今井雅人の「どうする? どうなる? 日本経済、世界経済」

米ドル/円は100円割れ? それとも110円へ!? カギ握る米中首脳会談から目が離せない! ブログ

米ドル/円は100円割れ? それとも110円へ!? カギ握る米中首脳会談から目が離せない!

■先週は米ドル安の1週間。でも、この流れは続かない!? 先週(6月17日~)は、18日(火)~19日(水)に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)において、早期利下げの可能性が示されたことを受けて、金利市場では米ドル金利の低下、為替市場では全体的に米ドル安が進行した1週間でした。

【参考記事】

●FOMC後の米ドル安は一時的!? 米ドル/円107円割れは回避か。注目は米中会談へ!(6月20日、今井雅人)

米ドルVS世界の通貨 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 4時間足)

 米国の10年物国債の金利(=長期金利)も、20日(木)に一時、1.97%台まで低下しましたが、その後も、あまり反発することもなく、2%の水準近辺でとどまっています。

 長期金利は一時期、3.2%程度まで上昇していたことを考えると、相当な金利低下をしてきたということがわかります。

米長期金利(米10年債利回り) 日足(出所:Bloomberg)

 ただ、こうした傾向は、すでに市場は織り込んでいます。

 また、他の国も、米国に追随して金融緩和を実行していくでしょうから、これ以上、この材料で米ドル安が進行することはないと思っています。

■投機筋の米ドルポジションは、ほぼフラットに 先週末(6月21日)に発表された、IMM(国際通貨先物市場)のポジション状況(6月18日時点)を見ると、投機筋の円とユーロに対する米ドルの買い越し(=米ドルロング)がともに、かなり減少していることがわかります。

IMM(国際通貨先物市場)のポジション状況(米ドル/円)6月18日時点※CFTCのデータを基にザイFX!が作成

IMM(国際通貨先物市場)のポジション状況(ユーロ/米ドル)6月18日時点※CFTCのデータを基にザイFX!が作成

 おそらく、今週末(6月28日)に発表される数字(6月25日時点)は、円・ユーロともに、米ドルの買い越しが、ほぼない状態になっているのではないかと、私は予想しています。

 そうであれば益々、今後、米ドル安が進行する圧力は、弱まってくるのではないかと考えています。

■いよいよG20。米中首脳会談はどうなる? そんな中、今週(6月24日~)は、いよいよ注目のG20(20か国・地域)サミットが、大阪で開催されます(28日~29日)。

 現在、米国を中心に、世界的に統一感がまったくなくなってきている中でのG20サミットですので、議長国の日本も、とても難しい舵取りを求められています。

 廃プラスチックなどへの対策では、一致できるとは思いますが、肝心の貿易問題や、保護主義に関しては、残念ながら、玉虫色の結果になることは、ほぼ確実です。

 このような状況であるので、G20サミット自体は、それほど金融市場で注目されているわけではありませんが、今回、注目度が高いわけは、サミットに合わせて行われる、米中首脳会談があるからです。会談は、29日(土)の11時30分から予定されています。

【参考記事】

●リスクオフの円高はナンセンス! 中国中央TVの映画は米中首脳会談実施のサイン!?(6月21日、陳満咲杜)

G20の場で開催されることが決まった米中首脳会談は、6月29日(土)11時30分から行われる予定。貿易交渉に進展が見られるか、それとも決裂するか、今井氏は、その一点に市場の注目が集中すると指摘 (C)Bloomberg/Getty Images

 注目点は、非常に単純です…
FOMC後の米ドル安は一時的!? 米ドル/円 107円割れは回避か。注目は米中会談へ! ブログ

FOMC後の米ドル安は一時的!? 米ドル/円 107円割れは回避か。注目は米中会談へ!

