今井雅人の「どうする? どうなる? 日本経済、世界経済」

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米ドル/円は110~112円のレンジトレードで。 リスクオフ回避でも楽観できない理由は?

■金融市場の停滞はさらに長引くかも… 金融市場の方は、相変わらず、方向感のない停滞した動きを続けています。
米ドルVS世界の通貨 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 日足)
世界の通貨VS円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
 こうした流れは、当面、続くと話をしてきましたが、さらに長引きそうな気配です。
【参考記事】
●米中貿易交渉の合意期待でリスクオンだがドル/円は右往左往!? 狙いはユーロ/ドル!(4月5日、今井雅人)
 世界的な景気後退懸念から、リスクオフの動きが起きる可能性も、以前のコラムで指摘しましたが、それも今のところ、回避できそうなムードとなってきました。それは、以下の3つのことが要因でしょう。
【参考記事】
●ハト派は米国だけじゃない! 米ドル安より円高を警戒。ユーロ/円の売り戦略を検討へ(3月28日、今井雅人)
■米中通商交渉は合意間近! まず、1点目は、米中通商交渉の行方についてです。
 現在、閣僚級協議が終わったあとも、実務者会議が断続的に行われていますが、どうやらかなり、合意に近づきつつあるようです。
 トランプ米大統領も「もう少しで合意できるところまで来ている」と発言していますが、中国の習近平国家主席も、同様の発言をしています。
【参考記事】
●米中貿易交渉の合意期待でリスクオンだがドル/円は右往左往!? 狙いはユーロ/ドル!(4月5日、今井雅人)
 こうした動きの背景には、昨年(2018年)の秋口から、中国経済が大きく減速したことがあります。
現在、実務者会議が断続的に行われている米中通商交渉は、かなり合意に近づきつつあるようだ。2018年の秋口から中国経済が大きく減速したことも、局面が大きく変わってきている背景にあると今井氏は指摘している。写真は2017年11月の米中首脳会談時のもの (C)Bloomberg/Getty Images
 中国側も、最初は米国と全面戦争の構えを見せていましたが、今の時点で米国と真正面から対立するのは、中国側にとって、よりダメージが大きいと判断したようで、そこから局面が大きく変ってきているのだと思います。
 トランプ米大統領のことですから、最後まで、その行方が分からないという一抹の不安は残りますが、今回は、合意する可能性が、かなり高いと考えています。
■中国発の経済危機リスクは後退へ 2点目は、中国の景気対策です。
 先日(3月5日~)の全人代(全国人民代表大会)において、中国政府は2兆元、日本円にして約35兆円程度の景気対策を講じることを決定しました。内容は、企業の税負担と社会保険料負担を軽減するというものです。
 リーマンショックのときは、40兆円以上の景気対策を講じましたが、多くは公共事業でした。しかし、今回は、企業への負担を軽減するという対策で、公共事業依存の対策よりは、より効果のある対策だと思っています。
 これが、中国経済の下支え要因になってくる可能性は、十分にあります。ですから、中国発の経済危機というリスクも、かなり遠のいたのではないかと考えています。
 3点目は…
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米中貿易交渉の合意期待でリスクオンだが ドル/円は右往左往!? 狙いはユーロ/ドル!

