今井雅人の「どうする? どうなる? 日本経済、世界経済」

ブログ

トランプ大統領が米朝首脳会談中止を発表! 金利から政治リスクを意識する相場へ転換

■米朝首脳会談が中止! 地政学リスクが増す展開に 政治の世界では、一寸先は闇です。
 トランプ米大統領は、6月12日(火)に予定されていた米朝首脳会談を中止することを発表しました。
 北朝鮮側が交渉に応じなくなってきたというのが、1番の理由のようです。
ホワイトハウスは5月24日(木)、トランプ大統領が6月12日(火)に予定されていた米朝首脳会談の中止を通告したと発表。北朝鮮が交渉に応じなくなったというのが原因のようだが… (C) Chip Somodevilla/Getty Images News
 北朝鮮は、南北首脳会談が友好ムードで終わったあと、すぐさま態度を豹変し、米国を非難するような声明を出し始めました。そうしたことも、影響したのでしょう。
 日程と場所まで決定している首脳会談が、直前に中止になるのは、極めて異例です。一説によると、北朝鮮の金委員長が、中国の習国家主席と複数回、会談を行った時点から、北朝鮮側の態度が変わってきたと言われています。
 世界各国の経済制裁が続く中、中国側が経済支援をするとでも約束したのでしょうか。
 いずれにしても、再び地政学リスクが増してきたことは間違いありません。
■政治リスクの顕在化で流れが一気に変化 また、トランプ米大統領は、米国へ輸入する自動車へ、最大25%の関税をかけることについて、検討することを明らかにしています。
 仮に、そうした措置がとられた場合、日本の自動車産業が大打撃を受けることは必至です。
 こうした政治リスクが高まってきたことで、市場は一気にリスクオフになってきています。
 株価は急落し、そして、為替市場では円が全面高になってきています。
NYダウ 日足(出所:Bloomberg)
世界の通貨VS円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 4時間足)
 それまで積み上げてきたトレンドは、一気に崩れ去ってしまいました。
 それまでの米ドル高、あるいは円安の流れは、こうした政治環境が落ち着いていることを前提に形成されていました。
 そのため、政治リスクが再び顕在化してくると、一気に流れが変わってしまうということなのでしょう。
【参考記事】
●113円台も視野に入ってきた米ドル/円だがまだ大きく円高になる可能性も残っている!?(5月17日、今井雅人)
 5月23日(水)に、5月1日(火)~2日(水)に開催された、FOMC(米連邦公開市場委員会)の議事録が発表されました。その中で…
ブログ

113円台も視野に入ってきた米ドル/円だが まだ大きく円高になる可能性も残っている!?

■米ドル高止まらず! ドルインデックスは5カ月ぶり高値 米ドルの上昇が止まりません。
 昨日(5月16日)は、イタリアで連立協議を進めるポピュリズム政党の「五つ星運動」と極右政党の「同盟」が、「ECB(欧州中央銀行)にイタリアの債務2500億ユーロの免除を要請する方針」と報じられたことをきっかけに、ユーロが対米ドルで下落。他の通貨に対しても米ドル高が進みました。
【参考記事】
●イタリア政局の不透明感でユーロ急落! リスクオフ要因多数!? 地政学的リスク警戒(5月17日、西原宏一)
ユーロ/米ドル 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 1時間足)
 主要通貨6通貨バスケットに対するドルインデックスは、一時、約5カ月ぶりとなる水準まで上昇しました。
ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)
■今はまだ、米ドルの高値を試す動きになりそう ただ、米ドル高の大きな背景にあるのは、好調な米国経済です。
 米国の長期金利(10年物国債の利回り)は、とうとう、3%を超える水準になってきています。
米長期金利(米10年債利回り) 日足(出所:Bloomberg)
 来月(6月)には、追加利上げが確実視されている状況です。こうしたことを好感して、米ドルが買われているということです。
 以前のコラムでも申し上げたと思いますが、相場は気まぐれです。
 数カ月前は、逆の反応をしていたにもかかわらず、今は、米国の金利上昇=米ドル高という相関関係になっています。
【参考記事】
●FXレバレッジ規制騒動に、近く結論が? 米金利上昇→ドル高の相関復活の背景とは(4月26日、今井雅人)
 かなり一方的に米ドル高が進んできたため、上昇トレンドが転換する時期もそう遠くないと考えていますが、足元はまだ、米ドルの高値を試す動きになるのではないでしょうか。
■米ドル/円は113円台が視野入り!? 米ドル/円を見ると、節目であった110円で、いったん跳ね返されて落ち着いていましたが、ユーロ/米ドルでの米ドル高につられる形で、110.00円をしっかり上に抜けてきました。
 節目をいったん上に抜けたのですから、市場がさらなる上値を試しにいく可能性は高いと、今のところ考えています。
米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)
 今年(2018年)の年初の高値圏である113円台というのも、視野に入ってきたのではないでしょうか。
【参考記事】
●長期保有の新興国買いは今が仕込み時!? ドル/円は再び110円乗せなら113円だが…(5月10日、今井雅人)
 また、ユーロ/米ドルも、1.15~1.16ドルあたりまでの下落の可能性をみておきたいと思います。
ユーロ/米ドル 日足(出所:Bloomberg)
 その上で、リスクについても考えてみます。まずは…
ブログ