■FOMC声明文に大きな変化! 6月18日(火)~19日(水)に行われたFOMC(米連邦公開市場委員会)は、大方の予測どおり、今後の利下げを示唆する形となりました。

【参考記事】

●米中交渉決裂なら米ドル/円は105円割れ!? トランプ大統領の円安誘導批判にも警戒!(6月13日、今井雅人)

 大きな変更点を紹介します。まず、声明文についての、前回(5月)からの大きな変更点は2つです。

 1カ所目は、5月の「経済活動がしっかりした速度(solid rate)で拡大している」という表現が、今回は「経済活動がゆっくりとした速度(moderate rate)で拡大している」に変わりました。

 2カ所目は、5月は「委員会は引き続き、経済活動の持続的拡大、力強い労働市場、および対照的な2%目標付近でのインフレ率推移が、今後、もっとも可能性の高い結果だと判断している。

 グローバル経済と金融の動向、落ち着いたインフレ圧力を考慮し、委員会はFF(フェデラル・ファンド)レートの目標値の将来の調整が必要かどうかを決めることに、辛抱強くなるだろう」という表現でした。

 それが今回は、「委員会は引き続き、経済活動の持続的拡大、力強い労働市場、および対称的な2%目標付近でのインフレ率推移が、今後、もっとも可能性の高い結果だと判断しているが、こうした見通しへの不確実性は強まった。

 これらの不確実性と落ち着いたインフレ圧力を考慮し、委員会は経済見通しに関する今後の情報が示唆するものを注視し、景気拡大や力強い労働市場、対称的な2%目標近くのインフレの維持に向けて適切に行動する」という表現でした。

 「辛抱強く」という文言を削除して、利下げの可能性を示唆しました。

6月FOMC声明文の一部(出所:FRB)

■金利見通しは下方修正。パウエル議長も利下げ示唆!? 次に、「経済見通し」の中の、FOMCメンバーの将来の金利予測水準を示した「ドットチャート」についでです。2019年末時点の中央値は、3月FOMCのときから変わっていませんが、2020年末時点と2021年末時点については、中央値がかなり下方修正されました。

2019年6月FOMCで示されたドットチャート(出所:FRB)

 また、FOMC終了後の定例記者会見でパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は、「見通しのリスクをかなり留意しており、景気拡大の持続に向けて必要に応じて行動し、当局のツールを活用する準備が整っている」と発言しています。

【参考記事】

●ハト派FOMCとリスク回避で米ドル/円は買われる状況にない! 上がったら売りで(6月18日、バカラ村)

FOMC後の記者会見で必要に応じて行動する準備があると述べたパウエルFRB議長 (C)Bloomberg/Getty Images News

■米長期金利が急低下。米ドル/円は108円割れへ! こうした決定を受けて、米長期金利は急低下。20日(木)のアジア市場では、とうとう2%を割り込みました。

米長期金利(米10年債利回り) 日足(出所:Bloomberg)

 それを受けて、為替市場では米ドル安が進行し、米ドル/円も108円を割り込んでいます。

【参考記事】

●7月FOMCの利下げ織り込み度は100%。米国債利回り低下でドル/円は下落継続!(6月20日、西原宏一)

米ドルVS世界の通貨 30分足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 30分足)

米ドル/円 30分足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 30分足)

■107円割れはないか。焦点は米中首脳会談へ さて、今後ですが、このFOMCの決定の影響による米ドル安は、一時的に終わると思っています。

 米ドル/円も、この材料だけで107円を割り込んでいくような展開にはならないでしょう。

米ドル/円 日足(出所:TradingView)

 そして注目は、6月28日(金)~29日(土)のG20(20か国・地域首脳会合)の場での米中首脳会談に移っていきます。

 トランプ米大統領は、米中首脳会談が実施される見通しであることをツイッターで発表していますが、まだ流動的です。

大阪で開催されるG20の場において、米中首脳会談を実施するとツイッターで発表したトランプ大統領。しかし、まだ流動的で、開催された場合もその結果がどうなるのか、来週は市場の動向がその一点に集中するだろうと今井氏は指摘する。写真は2017年11月の米中首脳会談時のもの (C)Bloomberg/Getty Images

 実際に開催されるのかどうか。もし、開催された場合の結果はどうなるのか。来週(6月24日~)は、その動向に一点集中となります。

【参考記事】

●米中交渉決裂なら米ドル/円は105円割れ!? トランプ大統領の円安誘導批判にも警戒!(6月13日、今井雅人)
米中交渉決裂なら米ドル/円は105円割れ!? トランプ大統領の円安誘導批判にも警戒! ブログ

米中交渉決裂なら米ドル/円は105円割れ!? トランプ大統領の円安誘導批判にも警戒!

