コインベース、仮想通貨規制遅れるオーストラリアに警鐘|人材流出と投資不安が深刻化

仮想通貨規制の遅れによりオーストラリアでの人材流出と投資不安に警鐘(Coinbase warns Australia about crypto regulation delays leading to talent drain and investor uncertainty)

総選挙控え、仮想通貨改革の必要性を訴え

米大手仮想通貨取引所コインベース(Coinbase)のオーストラリア責任者ジョン・オロフレン氏は2025年4月15日に、同国における仮想通貨規制改革を提言しました。

オロフレン氏は公式ブログで、5月3日に予定されているオーストラリア連邦総選挙を見据え、次期政権は仮想通貨(暗号資産)政策について「言葉だけでなく行動を」と強く訴えています。

同氏によると、オーストラリアでは国民の約25〜31%が仮想通貨を保有または保有経験があり、世界有数の普及率を誇る一方で、肝心の規制整備が後手に回っているといいます。

オーストラリアでは2014年に議会調査が実施され、2021年には銀行が仮想通貨関連の口座を締め出す「デバンキング」問題の調査も行われるなど、規制に向けた取り組みは見られました。しかし、具体的な規制の枠組みは未だ曖昧なままで、政策整備は足踏み状態が続いています。

オロフレン氏は、規制の不在が国内の起業家や投資家、一般利用者に深刻な影響を与え、人材や資金がシンガポールやドバイといった規制環境が整備された国々へ流出している現状に警鐘を鳴らしています。

このままでは技術革新の促進や投資の呼び込み、利用者保護が適切に行えず、オーストラリアは仮想通貨分野で一層の遅れをとる恐れがあると懸念を示しました。

オーストラリアが抱える仮想通貨規制の課題

規制欠如で投資家の間に不安が広がる

オーストラリアでは仮想通貨が広く普及している一方で、明確な規制の枠組みがないことが大きな課題となっています。この数年間、仮想通貨規制についての議論は続いていますが、実際の法整備はほとんど進展していません。

2021年には当時の保守党政権下で上院委員会が仮想通貨の包括的な規制策を提言しましたが、2022年5月に政権交代が起きた影響で、実行されることなく停滞しています。

新たに発足した中道左派・労働党のアルバニージー政権は、まず市場の実情把握を優先課題とし、2022年8月に国内で流通する仮想通貨の種類や使用実態を調査する「トークンマッピング」の実施を発表しました。

しかし具体的な規制が実施されないまま、投資家がハッキングや詐欺の被害に遭っても十分な保護が受けられない状況が続いています。当局も「現時点では仮想通貨への投資は自己責任で行うしかない」と注意を促しています。

銀行の取引拒否で仮想通貨企業が海外流出

こうした中、銀行による仮想通貨業界へのサービス拒否(デバンキング)も深刻化しています。

大手銀行が仮想通貨関連の企業や個人の口座を理由を示さずに閉鎖する事例が続出し、業界団体や政治家から強い批判を受けています。規制当局も状況を深刻に受け止め、2021年には金融監督当局の審議会(CFR)がデバンキング対策を提言しましたが、前述の政権交代により実施されないままとなっています。

その結果、Web3スタートアップ企業は活動の場を海外に求めざるを得ない状況に陥り、投資資金も海外に流出する悪循環が生じています。

オロフレン氏は、規制の不透明さから生じる「安心感の欠如」により、シンガポールやドバイなど明確なルールを持つ国々へ人材と資金が日々流出していると指摘しています。

こうした状況はオーストラリアのフィンテック産業の発展を阻害し、将来のグローバル企業が国内から誕生する可能性を奪いかねないとの懸念も高まっています。

オーストラリア政府、仮想通貨改革に本腰入れる

仮想通貨業界の立て直しを図るため、オーストラリア政府や規制当局も最近になって具体的な取り組みを開始しています。

オーストラリア財務省は声明の中で、主要4銀行と協力して仮想通貨企業に対するサービス提供拒否の実態調査と透明性向上に努める方針を示しました。

仮想通貨業界からはこうした対応を評価する声が上がっており、取引所クラーケン(Kraken)のオーストラリア代表ジョナサン・ミラー氏は「規制の明確化とデバンキング問題の解消により、オーストラリア経済の成長を阻む壁を取り払うことができる」と述べています。

オーストラリアは年金制度の創設や消費税(GST)の導入など、金融改革において世界をリードしてきた歴史があります。コインベースは仮想通貨を次なる改革のフロンティアと位置付け、その伝統を継続するべきだと訴えています。

5月3日の総選挙で発足する新政権が、明確な仮想通貨規制の枠組みを確立し、健全な成長環境を整備して、オーストラリアをアジア太平洋地域の仮想通貨ハブへと発展させられるか、業界内外から関心が寄せられています。

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Source:Coinbase公式ブログ
執筆・翻訳:BITTIMES 編集部
サムネイル:Shutterstockのライセンス許諾により使用

参照元:ニュース – 仮想通貨ニュースメディア ビットタイムズ

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