長期保有の新興国買いは今が仕込み時!? ドル/円は再び110円乗せなら113円だが…

■金利と米ドルが一般的な相関関係へ。原因は謎… 為替市場は、年初から3月ぐらいまでの相場とは、まったく違った様相を呈してきています。
 米国の金利上昇が米ドル高をもたらすという、本来の一般的な相関関係に戻ってきているということです。
【参考記事】
●FXレバレッジ規制騒動に、近く結論が? 米金利上昇→ドル高の相関復活の背景とは(4月26日、今井雅人)
米長期金利(右軸)とドルインデックス(左軸) 日足(出所:Bloomberg)
 3月までとは逆の動きになっているわけですが、どうして変わったのか、いまだに謎です。何とか解明したいと考えています。
■長期投資なら新興国通貨は良い仕込み時? さて、最近の米ドル高は、主要通貨に対してばかりではなく、特に、新興国通貨に対しての米ドル高が顕著です。
 新興国は、一般的に海外からの資金を必要としていますが、その調達は、高金利に支えられている面があります。
 ところが、米国の金利が上昇し始めると、相対的に新興国通貨の高金利の魅力が低下するため、新興国から資金が流出します。
 そのために、「米ドル高・新興国通貨安」に転じてしまうのです。
【参考記事】
●デフォルト常習犯のアルゼンチンが緊急利上げ連発で政策金利40%に! 一体なぜ?
 こういう地合いのときは、新興国通貨を安易に買わないことです。
 ただし、長期的な観点で言えば、良い仕込み時とも言えるわけで、ポジションを何年も保有するつもりの投資家は、金額を絞って買い下がっていくのも1つの作戦でしょう。
トルコリラ/円 週足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 週足)

 ただ、短期・中期で売買する方は、新興国通貨の一段の下落リスクを、よく考えておく必要があります。
■FOMCの目標を上回る物価指標に注目! 米国の長期金利(10年物国債の利回り)は、現在、約3%となってきています。
米長期金利(米10年債利回り) 日足(出所:Bloomberg)
 それが今後どうなっていくのか、1番のポイントは物価動向です。
 そういう意味において、5月10日(木)に発表される、米国の消費者物価指数(4月分)に注目が集まります。
 市場予想では、総合指数が前年比で2.5%の上昇、変動の激しいエネルギーや食品を除いたコア指数が、2.2%の上昇となっています。
米消費者物価指数・総合指数の推移※米労働省労働統計局のデータを基にザイFX!が作成
米消費者物価指数・コア指数の推移※米労働省労働統計局のデータを基にザイFX!が作成
 つまり、どちらもFOMC(米連邦公開市場委員会)の目標値である、年率2%を上回っています。
 だからこそ、FOMCが6月に追加利上げを実施するとの観測が広がっているわけです。
 今回の消費者物価指数が市場予想値を上回れば、さらなる利上げ期待とともに、米長期金利の上昇がもたらされ、米ドル高が加速することになるでしょう。注目しておきたいと思います。
 さらに、もう1点、これから注目されているのが…
ブログ