■暗黙の了解なんてお構いなしのトランプ大統領 トランプ米大統領が先日(6月11日)、「ユーロは米ドルに対して不当に安く誘導されている」といった主旨の内容を、ツイッターに書き込みました。

This is because the Euro and other currencies are devalued against the dollar, putting the U.S. at a big disadvantage. The Fed Interest rate way too high, added to ridiculous quantitative tightening! They don’t have a clue! https://t.co/0CpnUzJqB9

— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) 2019年6月11日 これまでの国際社会では、所管している大臣(米国では財務長官)以外の人は、為替相場について、特に、水準に関してはコメントをしないというのが、暗黙の了解になっていました。

 しかし、トランプ米大統領は、そんなことはお構いなしです。

■中国批判には一定の合理性。でも、ユーロ安は結果論 中国などは、実際、自国の為替市場に介入をしたりして、水準を調整しているので、政府が中国人民元安に誘導していると批判をすることは、一定の合理性はあります。

米ドル/オフショア中国人民元 日足(出所:TradingView)

 しかし、ユーロに関しては、そういうことは一切せず、市場にすべて委ねています。

 ECB(欧州中央銀行)が金利を低く誘導することで、結果としてユーロ安になることはあるかもしれませんが、金融政策は景気の状況を考慮して決めているわけで、通貨安になるのは結果論です。

ユーロ/米ドル 日足(出所:TradingView)

■日本に対する円安誘導批判はある…? 同じことは、日本についても言えます。

 現在、日銀は異次元の金融緩和を行っていますが、それは物価が上がらないので、こういう政策を取っているわけで、円安にするのが目的ではありません。

 ひょっとしたら、日米貿易交渉の過程において、日本に対しても、日本は意図的に円安に誘導していると言い出しかねません。

【参考記事】

●米ドル高でも米ドル/円は、なぜ上昇しない? 米中貿易交渉に中国が秘密兵器を投入!?(5月30日、今井雅人)

 今回、ユーロはそれほど反応していませんが、円相場は米国の政治の影響を強く受けてきたので、もし、トランプ米大統領がそんな発言をしたら、かなり円高になるのではないかと思っています。

世界の通貨VS円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)

 仮定の話ではありますが、一応、頭の体操はしておきたいと思います。

 さて、足元の金融市場に…
市場の米利下げ織り込みは過剰すぎる! 当面は米ドル安・円高の揺り戻し相場か ブログ

市場の米利下げ織り込みは過剰すぎる! 当面は米ドル安・円高の揺り戻し相場か

■トランプ大統領、今度はメキシコを標的に! 米国と中国の貿易交渉が暗礁に乗り上げている状況の中で、今度は、トランプ米大統領がメキシコに対して追加関税をかけると発言したことで、市場がさらに混乱する展開となっています。

【参考記事】

●米ドル高でも米ドル/円は、なぜ上昇しない? 米中貿易交渉に中国が秘密兵器を投入!?(5月30日、今井雅人)

●トランプの対メキシコ関税ツイートで株もドル/円も下落。でも、これならかわいい方!?(5月31日、陳満咲杜)

 世界的に金利低下、債券価格の急騰、株安、そして、為替市場では米ドル安と円高が進行する展開となってきました。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

米ドルVS世界の通貨 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 4時間足)

世界の通貨VS円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 4時間足)

 しかし、この動きはいったん、これで終わるのではないかと私は考えています。その理由を、これからお話したいと思います。

■市場は3回の米利下げを織り込み! 一番わかりやすいのは、金利の市場であるので、これで説明をしたいと思います。

 米国の政策金利であるFF(フェデラル・ファンド)レートの先物市場は、今年(2019年)の前半は、2.4%近辺でずっと落ち着いていました。現在の政策金利の誘導目標が2.25%~2.50%であるので、市場はこれからしばらく、金利が据え置かれると予想していたということです。

 そのFFレート先物が、4月頃から徐々に低下し始め、特に、米中貿易交渉が決裂してからはスピードが加速しました。

 その結果、直近ではFFレート先物は、1.7%台まで低下しています。

※BloombergのデータをもとにザイFX!が作成

 つまり、2カ月程度の間に、FFレート先物先物は、0.7%近く低下したということになります。通常、政策金利の1回の利下げ幅は0.25%なので、これは、ほぼ3回分の利下げを織り込んでしまったということです。

【参考記事】

●米ドル/円を買う理由はない!? 107.75円を抜けると104円台も視野に…(6月3日、西原宏一&大橋ひろこ)

●年内2回の米利下げ予想!? リスク回避から米ドル安に。ユーロ/米ドルは1.15ドルへ(6月4日、バカラ村)

