーグ(Bloomberg)が、「中国政府は米国債の購入の減額や停止を検討している」という内容を、中国政府関係者の話として報じました。

 中国が米国の国債を買わないということになれば、米国債の価格は下落(金利は上昇)し、為替相場では米ドル安要因となります。

 通常、米国の長期金利が上昇すれば米ドル高になるのですが、このケースは逆の関係になるということです。

 海外のファンド勢を中心に、この報道を見て、さらに米ドルを売り込むことになりました。

米長期金利(米10年債利回り) 日足(出所:Bloomberg)

米ドルVS世界の通貨 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 1時間足)

 この2つの報道を受けて、米ドル/円は113円台前半から111円台前半まで、2円ほど円高が進行。その他のクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)でも円高が進みました。

【参考記事】

●米ドル/円、株や米長期金利の上昇に追随できず…。111円割れなら107円台も視野!(1月11日、西原宏一)

米ドル/円 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)

 ところで、日銀のオペレーションに関しては…
為替が緩やかに動き出した! 休暇明けの 投資家が円売りに向かうと考える理由は? ブログ

為替が緩やかに動き出した! 休暇明けの 投資家が円売りに向かうと考える理由は?

■欧米の長期金利上昇で為替相場が動き出した! 先週(12月11日~)は、それまでの動きを引き継いで、クリスマス休暇に向けて、非常に動意の薄い展開が続いてきました。どの通貨ペアも、1日の変動幅が非常に狭くなり、投資家泣かせの状態でした。

 そんな中、今週(12月18日~)に入ってから、欧米の長期金利が上昇したことで、為替相場が反応して、緩やかに動き出すという展開となっています。

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■きっかけはドイツ。ユーロ圏各国で利回り上昇 きっかけは、ドイツ政府が今週(12月18日~)の初めに、来年(2018年)の国債発行額を、償還額が増えるために今年(2017年)より増やす計画を発表したことでした。

 具体的には、ドイツの30年債は160億ユーロ発行する予定で、今年(2017年)の約110億ユーロから、かなり増加します。他の年限(=償還期間)の国債に関しては、今年(2017年)から変化はありませんでした。

 この発表を受けて、ドイツの国債利回りは、30年債利回りを中心に上昇していきました。

ドイツ30年物国債利回り 日足(出所:Bloomberg)

 それと合わせる形で、ユーロ圏各国の、すべての債券利回りが上昇しています。

ユーロ圏主要3カ国の長期金利(10年債利回り) 日足※イタリアの利回りは左軸、ドイツ・フランスの利回りは右軸に表示

(出所:Bloomberg)

■余波は米国にも。米長期金利は2.5%へ この影響は米国にも及んでいます。米国では、米税制改革法案の可決が確実になったことを受けても、米国債利回りの上昇は緩やかなものにとどまっていました。

 しかし、12月19日(火)のNY市場で、11月の米住宅着工件数が1年1カ月ぶりの高水準となったことに加えて、ドイツの長期金利が上昇し始めると、それにつられる形で米国の長期金利も上昇。翌20日(水)には、10年物国債利回りが、一時2.5%に達する展開となっています。

米長期金利(米10年債利回り) 日足(出所:Bloomberg)

 こうした金利の動きに為替市場は素直に反応し…