FXレバレッジ規制騒動に、近く結論が? 米金利上昇→ドル高の相関復活の背景とは

■寝耳に水のレバレッジ規制!?  近いうちに結論が…? 今回は、まず、FXの規制の話からしたいと思います。
 報道で、店頭FXのレバレッジを、現行の25倍から10倍にするという話が出ました。投資家にとっても、業界にとっても、寝耳に水ということで衝撃が走りました。
【参考記事】
●FXのレバレッジが25倍→10倍へ引き下げ!? 日経報道は真実? 個人投資家への影響は?
 私もその後、金融庁の方々と意見交換をしています。
 その中で、今回のポイントは、「決済リスクをどう強化するか」ということになってきています。
 FX会社が破綻したり、FX会社がカバー取引をしている金融機関が破綻した場合、投資家の証拠金は信託保全で保護されているものの、残っているポジションの決済ができなくなってしまうリスクはある、という点です。
 そのため、「どういうリスク管理をするべきか」という点がポイントとなります。
 自己資本の強化、ストレステストの強化、レバレッジ規性の強化、カバー先の分散化、精算機関の活用などなどが、テーブルに上がっています。最終的に、どういう結論が出るか、今、金融庁の方でも検討中です。
 これまで、4回にわたる有識者会議も開催し、ある程度の論点整理は終わっているようですが、投資家保護の観点は十分に考慮しながら、投資家の利便性を損なわない方向の対策になるよう、私なりに努力をしています。
 近いうちに、方向性が出てくると思っています。
【参考記事】
●日経は新レバレッジ規制の結論を知ってる!? 「第1回有識者検討会」で話されたこととは?
●有識者から新レバレッジ規制必要なしとの声も!?春に規制ありとした日経新聞は誤報?
●有識者検討会に新メンバー参加もレバレッジ規制強化の声はなく…!?
●風雲急!店頭FX原則禁止論まで飛び出した第4回検討会。レバ規制強化派が優位に!?
■金利と米ドルの関係が、3月までとはまったく違った展開に! さて、相場とは、実に気まぐれなものであります。
 今年(2018年)の年初から3月ぐらいにかけては、米国の長期金利が上昇しても、米ドルは下落するという展開が続いていました。
 私も、米長期金利の上昇を背景に、米ドル高を予想していたのですが、米国の長期金利が上昇しても、米ドルは逆に下落するという展開に苦しめられました。
【参考記事】
●ドル/円と金利の逆相関は解消されない! 円高と米ドル安を加速させる要因とは?(2月15日、今井雅人)
 しかし、ここ最近の相場は、一般的な解説では、米国の長期金利の上昇を背景に、米ドル高が進行しているということになっています。
米長期金利(右軸)とドルインデックス(左軸) 日足(2018年~)(出所:Bloomberg)
 3月までとは、まったく逆の動きになっているということです。
■相場とは時々、矛盾した反応をしてしまうもの 4月20日(金)には、米10年債利回りが、目先の上値メドとして意識されていた2月21日(水)の2.9537%を上抜けて、2.9602%まで上昇。
 そして、週明けの4月23日(月)に、3%へ迫る上昇となると、米ドル/円は1円以上の大幅な上昇を見せました。
米長期金利(米10年債利回り) 日足(出所:Bloomberg)
米ドル/円 日足(出所:Bloomberg)
 相場とは、時々、こうした矛盾した反応をしてしまうものです。
 その背景として1番に挙げられるのは、やはり、ポジション動向…
ブログ

通商問題の影響が出るのはもう少しあと!? 米ドル/円は108円に届かず狭いレンジか

■日米首脳会談が金融市場に与えた影響は、ほとんど無し 今週(4月16日~)、安倍総理が訪米し、17日(火)~18日(水)に日米首脳会談が行われました。
 結論を言うと、金融市場にはほとんど影響が出ていません。
米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