■市場の反応は過剰すぎるのでは…? 状況は、国債市場も同じです。

 米国10年物の国債利回り(=長期金利)を見ても、昨年(2018年)は3.2%程度まで上昇していたのですが、今年(2019年)に入ってからは、2.7%台近辺で推移をしていました。

 それが、4月から一気に低下を始めて、直近では2.1%台にまで低下してきています。ものすごく速いスピードです。

米長期金利(米10年債利回り) 日足(出所:Bloomberg)

 確かに、米中の貿易交渉問題は、大変、深刻な問題ではありますが、それにしても、ちょっと市場の反応は過剰すぎるのではないかと思います。

 FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は…
米ドル高でも米ドル/円は、なぜ上昇しない? 米中貿易交渉に中国が秘密兵器を投入!? ブログ

米ドル高でも米ドル/円は、なぜ上昇しない? 米中貿易交渉に中国が秘密兵器を投入!?

■市場関係者がリスクオフを警戒!? この1週間の金融市場の動きですが、まず、一番目立っているのは、各国の債券に断続的に買いが入っていて、世界的に長期金利が低下傾向にあります。

米長期金利(米10年債利回り) 日足(出所:Bloomberg)

 どうやら、債券をショート(=売り)していた人たちが、リスクオフに備えて、買い戻しをしているようです。

 また、株価も世界情勢に不透明感が増してきていることを背景に、徐々に下落していっています。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

■為替相場は緩やかな米ドル高。でも、米ドル/円は… 一方の為替相場ですが、こちらの方は、米国が一番、安定しているという判断から、緩やかに米ドルが買われています。

米ドルVS世界の通貨 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 日足)

 しかし、米ドル/円に関しては、リスクオフへの懸念から、米ドル高・円安にならないという動きとなっています。

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

 それでは、足元の注目材料について、それぞれどういう状況であるか、考えていきたいと思います。

■EUの混乱は中長期的なユーロ安要因に! まず、注目された欧州議会議員選挙ですが、連立を組んでいる主要政党2党では、過半数を割るという結果となりました。

 親EU(欧州連合)派の政党の議席を全部合わせると、3分の2を上回っているので、とりあえず、難を逃れたということになります。

 しかし、イタリアでは、EUに対しての反対勢力が大きく躍進し、ギリシャでは、EUの方針に従って緊縮財政を続けてきた政権が倒れました。

 EUの混乱は、今後も続いていくことになるのは間違いありません。

 こうした状況は、中長期的にはユーロ安要因となってくる可能性が高いと、私は考えています。

ユーロ/米ドル 週足(出所:Bloomberg)

■メイ首相が辞任。英ポンド安はまだまだ進む? 英国では、とうとうメイ英首相が来月(6月)、辞任をすることになりました。

 これから、次の首相が誰になるのか、EU離脱の問題はどこに向かうのか、まったく予断を許さない状況です。

 リスクとしては、まだまだ、英ポンド安方向にあるのではないかと考えています。

【参考記事】

●メイ英首相が辞任表明! 米中貿易戦争は長期化へ…米ドル/円は105円台目指すかも(5月27日、西原宏一&大橋ひろこ)

●買われやすい通貨と売られやすい通貨は? ユーロ/英ポンドが0.90ポンド台へ上昇中!?(5月28日、バカラ村)

英ポンド/米ドル 日足(出所:Bloomberg)

 また、米中の貿易交渉が来月(6月)…
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米中貿易戦争は米ドル高を招く結果に!? トレードはスワップも稼げる米ドル買いで!

■市場は一時的に安定期に入っているが… 前回のコラムでもお話したとおり、米中貿易交渉の行方は、依然として不透明ではあるものの、当面は様子見ということで、市場は一時的に安定期に入っています。

【参考記事】

●米中の関税合戦は世界経済にマイナス! 米ドル/円とクロス円はショート戦略で(5月16日、今井雅人)

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

世界の通貨VS円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 4時間足)

 しかし、これはあくまでも一時的。6月に入ってくると、再びこの材料で、市場が動き出す可能性が高いと、私は考えています。

■欧州議会選挙のここに注目! さて、そこで、その他の材料を考えてみます。

 まず、今月(5月)23日(木)から26日(日)にかけて、欧州議会選挙が開催されます。EU(欧州連合)に懐疑的な政党が、どこまで議席数を伸ばすのかという点が、最大の注目点です。