■米中貿易交渉の合意は近い! ここ数日の間に、今年(2019年)の前半における、最大の注目材料である米中貿易交渉に進展が見られました。
 現在、行われている閣僚級協議において、大きな進展が見られたことを、トランプ米大統領が明らかにしました。
 その後、習近平・中国国家主席も、同様の見方を示しています。
今年前半の最注目材料となる米中貿易交渉は、閣僚級協議で大きな進展が見られた模様。ようやくメドがたってきたというのが今井氏の見解。写真は2017年11月の米中首脳会談時のもの (C)Bloomberg/Getty Images
 これまで、何度となく暗礁に乗り上げてきた米中貿易交渉ですが、ようやくメドがたってきた様子です。
 米朝の非核化に向けた交渉が、最終段階でうまくいかなかったことも最近あったので、まだ、完全に楽観視することはできませんが、それよりは、今回の交渉がうまくいく可能性は、遥かに高いのではないかと考えています。
 中国側も、中国経済への影響が非常に大きいということを理解しているので、今回は、米国との全面対決は避けたいという意向でしょう。おそらく、近いうちに合意がなされることが期待されます。
■株式市場は当面、堅調に推移か そうなってくると、金融市場において一番好感するのは、各国の株式市場ではないでしょうか。
 事実、ここ数日、各国の株式市場は、米中の合意を先読みして上昇傾向にあります。
NYダウ 日足(出所:Bloomberg)
日経平均 日足(出所:Bloomberg)
 長期的なトレンドになるとまでは考えていませんが、当面の間、株式市場は堅調を維持するのではないかと思います。
■市場の雰囲気が一変し、リスクオンの円安へ 株式市場が堅調に推移するということは、為替市場にも影響を与えます。
 一般的に言って、株価が不安定なときは、どうしてもリスクオフの流れから円高になりやすいというのは、過去からの経験則。逆に、株価が安定してくるとリスクオンの流れから、円安方向に向かいやすくなります。
世界の通貨VS円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
 これまで、株価が不安定になる可能性があったので、円高方向に警戒をしていましたが、最大の懸念材料であった米中貿易摩擦問題が決着するとなれば、市場の雰囲気もがらりと変わってきます。
 市場に対する見方を変える必要が出てきたと考えています。
 そうは言っても…
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ハト派は米国だけじゃない! 米ドル安より 円高を警戒。ユーロ/円の売り戦略を検討へ

■ハト派なのは米国だけではない! 前回のコラムで、FOMC(米連邦公開市場委員会)での金融引き締めから中立への政策変更を受けて、一時的に米ドル安になっていることに対し、「米国だけがハト派的な政策になっているわけではなく、その他の主要国でも事情は同じ」という話をしました。
【参考記事】
●超ハト派でサプライズを与えたFOMC! 政策金利見通し下方修正。米ドル/円は…!?(3月22日、今井雅人)
 その後の1週間の流れを見てみると、まさに、米国以外の国においても、金融政策のスタンスが変ってくるという展開になってきています。
■ECBは金融緩和のスタンスを変更!? まず、3月22日(金)のロンドン市場では、ドイツ、フランスおよびユーロ圏の3月製造業PMI(購買担当者景気指数)・速報値が、いずれも予想以上に落ち込んだことを受けて、ユーロ圏に金利低下圧力がかかり、その影響でユーロも下落しました。
ユーロ/米ドル 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 4時間足)
ユーロ/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 4時間足)
 こうした結果を受けて、ECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁は、「必要なら利上げをさらに遅らせる用意がある」と発言しています。この発言は、実質的な金融緩和へのスタンス変更とも、取れなくはありません。
【参考記事】
●超ハト派FOMCでも株価頭打ち。景気後退? 円高傾向だが、特にユーロ/円は戻り売りか(3月26日、バカラ村)
●ドイツ発の世界景気減速懸念から株価急落! 米国債は「逆イールド」で景気後退の前兆か(3月25日、西原宏一&大橋ひろこ)
■RBNZも政策スタンスを180度、転換! また、3月27日(水)には、RBNZ(ニュージーランド準備銀行[ニュージーランドの中央銀行])が、「景気見通しの下振れリスクが増したため、次の政策変更は利下げの可能性が高い」との見方を示しました。
 これまで、RBNZは、次回の動きはどちらかというと利上げ方向との見方を示していたので、180度、方向転換をしたということになります。
NZドル/米ドル 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:NZドル/米ドル 1時間足)
NZドル/円 1時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:NZドル/円 1時間足)
 実は、ニュージーランドに先行する形で、オーストラリアでも先月(2月)6日(水)、RBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])のロウ総裁が「次の動きが上下方向どちらにもなる可能性がある」ことを示唆し、長く続いてきた引き締めバイアスから転換しています。
 このように、現在は、世界経済全体が…
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超ハト派でサプライズを与えたFOMC! 政策金利見通し下方修正。米ドル/円は…!?