■日本は拉致問題を中心課題にしたかった その背景を見てみます。
 今回の日米首脳会談は、米朝首脳会談が行われるとの報を受け、安倍総理側が慌てて会談を申し入れて実施されたものです。
【参考記事】
●米経済面の最大のリスク要因は貿易政策! ドル/円は崩れれば100円に向かう可能性も(3月22日、今井雅人)
 従って、安倍総理としては、この北朝鮮の問題を、とにかく中心課題にしたいという強い意向があります。
 ところが、核開発などの問題については、米国、韓国、中国に先を越されて、日本は置いてけぼりになっているので、この点を日本側から主張しても、なんのインパクトもありません。
 そうなると、日本として主張したいのは、拉致問題ということになります。
 だから、記者会見では、この点にほとんどの時間を割いています。安倍総理の方から、トランプ米大統領に、会見ではこの点を強調してほしいと頼んだのでしょう。
■トランプ米大統領の関心は通商問題。でも問題は先送りへ しかし、トランプ米大統領の関心は、本当はそこにはありません。彼はビジネスマンであり、通商問題の方が、よほど関心が強いです。
 トランプ米大統領は、会談の冒頭で以下のように述べています。
 「我々はとてつもない対日貿易赤字を抱えている。できれば、均衡を達成したい」
 これが彼の本音です。
 しかし、安倍総理は、今の時点で、この問題を大きくしたくありません。
 米国の通商問題の担当者は、ライトハイザーUSTR(米通商代表部)代表や、クドローNEC(米国家経済会議)委員長です。彼らは、通商交渉において、強硬派で知られています。
 安倍総理にとっては、今後の通商のあり方を議論する協議会のようなものを作りましょうと提案して、これ以上の議論を避けたいというのが本音でしょう。事実、流れはそういう感じになっています。
【参考記事】
●108円を超えるか超えないかが米ドル/円の運命の分かれ道もまだ下落の可能性高い(4月17日、バカラ村)
 つまり、この問題は先送りです。
■日本が名指しで指摘されても、なぜ円高にならなかった? しかし、忘れてはいけません。4月13日(金)に発表された米国の為替報告書で、日本は名指しで「もう少し円高の方が良い」と指摘されています。
【参考記事】
●シリア空爆へのマーケットの反応は限定的。M&Aと原油高で英ポンドに買い妙味アリ!?(4月16日、西原宏一&大橋ひろこ)
 この内容に、市場があまり反応しなかったのは、正直、少し驚きましたが、それで円高リスクがなくなっているわけではありません。
 ある程度、ここまでは想定の範囲内であったので、あまり円高にならなかったのでしょう。
世界の通貨VS円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 4時間足)
 日米の通商交渉は、始まったばかりであるということなので、この問題が金融市場に影響してくるのは、もう少しあとになってからということになりそうです。
 そうした状況の中で、金融市場は非常に静かになってしまって…
ブログ