 今のところの見方としては、EU懐疑派の政党は議席数を伸ばす見込みですが、過半数の議席獲得には至らない公算が高いというのが大勢です。

 それと、イタリアの極右政党「同盟」を核とした、極右会派再編の動きが出てくるのかが注目されています。

 2019年後半には、EU首脳人事が注目されます。今回の選挙の結果が、人事に影響を及ぼす可能性があるので、その意味においても、今回の議会選挙は注目度が高いということです。

 EU懐疑派が大きく議席を伸ばすような事態になれば、EUに対する信頼感が低下し、ユーロは下落する可能性が高いと考えています。

ユーロ/米ドル 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)

ユーロ/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 日足)

■トランプ大統領の来日に警戒!? 次に、5月25日(土)から28日(火)にかけては、米国のトランプ大統領が国賓として日本を訪問します。

 今回は、ゴルフに行ったり、相撲観戦をしたり、あるいは炉辺焼きで食事をしたりと、接待旅行のような様相です。さらには、共同声明も出さないという異例の状況であるので、貿易問題などに深く踏み込まない可能性は高いと思います。

 ただ、24日(金)にUSTR(米通商代表部)のライトハイザー代表が来日することに加え、なにせあのトランプ米大統領ですから、どんなサプライズがあるかもわかりません。彼の発言にも、十分、注意をしておきたいと思います。

トランプ米大統領は5月25日(土)~28日(火)の日程で国賓として来日する。今回は共同声明も出さない接待旅行のような様相だが、トランプ大統領だけにどんなサプライズがあるかもわからず、注意しておきたいというのが今井氏の見解。写真は2017年の日米首脳会談後に行われた記者会見時のもの (C)Chip Somodevilla/Getty Images

 3番目は…
米中の関税合戦は世界経済にマイナス! 米ドル/円とクロス円はショート戦略で ブログ

米中の関税合戦は世界経済にマイナス! 米ドル/円とクロス円はショート戦略で

■米中が関税引き上げ合戦へ。心配が現実に… 心配していたことが、現実になってしまいました。

 合意に近づいていると思われていた米中の通商交渉が、土壇場でうまくいかなくなってしまい、米国は中国からの2000億ドル相当の輸入品に対する関税を、10%から25%に引き上げました。

 これに対して、中国側も米国からの輸入品600億ドル相当に対する関税の引き上げを、6月1日(土)から実施するという、対抗措置に出ています。

 さらに、トランプ米大統領は、残りの3250億ドル相当分の中国からの輸入品に関しても、関税をかけることを検討するように指示を出しました。

【参考記事】

●米中交渉決裂なら米ドル/円は100円割れ!? お得意のトランプツイートで雰囲気が一変!(5月9日、今井雅人)

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●目先の米ドル/円サポートは108円台半ば。中国人民元安に影響を受けやすい通貨は?(5月14日、バカラ村)

■ひとまずは、いったん見守りムードに 実際のスケジュールとしては、6月1日(土)に正式手続きに入り、同月17日(月)に公聴会を開催。その7日後である6月24日(月)から、関税措置が実施できるという感じになるようです。

 今のところ、トランプ米大統領は、中国との協議を続けることを表明しており、市場ではその行方を見守ろうというムードが広がっています。そのため、株価の下落などがいったん、落ちついているという状態となっています。

米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

■株式市場の下落は、ほぼ確実!? そうした状況を踏まえた上での今後の展開ですが、まず、はっきりしていることは2点。

 1つは、今回の関税措置のやり合いは、世界経済にとって確実にマイナスであるということです。

 そして2つ目が、現在、市場がやや小康状態に入っているのは、あくまでも一時的だということです。

 現下の状況を考慮すると、まず当面、株式市場が反転して上昇していく可能性は、極めて低いと思っています。逆に、株価が続落していく可能性は、十分、残されています。

 このまま、低空飛行状態に入る可能性も高いとは思いますが、上げる方向と下げる方向、どちらの可能性が高いかといえば、それは下げる方であるのは、ほぼ確実と考えられます。

NYダウ 日足(出所:Bloomberg)

 そうなると、為替相場は…
米中交渉決裂なら米ドル/円は100円割れ!? お得意のトランプツイートで雰囲気が一変! ブログ

米中交渉決裂なら米ドル/円は100円割れ!? お得意のトランプツイートで雰囲気が一変!