■3月FOMCでは、政策金利見通しを下方修正 今週(3月18日~)は、東京市場が21日(木)に春分の日で休場となりましたが、米国では3月19日(火)~20日(水)にFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催されました。
 日本時間3月21日(木)午前3時に、FOMCが「声明文」と「経済・金利見通し」を公表しましたが、市場にはかなりのサプライズを与えることになったようです。
写真はFRBのパウエル議長。今井氏は、かなりのハト派だった3月FOMCの内容は、市場にサプライズを与えたという (C)Bloomberg/Getty Images News
 声明文では、「1月会合以降に得られた情報によると、労働市場は依然として堅調だが、経済活動は第4四半期の堅調なペースから減速した」との見解を表明。
 労働市場に対しては、「ここ数カ月の平均雇用者数は増加しており、失業率は低いまま」であるとしたものの、「最近の指標は、第1四半期の家計支出と設備投資の伸びが鈍化していることを示唆」と警戒を示しました。
 また、インフレについては、「前年同月比で見ると、全体のインフレ率はおもにエネルギー価格の下落で低下している」としたほか、「食料とエネルギー以外のインフレ率は2%近くにとどまっている。将来のインフレを示す市場ベースの指標はここ数カ月低いままであり、調査に基づいた長期的なインフレ期待の指標は、あまり変わっていない」と慎重な姿勢を表明しました。
 また、「経済・金利見通し」では、FOMCメンバー全員のFF金利(※)見通しとして市場の注目となっていた「ドットチャート」において、2019年末の中央値が前回調査の2回の利上げからゼロの水準に下方修正されました。
(※編集部注:「FF金利」とは、フェデラルファンド金利のことで、FFレートとも呼ばれる。米国の政策金利)
【参考記事】
●利上げ方針変更のFOMCで米ドル全面安! でも、米ドル安は長く続かないかも…?(1月31日、今井雅人)
3月FOMCで公表されたドットチャート(出所:FRB)
 さらに、満期保有債券の再投資額を減額するプログラムを、5月から9月にかけて徐々に終了させることも決定しました。
 1月のFOMCでは…
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EU離脱期限の延期が可決されない可能性!? 基本戦略は対円・対ユーロでの米ドル買い

■混迷を深めるブレグジット問題… この1週間で、英国のEU離脱(ブレグジット)問題は、益々、混迷を深めています。
 英国政府は3月13日(水)、英国議会の審議に提出する「EU離脱の延期に関する動議案」を明らかにしました。
 英国議会が、EU(欧州連合)首脳会議の前日、3月20日(水)までに、英国・EUでまとめた離脱案を承認した場合には、6月30日(日)までの一時的な延長をEUに申し出ることになります。
【参考記事】
●英ポンドの運命を握る3日間! 採決次第で方向性が決まる!? 米ドル/円は当面底堅そう(3月11日、西原宏一&大橋ひろこ)
●英離脱修正案の採決にサプライズはある? 結果次第で英ポンドのポジティブ要因に!?(3月12日、バカラ村)
 しかし、これも可決されない可能性が、十分あります。その場合は、今後どうなっていくのか、まったくメドが立たない状況となってしまいます。
英下院では3月12日(火)に離脱協定案、翌13日(水)に合意なき離脱の是非を問う採決がいずれも否決された。14日(木)には離脱日の延期を問う採決が予定されているが、今井さんは可決されない可能性は十分にあり、まったくメドが立たない状況だと指摘する。写真はメイ英首相 (C)Matt Cardy/Getty Images News
■市場にも疲労感。以前よりも影響は弱まった 一方、英国議会は3月13日(水)、英国が「EUと合意なく離脱することに反対する動議」を可決しました。
 また、EU残留派は、国民投票の再実施に持ち込みたいと、虎視眈々とチャンスを狙っています。
 この問題の先行きは、依然として、まったくわからないとしか言いようがない状況に陥っています。
【参考記事】
●EU離脱を巡る再国民投票の可能性浮上! 英ポンド/円は節目の150円突破も視野に!?(2月28日、西原宏一)
 しかし、この問題に関しては、あまりにも長い泥仕合が続いているために、市場にも疲労感が見えてきており、反応が鈍くなってきました。
 もちろん、今後も市場の材料となるでしょうが、その影響は以前より、弱まったとみておきたいと思います。
英ポンド/米ドル 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 日足)
英ポンド/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/円 日足)
■しばらく、レンジ相場からの脱却は困難かも… さて、それ以外の材料や市場の動向に目を向けてみます。
 米中貿易交渉の行方も、現在は、両国での実務者会議の最中であるので、今のところ、大きな影響が出る様子はありません。
 そういうこともあり、直近の1週間は、株式市場、為替市場ともに、方向感の出ないジグザグの相場展開となっています。
米ドルVS世界の通貨 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 4時間足)
NYダウ 日足(出所:Bloomberg)
 もうしばらくは、このレンジ相場の中から抜け出すことは難しいと思います。
 そう考える理由は、最近の相場は…
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米ドル/円は2018年と非常に似ている動き! 近いうちに112~114円のレンジ入りか?

