オンチェーンガバナンスで自動的にアップデートするテゾス【テゾスジャパン 香川氏インタビュー前編】
テゾス(Tezos)はスマートコントラクトが実行でき、さらに形式検証を行うことができるため安全性が高いブロックチェーンです。今回はテゾスジャパンのJay Kagawa氏にインタビューを行いました。
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テゾスはどんなブロックチェーン?
質問:まず、聞いたことがない人もいると思うので、簡単にテゾスとは何なんでしょうか?
香川氏:テゾスはパブリックなブロックチェーンの一種で、スマートコントラクトの実行基盤であり、イーサリアムとよく似ています。ただ、テゾスブロックチェーンはより持続可能なようにデザインされています。
特徴的な点としては、オンチェーンガバナンスにより個々のノードをネットワークを通じて自動的にアップグレードできる点です。トークンの保有量に応じた重み付けで投票したことによって合意を形成し、ソフトウェアが自動で全世界のノードをアップグレードすることは過去に前例がないシステムです。これを実現するためには分散性も重要なため、分散性を損なわない事を主眼にデザインもされています。
さらにチェーン上でスマートコントラクトを実行できて、その上で開発者はさまざまなアプリケーションを構築することができます。
質問:イーサリアムとの違いとはなんでしょうか?
香川氏:今お話したオンチェーンガバナンスがまず1つです。他には形式検証が容易であるという特徴があります。ブロックチェーンでは一度走り始めたプログラムにバグがあった場合、とんでもない損失が起こる可能性があります。
そういったミッションクリティカルな状況では形式検証が可能な言語が使われる場合が多く、テゾスでもそういった言語を採用しています。テゾスは90%以上がOCamlと呼ばれる関数型言語で開発されています。
イーサリアムと比べるというよりも、我々としては一番譲れない場所がこのオンチェーンガバナンスや形式検証です。
テゾスの開発コミュニティづくりの現状
質問:一方で、このような関数型言語のみでプログラミングする環境は、開発者の数が限られます。テゾス上でアプリケーションを作る開発者にとってハードルになってしまうのではないかと思うのですが、どうでしょうか?
香川氏:テゾスのエコシステムではユーザーフレンドリーな開発環境を作るプロジェクトが複数あり、テゾスファウンデーションとしてもそれらのプロジェクトには助成金が出されています。
例えば、よりシンプルなスマートコントラクト言語であるLIGOや、異なるコンパイラのプロジェクトが立ち上がっています。
テゾスの創業者によると、将来には今のMichelsonと呼ばれるスマートコントラクト言語でスマートコントラクトを作成することは少なくなると思うとも言っています。PythonやJavaライクなシンタックスの言語で安全なスマートコントラクトを実装できるようになるのではないかと思います。
そういった開発環境を作ろうとする企業やプロジェクトを見つけて支援するのもテゾスジャパンの役割の一つです。例えば、京都大学のスマートコントラクトに関する検証を行うプロジェクトに対して助成を行っています。他には開発環境ではないですが、Cryptoeconomics Labはテゾス上のレイヤー2としてPlasmaを開発していてこれに対しても助成を行っています。これもある意味で開発環境ですね。
確かにテゾスの開発はまだ簡単ではなく、その部分の整備をするために助成を行っている最中です。
テゾスが力を入れている領域はと?
質問:スマートコントラクト言語や開発環境以外に、テゾスファウンデーションとして力を入れている分野、助成金を積極的に出している分野はありますか?
香川氏:テゾスの創業者はプロジェクト開始当初から金融領域に可能性を感じています。セキュリティトークンの分野で見ると、数百-数千億円の単位で発行するセキュリティトークンがテゾス上で複数発行されてきています。
日本ではレギュレーションが厳しい関係もあり、PoCレベルに留まっているものも多い印象ですが、少しずつ動いてきています。他には、教育面に対してテゾスジャパンとして力を入れていきたいと思っています。まずテゾスを知ってもらう機会を作って、アプリケーションを作りたいと思う人を増やしたいです。なので、技術者向けイベントも増やす予定です。
参照元:CoinChoice