■米中通商交渉、合意間近じゃなかったの!? 注目された米中通商交渉ですが、閣僚級の交渉が続いている中、トランプ米大統領やその周辺、あるいは中国側から、楽観的な発言が続いていたことから、うまく合意に至るとの見通しが大勢を占めていましたし、私もそう思っていました。

【参考記事】

●米ドル/円の112円台は短期的な高値圏に!? 米ドル高傾向なのは他通貨よりマシだから(4月25日、今井雅人)

●米ドル/円は110~112円のレンジトレードで。リスクオフ回避でも楽観できない理由は?(4月11日、今井雅人)

●米中貿易交渉の合意期待でリスクオンだがドル/円は右往左往!? 狙いはユーロ/ドル!(4月5日、今井雅人)

 しかし、5月5日(日)に、トランプ米大統領が突然、お得意のツイッターで、以下のようなツイートをしたことで、雰囲気が一変しました。

「この10カ月間、中国は500億ドル(5兆5000億円)相当のハイテク製品に対して、米国に25%の関税を支払っている。そして、2000億ドル(22兆円)相当の他の物に対して、10%の関税を払っている。これらの支払いが、米国の好景気の一部要因だ。

この10%の関税は、金曜日(5月10日)に25%となる。中国から米国に輸出される3250億ドル(36兆円)相当の追加の物に対しては、関税がかかっていないが、近い将来、これは25%に上がるだろう。

関税は、米国内の製品コストに少しの影響しか出ておらず、ほとんどは中国が耐えている状況だ。中国は交渉しようとして、貿易協定の進み具合が遅すぎる。これではダメだ」

トランプ米大統領のツイート米ドル/円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)

■土壇場で中国側の姿勢が一変したから? どうして、こうなってしまったのか、いろいろ聞いてみたところ、どうやら最後の段階になって、2つの点が問題になったようです。

 1つ目は、知的財産権の件。

 米国のIT企業などが、中国でビジネスを始める際には、内容をオープンにして業務の許可申請を取らないといけないことになっていますが、これが技術移転につながるとして、米国側が法改正を含めた改善を求めています。

 2つ目は、産業補助金の件。

 中国は国家戦略として、ICT(情報通信技術)など、今後、重要となる産業の育成のために、企業に対して巨額の補助金を出して支援しています。これが、WTO(世界貿易機関)のルールに違反するとして、米国は中国に対して削減、あるいは撤廃を求めています。

 合意文を作っている間に、この点は、中国側も合意していたのに、土壇場に来て、この2つを合意文書から外してくれと要求してきたようです。背景には、中国共産党幹部からの横ヤリがあったとも言われています。

中国側が土壇場で知的財産権と産業補助金の件を合意文書から外すように要求してきたことが、関税引き上げ措置につながったようだと今井氏は指摘。写真は2017年11月の米中首脳会談時のもの (C)Bloomberg/Getty Images

 さて、トランプ大統領は…
米ドル/円の112円台は短期的な高値圏に!? 米ドル高傾向なのは他通貨よりマシだから ブログ

米ドル/円の112円台は短期的な高値圏に!? 米ドル高傾向なのは他通貨よりマシだから

■ドルインデックスがここ1年ほどの最高値を更新 今週(4月22日~)に入ってから、全体的に米ドル高傾向となってきています。それは、ドルインデックスの動きを見てみると、よくわかります。

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

 この1年間、ドルインデックスは上下動を繰り返しながらも、全体的には緩やかな上昇トレンドを形成してきています。そして、直近の2日間ほどで、この1年間の最高値を更新してきました。

 この間、特に大きなニュースや材料があったわけではありません。また、ここ数日は、米国の長期金利(10年物国債利回り)は、低下傾向にあります。

米長期金利(米10年債利回り) 日足(出所:Bloomberg)

 どうして、こんな状況の中でも、米ドル高に向かったのでしょうか?