■材料難で金利差が効いてくる展開へ 米中貿易交渉も期限が延長され、その影響で、日米貿易交渉もかなり、後ずれしそうな気配となってきました。
 注目された英国のEU(欧州連合)離脱問題も、先送りとなる可能性が、非常に濃くなってきました。
 市場のかく乱要因が、当面、先送りになったことで、相場を動かす変動要因が目先、見当たらなくなってきています。
【参考記事】
●いくつもの不確定要因に変化! 緩やかな株高・円安へ。米ドル/円は買い方針継続!(2月28日、今井雅人)
 こうなると、なかなか相場は動きづらいです。こういうときは、金利差が効いてくるというのは、これまで何度も紹介してきました。おそらく今回も、そういう展開になってくるでしょう。
【参考記事】
●ドル堅調でも米ドル/円はエネルギー不足。金利狙いのトルコリラ買いチャンスが到来!?(2月7日、今井雅人)
●利上げ方針変更のFOMCで米ドル全面安! でも、米ドル安は長く続かないかも…?(1月31日、今井雅人)
●米ドル/円は短期的に買われ過ぎている! でも、当面は米ドル高。押し目買い方針で(2018年10月4日、今井雅人)
■ECB理事会のポイントは? 一応の注目材料としては、3月7日(木)のECB(欧州中央銀行)理事会と、8日(金)のパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の講演あたりでしょう。
 現在、EU諸国の景気状況も、やや低迷してきています。ECB理事会において、それに対する懸念が強く示された場合、ユーロはさらに、売られる可能性が出てくるでしょう。
【参考記事】
●米ドル/円は強い! 調整しても大崩れ回避!? ECB理事会でTLTROの導入はあるのか?(3月5日、バカラ村)
ユーロVS世界の通貨 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロVS世界の通貨 日足)
 パウエルFRB議長の講演に関しては、最近、「政策金利の調整には辛抱強く様子見」などの発言が、何度も取り上げられていることから、何か新たな内容が出てくるとは考えづらく、相場への影響はそれほどないだろうと思っています。
米ドルVS世界の通貨 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 日足)
■2018年の米ドル/円相場に手がかりが!? そんな材料難の状況であるため、今回のコラムでは、米ドル/円相場に関して、昨年(2018年)の動きと比べて、今後の展開を考えてみたいと思います。
 まず、昨年(2018年)の米ドル/円相場を振り返ってみましょう。
米ドル/円 日足(2018年)(出所:Bloomberg)
 年初、113円台で始まった米ドル/円ですが、その後は特に大きな材料もない中、円高傾向が鮮明となり、3月には104円台まで、米ドル安・円高が進みました。
 しかし、その後、相場は反転し、米ドル高・円安基調が始まりました。
 そもそも、なぜ最初に円高になったのか、明確な理由もなかったので、その反動が起きたということであったと思います。
 反転を始めた米ドル/円は、その後、多少の…
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いくつもの不確定要因に変化! 緩やかな 株高・円安へ。米ドル/円は買い方針継続!

