米ドル/円は、年内120円を目指した押し目買い 継続! 主要中央銀行は金融緩和縮小に追い 込まれるが、日銀は蚊帳の外。円安は進む!

RBAはイールド・カーブコントロールから撤退した最初の中央銀行に。世界の中央銀行の引き締めシナリオに拍車がかかるか みなさん、こんにちは。
 今週(11月1日~)注目されたイベントは、なんといってもRBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])理事会。
 その最大のポイントは、RBAがYCC(イールド・カーブコントロール)から撤退した最初の中央銀行になったことです。
(※編集部注:「イールド・カーブコントロール」とは、長期金利と短期金利の誘導目標を操作して、イールドカーブを適切な水準に維持すること)
 RBAは、2020年3月にYCCを採用し、翌日物金利と3年物利回りを0.25%に設定しました。その後、2020年11月に0.1%に設定を引き下げています。
 今回のRBAが注目されたのは、10月29日(金)に、大方のマーケットの予想に反し、RBAが3年国債利回りを0.10%前後の目標水準に抑制するための対応を行わず、国債を購入する計画を公表しなかったこと。
 このRBAの対応見送りは、YCCが停止されるのではないか(?)との市場の観測に拍車を掛けたことになります。
 それにより、豪州の3年国債利回りは一時1.2150%まで急騰。同10年国債利回りも2019年3月以降で初めて2.00%を上回りました。
豪3年債利回り 週足(出所:TradingView)
豪10年債利回り 週足(出所:TradingView)
 加えて、RBAの利上げについても話題になっていましたが、その理由は豪州の住宅価格が10月に急上昇したこと。それにより、RBAは現在の予測である2024年よりもかなり前に利上げするのではないかとの思惑が拡大していました。
 こうした背景により、いつも以上に注目が高まっていたRBA理事会ですが、その決断は、まず2024年償還国債の利回り目標の撤廃。
 ただ利上げについては、RBAのロウ総裁が「利上げの条件が整うには一定の時間がかかる公算」とコメントしたことにより、マーケットはいったんセル・ザ・ファクトの豪ドル売りが出て反落しています。
豪ドル/米ドル 日足(出所:TradingView)
 ただ豪州でも、インフレが静かに進行しています。
 今回のRBA理事会の結果は、世界的なインフレは「一過性」であるとの見方が失墜しつつあるということを意味し、世界の中央銀行が引き締めに向かうというシナリオに拍車がかかるのではないかと思われます。

FOMCはテーパリング開始決定も、パウエル議長は利上げとは違うと強調。NYダウとナスダック総合指数は史上最高値更新 このRBAの結果を受けて注目されたのが、本日早朝に発表された、FOMC(米連邦公開市場委員会)の結果でした。
 その内容は、マーケットのコンセンサスどおり、テーパリング(※)の開始が発表されました。
(※「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)
 資産購入については月額150億ドルのペースで縮小を開始すると表明。その内訳は、米国債が月額100億ドル、MBS(住宅ローン担保証券)が50億ドル。
 結果、来年(2022年)6月には、資産購入がゼロになります。
 決定は全会一致。来年(2022年)には「毎月同様の資産購入減速が適切になる可能性が高い」としながらも、変化に応じて「購入ペースを調整する用意がある」と説明しています。
 インフレ高進については、一時的との認識について従来よりも確信の度合いを弱めています。加えて、パウエル議長は「テーパリング」と「利上げ」は違うと相変わらず強調。
 そのため、NYダウもナスダック総合指数も史上最高値を更新しています。金融緩和縮小を発表しながらも、株価も堅調に推移させることを両立しており、その手腕はお見事。
NYダウ 週足(出所:TradingView)
ナスダック総合指数 週足(出所:TradingView)
 この一連の動きを、FT(フィナンシャル・タイムズ)などは、「ハト派的なテーパリング」と称しています。
 どちらにせよ、インフレは一時的という見方が徐々に後退し、FOMCも金融緩和縮小に一歩前進したといえます。
 この動きは、RBAやBOC(カナダ銀行[カナダの中央銀行])など、世界の主要中央銀行が金融政策を引き締め始めた行動と同じ。どちらかといえば、BOCやRBNZ(ニュージーランド準備銀行[ニュージーランドの中央銀行])は、FOMCの決定を先回りして行った決定であるわけですが。
【参考記事】●資源国通貨の豪ドルやカナダドル買いで。今週はオーストラリアの政策会合に注目、国債利回り暴騰で来年後半の利上げ予想も!(11月1日、西原宏一&大橋ひろこ)

日銀はなかなか金融緩和縮小に動かず…。円安圧力は引き続き高まることを想定 一方、金融緩和縮小になかなか動き出さない中央銀行があります。
 それは……日本銀行。
 その結果、過去1年、過去6カ月、過去1カ月と時間軸を変えても、いつも主要通貨に対して売られているのは、日本円です。
 日本銀行が、RBAのようにYCCから撤退する可能性が高まるのは、数年先になるとみられることから、日本円には引き続き売り圧力が高まると想定しています。
世界の通貨VS円 週足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
 先週(10月25日~)まで、豪ドルを筆頭とした資源国通貨は、対円で堅調に推移していましたが、豪ドル/円はすでに8円超も急騰しているため、今週(11月1日~)は、米ドル/円のほうに注目が集まるのではないかと想定しています。
 米ドル/円は引き続き、年末の120円を目指して押し目買い継続。
【参考記事】●米ドル/円は、いずれ115円を突破して120円へ!90円を目指す豪ドル/円などの、資源国通貨に対する円安が米ドル/円を押し上げる展開に(10月28日、西原宏一)

参照元:ザイFX! 西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

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