■米ドルが他の通貨よりもマシだから!? それは、とても単純に言えば、「他の通貨よりマシ」ということに尽きると思います。

 トランプ米大統領に対する評価は分かれるものの、景気に関して言えば、トランプ米大統領が推進してきた減税などの景気対策は、功を奏してきているのだと思います。

 また、世界各国に貿易交渉を仕掛けてきましたが、メキシコ、カナダ、韓国、EU(欧州連合)と、なんやかんや言っても、それなりに交渉を勝ち取ってきました。

 そして、現在は本命、中国との交渉を行っていますが、これも米国側の勝利で、決着を見そうな雰囲気になってきています。

 こういうことが、米ドルに対する資金の流れを作っている面が、あるのではないかと思います。

米ドルVS世界の通貨 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 日足)

■中長期では米ドル高でも、短期的には息切れ!? では、この流れは続くのでしょうか?

 結論から言えば、中長期的な緩やかな米ドル高は、不測の事態が発生しない限り、続きそうだということです。

 ただ、そうは言っても、積極的な米ドル買いで起きている現象というよりは、比較論で米ドルが買われているということだと思うので、上昇のスピードは、それほど速いものにはならないと思っています。

 先ほどのドルインデックスに話を戻すと、確かに、中長期的には緩やかな米ドル高傾向にはなっていますが、局面、局面では、ジグザグ運動を繰り返しています。

ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)

 米ドルの高値を上に抜けても、そのまま突き抜けていかず、またいったん下がってから上がるというパターンが続いています。

 それを参考にすれば、短期的な動きとしては、今回も、米ドル高の動きは、割りと早く息切れしてしまうのではないかと考えています。

 それに加えて、直近のIMM(国際通貨先物市場)のポジション動向を見ても…
安心感からリスクオンだが、期待は禁物!? クロス円の一部は買われすぎゾーンへ突入 ブログ

安心感からリスクオンだが、期待は禁物!? クロス円の一部は買われすぎゾーンへ突入

■クロス円中心のリスクオン相場に この1週間の流れは、米中貿易交渉、英国のEU離脱(ブレグジット)の2大リスク要因が、いったん落ち着いたことを背景に、若干のリスクオンが起きて、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)を中心に、やや円安に向かうという展開になっています。

【参考記事】

●米ドル/円は110~112円のレンジトレードで。リスクオフ回避でも楽観できない理由は?(4月11日、今井雅人)

●6カ月間延長で、EU離脱日は10月31日に。2度目の国民投票実施はあり得るのか!?(4月15日、松崎美子)

世界の通貨VS円 4時間足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 4時間足)

■米中合意期待や中国GDPが安心材料に その後の展開としては、まず、米国では「米中両国は今年(2019年)の5月末までに、貿易交渉に関しての協定にサインする見込み」と、一部大手マスコミが報道しています。

 そのことによって、益々、合意への期待感が高まってきているようです。

 また、大幅な減速が懸念されていた中国の景気ですが、先日(4月17日)発表された1~3月期の中国GDP(国内総生産)は、前年同期比でプラス6.4%の成長と、予想を上回る結果となっており、市場関係者も、ほっと胸をなでおろしています。

※中国国家統計局のデータをもとにザイFX!が作成

■でも、トレンドを作るには材料不足… こうした結果を受けて、さらなるリスクオンになってくると期待している人もいるかもしれませんが、正直、そこまでの動きになるとは考えられません。

 何度も申し上げているとおり、世界経済が反転していくほどのことではないので、トレンドを作るには、ちょっと材料としては弱いと思います。

【参考記事】

●米ドル/円は110~112円のレンジトレードで。リスクオフ回避でも楽観できない理由は?(4月11日、今井雅人)

●米中貿易交渉の合意期待でリスクオンだがドル/円は右往左往!? 狙いはユーロ/ドル!(4月5日、今井雅人)

 新たなトレンドを作るには、米国や中国の景気がしっかりと回復していくような状況になってくることが、必要になってきます。

■一部のクロス円はやや買われすぎのゾーンへ さらに、チャートから見ても、今後の伸びが難しいのではないかと思われます。

 たとえば、ユーロ/円、豪ドル/円などを見ても、確かにレンジをいったん上に抜けているように見えるものの、MACDなどのオシレーター系テクニカル指標は、やや買われすぎゾーンに入ってきています。

ユーロ/円 日足(出所:Bloomberg)

豪ドル/円 日足(出所:Bloomberg)

 今週末(4月19日)から来週(4月22日~)にかけては、キリスト教系の国・地域においては、イースター休暇に入ります。ここでは、市場が閉鎖され、オープンしていても取引が閑散になるという状況になってきます。市場の動きは、鈍くなってくるのではないでしょうか。

 個人的には、クロス円の…