■若干、円安傾向にも見えるが… 世界の主要な金融市場は、相変わらず、方向感のない、動きの鈍い展開が続いています。方向を決定するような材料が、見当たらないことが原因です。
 米ドル相場も、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)相場も、レンジの中に入り込んでいます。
米ドルVS世界の通貨 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 日足)
世界の通貨VS円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 日足)
 あえて言えば、若干は、全体的に円安傾向にあるようにも見えますが、それもレンジの範囲内での動きであると言うことが、できると思います。
■不確定要因に変化が! こうした状況の中で、いくつかの不確定要因に市場は注目しているとお伝えしてきましたが、この1週間で、それらについて、いくつか変化が見られてきました。
 まず最初に、現在、行われている米中貿易交渉です。
 トランプ米大統領だけではなく、交渉の当時者であるUSTR(米通商代表部)からも、かなりの進展が見られるというコメントが出てきました。中国側からも、同様の発言が出てきています。
 この交渉の期限は、もともと3月1日(金)でしたが、交渉が進ちょくしていることを受けて、期限が延長されました。
 おそらく、何らかの合意がなされる可能性が、高くなってきました。
米中貿易交渉の期限が延長され、何らかの合意がなされる可能性が高くなってきた。中国経済が壊滅的なダメージを受けるという懸念は後退しているようだ。写真は2017年11月の米中首脳会談時のもの (C)Bloomberg/Getty Images
 現在、中国経済が大きく減速してきて、米中貿易交渉が決裂すると、中国経済は壊滅的な打撃を受けるのではないかという懸念が広がっていましたが、その懸念が大きく後退してきています。
【参考記事】
●一時111円台に乗せたドル/円は、なぜ失速? 新材料が出るまで米ドルの押し目買い継続(2月15日、今井雅人)
●米中協議進展でリスク環境は徐々に好転。中国人民元安定化が豪ドル反発を後押し!?(2月21日、西原宏一)
■英離脱期限は6月末まで延長も また、もう1つの懸念材料である、英国のEU(欧州連合)からの離脱問題ですが、こちらは、英国とEUの合意がなかなか進まず、先行きが不安視されていました。
 しかし、双方から、期限である3月末を、延期しても良いというニュアンスの発言が出てきました。
 メイ英首相は、延期は1回限りであるが、最大で6月末まで引き延ばされる可能性があると、発言しています。
これまで、離脱期限の延長に否定的だったメイ英首相も、ここにきて、最大6月末まで引き延ばす可能性を示唆。問題自体は何も解決していないが、当面、この問題で相場が大きく動くと言う可能性は、ほぼなくなってきたというのが今井さんの考え (C)Matt Cardy/Getty Images News
 問題そのものは、何も解決していないのですが、少なくとも当面は、この問題で相場が大きく動くと言う可能性は、ほぼなくなってきました。
 3月12日(火)までに、離脱案が英国議会で承認されなければ、「合意なき離脱(※)」か「短期の離脱期限延長」かを問う採決が行われることになっています。
(※編集部注:「合意なき離脱」とは、2年間の交渉で合意に至らず、何の取り決めもないまま、英国がEUを離脱すること)
【参考記事】
●一時111円台に乗せたドル/円は、なぜ失速? 新材料が出るまで米ドルの押し目買い継続(2月15日、今井雅人)
●膠着する米ドル/円。FRB議長の議会証言で円高の可能性!? ユーロ/英ポンドに妙味が!?(2月26日、バカラ村)
 さらに、昨日(2月27日)から、二度目の米朝首脳会談が…
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米ドルの押し目買いの水準は、どの辺り? トランプ大統領が5月に来日する目的とは?