どんな結果でもシリア問題の影響は一時的! 米ドル/円は当面、上下1円程度の動きかも

■シリア問題は短期的なリスク要因に過ぎない トランプ米大統領は、これまで何度も金融市場の動きに影響を与えるような行動を取ってきましたが、今度は、シリア問題が持ち上がっています。
 トランプ米大統領がツイッターで、フランスなどと共同し、シリアに空爆を仕掛けると公表したことで、金融市場が非常に神経質になっているのです。
 その結果、市場は全体的に、ややリスクオフの流れで、株安、円高になっていますが、今のところ、動きはそれほど大きくはありません。
NYダウ 日足(出所:Bloomberg)
米ドル/円 30分足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 30分足)
 また、こうした中東での地政学リスクを懸念して、原油価格が上昇しています。指標となるWTI原油先物価格(NY原油)は、1バレル=67ドル台まで、一時上昇しました。
NY原油先物 日足(出所:Bloomberg)
 しかし、どういう結果になろうとも、この問題が金融市場に与える影響は一時的なものに終わると考えているので、あくまで短期的なリスク要因であると捉えておきたいと思います。
■新年度入り。でも投資家の様子見気分は続きそう… さて、新年度の4月に入って、もう2週間近くが経過してきました。
【参考記事】
●新年度入りでニューマネーの流入に期待! 米ドル/円はどこまで戻すか慎重に見極め(4月2日、西原宏一&大橋ひろこ)
 例年であれば、新規マネーなどが積極的に金融市場に流れ込んでくるのですが、今年(2018年)は、動きが非常に鈍いです。
 トランプ米大統領が、関税などの政策を打ち出したこともあって、投資家が様子見気分を強めてしまっているということでしょう。
 この状態は、まだしばらく続く可能性が高まってきました。
世界の通貨VS円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
■米国の対中貿易赤字削減は必須課題。先行きは不透明 通商交渉に関しては、米国とカナダとメキシコ間の、いわゆるNAFTA(北米自由貿易協定)の見直し交渉が、かなり進展してきていると、トランプ政権は言っています。韓国とのFTA(自由貿易協定)の内容見直しも、同様です。
 こうした交渉がまとまっていけば、金融市場は落ち着きを取り戻すのかもしれません。
【参考記事】
●膠着相場が続く中、典型的な教科書通りのヘッド&ショルダーを形成した通貨ペア発見(4月10日、バカラ村)
 ただ、問題は、中国と日本です。
 中国は、米国の制裁措置に対抗して、同額程度の対抗措置を準備しました。これから、この交渉が本格化していくでしょう。
 前回のコラムでも紹介したとおり、トランプ米大統領としては、中国との年間40兆円にも及ぶ貿易赤字の削減を実現することは、必須課題です。これから激しい交渉が行われることが、予想されます。先行きは、依然として不透明です。
【参考記事】
●米ドル/円は100円へ?それとも110円へ? 鍵を握るのは米中の貿易摩擦を巡る交渉(4月5日、今井雅人)
 日本も同様です。来週(4月16日~)、17日(火)から18日(水)の…
ブログ

米ドル/円は100円へ?それとも110円へ? 鍵を握るのは米中の貿易摩擦を巡る交渉

■投機筋はほぼノーポジ。その原因となったのは…? 前回のコラムでも紹介しましたが、市場のポジションが急速に縮小しています。
【参考記事】
●本丸は貿易戦争! 北朝鮮リスクの後退は格好のポジション調整材料になっただけ!?(3月29日、今井雅人)
 IMM(国際通貨先物市場)における、投機筋の米ドルに対する円の売り越しポジションは、先々週(3月19日~)に続き、先週(3月26日~)も大幅に縮小。
 3月27日(火)時点の売り越しは、たったの3668枚と、とうとう差し引きのポジションが、ほぼスクエア(ノーポジション)になっています。
IMM(国際通貨先物市場)のポジション状況(米ドル/円)3月27日時点(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
 今年(2018年)に入ってからは、円高傾向が続いていましたが、その間も、投機筋の米ドル/円のロング(=買い)ポジション、つまり、米ドルに対する円の売り越しは、かなり積み上がった状態が続いていました。
米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
 しかし、ここに来て、大きな変化を見せています。
 その原因となっているのが、米国発の貿易摩擦であることは、言うまでもありません。
■米中の貿易摩擦問題が激化! その貿易摩擦に関しては、特に、中国との間で鞘当てが激しくなっています。
【参考記事】
●中国の自業自得で米中全面対決の冷戦へ! リスクオフムードはクロス円で顕著(3月23日、陳満咲杜)
●米中の貿易問題はチキンレースの様相へ! 米ドル安続きそうだが新年度入りには注意(3月27日、バカラ村)
 ご存知のとおり、米国は鉄鋼・アルミニウムへの輸入関税措置について、EU(欧州連合)、メキシコ、カナダ、韓国などを対象国から外しています。
 EUに関しては、これから両者の間で交渉の余地があること、メキシコとカナダに関してはNAFTA(北米自由貿易協定)の見直し、韓国に関しては米韓FTA(自由貿易協定)の内容見直しというカードがあるために、今回は対象外にしたということです。
 しかし、中国と日本に関しては、対米国の貿易黒字額が1位と2位であり、かつ、二国間でのFTAのような枠組みがないために、対象国から外されることはありませんでした。
 そして、中国に対しては、鉄鋼・アルミニウムへの関税に加えて、4月3日(火)には、中国が知的財産権を侵害していることへの制裁の一環として追加関税を課す、およそ1300品目を発表しました。
 航空宇宙や情報通信などのハイテク機器を中心とする制裁対象の候補で、追加関税の対象となる製品の輸入金額は500億ドル(約5兆300億円)におよびます。
 中国は、それに対して4月4日(水)、500億ドル(約5兆300億円)相当の米国からの輸入品に、25%の追加関税を課す計画を発表しました。対象には、大豆、自動車、化学品、飛行機などが含まれています。
【参考記事】
●米経済面の最大のリスク要因は貿易政策! ドル/円は崩れれば100円に向かう可能性も(3月22日、今井雅人)
 しかし、トランプ米大統領は、ツイッターで、「我々は貿易戦争を…
ブログ

