失業手当の充実が、悪い雇用統計の原因か。 より実態を反映しているのは強い米CPI

■米雇用統計は予想をはるかに下回る衝撃的な結果 この1週間で、米国の重要な経済指標が2つ発表されました。1つは5月7日(金)に発表された雇用統計です。
 結果ですが、4月の失業率は6.1%で前月の6.0%より0.1%悪化しました。
 次に、注目度の高い非農業部門の就業者数変化ですが、4月は前月比26.6万人の増加でした。
 事前の予想は97.8万人の増加でしたので、予想をはるかに下回る結果に衝撃が走りました。
 また、3月の結果も前月比77万人の増加と、当初の91.6万人増加から下方修正されています。全体的に非常に悪い結果となりました。
【為替ニュース】【速報】米・4月非農業部門雇用者数は予想を下回り+26.6万人

日本時間7日午後9時30分に発表された米・4月非農業部門雇用者数は予想を下回り、
+26.6万人となった。
【経済指標】
・米・4月非農業部門雇用者数:+26.6万人(予想:+100万人、3… #zaifx #fxhttps://t.co/OO1ZUVBipS
— ザイFX! (@ZAiFX) May 7, 2021■米CPIは年率で予想を大きく上回った もう1つは5月12日(水)に発表された、消費者物価指数(CPI)の4月分です。
 こちらは、前月比が0.8%増と予想の0.6%増を上回り、年率で見ても、4.2%増と予想の3.6%を大きく上回っています。
【為替ニュース】【速報】米・4月消費者物価指数は予想を上回り+4.2%

日本時間12日午後9時30分に発表された米・4月消費者物価指数は予想を上回り、前年
比+4.2%となった。
【経済指標】
・米・4月消費者物価指数(前年比+4.2%予想:+3.6%、3月:+2.6… #zaifx #fxhttps://t.co/88z4uJgmEh
— ザイFX! (@ZAiFX) May 12, 2021■米国の景気回復が早くなるであろうことだけは、ほぼ確実 雇用統計に関しては、確かに衝撃的に悪い結果ではありましたが、エコノミストの人たちの多くの見方は、現在の米国の失業手当があまりに充実しているがために、「あえて働からなくてもいいか」と考えた人が多くいたせいではないか、ということです。
 確かに、働かないでお金がもらえるなら、そのほうがいいと考えてもまったく不思議ではありません。私もこの見方を支持したいと思います。
 一方、消費者物価指数は、物の値段がどうなっているかを見るものですから、より実態を反映していると言うことができると思います。
 消費者物価指数の強い結果を受けて、長期金利は上昇し、10年物国債利回りは1.7%程度にまで戻ってきています。
米10年物国債利回り 日足(出所:TradingView)
 何度もお話をしていますが、米国のワクチン接種は20%程度の人が打ちたくないと言っているため、ここ最近では普及率が鈍化していますが、10代の若者への接種も承認されたり、確実に接種は普及をしています。
 米国の景気回復が他の先進国より早くなってくるであろうことだけは、ほぼ確実だと思います。
【参考記事】
●米国の強さを改めて痛感。それでも、米ドル高がどんどん進行しない理由は?(5月6日、今井雅人)
●米長期金利が比較的堅調なのに米ドル全体の動きがさえず、円安が進んでいるのはなぜ?(4月30日、今井雅人)
●米ドルの大崩れはないだろう。最近の為替市場で起こった不思議な動きについて解説(4月22日、今井雅人)
●なぜ、米長期金利上昇と株価上昇が同時に起こっているのか? 米ドル高もまだ続く!(4月1日、今井雅人)
■米ドル/円は108円程度を底値と考えた押し目買いで そういう状況ですが、残念ながら、現在のコロナ禍においては、長期金利が上昇しても、必ずしも米ドル高にならないという状況が続いています。これは、コロナ前の金融市場では考えられなかったことです。
 しかし、いずれ相場は原点に戻っていきます。
 市場を取り巻く環境がいびつな状態のときは、不合理な動きをするときは、これまでもよくありましたが、環境が正常化してくるにつれて、市場も合理性を取り戻していきます。今回もいずれそうなっていくと考えています。
 それまでの間は、市場に流れているお金がジャブジャブ状態であることを背景にした、株高からの円安傾向に乗っていくしかないのかなと思っています。
 米ドル/円に関しては、108円程度を底値と考えた押し目買いの戦略をおすすめしてきています。
 ただ、110円を大きく超えてくるような展開までには、まだしばらく時間がかかると思いますので、大きく期待をしないでトレードに向かうことが肝要かと思います。
米ドル/円 日足(出所:TradingView)

参照元:ザイFX! 今井雅人の「どうする? どうなる? 日本経済、世界経済」

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