■材料乏しく、鈍い展開が継続か… 前回のコラムから1週間が経ちましたが、市場を取り巻く環境は、まったく変っていません。
【参考記事】
●一時111円台に乗せたドル/円は、なぜ失速? 新材料が出るまで米ドルの押し目買い継続(2月15日、今井雅人)
 基本的に、方向感のないレンジ相場になってきており、市場関係者は、新しい材料が出てくるのをじっと待っているという状態です。
米ドルVS世界の通貨 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 日足)
 しかし、現在、想定されている材料の中には、今月(2月)中に新しい動きが出てくるようなものは正直、見当たりません。そのため、今、想定されていないようなことが突発的に出てこない限り、今週(2月18日~)から来週(2月25日~)にかけても、今のような動きの鈍い展開が続く可能性が極めて高いと考えています。
■ユーロ/米ドルは1.14ドル台への上昇待ち そういう状況であるので、私自身も、前回のコラムでご紹介したような、米ドルの押し目買い方針で取引を続けています。
【参考記事】
●一時111円台に乗せたドル/円は、なぜ失速? 新材料が出るまで米ドルの押し目買い継続(2月15日、今井雅人)
 ただ、押し目の水準をどこにとるかは、よく考えなければなりません。
 たとえば、ユーロ/米ドルでいえば、ここのところ、1.12ドル台から1.15ドル台のレンジだったわけで、1.13ドル台とか、そういう中途半端な水準でユーロ売り・米ドル買い(ユーロ/米ドルの売り)をすると、その後、反対方向に行って、しばらく苦しむ可能性も出てきます。
 そのため、現在の水準では、ユーロ/米ドルには手を出していません。もし、1.14ドル台に上昇してきた場合は、売りのチャンスを狙いたいと思っています。
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■米ドル/円は110円台前半を拾いたい 一方、米ドル/円ですが、これはいったん、下から110.00円を上に抜けたあとは、下値がしっかりしてきています。
 かといって、111円台を超えて、112円に向かうというほどのエネルギーは感じません。狭いレンジの中で、110円台前半を上手く拾って、111円台になったら利益確定するという程度の取引をするしかないと考えています。
米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
 そのとき、相場は膠着してしまっても、金利差でスワップポイントが稼げるので、焦らず、じっと持つことができます。
【参考記事】
●ドル堅調でも米ドル/円はエネルギー不足。金利狙いのトルコリラ買いチャンスが到来!?(2月7日、今井雅人)
●米ドル/円は110円あたりが当面の上限か!? 落ち着いた相場で取るべき投資戦略は…?(1月18日、今井雅人)
 そのほかの通貨ですが…
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一時111円台に乗せたドル/円は、なぜ失速? 新材料が出るまで米ドルの押し目買い継続

■見通し変わらず。予想どおりの米ドル高へ 前回のコラムまでにご紹介した見通しに関しては、今週(2月11日~)も、特に変っていません。
 FOMC(米連邦公開市場委員会)の影響を短期的に吸収したあとは、結局は、やや米ドル高の展開が続いています。
米ドルVS世界の通貨 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 日足)
 その背景について、もう一度考えてみたいと思います。
【参考記事】
●ドル堅調でも米ドル/円はエネルギー不足。金利狙いのトルコリラ買いチャンスが到来!?(2月7日、今井雅人)
●利上げ方針変更のFOMCで米ドル全面安! でも、米ドル安は長く続かないかも…?(1月31日、今井雅人)
●今の米ドル/円は下落しにくい状況にある!? 注目材料は3つ。米中合意なら円安ドル高へ(1月24日、今井雅人)
■市場の注目は金利差の絶対水準 FOMCの声明文を読むと、これまでと比べれば、確かにハト派に向いた内容ではあったものの、今後、金融緩和に転換するということではなく、あくまでも、今後の政策については、経済状況を見ながら柔軟に行うというものでした。
【参考記事】
●利上げ方針変更のFOMCで米ドル全面安! でも、米ドル安は長く続かないかも…?(1月31日、今井雅人)
 為替相場は、「金利差の変化」が発生している状態では、その変化に敏感に反応して値動きが大きくなり、投資家もそれに合わせた行動を取ります。
 しかし、それも永遠に続くわけではなく、いったん、それが収まって相場が膠着してくると、今度は一転して「金利差の絶対水準」に注目が集まるようになることが多いです。
※日本の政策金利は短期政策金利の値を掲載
※FRB、各国の中央銀行のデータを基にザイFX!が作成
 今回も、そういうケースです。
■なぜ米ドルの下落は一時的だった? 確かに、米国の中央銀行(FRB)は、自国の経済の状況を懸念して、金融政策の変更に柔軟な姿勢を見せました。
 しかし、それは米国に限ったことではありません。
 EU(欧州連合)諸国、中国をはじめ、全世界的に景気拡大が減速しています。
 OECD(経済協力開発機構)、IMF(国際通貨基金)、世界銀行だけではなく、金融機関やエコノミストのほとんどが、今後の世界経済の見通しに対して下方修正をしています。
OECD・IMF・世界銀行の世界経済見通し(2018年~2020年)※OECDは2018年11月時点のデータを参照
※IMFは2019年1月改訂見通しのデータを参照
※世界銀行は2019年1月予測を参照
※各機関の公表データをもとにザイFX!が作成
 為替相場は、2つの国の通貨の交換レートであるので、相対的にどうかという点が反映されます。そのことで、米ドルだけに下落圧力がかかるわけではありません。
 こうした、いくつもの背景があるということです。ですから、一時的に売られた米ドルも、結局、買い戻されるということになりました。
 しかし、金利相場というのは…
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ドル堅調でも米ドル/円はエネルギー不足。 金利狙いのトルコリラ買いチャンスが到来!?