本丸は貿易戦争! 北朝鮮リスクの後退は 格好のポジション調整材料になっただけ!?

■過去にあまり見たことがないようなポジションの変化! 先週(3月19日~)から今週(3月26日~)にかけて、為替市場の中で、私が注目した大きな変化がありました。
 それは、IMM(国際通貨先物市場)のポジション動向です。
 今年(2018年)に入ってから、米ドル/円は、ずっと円高傾向で推移してきたにも関わらず、投機筋の米ドル/円のロング(=買い)ポジション、つまり、米ドルに対する円の売り越しは、積み上がったままでした。
 相場の変化の割には、円の売り越しの減少幅が、非常に小さい状況が続いていたのです。
 しかし、先週末(日本時間3月24日)に公表された数字では、米ドル/円のロングポジションが激減していました。
IMM(国際通貨先物市場)のポジション状況(米ドル/円)3月20日時点(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
 1週間で、ここまでポジションが変化したのは、あまり見たことがありません。
■短期間にしては極端だった印象も この背景としては、前回のコラムで紹介したように、米国の貿易政策に対する懸念があります。
【参考記事】
●米経済面の最大のリスク要因は貿易政策! ドル/円は崩れれば100円に向かう可能性も(3月22日、今井雅人)
 そして、そのことによって、米ドル/円が、1つの節目として意識されていた1ドル=105.00円を割り込んだことも、大きかったと思います。
 その結果、米ドル/円のロングの投げ売りだけではなく、短期的にショート(=売り)にする投機筋も、かなり増えました。
米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
 私も、個人的に、これは短期間にしては極端だなという印象で、多少、逆戻りする可能性はあると感じていました。
■北朝鮮の動きがショートカバーの格好の材料に そこに、中国の習近平国家主席と、北朝鮮の金委員長が会談したというニュースが飛び込んできました。
 さらには、6月初旬にも、日朝首脳会談が開かれるかもしれないという報道も出てきています。
 米ドル/円は、ちょうど下方向に大きく傾いたときに、こうしたニュースが出てきたために、ショートカバーの格好の材料にされたというのが実態ではないかと思います。
米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)
 北朝鮮問題に関しては、平昌オリンピックをきっかけに…
ブログ