■予想どおり、FOMCの影響は一時的 前回のコラムで、「FOMC(米連邦公開市場委員会)において、これまで継続してきた利上げを、いったん停止する可能性を示唆した影響は一時的なものに終わり、その後は結局、金利差が効いてきて、米ドル高に戻っていくのではないか」という見通しを示しました。
【参考記事】
●利上げ方針変更のFOMCで米ドル全面安! でも、米ドル安は長く続かないかも…?(1月31日、今井雅人)
 やはり、予想どおりの動きとなっています。
米ドルVS世界の通貨 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 4時間足)
■市場が落ち着いているときは「金利差」 その上で、前回お話ししたセオリーを、もう一度、紹介します。
 「市場が他の要因で動いているときは、金利差は無視されることもあるが、いったん材料難となってくると、金利差が効いてくる」ということです。
※日本の政策金利は短期政策金利の値を掲載
※FRB、各国の中央銀行のデータを基にザイFX!が作成
 この原則は、よく考えてみれば当たり前です。
 通常の取引をしている人たちは、相場が大きく動いているときは、その値幅をうまく使って、利益を上げようとする動きがメインとなってきます。
 しかし、いったん市場の動きが鈍ってくると、今度は一転して、金利を稼ぐという手法に切り替える人が増えてくるからです。
 また、中長期の投資家は、金利で稼ぐことを主軸に投資戦略を考えるのが基本ですが、相場の変動幅が大きいときは、どうしても様子見をしようというスタンスになりがちです。
 ただ、いったん相場が落ち着いてくると、再び、金利差を狙った投資を開始することが多いです。
【参考記事】
●利上げ方針変更のFOMCで米ドル全面安! でも、米ドル安は長く続かないかも…?(1月31日、今井雅人)
●今の米ドル/円は下落しにくい状況にある!? 注目材料は3つ。米中合意なら円安ドル高へ(1月24日、今井雅人)
●米ドル/円は110円あたりが当面の上限か!? 落ち着いた相場で取るべき投資戦略は…?(1月18日、今井雅人)
■米ドルの堅調さが続くための条件とは? このような傾向があるため、相場が膠着してくると、金利差が効いてきてしまうのです。
 逆に言えば、また他の要因が出てくると、金利差は無視される展開になってくるということですが、それまでは、金利差を背景にした米ドルの堅調は続くことになるでしょう。
米ドルVS世界の通貨 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 日足)
■米中貿易交渉やBrexitには注意 それでは、今後、他の要素になりうる材料は何でしょうか。
 それは、前回までも紹介しているように、今のところ、3月1日(金)が期限の「米中貿易交渉」の行方や、3月29日(金)を期限としている「Brexit(英国のEU離脱)」の行方ということになってきます。
 これらの動向を、よく見ておかなければいけませんが、それまでは、米ドル買い中心の戦略を基本としておけば問題ないと考えています。
【参考記事】
●利上げ方針変更のFOMCで米ドル全面安! でも、米ドル安は長く続かないかも…?(1月31日、今井雅人)
●今の米ドル/円は下落しにくい状況にある!? 注目材料は3つ。米中合意なら円安ドル高へ(1月24日、今井雅人)
●米ドル/円は110円あたりが当面の上限か!? 落ち着いた相場で取るべき投資戦略は…?(1月18日、今井雅人)
●2019年は米ドル高にも円安にもなりにくい。米ドル/円は100円割れまで下落の可能性!(1月11日、今井雅人)
 ただし、一方的に米ドル高が進むかと言えば…