米経済面の最大のリスク要因は貿易政策! ドル/円は崩れれば100円に向かう可能性も

■FOMCは来年以降の利上げペース加速を示唆 3月20日(火)~21日(水)に、米国でFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催され、政策金利であるFF(フェデラル・ファンド)レートを0.25%引き上げて1.50~1.75%のレンジにすることが決定されました。
※FRBのデータを基にザイFX!が作成
 その上で、今年(2018年)の利上げに関しては、今回を含めて3回という姿勢を維持しました。
 一方、2019年末、2020年末の予想金利の軌道(中央値)に関しては、傾斜を強めました。つまり、利上げのスピードを従来より速いものにするという姿勢を示しました。
2018年3月FOMCで示されたドットチャート(出所:FRB)
■パウエル議長が中立的な立場を強調して米ドル安に 今回の利上げそのものは、予想の範囲内であったため、市場への影響はありませんでした。
 しかし、今年(2018年)の利上げペースが変わらないという点を材料に、米ドルを売り込む動きが最初に見られ、その後、今度は、2019年以降に利上げペースが速まるという点を見て、米ドルを買い戻す動きも見られました。
 最終的には、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が、その後の定例記者会見で、利上げに対して「中立的立場にいる」などと発言し、それほど積極的な姿勢を見せなかったことから、米ドルは軟調に推移しています。
米ドルVS世界の通貨 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 1時間足)
 米長期金利も、同様の動きとなりました。
■米経済の最大のリスク要因は「貿易政策」 結果的には、FOMCの決定そのものは、市場に大きな影響を与えることはありませんでした。
 しかし、会見の中で、パウエルFRB議長が、「トランプ米大統領の貿易政策についての懸念を表明」していることに、私は注目しています。
 やはり、これからの米国にとって、経済面での最大のリスク要因は、トランプ米大統領の進めようとしている「貿易政策」だということです。
【参考記事】
●米ドル/円は100円も視野! 強硬姿勢のトランプ米大統領。暴走は止められない?(3月8日、今井雅人)
●森友問題くすぶり、アベグジットの思惑も…。ただ、市場の最大のテーマは貿易戦争!(3月20日、バカラ村)
 こうした懸念は、まだ、はっきりと顕在化しているわけではありませんが、株式市場の動きを見ても、米ドル相場を見ても、市場関係者が非常に警戒していることは、よくわかります。
 トランプ米大統領が関税に対して、いつ具体的な内容を発表するのか、まだ不透明です。発表の時期が見えないだけに、市場には、ずっと懸念が蔓延してしまっています。
 日本に関していえば、来月(4月)、安倍総理が急遽…
ブログ

円売り回避の背景にある3つのリスクとは? 米ドル/円は107円前後になれば戻り売りで

■先進国の金融政策は今後も話題に 今年(2018年)に入って、米国を中心に、先進国の中で金融緩和からの脱却が始まるのでないかという観測から株価が急落する局面がありました。
NYダウ 日足(出所:Bloomberg)
日経平均 日足(出所:Bloomberg)
 こうした懸念が、今後、しばしば話題にされる可能性があるので、まずは、そのことを頭に入れておく必要があるでしょう。
■金融市場に影響を与えかねない3つのリスク それに加えて、金融市場に影響を与えかねないリスクが3つあります。
 まず1つ目は、国内の政局です。
 森友学園関連の決裁書改ざん問題で、今国会は大荒れになっています。
 政治家の関与があったのかどうかは依然、不明のままです。しかし、財務省が意図的に公文書を改ざんしたというのは、紛れもない事実です。
 ここ数年、民間企業でデータの改ざん等の不祥事が噴出してきました。それに対して、こうした不祥事を起こした企業のほとんどの社長は、辞任するという形で責任をとっています。
 また、かつて「ノーパンしゃぶしゃぶ」で有名になった大蔵省接待汚職事件でも、当時の三塚大蔵大臣が辞任しました。こうしたレベル感で考えると、麻生財務大臣の辞任は、避けられない事態になる可能性は高いと思っています。
■安倍政権が倒れることがあれば株安・円高 この事案に関しては、安倍総理夫人の関与などが焦点になっていけば、安倍総理の責任問題にもつながる可能性がありますが、たとえそうでなくても、状況は厳しいです。
 麻生大臣が、仮に辞任する事態になると、安倍政権は求心力を大きく失う可能性があります。
 周知のとおり、今年、2018年の秋(9月)には、自民党の総裁選挙があります。
 求心力を失った安倍政権に対して、自民党内で政局になったとしても、少しも不思議ではありません。
麻生財務相が辞任するような事態になれば安倍政権は求心力を失いかねず、9月の自民党総裁選に影響が出る可能性も… (C)Bloomberg/Getty Images
 万が一、安倍政権が倒れるようなことがあれば、金融市場に対しては、一時的にマイナスの影響が出て、株価は下落し、円高になるでしょう。
(出所:Bloomberg)
米ドル/円 月足(出所:Bloomberg)
 2つ目は、北朝鮮問題です。米朝首脳会談を行うという電撃的…